【R18】蜜を求める牢獄

ロマネスコ葵

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第ニ章 もう一人のヒーロー。

32 彼には敵わない。

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 騎士といっても、よくよく見ると服装は兵士のように鉄でできたプレートの鎧ではなく、どちらかというと宮廷の貴族のような衣装で、紺色のジャケットコートを羽織っていた。

「……ルーツ様」
「ジンくん! お待たせ」

 今までずっと涼しい顔してたルーツが、何食わぬ顔するジンを前にすると急激に表情が明るくなった。ルーツよりも背が高いジンは彼を見下ろし、腕を組みながら、

「リリアをイジメないでください」

 と、まるで棒読みかのようにそう言った。顔に限らず態度さえも感情がこもっていない。魂が抜けたような人だ……。

「イジメたつもりはないけどなぁ……」
「あ……あの!」

 二人の間を遮るように、私はフードを捲ってジンに一声かける。

「私のこと……覚えてますか?」
「存じ上げませんね」

 あ、
 あ、あ、あ、
 あっさりーーーーーーーー。

 間髪を容れる事もなく。
 もしかしたら、確保する側からすれば、受刑者なんていちいち覚えてられる暇もないのかもしれない……。

「私、貴方のせいで」
 
 ここでルーツが私の口元に手を優しく添える。

「さっさとフードを直して。ミッションクリアできなくなってもいいの?」
「ゔ……むむ……。そうですよね……申し訳、ありません……」

 確かに下級であり受刑者の私がこんな所でうろちょろしていたら大問題だ。バレたら困る。ルーツの言う通り、私は仕方なくフードを被った。
 ここで取り乱したら私の努力が無になる……。
 
「ルーツ様。部外者は立ち入り禁止のはずですが」
「いや、彼女は部外者じゃないよ。立派な関係者」
「……そうですか。初めて見た者だったので」
 
 なんとか思い出そうとしているのか、組んでいた腕を解き、腰に腕を回してもう片方の手は顎に添えていた。
 ルーツは話を終えると、私の首輪の鎖を引っ張りながら飛空船へと移ろうとする。すると……、

「ル、ルーツ様」

 後ろからジンが引き止めた。
 人混みが押し寄せてくる中で、ルーツが振り向いた後、私も彼を覗くように見ると、ジンの眉は中央に寄せられてどこか切な気な表情をしていた。

「後でね」

 何かを察したかのように、クク……と含みを浮かべるルーツ。
 それを聞いて、ほっと眉が緩むジン。
 どういう事だろう……。

「あ……! 俺が部屋まで案内します」

 後ろにいたジンは急に私の前を横切り、私達の前に立って部屋まで案内する。

「出入りチェックはしなくていいの?」
「担当は他にも居ますから問題ありません。むしろ今日は多いくらい居るんです」
「そっか。じゃ、お言葉に甘えて」

 用意された階段を登ると、漸く船内へ。

「鍵は既に用意してありますので」

 歩きながら、ジンは私達に背を向けたまま、人差し指に絡んだ鍵を見せつける。

「流石~強いだけでなく気も利くなんて」
「ところで、ルーツ様」
「うん?」
「捕紋の力が弱まっています。何かいじりました?」
「確かに、この子をここへ来させるためにいじったけど……」
「目的の為とはいえ、どうやら全体的にも影響が出ているようです。……まぁ、他の人が気づくには難しいかと思いますが」

 捕紋の力が弱まった。私が上級土地やこんな飛空船に入れているのも捕紋をいじったから。――それが全体的に影響を及ぼしているのなら、まさかベルやリベラも規定位置関係なく移動ができるんじゃ。つまり脱出しやすくなってるという事……!!
 でもベルの体調を考えるに、どうなっているか予想がつかない。けれどリベラが一緒であるなら、交友関係が広いリベラは情報をすぐ掴むことができるんじゃないか……?

「この事情を知ってるのは?」
「今のところ俺とルーツ様だけかと」
「じゃ、後で一緒に直そう」
「かしこまりました」



 ……終わった。
 この二人しか情報を得ていないのなら意味がない。
 がくり、と首を傾げると、

「残念だったね」

 ルーツは私にニコっと笑みを向けた。
 これは、私の考えもお見通しという事なのですね……。



「こちらです、どうぞ。では、俺はこれで」

 船内の、一体誰がこんなところに来るのかという複雑な奥の方へ、狭苦しい廊下を渡ったその先に私達の部屋があった。
 みし、みしと歩く度に感じる古い木造。今にも壊れそうな雰囲気。
 
 ジンが扉を開けて、私達は中に入ると丁度二人分が収まる広さで、家具はベッドしかない。座る場所もないので私は直接ベッドに座った。私とルーツが入るのを確認すると、ジンはルーツに鍵を手渡してこの部屋をあとにした。

「……えっと、ルーツとジンさんの関係が未だ曖昧なのですが」
「うーん……どっから話そうか」

 ルーツが言いながら私の横に座る。

「そ、そんな深い仲なのですかっ……!?」
「最初はリリアが人間になりたいと言い出して、そっからジンくんが彼女を心配して自分も人間になろうとしたんだ。それで僕が協力してあげたってわけ」
「人間になるには人の精が必要でしたよね。ルーツはそれに協力した、と」

 何も答えず、ルーツはその言葉にニコリと笑みを浮かべる。
 
「待って……それはジンさんのも?」
「言ったじゃないか。彼らはもう僕無しじゃ生きていけないの」

 人魚はずっと、人の精無しじゃ人間になり続けることはできないのでしょうか……。じゃあ、ジンさんは……ルーツの……あの、あれ、あれを……。

「は、は、端なさ過ぎますっ……!」

 頬が灯ってきたところで私は自分の両手で頬を押さえつけた。なんだか目がグルグル回る……こんな人が二日三日ずっと私の側に居るなんて……! 生きてる世界が全くもって違う人!! 性別関係なしに自分の性欲が満たされれば誰でもいいのかな。
 
 恐るべし……ルーツ様…………。
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