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・番外編・お兄ちゃんは過保護

7.お兄ちゃんと幼馴染

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次の日いつもは出掛けるお兄ちゃんが、家にいた。
すると勇気がやって来た。家に上がった勇気は居間に入って、ペコリと頭を下げた。

「勇気君、いらっしゃい」

キッチンから出て来たお母さんがニコリと笑って勇気を迎えた。
お兄ちゃんはムッツリと黙っている。

「麦茶とリンゴジュースあるけど、どっちが良い?」
「あ、じゃあ麦茶で……」

お母さんは頷いて、キッチンへ戻って行った。

「勇気、座れ」
「はい」

お兄ちゃんはソファの向かい側を差して、勇気を座らせた。
私もその隣に腰掛けようと勇気の後ろから付いて行くと―――

「凛は部屋に行ってなさい」
「は?」

何を言っているの?

「俺は勇気と話したいんだ」
「……どうして、私がいちゃ駄目なの?」
「大人の話がある」
「私だって、勇気と同い年だよ?」
「……」

するとお兄ちゃんは「はーっ」と大仰に溜息を吐いて眉間を抑えた。

「凛は子供だよ」
「なっ……」

また子供扱いするの?!
立ち上がってお兄ちゃんに詰め寄ろうとする私の前に、腕を出して勇気が制した。

「凛、俺が蓮さんと話したいって言ったんだ。だから―――ちょっとだけ席を外して欲しい」

勇気の声は穏やかだった。

「……」

悔しかったけど、私は頷いた。
除け者にされている気がして悲しくなったけど―――静かな声で訴えるような勇気の言葉には逆らえず、渋々2階の自分の部屋へと上がって行った。






コンコン。

今週の漫画週刊誌をパラパラ捲っていたけど、まるで頭に入らずソワソワしていた。すると暫くして部屋の扉をノックする音がして、私はバッとベッドから飛び起きた。

ガチャリと扉を開けると、勇気がそこに立っていた。

「入る?」
「いや……今日は止めとく」

その返事を聞いて、私は目に見えてガッカリした顔をしていたのかもしれない。
眉を下げて勇気は少し寂しそうに笑い―――それから私の頭にポン、と手を置いた。

温かくて大きい掌だ。
慰めてくれるのだろうか。
だとしたら、勇気は私を見放したという訳では無いのだろう。

「これ持って来た」
「あ、『サンダー』だ」

勇気が買った漫画週刊誌を手にした私の顔が、目に見えて明るくなったのだろう。
私を見下ろす勇気の顔も少し綻んだ。

「じゃあ」
「あ、ちょっと待って」

私はベッドに駆け寄って私がいつも買っている漫画週刊誌『ジャンク』を手にした。
まだ読み終わってないけど―――しょうがない。
扉に戻って、グイッと勇気に押し付けた。

「まだ読んでないんだから―――だから来週、絶対持って来てね。新しいサンダーもだよ」
「わかった、絶対持ってくる」

勇気はそう言ってニカッと笑った。



ドキッとした。



久し振りに勇気の笑顔が私に向けられたからかもしれない。


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