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捕獲されまして。<大谷視点>
37.入ります。
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うさぎ小屋に足を踏み入れると、ピョン太は耳をピンっと持ち上げてデロンと投げ出していた体を起こした。急にピョン太がうさぎの通常姿勢に戻ったので、彼のお腹に鼻づらを差し込んで気持ち良くなっていたピョン子はハッと気付いたように体勢を整えると、ピョン太から離れトタットタッと小屋の端っこまで避難する。
亀田課長と私は暫く入口の所でジッとして二匹にこれ以上警戒心を抱かせないよう、空気になった。そして頃合いを計り、私は肩に掛けていたトートバックからチンゲン菜を取り出して亀田課長に差し出した。亀田課長は私の目を見て意図を察すると、コクンと頷いてチンゲン菜を一束受け取る。そうしてゆっくりと前に出てピョン太に近付き過ぎない距離まで辿り着くとそっとしゃがみ込んだ。チンゲン菜を差し出し辛抱強く待っていると―――暫く鼻をヒクヒクさせて匂いを確認していたピョン太が、やがてトタットタッと跳ねて近づいて来た。
ポシポシポシ……。
食べた!
私がニマニマと見守っていると、チンゲン菜を揺らさないように腕を固めたままの亀田課長が、私の方を振り向き―――如何にも嬉しくてしょうがない、と言うようにニコリと笑った。
私は無言でビッと親指を突き出した。すると亀田課長も、それに応えて親指を突き出す。
するとトタットタッと小屋の端っこに蹲っていたピョン子も食い意地を発揮して亀田課長の持つチンゲン菜に近寄って来た。亀田課長が嬉しそうにうさぎに目を戻す。私もホッと息を吐いて彼の横にしゃがみ込み、持っていたチンゲン菜を差し出した。するとマイペースで強引なピョン子にチンゲン菜を奪われた可哀想なピョン太が私の手からチンゲン菜を食べだした。
「ハハ、奥さんの方が強いんだな」
「そうなんですよね。ピョン太はちょっと押しが弱いんです。だからお腹に鼻づらを突っ込まれて、居心地悪そうにしているのはいっつもピョン太のほう」
「多頭飼いも新鮮だな。あまりうさぎは他の個体に関心を持たないと思っていたが」
「コミュニケーション取っているって感じはあまり無いんですけど、寄り添ったりはしていますね。お互いくっついて温もるのは好きなんでしょうね。相性もあるんでしょうけど……オスとメスでも相性が悪いと殺し合いになるらしいですからね」
「オス同士で縄張り争いになると言うのは知っていたが、オスとメスでもそう言う事があるんだな」
「メスがオスを気に入らないって場合が結構あるらしいですよ。噛みつくんですって」
「……」
亀田課長は何とも言えない表情で、ポシポシとチンゲン菜を頬張るピョン子を眺めて口を噤んだ。
『女扱い……ホンッとーに、へったくそですね……!!』
『スマン……』
頭の中に、コーヒーショップで発した自分の暴言と彼がポツリと返した返事が響いた。
『そう言う事実から目を逸らして放置するから亀田課長はいつも振ら……んんっんっ!』
『……いつも俺が振られるのは、そう言う女の機微に気が付かないからって言いたいのか?お前、顔に出やす過ぎるぞ。考えている事が』
ついでに三好さんへの対応を相談していている時、私がつい発してしまった暴言も思い出してしまう。
ひょっとして亀田課長……ピョン太とピョン子の関係を自分に置き換えていたり―――しないよね?
私は何となく焦ってしまい、殊更明るい声で亀田課長の背中を叩いた。
「大丈夫ですって!きっと亀田課長にも相性の良い女性、見つかりますよ……!」
……焦り過ぎて余計な事を言ってしまったらしい。
言葉も無く亀田課長は私をチラリと見て、それからピョン太とピョン子に視線を戻し、ハーっと溜息を吐いた。ああっ!慰めるつもりが―――ひょっとして更に何かを抉ってしまった?!慌てた私はフォローの言葉を重ねるつもりで―――
「何だったら、私なんかどうですか?結構お買い得ですよ~」
冗談めかしてエヘラっと笑ってみた。
もっと酷い事を口走ってしまった。
亀田課長が―――目を丸くして固まっている。
ああっ昨日あんな妄想しちゃったから……!よ、余計な事をっ、この口がぁあ!
「な、なーんちゃって!……冗談ですよ~!真に受けないでくださいっ!」
「ケホッ」
焦り過ぎてバンバン背中を叩いたら、亀田課長が咳き込んでしまった。ひええ。
「おーい、お茶飲まんか」
そこへグットタイミングと言うかバットタイミングと言うか……おじいちゃんの声が掛かった。何となく気まずさを引き摺ったまま「行きましょうか」と私が声を掛けるとコクリと彼は無言で頷いたのだった。
亀田課長と私は暫く入口の所でジッとして二匹にこれ以上警戒心を抱かせないよう、空気になった。そして頃合いを計り、私は肩に掛けていたトートバックからチンゲン菜を取り出して亀田課長に差し出した。亀田課長は私の目を見て意図を察すると、コクンと頷いてチンゲン菜を一束受け取る。そうしてゆっくりと前に出てピョン太に近付き過ぎない距離まで辿り着くとそっとしゃがみ込んだ。チンゲン菜を差し出し辛抱強く待っていると―――暫く鼻をヒクヒクさせて匂いを確認していたピョン太が、やがてトタットタッと跳ねて近づいて来た。
ポシポシポシ……。
食べた!
私がニマニマと見守っていると、チンゲン菜を揺らさないように腕を固めたままの亀田課長が、私の方を振り向き―――如何にも嬉しくてしょうがない、と言うようにニコリと笑った。
私は無言でビッと親指を突き出した。すると亀田課長も、それに応えて親指を突き出す。
するとトタットタッと小屋の端っこに蹲っていたピョン子も食い意地を発揮して亀田課長の持つチンゲン菜に近寄って来た。亀田課長が嬉しそうにうさぎに目を戻す。私もホッと息を吐いて彼の横にしゃがみ込み、持っていたチンゲン菜を差し出した。するとマイペースで強引なピョン子にチンゲン菜を奪われた可哀想なピョン太が私の手からチンゲン菜を食べだした。
「ハハ、奥さんの方が強いんだな」
「そうなんですよね。ピョン太はちょっと押しが弱いんです。だからお腹に鼻づらを突っ込まれて、居心地悪そうにしているのはいっつもピョン太のほう」
「多頭飼いも新鮮だな。あまりうさぎは他の個体に関心を持たないと思っていたが」
「コミュニケーション取っているって感じはあまり無いんですけど、寄り添ったりはしていますね。お互いくっついて温もるのは好きなんでしょうね。相性もあるんでしょうけど……オスとメスでも相性が悪いと殺し合いになるらしいですからね」
「オス同士で縄張り争いになると言うのは知っていたが、オスとメスでもそう言う事があるんだな」
「メスがオスを気に入らないって場合が結構あるらしいですよ。噛みつくんですって」
「……」
亀田課長は何とも言えない表情で、ポシポシとチンゲン菜を頬張るピョン子を眺めて口を噤んだ。
『女扱い……ホンッとーに、へったくそですね……!!』
『スマン……』
頭の中に、コーヒーショップで発した自分の暴言と彼がポツリと返した返事が響いた。
『そう言う事実から目を逸らして放置するから亀田課長はいつも振ら……んんっんっ!』
『……いつも俺が振られるのは、そう言う女の機微に気が付かないからって言いたいのか?お前、顔に出やす過ぎるぞ。考えている事が』
ついでに三好さんへの対応を相談していている時、私がつい発してしまった暴言も思い出してしまう。
ひょっとして亀田課長……ピョン太とピョン子の関係を自分に置き換えていたり―――しないよね?
私は何となく焦ってしまい、殊更明るい声で亀田課長の背中を叩いた。
「大丈夫ですって!きっと亀田課長にも相性の良い女性、見つかりますよ……!」
……焦り過ぎて余計な事を言ってしまったらしい。
言葉も無く亀田課長は私をチラリと見て、それからピョン太とピョン子に視線を戻し、ハーっと溜息を吐いた。ああっ!慰めるつもりが―――ひょっとして更に何かを抉ってしまった?!慌てた私はフォローの言葉を重ねるつもりで―――
「何だったら、私なんかどうですか?結構お買い得ですよ~」
冗談めかしてエヘラっと笑ってみた。
もっと酷い事を口走ってしまった。
亀田課長が―――目を丸くして固まっている。
ああっ昨日あんな妄想しちゃったから……!よ、余計な事をっ、この口がぁあ!
「な、なーんちゃって!……冗談ですよ~!真に受けないでくださいっ!」
「ケホッ」
焦り過ぎてバンバン背中を叩いたら、亀田課長が咳き込んでしまった。ひええ。
「おーい、お茶飲まんか」
そこへグットタイミングと言うかバットタイミングと言うか……おじいちゃんの声が掛かった。何となく気まずさを引き摺ったまま「行きましょうか」と私が声を掛けるとコクリと彼は無言で頷いたのだった。
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