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・番外編・お兄ちゃんは過保護【その後のお話】
33.お兄ちゃんと私 5
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食後に温かい烏龍茶を入れて、お兄ちゃんに振る舞う。
「ありがとう」
「どういたしまして」
にっこりと笑うお兄ちゃん。……うーん。
「お兄ちゃんって、カッコイイよね」
素直に思った事を口に出してみる。するとお兄ちゃんもサラリと返して来た。
「そう?凜は世界一可愛いよね」
「……えーと、お兄ちゃんって女の人皆にそんな事言っているの?」
「俺にとって世界一可愛いのは、凛だけだよ」
「……えーと、うん。そっか、ありがとう」
安定のシスコンだ。
「じゃあお母さんは?」
「蓉子さんは宇宙一綺麗で、素敵だ」
「……うん、もう分かった」
お兄ちゃんのマザコンぶりも、いつも通り安定している。
だけどなぁ……。
「何かあった?凛。不安そうな顔してる」
お兄ちゃんには、すぐ分かっちゃうんだなぁ。
身を乗り出して不安そうにしている私の顎に手を掛けて、探るように瞳を合わせて来る。何だか後ろめたい気がして顎を取られたまま、私は反射的に目を逸らした。
「……そんな事言ってるけど、その内お兄ちゃんだって私やお母さんより大事な女の人が出来て結婚して家を出てくんだろうなって。お兄ちゃんに甘え切ってる私としては、その前に自立しないとなぁ……と、最近考えてしまうワケですよ」
もう一度お兄ちゃんの顔に目を戻し、別に平気ですけどね!と言うようにニコリと笑って見せた。完全に強がり100%なんだけど。
お兄ちゃんは真顔になって今度は私の両頬を、大きくて温かい両掌で包み込んだ。
「俺が凛と蓉子さんの傍を離れる事なんて、絶対にないよ」
「……」
お兄ちゃんのいつも通りの甘い言葉。
私をトロトロと甘やかす、ヌクヌクした火加減の鍋の中。
―――でも私は気付いちゃったんだ。
「そうかな?澪だって、勇気だってその内私から離れて行くと思う。お兄ちゃんだって……絶対って事は無いでしょう?お兄ちゃんはさ、ほら長男だし結婚しないと。そうお父さんも言ってたよ?その気が無さそうだからその内、見合いでもさせようかって―――」
「……つが、言える立場かよ……」
私の頬を温めながら、お兄ちゃんはスッと視線を横に流して小さく呟いた。
「え?」
何て言ったんだろ。聞き返したけどお兄ちゃんはニッコリと笑ってスルーした。
「何でもない。俺だって選ぶ権利あるからね?どうしても結婚しろって言うなら、俺は凛と結婚する」
「はぁ?!お兄ちゃん、そんな事無理に決まってるでしょ?」
「スウェーデンでなら、腹違いの兄妹でも結婚出来る」
「ええ?冗談でしょ?」
お兄ちゃんがおかしなことを言い出したから、私はプチパニックに陥ってしまった。
お兄ちゃんと私が結婚??あ、あ、あ……あり得ない!!
目を白黒させている私に向かって、お兄ちゃんはニヤリと嗤った。
ああっ、なんか黒い!黒い嗤い方だぁ!
偶にお兄ちゃんはこんな風にひどく昏い嗤い方をする事がある。最近滅多に見なかったけど―――主にお父さんや、実のお母さんと電話で話した後なんかに。お兄ちゃんはお父さんともあまり話さないし、お兄ちゃんの実のお母さんは滅多に連絡して来ないらしいから、本当に稀な事なんだけれど。
「アイツに無理矢理結婚相手を押し付けられるなんて、ゴメンだ。自分だって仕事絡みの見合い結婚で失敗してるくせに棚に上げて―――そんなのおかしいだろ?」
「う……まあ、そう言えばそうだね」
うーん『後妻』の子供の私としては、何と言って良いか分からない。
コクリと居心地悪く頷くと、お兄ちゃんはハッとして目を見開き、顔を両手で覆って緩く首を振り、俯いてしまった。
それから暫くの間、沈み込むように沈黙してしまう。
「……お、にいちゃん?」
心配になって身を乗り出し、うつむきがちに顔を覆うお兄ちゃんを覗き込んでみた。
すると沈黙していたお兄ちゃんが―――私の気配にちらりと指をずらして顔を出してくれた。
「ゴメン、凛」
顔をゆっくりと上げつつ大きな両手で口元を覆ったまま、恥ずかしそうに私を見る。
それから心を落ち着けるように、一度ゆっくり瞬きをして―――掌を下ろし私に向き直ってくれた。
「―――冗談だよ。アイツが俺から蓉子さんと凛を取り上げるような事を考えているって思ったら、腹が立って」
ふっと昏い影が消えて、いつものお兄ちゃんの微笑みが戻って来た。
私はホッとし肩の力を抜いて、乗り出した体を戻し椅子に背を預けた。
「……『アイツ』じゃなくて、『お父さん』でしょ?」
安心ついでにちょっと、修正を試みる。
お兄ちゃんって割と本気で……お父さんの事、家族の枠から除外して考えているよね?
「はぁ……息子の事、放ったらかしにして蓉子さんに丸投げしていたくせに、大人になったら手のひらを返したように跡を継げとか結婚して家を出ろとか―――勝手過ぎるんだよ。どうせ気付いたら自分が蚊帳の外なモンだから、俺に嫉妬しているだけなんだ、親父は」
「ええと―――『嫉妬』?」
「そう。俺が家を出たからって、蓉子さんはまだしも、凛との距離なんて簡単に縮められやしないのに。―――そんな簡単な事も分からないで、よく会社の経営なんてしているよな?家庭と同じにワンマンなやり方ばかりしてるんじゃないか、あの会社もいつか破綻するんじゃないかって心配になるよ」
と憮然と呟いたお兄ちゃんなのだけれど、ふと思いついたように表情を変えた。
「そう言えば凛、『澪と勇気がその内離れて行く』ってどういう事だ?少なくとも勇気がお前を置いて何処かに行くなんて、有り得ないだろう?」
お兄ちゃんの疑問を耳にして―――自分がつい呟いてしまった軽率な発言を思い出し、私は真っ赤になった。
口に出すつもり無かったのに……こんな愚痴っぽい卑屈な台詞!!
「ありがとう」
「どういたしまして」
にっこりと笑うお兄ちゃん。……うーん。
「お兄ちゃんって、カッコイイよね」
素直に思った事を口に出してみる。するとお兄ちゃんもサラリと返して来た。
「そう?凜は世界一可愛いよね」
「……えーと、お兄ちゃんって女の人皆にそんな事言っているの?」
「俺にとって世界一可愛いのは、凛だけだよ」
「……えーと、うん。そっか、ありがとう」
安定のシスコンだ。
「じゃあお母さんは?」
「蓉子さんは宇宙一綺麗で、素敵だ」
「……うん、もう分かった」
お兄ちゃんのマザコンぶりも、いつも通り安定している。
だけどなぁ……。
「何かあった?凛。不安そうな顔してる」
お兄ちゃんには、すぐ分かっちゃうんだなぁ。
身を乗り出して不安そうにしている私の顎に手を掛けて、探るように瞳を合わせて来る。何だか後ろめたい気がして顎を取られたまま、私は反射的に目を逸らした。
「……そんな事言ってるけど、その内お兄ちゃんだって私やお母さんより大事な女の人が出来て結婚して家を出てくんだろうなって。お兄ちゃんに甘え切ってる私としては、その前に自立しないとなぁ……と、最近考えてしまうワケですよ」
もう一度お兄ちゃんの顔に目を戻し、別に平気ですけどね!と言うようにニコリと笑って見せた。完全に強がり100%なんだけど。
お兄ちゃんは真顔になって今度は私の両頬を、大きくて温かい両掌で包み込んだ。
「俺が凛と蓉子さんの傍を離れる事なんて、絶対にないよ」
「……」
お兄ちゃんのいつも通りの甘い言葉。
私をトロトロと甘やかす、ヌクヌクした火加減の鍋の中。
―――でも私は気付いちゃったんだ。
「そうかな?澪だって、勇気だってその内私から離れて行くと思う。お兄ちゃんだって……絶対って事は無いでしょう?お兄ちゃんはさ、ほら長男だし結婚しないと。そうお父さんも言ってたよ?その気が無さそうだからその内、見合いでもさせようかって―――」
「……つが、言える立場かよ……」
私の頬を温めながら、お兄ちゃんはスッと視線を横に流して小さく呟いた。
「え?」
何て言ったんだろ。聞き返したけどお兄ちゃんはニッコリと笑ってスルーした。
「何でもない。俺だって選ぶ権利あるからね?どうしても結婚しろって言うなら、俺は凛と結婚する」
「はぁ?!お兄ちゃん、そんな事無理に決まってるでしょ?」
「スウェーデンでなら、腹違いの兄妹でも結婚出来る」
「ええ?冗談でしょ?」
お兄ちゃんがおかしなことを言い出したから、私はプチパニックに陥ってしまった。
お兄ちゃんと私が結婚??あ、あ、あ……あり得ない!!
目を白黒させている私に向かって、お兄ちゃんはニヤリと嗤った。
ああっ、なんか黒い!黒い嗤い方だぁ!
偶にお兄ちゃんはこんな風にひどく昏い嗤い方をする事がある。最近滅多に見なかったけど―――主にお父さんや、実のお母さんと電話で話した後なんかに。お兄ちゃんはお父さんともあまり話さないし、お兄ちゃんの実のお母さんは滅多に連絡して来ないらしいから、本当に稀な事なんだけれど。
「アイツに無理矢理結婚相手を押し付けられるなんて、ゴメンだ。自分だって仕事絡みの見合い結婚で失敗してるくせに棚に上げて―――そんなのおかしいだろ?」
「う……まあ、そう言えばそうだね」
うーん『後妻』の子供の私としては、何と言って良いか分からない。
コクリと居心地悪く頷くと、お兄ちゃんはハッとして目を見開き、顔を両手で覆って緩く首を振り、俯いてしまった。
それから暫くの間、沈み込むように沈黙してしまう。
「……お、にいちゃん?」
心配になって身を乗り出し、うつむきがちに顔を覆うお兄ちゃんを覗き込んでみた。
すると沈黙していたお兄ちゃんが―――私の気配にちらりと指をずらして顔を出してくれた。
「ゴメン、凛」
顔をゆっくりと上げつつ大きな両手で口元を覆ったまま、恥ずかしそうに私を見る。
それから心を落ち着けるように、一度ゆっくり瞬きをして―――掌を下ろし私に向き直ってくれた。
「―――冗談だよ。アイツが俺から蓉子さんと凛を取り上げるような事を考えているって思ったら、腹が立って」
ふっと昏い影が消えて、いつものお兄ちゃんの微笑みが戻って来た。
私はホッとし肩の力を抜いて、乗り出した体を戻し椅子に背を預けた。
「……『アイツ』じゃなくて、『お父さん』でしょ?」
安心ついでにちょっと、修正を試みる。
お兄ちゃんって割と本気で……お父さんの事、家族の枠から除外して考えているよね?
「はぁ……息子の事、放ったらかしにして蓉子さんに丸投げしていたくせに、大人になったら手のひらを返したように跡を継げとか結婚して家を出ろとか―――勝手過ぎるんだよ。どうせ気付いたら自分が蚊帳の外なモンだから、俺に嫉妬しているだけなんだ、親父は」
「ええと―――『嫉妬』?」
「そう。俺が家を出たからって、蓉子さんはまだしも、凛との距離なんて簡単に縮められやしないのに。―――そんな簡単な事も分からないで、よく会社の経営なんてしているよな?家庭と同じにワンマンなやり方ばかりしてるんじゃないか、あの会社もいつか破綻するんじゃないかって心配になるよ」
と憮然と呟いたお兄ちゃんなのだけれど、ふと思いついたように表情を変えた。
「そう言えば凛、『澪と勇気がその内離れて行く』ってどういう事だ?少なくとも勇気がお前を置いて何処かに行くなんて、有り得ないだろう?」
お兄ちゃんの疑問を耳にして―――自分がつい呟いてしまった軽率な発言を思い出し、私は真っ赤になった。
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