捕獲されました。

ねがえり太郎

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捕獲されまして。<大谷視点>

19.憑き物が落ちました。

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「亀田課長……年明けから元気になったと思わない?」
「ああ、何だか憑き物が落ちたみたいだな」

 自販機に飲み物を買いに来た私は足を止めた。三好さんと目黒さんが亀田課長の話をしていたからだ。やっぱり亀田の機嫌が上向いたのを皆感じているんだなって思った。

「やっぱ去年なんかあったのかな?病気とか身内の人に何かあったとか……」
「気になるなら聞いてみれば?」
「せっかく元気になったのに蒸し返すの、悪いよ」

 三好さんが目黒さんにムッとした様子で返答した。

「単なる失恋かもしれないだろ」
「……彼女、いないと思うけど」
「三好は知らないかもしれないけど、課長モテるんだぜ。超優良物件だしな、見た目もいいし。同期の篠岡さんが彼女いるっぽいって言ってたぞ」
「じゃあ、去年別れて……やっと吹っ切れたって事? そんな女の人に振り回されるような人じゃないと思うけど」

 目黒さんの言葉に更に三好さんは声を重くした。
 三好さん、亀田課長に心酔してるからなぁ。情けない部分は見たくないんだろう。

……相当、情けないけどね。ウサギに振り回されまくっているし。

「年末年始に地元とかで新しい彼女が出来たんじゃないの」
「……」

 ボソボソと三好さんが目黒さんに何か言ったところで、私はハッと我に返った。わぁ! これ、立ち聞きだ! ヤバい、こんなところ見つかったら……かなり気まず過ぎる。私は足音を極力消してその場から後退り、一目散に立ち去ったのだった。





 手ぶらで課に戻った私は、PCで亀田課長から戻された書類を打ち直している。

 相変わらず容赦ない赤入れに溜息が出た。あれだけ仲良くなったのに、会社での亀田は変わらない。ちょっとくらい手加減してくれても良いのになぁ……これじゃ、契約更新に手心を加えてくれるだろうと言う私の目論見も外れるかもしれない。まあ、以前も亀田はこんな感じだった。職場では厳しいけど、飲み会ではニコリとして優しい言葉を掛けてくれて。三好さんもそう言う公私混同をしない亀田を尊敬しているのだろう。だからあれだけ目黒さんの台詞にムキになって……やっぱ三好さんって亀田課長の事好きなのかな。でも三好さんは知らないんだよな、亀田のプライベートって思いッきし情けない感じなの。あれ見たら絶対引いちゃうよなー……会社での亀田と百八十度違うもんな、うータンと絡んでいる時なんて「どっから声出してんの?」って思うし。まあ、ちょっと素直になる処が可愛いと思わないでも無いけれど……お菓子とか買って来てくれて飼い主の私にも気を使ってくれるし。笑うとやっぱ元がイイからドキッとしちゃうし……って!

 プルプルプルって、首を振ってフワフワした考えを振り払った。

 でえーい! 余計な事考えないっ!

 その時、三好さんと目黒さんが戻って来て席に付くのが見えた。私はバッと席を立ち、財布を掴む。飲み物!買いに行こう! そんでちょっと落ち着いて、それからお仕事再開する。

 じゃないと変な事ばっかり気になって考えちゃう。効率悪過ぎだ~~~!

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