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・番外編・お兄ちゃんは過保護【その後のお話 別視点2】
59.蓮(5)
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居間の扉を開けると、いつものようにダイニングテーブルで仕事に励む蓉子さんがいた。俺に気が付いて「お帰り」と優しく微笑んでくれる。
「ただいま……」
そう口に出して、相手に告げる事ができるのは―――誰のお陰?
そんな事が頭をよぎった途端、俺は一歩も動けなくなってしまっていた。
本当だ。
何故、俺は気が付かなかったのだろう?
親父が好きなら―――いくら株式会社だとは言っても、我儘親父のワンマン経営の会社なんだから。結婚したって仕事を続けていられたのだ。その方がよっぽど蓉子さんは親父の傍に居られた。親父の裁量で仕事の量や負担を減らす事だって可能だった筈なんだから、子供が出来るギリギリまで働いたって良かったのに。だって蓉子さんは―――仕事が嫌いな訳じゃ無い。
仕事を辞めて彼女が、あえて家庭に入ったのは―――
親父の、上から目線の言葉が脳裏によみがえる。いつもならその物言いを思い出すだけで腹が立つのに、そんな反発心は全く湧いてこない。何故ならそれは……的確に図星を付いた台詞だったから。
「どうしたの?」
鞄も手放さず突っ立ったままの俺を―――蓉子さんは訝し気に見上げた。
「あ……ええと……凜は?」
咄嗟にその場にいない凛について尋ねる。すると蓉子さんは笑って答えた。
「もう上で休んでいるわよ。最近部活張り切っているから、疲れちゃうみたい」
クスクスと楽しそうに思い出し笑いをしている。
余程凛の疲れた様子が、真新しく珍しく見えるのだろな。俺も、その様子を想像して少し微笑む。あ、良かった。何となく『自分』を取り戻せたような気がしてきた。
「ご飯どうする?」
「食べて来た」
「大さんと?」
「うん、会社の近くのうどん屋で」
「あら、懐かしい!私も食べたかったなー、2人してズルいわよ」
「うん……」
言葉が出ない。俺は俯いた。
「……どうしたの?やっぱり、変。蓮君、体調悪いの?」
「いや、体調は……」
蓉子さんは立ち上がり、俺の目の前まで歩み寄ってきた。
「ほら、荷物下ろしてお風呂入っちゃえば?それとももう寝ちゃう?」
そうして俺の持っている鞄と封筒に手を伸ばす。俺はパッと封筒を咄嗟に背に隠してしまった。
「え?どうしたの?」
「いや、あの」
「会社の重要書類かなにか?」
「……違うよ。えっと……」
ジイっとビー玉のような真っ黒な瞳に見つめられて、俺はつい口を滑らせた。
「見合い……写真だって。中、見てないけど」
「え?あ、ええー!見合い写真??蓮君に??」
蓉子さんは心底吃驚したような顔を見せた。
親父、もしかして蓉子さんに言って無かったのかな?子供の凛には漏らしていた癖に。
「もう!急かさないで上げてって、言ったのに!」
そう言って、蓉子さんは苦々し気に言い放った。
「蓮君はモテるんだから、あの人に紹介して貰わなくても大丈夫なのに……!」
そう言って、腕組みしてプンプン怒っている蓉子さんを見ていたら―――何だか沸々と腹の底から笑いが込み上げてきた。
「ふふっくっ……!蓉子さん、それって身内びいきって言うんだよ」
「私の自慢の息子ですからね!カッコイイから、モテモテなのよ。実は私、蓮君の年上の彼女と誤解されて詰め寄られた事もあるんだから」
と、得意げに胸を張られてしまった。
だけど―――あれ?何?……それって、全く聞いて無い!
俺はつい前のめりになってしまう。
「ナニソレ?!」
「あっ……と。えーっと……ウソウソ。そんな事があったかもって言う―――妄想?」
蓉子さんは明らかに『しまった!』って顔をして、誤魔化した。
俺は鞄をソファに、封筒をその傍のテーブルに放り投げて、蓉子さんに笑顔で詰め寄った。
「……蓉子さん?隠し事はダメだよ?」
「……」
彼女は―――押し黙ったままソロリと視線を逸らせて、知らん振りを貫こうをした。
蓉子さん。今更、それは通用しないからね……!
「ただいま……」
そう口に出して、相手に告げる事ができるのは―――誰のお陰?
そんな事が頭をよぎった途端、俺は一歩も動けなくなってしまっていた。
本当だ。
何故、俺は気が付かなかったのだろう?
親父が好きなら―――いくら株式会社だとは言っても、我儘親父のワンマン経営の会社なんだから。結婚したって仕事を続けていられたのだ。その方がよっぽど蓉子さんは親父の傍に居られた。親父の裁量で仕事の量や負担を減らす事だって可能だった筈なんだから、子供が出来るギリギリまで働いたって良かったのに。だって蓉子さんは―――仕事が嫌いな訳じゃ無い。
仕事を辞めて彼女が、あえて家庭に入ったのは―――
親父の、上から目線の言葉が脳裏によみがえる。いつもならその物言いを思い出すだけで腹が立つのに、そんな反発心は全く湧いてこない。何故ならそれは……的確に図星を付いた台詞だったから。
「どうしたの?」
鞄も手放さず突っ立ったままの俺を―――蓉子さんは訝し気に見上げた。
「あ……ええと……凜は?」
咄嗟にその場にいない凛について尋ねる。すると蓉子さんは笑って答えた。
「もう上で休んでいるわよ。最近部活張り切っているから、疲れちゃうみたい」
クスクスと楽しそうに思い出し笑いをしている。
余程凛の疲れた様子が、真新しく珍しく見えるのだろな。俺も、その様子を想像して少し微笑む。あ、良かった。何となく『自分』を取り戻せたような気がしてきた。
「ご飯どうする?」
「食べて来た」
「大さんと?」
「うん、会社の近くのうどん屋で」
「あら、懐かしい!私も食べたかったなー、2人してズルいわよ」
「うん……」
言葉が出ない。俺は俯いた。
「……どうしたの?やっぱり、変。蓮君、体調悪いの?」
「いや、体調は……」
蓉子さんは立ち上がり、俺の目の前まで歩み寄ってきた。
「ほら、荷物下ろしてお風呂入っちゃえば?それとももう寝ちゃう?」
そうして俺の持っている鞄と封筒に手を伸ばす。俺はパッと封筒を咄嗟に背に隠してしまった。
「え?どうしたの?」
「いや、あの」
「会社の重要書類かなにか?」
「……違うよ。えっと……」
ジイっとビー玉のような真っ黒な瞳に見つめられて、俺はつい口を滑らせた。
「見合い……写真だって。中、見てないけど」
「え?あ、ええー!見合い写真??蓮君に??」
蓉子さんは心底吃驚したような顔を見せた。
親父、もしかして蓉子さんに言って無かったのかな?子供の凛には漏らしていた癖に。
「もう!急かさないで上げてって、言ったのに!」
そう言って、蓉子さんは苦々し気に言い放った。
「蓮君はモテるんだから、あの人に紹介して貰わなくても大丈夫なのに……!」
そう言って、腕組みしてプンプン怒っている蓉子さんを見ていたら―――何だか沸々と腹の底から笑いが込み上げてきた。
「ふふっくっ……!蓉子さん、それって身内びいきって言うんだよ」
「私の自慢の息子ですからね!カッコイイから、モテモテなのよ。実は私、蓮君の年上の彼女と誤解されて詰め寄られた事もあるんだから」
と、得意げに胸を張られてしまった。
だけど―――あれ?何?……それって、全く聞いて無い!
俺はつい前のめりになってしまう。
「ナニソレ?!」
「あっ……と。えーっと……ウソウソ。そんな事があったかもって言う―――妄想?」
蓉子さんは明らかに『しまった!』って顔をして、誤魔化した。
俺は鞄をソファに、封筒をその傍のテーブルに放り投げて、蓉子さんに笑顔で詰め寄った。
「……蓉子さん?隠し事はダメだよ?」
「……」
彼女は―――押し黙ったままソロリと視線を逸らせて、知らん振りを貫こうをした。
蓉子さん。今更、それは通用しないからね……!
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