290 / 375
新妻・卯月の仙台暮らし
10.紹介しました。
しおりを挟む
卯月視点に戻ります。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
丈さんを『うさぎひろば』に連れて行き、伊都さんに紹介することが出来た。彼を誰かに自分の『夫』として紹介したのは初めての事だったので、いざ紹介するとなると、ものすご~く緊張してしまった。『夫』と言う言葉を口にするのがどうしても恥ずかしくて……。
一方、当の夫である丈さんの方はと言うと―――物凄く平常心!私が口籠っているのを見かねて、山男さんに『妻がお世話になっています』なんてスマートに言ってくれた。
つ……つ……『妻』!だって!!
思わず、うおぉ~!と叫びたくなったくらい心臓の辺りをぐわっと掴まれた。恥ずかしいから、実際叫んだりはしないけど……!
『妻』って『妻』って……うふふふふ……。
そうなの。私は今、丈さんの『妻』!すっご~く、甘い響きじゃないですかぁ!『恋人』になった時もかなりトキめいたけど『妻』ってこうなんか……他人じゃないって響きがまた……うふふふ……。
そしてついに私も、丈さんを『夫』って紹介できたんだ……!!
『うわぁ、言っちゃった……!』なんて、嬉しさと恥ずかしさのあまり頭が煮えてフワフワしていたからかもしれない。伊都さんの緊張を解そうと焦ってしまい、丈さんのことを『眼光鋭いコワモテ』とか、そんな本当の事を言ってしまっ……いや、その。
だけど丈さんは流石の大人の余裕で、ワタワタと慌てている私を笑って許してくれた。はぁあ~、持つべきものは大人な夫!ホント、丈さんってつくづく私には勿体無いくらいの旦那さまだなぁ……。
「そう言えば亀田さん?今日餌のサンプル持って行きますか?」
「……」
後ろから山男さんの声がしたけど、一瞬スルーしてしまった。
ん?……あっ『亀田さん』って私のことか!
「はい!えーと、ペレット……持って行きます!」
前回帰り際にうさぎひろばのオリジナルペレットのサンプルを試してみたい、と言ったことをすっかり忘れていた。山男さん、覚えていてくれたんだ。ケージの方を振り向くと、丈さんもこちらを見ていた。
あ、そっか―――丈さんも『亀田さん』だもんね。と言うか、彼は『オリジナル亀田さん』で、私は『にわか亀田さん』。反応がどうしても遅くなってしまうのは仕方が無い。
そんな私を、傍らにいた伊都さんが長い前髪と黒縁眼鏡の隙間からジッと見つめている。彼女の心の声を汲んだように、山男さんがこう尋ねて来た。
「もしかして名前……呼ばれ慣れていませんね?」
バレてたかぁ。確信を含んだ声に、これまでのやり取りを振り返る。『亀田さん』と呼ばれるたび、どうしても返答するのに一拍空いてしまうのだ。特に目が合っていない状態で呼ばれると、それが自分のことだと理解するのに数秒は掛かってしまう。私は額に手をあてて、照れ笑いで誤魔化した。
「そうなんです。つい数週間前に『亀田』になったばかりなので……」
あ、そうだ。いっそもう『亀田さん』じゃなくて名前で呼んで貰えば良いんだ!イイ事を思いついたとばかりに、私はつぶらな瞳で見上げて来る伊都さんにニコリと笑い掛けた。
「名前で呼んでください。それなら夫婦で一緒に来た時もややこしくないし」
そうすれば、うっかり反応が遅くなる心配もない。
「名前で……」
そう呟く伊都さんの頬に僅かに赤みが差したような気がした。
「『うづき』って、言います」
「『うづき』……どんな漢字ですか?」
「四月の『卯月』です。四月生まれなんです」
誕生日は春休み中だから、学生の時なんか祝ってくれるのは家族だけって言うのが普通だった。なのに人のお祝いはするという……損な役回りの誕生日なんです。
「……!……」
すると伊都さんは前髪の隙間から、キラッと目を輝かせた。
「亀田さんは―――『うさぎ』さん、なんですね?」
「え?」
「ホントだ、『うさぎさん』ですね!」
山男さんも目を丸くして笑っている。え?何のこと?
私は丈さんを振り向いた。すると丈さんは戸惑っている私を不思議そうに見つめた。
「『卯月』の『卯』は『うさぎ』って言う意味だろ?」
「え?……あっ……!」
「まさか、知らなかったのか?」
「あ、ううん。そうだよね!そうか……ホントだ。『卯月』の『卯』って『うさぎ』の『卯』だ!うわぁ、今まで気が付かなかった……!」
丈さんが呆気にとられた顔で私を見ている。
体と頬と頭が熱いっ……!私の顔は今日一番ってくらい、真っ赤になっていると思う。それぐらい恥ずかしかった。だってずっと『四月生まれ』ってトコしか気にしてなかったから……!
「『うさぎさん』って素敵な名前ですね……」
ウットリと伊都さんが呟くのが聞こえて、ますます私の頬は熱くなった。
『うさぎさん』って……!四捨五入して三十になる大人なのにそんな呼び方恥ずかしいって言うか、かなり痛すぎる……!
「『うづき』でっ……!呼び方は『卯月』でお願いします……!」
焦って言いかえしたら、またしても山男さんが後ろで噴き出し、そのまま声を抑えて笑っていた。ううっ……笑い上戸なんだよね、きっと。羞恥を堪えつつ伊都さんに目を移すと、こちらもクスクス笑っている。
チラリと丈さんを振り返ると―――えーん、呆れているのかなぁ?何とも言えない微妙な表情で私を眺めている。
ううう……ますます、丈さんの妻として胸を張る日が遠ざかって行くような気がする……。
私はガックリと肩を落として、俯いたのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
丈さんを『うさぎひろば』に連れて行き、伊都さんに紹介することが出来た。彼を誰かに自分の『夫』として紹介したのは初めての事だったので、いざ紹介するとなると、ものすご~く緊張してしまった。『夫』と言う言葉を口にするのがどうしても恥ずかしくて……。
一方、当の夫である丈さんの方はと言うと―――物凄く平常心!私が口籠っているのを見かねて、山男さんに『妻がお世話になっています』なんてスマートに言ってくれた。
つ……つ……『妻』!だって!!
思わず、うおぉ~!と叫びたくなったくらい心臓の辺りをぐわっと掴まれた。恥ずかしいから、実際叫んだりはしないけど……!
『妻』って『妻』って……うふふふふ……。
そうなの。私は今、丈さんの『妻』!すっご~く、甘い響きじゃないですかぁ!『恋人』になった時もかなりトキめいたけど『妻』ってこうなんか……他人じゃないって響きがまた……うふふふ……。
そしてついに私も、丈さんを『夫』って紹介できたんだ……!!
『うわぁ、言っちゃった……!』なんて、嬉しさと恥ずかしさのあまり頭が煮えてフワフワしていたからかもしれない。伊都さんの緊張を解そうと焦ってしまい、丈さんのことを『眼光鋭いコワモテ』とか、そんな本当の事を言ってしまっ……いや、その。
だけど丈さんは流石の大人の余裕で、ワタワタと慌てている私を笑って許してくれた。はぁあ~、持つべきものは大人な夫!ホント、丈さんってつくづく私には勿体無いくらいの旦那さまだなぁ……。
「そう言えば亀田さん?今日餌のサンプル持って行きますか?」
「……」
後ろから山男さんの声がしたけど、一瞬スルーしてしまった。
ん?……あっ『亀田さん』って私のことか!
「はい!えーと、ペレット……持って行きます!」
前回帰り際にうさぎひろばのオリジナルペレットのサンプルを試してみたい、と言ったことをすっかり忘れていた。山男さん、覚えていてくれたんだ。ケージの方を振り向くと、丈さんもこちらを見ていた。
あ、そっか―――丈さんも『亀田さん』だもんね。と言うか、彼は『オリジナル亀田さん』で、私は『にわか亀田さん』。反応がどうしても遅くなってしまうのは仕方が無い。
そんな私を、傍らにいた伊都さんが長い前髪と黒縁眼鏡の隙間からジッと見つめている。彼女の心の声を汲んだように、山男さんがこう尋ねて来た。
「もしかして名前……呼ばれ慣れていませんね?」
バレてたかぁ。確信を含んだ声に、これまでのやり取りを振り返る。『亀田さん』と呼ばれるたび、どうしても返答するのに一拍空いてしまうのだ。特に目が合っていない状態で呼ばれると、それが自分のことだと理解するのに数秒は掛かってしまう。私は額に手をあてて、照れ笑いで誤魔化した。
「そうなんです。つい数週間前に『亀田』になったばかりなので……」
あ、そうだ。いっそもう『亀田さん』じゃなくて名前で呼んで貰えば良いんだ!イイ事を思いついたとばかりに、私はつぶらな瞳で見上げて来る伊都さんにニコリと笑い掛けた。
「名前で呼んでください。それなら夫婦で一緒に来た時もややこしくないし」
そうすれば、うっかり反応が遅くなる心配もない。
「名前で……」
そう呟く伊都さんの頬に僅かに赤みが差したような気がした。
「『うづき』って、言います」
「『うづき』……どんな漢字ですか?」
「四月の『卯月』です。四月生まれなんです」
誕生日は春休み中だから、学生の時なんか祝ってくれるのは家族だけって言うのが普通だった。なのに人のお祝いはするという……損な役回りの誕生日なんです。
「……!……」
すると伊都さんは前髪の隙間から、キラッと目を輝かせた。
「亀田さんは―――『うさぎ』さん、なんですね?」
「え?」
「ホントだ、『うさぎさん』ですね!」
山男さんも目を丸くして笑っている。え?何のこと?
私は丈さんを振り向いた。すると丈さんは戸惑っている私を不思議そうに見つめた。
「『卯月』の『卯』は『うさぎ』って言う意味だろ?」
「え?……あっ……!」
「まさか、知らなかったのか?」
「あ、ううん。そうだよね!そうか……ホントだ。『卯月』の『卯』って『うさぎ』の『卯』だ!うわぁ、今まで気が付かなかった……!」
丈さんが呆気にとられた顔で私を見ている。
体と頬と頭が熱いっ……!私の顔は今日一番ってくらい、真っ赤になっていると思う。それぐらい恥ずかしかった。だってずっと『四月生まれ』ってトコしか気にしてなかったから……!
「『うさぎさん』って素敵な名前ですね……」
ウットリと伊都さんが呟くのが聞こえて、ますます私の頬は熱くなった。
『うさぎさん』って……!四捨五入して三十になる大人なのにそんな呼び方恥ずかしいって言うか、かなり痛すぎる……!
「『うづき』でっ……!呼び方は『卯月』でお願いします……!」
焦って言いかえしたら、またしても山男さんが後ろで噴き出し、そのまま声を抑えて笑っていた。ううっ……笑い上戸なんだよね、きっと。羞恥を堪えつつ伊都さんに目を移すと、こちらもクスクス笑っている。
チラリと丈さんを振り返ると―――えーん、呆れているのかなぁ?何とも言えない微妙な表情で私を眺めている。
ううう……ますます、丈さんの妻として胸を張る日が遠ざかって行くような気がする……。
私はガックリと肩を落として、俯いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件
桜 偉村
恋愛
みんなと同じようにプレーできなくてもいいんじゃないですか? 先輩には、先輩だけの武器があるんですから——。
後輩マネージャーのその言葉が、彼の人生を変えた。
全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。
練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。
武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。
そのため、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。
そうすれば、香奈は自分のモノになると錯覚していたから。
武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。そこに現れたのが、香奈だった。
香奈に励まされてサッカーを続ける決意をした巧は、彼女のアドバイスのおかげもあり、だんだんとその才能を開花させていく。
一方、巧が成り行きで香奈を家に招いたのをきっかけに、二人の距離も縮み始める。
しかし、退部するどころか活躍し出した巧にフラストレーションを溜めていた武岡が、それを静観するはずもなく——。
「これは警告だよ」
「勘違いしないんでしょ?」
「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」
「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」
先輩×後輩のじれったくも甘い関係が好きな方、スカッとする展開が好きな方は、ぜひこの物語をお楽しみください!
※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。
※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
王弟が愛した娘 —音に響く運命—
Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、
ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。
互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。
だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、
知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。
人の生まれは変えられない。
それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。
セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも――
キャラ設定・世界観などはこちら
↓
https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる