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捕獲されまして。<大谷視点>
36.到着しました。
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おじいちゃんに対面した亀田課長は流石の貫禄で、お土産のどら焼きを差し出し感じの良い挨拶をした。山裾にある畑に囲まれた長閑な一軒家……と言えば、古民家みたいな家屋を思い浮かべるかもしれないが、元々都会暮らしをしていたおじいちゃんの家は周囲に馴染む外装ではあるものの、移り住んだ時に新築した瀟洒な平屋だ。
「おじいちゃん、早速だけどピョン太とピョン子に会ってもいい?」
私が言うとおじいちゃんは「せっかちだな」と目を丸くしたが、頷いて「じゃあ先に、裏庭行ってな。お茶持ってってやるから」と笑った。
「課長、こちらです」
私は亀田課長を裏庭へ案内した。事前におじいちゃんには『うさぎの好きな上司がいてピョン太達に会わせたい』と伝えてある。ちょっと変な要望かもしれないけれど……おじいちゃんは『そうか、わかった』と言って余計な事も聞かず、直ぐに了承してくれた。サッパリして話が早い人なのだ。
裏庭に抜ける小道を歩いて先導すると、課長が後ろを付いて来る。建物をグルリと回りこむと、大きなうさぎ小屋が現れた。詳しい事はよく分からないがおじいちゃんはかつて建物を作る仕事をしていて、全部自分で設計して知合いとチャッチャッと作ってしまったらしい。
「これが『うさぎ小屋』?」
「はい」
小学校にあるうさぎ小屋よりも大きい。人間が数人入っても大丈夫なくらい広いのだ。課長が感心したように溜息をついた。
「うさぎが逃げ出さないように、基礎も深く作ってあるんですよ」
「あー、土を掘ってトンネルを作っても大丈夫なようにか?」
「そうなんです。うさぎは掘るのがお仕事ですからね」
うさぎ小屋の中には、土の上にピョン太が寝そべっている。ピョン太は右耳にオレンジ色の模様がある白いレッキス種(おそらく)だ。牧草置き場でポシポシ牧草を噛んでいるのが、ピョン子だ。彼女も白い毛皮で背中にオレンジ色の模様がある。口がモグモグ動いているのが可愛い。
「牧草を食べている時のうさぎの目って、何処を見てるか分からないですよね」
虚空を見つめているように、遠い目をしている。一体何を考えているのか……。
「そうだな、何か考え事をしているように見えるが……きっと何も考えていないんだろうな。食事に集中しているんだろう。こっちがメスの『ピョン子』か?」
「はい」
大人のうさぎの雌雄は見分けやすい。成熟したメスのうさぎには立派な肉垂があって、年と共に立派に育つそうだ。『肉垂』と言うのは首の前にできるマフラーみたいなところで、ものの本によると冬を越す時、もしくは子育ての時に使う栄養分を蓄える役割があるらしい。ちなみに私を含めうさぎ飼いの間では親しみを込め、これを『マフマフ』と呼んでいる。
「立派な肉垂だな。ミミもうータンもここまでぷっくりしていなかったな」
「うちでは栄養の摂り過ぎに気を付けてましたから。食べ過ぎると大きくなっちゃうんじゃありませんでしたっけ」
「そうだな、うちもオヤツのあげ過ぎには気を付けていたな。まあ、年齢もあるんだろう。ピョン子は何歳だ?」
「ええと、確かうータンより一歳くらい上ですかね?四歳くらい?」
ふいにピョン子がピッと耳を立てて立ち上がった。鼻をクンクンさせて周囲を窺うような素振りをしたかと思うと、トタットタッとゆっくりうさぎ跳びでピョン太の元に走り寄り、寝そべっているピョン太のお腹に―――唐突にズボッと自分の鼻づらを突っ込んだ。そしてそのまま、満足気に動かなくなる。ピョン太はというとウトウトしながらも、お腹の下に侵入して来たピョン子の鼻づらに姿勢を揺らされ、少し不快気に首を振ったりしている。眠りを妨げられた様子が、ちょっと気の毒に映った。
「ハハハっ、何だあれ」
課長が笑って指を差した。
「不満げな顔だな、昼寝の邪魔されたみたいに……おい、どうした?」
私を振り向いて笑った課長が、首を傾げた。
おおうっ!いけない!
私は首を振って理性を取り戻した。
「な、何でもないでっす!つーか、中!小屋の中入りましょう!」
「え?いいのか?」
亀田課長がソワソワと体を揺らした。
「勿論!その為に来たんですから」
そう言って私はニコリと笑って、扉に手を掛けた。
その時何でもないような顔をしながら―――胸はドキドキと早鐘を打っていた。
うおーい!なんだその無邪気な笑顔はぁ!
心臓に悪すぎる!!不意打ち禁止……!
「おじいちゃん、早速だけどピョン太とピョン子に会ってもいい?」
私が言うとおじいちゃんは「せっかちだな」と目を丸くしたが、頷いて「じゃあ先に、裏庭行ってな。お茶持ってってやるから」と笑った。
「課長、こちらです」
私は亀田課長を裏庭へ案内した。事前におじいちゃんには『うさぎの好きな上司がいてピョン太達に会わせたい』と伝えてある。ちょっと変な要望かもしれないけれど……おじいちゃんは『そうか、わかった』と言って余計な事も聞かず、直ぐに了承してくれた。サッパリして話が早い人なのだ。
裏庭に抜ける小道を歩いて先導すると、課長が後ろを付いて来る。建物をグルリと回りこむと、大きなうさぎ小屋が現れた。詳しい事はよく分からないがおじいちゃんはかつて建物を作る仕事をしていて、全部自分で設計して知合いとチャッチャッと作ってしまったらしい。
「これが『うさぎ小屋』?」
「はい」
小学校にあるうさぎ小屋よりも大きい。人間が数人入っても大丈夫なくらい広いのだ。課長が感心したように溜息をついた。
「うさぎが逃げ出さないように、基礎も深く作ってあるんですよ」
「あー、土を掘ってトンネルを作っても大丈夫なようにか?」
「そうなんです。うさぎは掘るのがお仕事ですからね」
うさぎ小屋の中には、土の上にピョン太が寝そべっている。ピョン太は右耳にオレンジ色の模様がある白いレッキス種(おそらく)だ。牧草置き場でポシポシ牧草を噛んでいるのが、ピョン子だ。彼女も白い毛皮で背中にオレンジ色の模様がある。口がモグモグ動いているのが可愛い。
「牧草を食べている時のうさぎの目って、何処を見てるか分からないですよね」
虚空を見つめているように、遠い目をしている。一体何を考えているのか……。
「そうだな、何か考え事をしているように見えるが……きっと何も考えていないんだろうな。食事に集中しているんだろう。こっちがメスの『ピョン子』か?」
「はい」
大人のうさぎの雌雄は見分けやすい。成熟したメスのうさぎには立派な肉垂があって、年と共に立派に育つそうだ。『肉垂』と言うのは首の前にできるマフラーみたいなところで、ものの本によると冬を越す時、もしくは子育ての時に使う栄養分を蓄える役割があるらしい。ちなみに私を含めうさぎ飼いの間では親しみを込め、これを『マフマフ』と呼んでいる。
「立派な肉垂だな。ミミもうータンもここまでぷっくりしていなかったな」
「うちでは栄養の摂り過ぎに気を付けてましたから。食べ過ぎると大きくなっちゃうんじゃありませんでしたっけ」
「そうだな、うちもオヤツのあげ過ぎには気を付けていたな。まあ、年齢もあるんだろう。ピョン子は何歳だ?」
「ええと、確かうータンより一歳くらい上ですかね?四歳くらい?」
ふいにピョン子がピッと耳を立てて立ち上がった。鼻をクンクンさせて周囲を窺うような素振りをしたかと思うと、トタットタッとゆっくりうさぎ跳びでピョン太の元に走り寄り、寝そべっているピョン太のお腹に―――唐突にズボッと自分の鼻づらを突っ込んだ。そしてそのまま、満足気に動かなくなる。ピョン太はというとウトウトしながらも、お腹の下に侵入して来たピョン子の鼻づらに姿勢を揺らされ、少し不快気に首を振ったりしている。眠りを妨げられた様子が、ちょっと気の毒に映った。
「ハハハっ、何だあれ」
課長が笑って指を差した。
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私を振り向いて笑った課長が、首を傾げた。
おおうっ!いけない!
私は首を振って理性を取り戻した。
「な、何でもないでっす!つーか、中!小屋の中入りましょう!」
「え?いいのか?」
亀田課長がソワソワと体を揺らした。
「勿論!その為に来たんですから」
そう言って私はニコリと笑って、扉に手を掛けた。
その時何でもないような顔をしながら―――胸はドキドキと早鐘を打っていた。
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