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運命の秋
新しい日々・5
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ベスルベルクのごく一部には、トラビスの破壊と放棄を強硬に主張する反トラビス派という勢力もある。トラビスを愛し、その力にますます傾倒していくベスルベルクの人々からの支持は、当然ながら皆無と言ってよい。
そもそもの話、この集団は目下、犯罪者の集団として認識されている。彼らがトラビス機器の破壊行為、彼らは打ちこわしと称している、を行うからだ。従って、この集団に向けられている感情は、支持などではなく単純な嫌悪である。
コーも、反トラビス派に共感を覚えることは無かった。犯罪行為は論外であるが、それを脇に置いたとしても、彼らの主義・主張が問題の本質をついているとは思えないからだ。
問題を起こすのはトラビスではなく、それを扱おうとする人間の心、自制心だ。それを変えない限り、きっと何も変わらない。トラビスだけを叩いたところで、あっという間に第二、第三のトラビスが生まれてくることは目に見えている。
かつてのベスルベルクの人々には、栄華に目を奪われず、自然と調和しながら生きる自制心があった。つい数十年前までそういう形で生活していたのだから、きっかけさえあれば、今でもきっとできる。コーは、そう信じている。
「コー、おはよう」
考えに耽っていたコーは、窓の外からの声で現実に引き戻された。窓から見下ろすと、そこにはアルバンの姿がある。その左手には小さな鍬が握られている。畑仕事をしていたのだろう。
アルバンの服には泥がたくさんの泥跳ねが見られ、その額にはうっすらと汗が光っている。畑仕事は、普段なら朝食を食べてからの日課だが、既にしばらく取り組んだ後のようだ。
間もなく、ベスルベルクの多くを変えてしまう冬がやってくる。冬になれば、流石に畑作業は無理だ。だからこそ、それまでに思う存分楽しんでおこうという腹に違いない。コーは、小さく笑いながら返事を返した。
「おはよう、アルバン。今日はハムエッグでいいかな?」
「いいのう。アツアツのコーヒーも、頼むぞい」
コーは、返事の代わりに右手を上げた。アルバンは、ウィンクをしてから、くるりと背を向けて畑の方へと歩き出した。もうしばらく、作業を続けるつもりなのだろう。小鳥たちの歌声に交じって、どこか調子の外れた歌声が混じり出した。
「秋の空ぁあ 夢とイモとを作る空ぁ・・」
また、変な歌を作ったな。コーは、一人苦笑いした。
そもそもの話、この集団は目下、犯罪者の集団として認識されている。彼らがトラビス機器の破壊行為、彼らは打ちこわしと称している、を行うからだ。従って、この集団に向けられている感情は、支持などではなく単純な嫌悪である。
コーも、反トラビス派に共感を覚えることは無かった。犯罪行為は論外であるが、それを脇に置いたとしても、彼らの主義・主張が問題の本質をついているとは思えないからだ。
問題を起こすのはトラビスではなく、それを扱おうとする人間の心、自制心だ。それを変えない限り、きっと何も変わらない。トラビスだけを叩いたところで、あっという間に第二、第三のトラビスが生まれてくることは目に見えている。
かつてのベスルベルクの人々には、栄華に目を奪われず、自然と調和しながら生きる自制心があった。つい数十年前までそういう形で生活していたのだから、きっかけさえあれば、今でもきっとできる。コーは、そう信じている。
「コー、おはよう」
考えに耽っていたコーは、窓の外からの声で現実に引き戻された。窓から見下ろすと、そこにはアルバンの姿がある。その左手には小さな鍬が握られている。畑仕事をしていたのだろう。
アルバンの服には泥がたくさんの泥跳ねが見られ、その額にはうっすらと汗が光っている。畑仕事は、普段なら朝食を食べてからの日課だが、既にしばらく取り組んだ後のようだ。
間もなく、ベスルベルクの多くを変えてしまう冬がやってくる。冬になれば、流石に畑作業は無理だ。だからこそ、それまでに思う存分楽しんでおこうという腹に違いない。コーは、小さく笑いながら返事を返した。
「おはよう、アルバン。今日はハムエッグでいいかな?」
「いいのう。アツアツのコーヒーも、頼むぞい」
コーは、返事の代わりに右手を上げた。アルバンは、ウィンクをしてから、くるりと背を向けて畑の方へと歩き出した。もうしばらく、作業を続けるつもりなのだろう。小鳥たちの歌声に交じって、どこか調子の外れた歌声が混じり出した。
「秋の空ぁあ 夢とイモとを作る空ぁ・・」
また、変な歌を作ったな。コーは、一人苦笑いした。
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