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捕獲されまして。<大谷視点>
23.違います。
しおりを挟む「ちっ違いますよっ……!」
私は慌てて否定した。
「そんなワケ無いじゃないですかっ」
すると三好さんは訝し気に目を細める。どう見ても疑っているのは確実だ。
「だって『週末に会う』って……じゃあ『うータン』って誰なの?大谷さんじゃないなら」
「『うータン』は……」
言い掛けて、ハタと気付く。
そうだ。勝手にバラしちゃいけない。
亀田課長はこれまで頑なにウサギを飼っている事を打ち明けなかった。きっと課の人間に知られたくないからだろう。そうだよね、あの情けない姿見たら今まで築き上げてきた威厳なんか紙切れみたいにクシャクシャになってしまう。実際私の亀田を見る目も変わってしまったし。
ましてや三好さんはあれだけ亀田課長に心酔しているのだ。
食堂でウットリと課長の事を語る彼女を思い出すと、やはり本性を勝手にバラすのは如何なものか……と思ってしまう。
どうしよう、どうしよう。
「『うータン』は……?」
三好さんが私の次の言葉を待っている。
ああっもう……!なるようになれ!
「とっ友達です!私のっ……」
「……友達?」
「そ、そうなんです。ええと……そう!この間その子と一緒に遊んでいたら、亀田課長に偶然会って―――一緒にご飯を食べたんですよ。そしたら課長がその子を気に入って……また会いたいって言うから、じゃあ今週会おうかって話になって」
三好さんが、眉を顰めた。
「じゃあ、課長と付き合っているのって……その子?」
「え?」
「『付き合い始めた』って言ってたでしょう?」
随分しっかり聞き分けてるなっ……!
人の事全く言えないけど……三好さん!貴女みたいなデキる美女が『立ち聞き』って。まるで似合ってませんから!
しかし三好さんは自分がどう見えるかなんて、ちっとも気にならないらしく……真剣な視線を向けて来る。やっぱ亀田課長の事、好きなのかな~?それとも純粋に尊敬?
その時『女の人に振り回されるような人じゃないと思う』と、目黒さん相手に呟く三好さんの重い声を思い出した。どっちにしろ、三好さんは亀田の情けない所なんか見たくないんだろう。
「男女のって意味じゃなくて……えと、そう!お友達ですよ。気が合ったって言うか……まだそんな段階じゃ全然ありませんから」
えーん、どうしたら良いの?コレ。
私の創作した『うータン』と言う女性と亀田の関係を事細かに描写してしまって……一体この後、どう収集つけたら良いって言うのだろうか。これ以上嘘の上塗りを重ねたら―――二進も三進も行かなくなってしまう。ウソがバレるのも時間の問題だっ……!
焦った私はパニックになり、一気にチャイラテを飲み干した。
「あああ……アチっアチっ!」
し、舌がっ!まだ冷め切っていないチャイラテが熱い。
「だ、大丈夫?」
三好さんは厳しい表情を一転させ、そんな私を気遣ってくれた。うっ……基本、良い人なんだよな。肩に力入っているってだけで。なのに私はそんな彼女に、行き当たりばったりで嘘を……っ!
「あっあの……私用事があって!もう、帰っていいですか?!」
勢いを付けて立ち上がると、少し気圧された風にソファに背を預けたまま、三好さんは「あ……うん」と力なく頷いた。
「それじゃあ!お先に失礼しまっす!!!」
がばぁ!と、頭を下げてから。
私は一目散にその場を逃げ出したのだった。
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