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捕獲されまして。<大谷視点>
20.元気ですよ。
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「うータンは元気か?」
自販機で買ったミルクティーを手にした処で、頭の上から低い声が振って来た。立ち上がって背の高い銀縁眼鏡を見上げる。
「……元気ですよ。土曜日会ったばかりじゃないですか」
「一日会わないと不安でな」
「まだ付き合いが浅いのに、よくそんなに執着できますね」
私は呆れて投げやりに言ってしまった。
「やはり一度付き合い始めてしまうと、会えない時間が辛いんだ。お前だってそれは同じだろう?」
「う……まあ、それはそうですけどね」
分かる。分かり過ぎるほど分かる。
でも他人のウサギへの執着を客観的に目にすると、どうしてこんなに奇妙に映るのだろう?きっと私もこんな風に変人に見えるに違いない―――悲しい事にそれが真実だ。
「大谷は嫌いな物は無いって言っていたな」
「はい、何でも食べます」
即答するとフッと目の前の亀田の口元が緩む。私は驚きに目を見開いた。亀田が―――いや、亀田課長が微かに笑っているのだ。ここ職場だよ? 職場で笑っている亀田課長なんて初めて見た。ううん、厳密に言うと二度目……なのかな? ミスった私が落ち込んでいるのを慰めてくれた時、顔は見れなかったけど何となく微かに微笑んでいるような気配を感じた事があった。でも笑顔を目にしたのは本当に初めての事だ。本当に微かな微笑みだけど、私は呆けたように見入ってしまう。すると私の食い入るような視線に気づいた亀田課長が、少しバツの悪そうな顔をして口元を引き締めた。
「じゃあ好きな物はあるのか? 次に行く時何を買って行ったら良いのか分からなくてな、その……イマイチ俺は女性の気持ちを慮るのが苦手で」
うん。そうだろうね。
思わず大きく頷きそうになったが、あまりに失礼だと思いただ首を振った。
「お土産なんかいらないですよ」
「いや、そう言う訳には行かない。じゃあまたカツサンドにするか? それともチョコレートとか甘い物の方が……」
うわー、この人また昼間にガッツリ訪問する気だ……!
と、驚きつつも……何だか口元が笑ってしまう。これは、あの。私は別に亀田課長の訪問を楽しみにしていると言う訳じゃなくて……その、そうだ! カツサンドが美味しかったからだ! そう、美味しい物を持参してくれるかもしれないっている期待感が口元を緩ませるのであって……ええい!
「じゃあ、またタイメイ軒でお願いします。カツサンドも好きですが、もしオムライスがあったらそっちを買っていただけると有難いです」
買ってくれると言うものは、有難く受け取って置こう! どうせミミちゃんの後釜が決まるまでの短期間の付き合いなんだ。稼ぎ頭の課長なら、それくらいの出費じゃあ財布が痛むと言う事も無いだろう。
「そうか」
亀田課長はホッとしたように表情を緩めた。やっぱりこういう事考えるの苦手なんだ。という事は……よっぽどうータンに会いたいんだね。うータン会いたさに苦手なお土産選びも頑張っちゃうって事だよね。
「課長ってモテるのに、女の人にお土産選ぶの苦手なんですね」
「なっ……別にモテてなんか……」
動揺して視線を彷徨わせるから、思わずこっちが噴き出してしまった。
「聞きましたよー。たくさん彼女がいたって」
「……別にたくさんじゃない。それにいつも女心が分からないって振られるんだからモテると言われてもピンと来ない」
プイッと顔を逸らされてしまった。
ありゃ、痛い所を突いてしまったのだろうか……そう思って思わず慰めるつもりで、フォローの言葉を掛けた。
「でもうータンの心のツボはしっかり押さえてますから、大丈夫ですよ!」
「……お前は意外と口が上手いな」
拗ねたように返しつつ、ちょっと気分を上向かせた様子の亀田課長の背中を叩いた。
「アハハ、じゃあオムライスお願いしますね!」
何だか楽しくなって来て、ニマニマしてしまう。
そうして開封していないミルクティーを手に、自分の気安い態度が恥ずかしくなって私はその場をパッと立ち去った―――
―――のだが。角を曲がったところで、思いも寄らない人物と鉢合わせてしまい、思わず悲鳴を上げそうになってしまった。これはもしかして―――因果応報と言うヤツでしょうか?
そこには大きく目を見開いた三好さんが両手を握りしめて立ち尽くしていた。
私がまさに三好さんと目黒さんの話を立ち聞きしてしまったその場所に、彼女は同じように立ち竦んでいたのだった……!
自販機で買ったミルクティーを手にした処で、頭の上から低い声が振って来た。立ち上がって背の高い銀縁眼鏡を見上げる。
「……元気ですよ。土曜日会ったばかりじゃないですか」
「一日会わないと不安でな」
「まだ付き合いが浅いのに、よくそんなに執着できますね」
私は呆れて投げやりに言ってしまった。
「やはり一度付き合い始めてしまうと、会えない時間が辛いんだ。お前だってそれは同じだろう?」
「う……まあ、それはそうですけどね」
分かる。分かり過ぎるほど分かる。
でも他人のウサギへの執着を客観的に目にすると、どうしてこんなに奇妙に映るのだろう?きっと私もこんな風に変人に見えるに違いない―――悲しい事にそれが真実だ。
「大谷は嫌いな物は無いって言っていたな」
「はい、何でも食べます」
即答するとフッと目の前の亀田の口元が緩む。私は驚きに目を見開いた。亀田が―――いや、亀田課長が微かに笑っているのだ。ここ職場だよ? 職場で笑っている亀田課長なんて初めて見た。ううん、厳密に言うと二度目……なのかな? ミスった私が落ち込んでいるのを慰めてくれた時、顔は見れなかったけど何となく微かに微笑んでいるような気配を感じた事があった。でも笑顔を目にしたのは本当に初めての事だ。本当に微かな微笑みだけど、私は呆けたように見入ってしまう。すると私の食い入るような視線に気づいた亀田課長が、少しバツの悪そうな顔をして口元を引き締めた。
「じゃあ好きな物はあるのか? 次に行く時何を買って行ったら良いのか分からなくてな、その……イマイチ俺は女性の気持ちを慮るのが苦手で」
うん。そうだろうね。
思わず大きく頷きそうになったが、あまりに失礼だと思いただ首を振った。
「お土産なんかいらないですよ」
「いや、そう言う訳には行かない。じゃあまたカツサンドにするか? それともチョコレートとか甘い物の方が……」
うわー、この人また昼間にガッツリ訪問する気だ……!
と、驚きつつも……何だか口元が笑ってしまう。これは、あの。私は別に亀田課長の訪問を楽しみにしていると言う訳じゃなくて……その、そうだ! カツサンドが美味しかったからだ! そう、美味しい物を持参してくれるかもしれないっている期待感が口元を緩ませるのであって……ええい!
「じゃあ、またタイメイ軒でお願いします。カツサンドも好きですが、もしオムライスがあったらそっちを買っていただけると有難いです」
買ってくれると言うものは、有難く受け取って置こう! どうせミミちゃんの後釜が決まるまでの短期間の付き合いなんだ。稼ぎ頭の課長なら、それくらいの出費じゃあ財布が痛むと言う事も無いだろう。
「そうか」
亀田課長はホッとしたように表情を緩めた。やっぱりこういう事考えるの苦手なんだ。という事は……よっぽどうータンに会いたいんだね。うータン会いたさに苦手なお土産選びも頑張っちゃうって事だよね。
「課長ってモテるのに、女の人にお土産選ぶの苦手なんですね」
「なっ……別にモテてなんか……」
動揺して視線を彷徨わせるから、思わずこっちが噴き出してしまった。
「聞きましたよー。たくさん彼女がいたって」
「……別にたくさんじゃない。それにいつも女心が分からないって振られるんだからモテると言われてもピンと来ない」
プイッと顔を逸らされてしまった。
ありゃ、痛い所を突いてしまったのだろうか……そう思って思わず慰めるつもりで、フォローの言葉を掛けた。
「でもうータンの心のツボはしっかり押さえてますから、大丈夫ですよ!」
「……お前は意外と口が上手いな」
拗ねたように返しつつ、ちょっと気分を上向かせた様子の亀田課長の背中を叩いた。
「アハハ、じゃあオムライスお願いしますね!」
何だか楽しくなって来て、ニマニマしてしまう。
そうして開封していないミルクティーを手に、自分の気安い態度が恥ずかしくなって私はその場をパッと立ち去った―――
―――のだが。角を曲がったところで、思いも寄らない人物と鉢合わせてしまい、思わず悲鳴を上げそうになってしまった。これはもしかして―――因果応報と言うヤツでしょうか?
そこには大きく目を見開いた三好さんが両手を握りしめて立ち尽くしていた。
私がまさに三好さんと目黒さんの話を立ち聞きしてしまったその場所に、彼女は同じように立ち竦んでいたのだった……!
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