捕獲されました。

ねがえり太郎

文字の大きさ
66 / 375
捕獲されまして。<大谷視点>

42.頼まれました。

しおりを挟む

帰り道、おじいちゃんに惣菜の受け取りを頼まれた。家から車で二十分ほどの商店街にあるお肉屋さんに寄るよう、指示を受ける。『ふじや』と言うその総菜屋さんはお肉屋さん直営で、本店となるお肉屋さん自体もその三軒隣に店を構えていた。
おじいちゃんと一緒に何度か買い出しに来た事があるので、道は何となく分かる。それに人気のお総菜屋さんなのでスマホで検索すれば簡単に場所は把握できる。レンタカーにはナビも付いているのでスムーズに辿り着く事が出来た。

二つしかない駐車場が一杯だったので、亀田課長を車に残しハザードを出したまま停車して貰って総菜屋までダッシュで走る。おじいちゃんが既に電話で注文済みだったので、少し混んでいたけれどもスンナリと受け取る事が出来た。またしてもダッシュで車へ戻り助手席に座ると、ホワンと良い匂いが車内に充満した。

「旨そうだな……」
「美味しいですよ~。神戸牛入りメンチカツとコロッケです。注文してから揚げてくれるんです。でも今日は事前に予約したから直ぐに受け取れましたけど」

時間も時間なのでおじいちゃんから夕飯を食べて行くようにと言い渡されたのだ。本当は私が亀田課長に美味しいと評判の洋食屋でランチをご馳走したいと思っていたのに……結果として昼は課長に奢って貰ったジェラートでお腹いっぱいになり、その後うさぎの楽園……もとい、ペットショップで時間を忘れてしまいランチの時間はとっくに過ぎてしまっていた。それならば少し早いけど夕飯を奢らせていただこう……と思っている所に、おじいちゃんから「『ふじや』に連絡したからメンチカツ受け取って来てくれ。うちでご飯食べていけ」と言われて頷いてしまったのだ……。

言い訳を言わせて貰えるなら。
その~~……すっごく、美味しいの。ここのメンチカツ!!

久し振りの誘惑に抗えなかったと言うのが正直なところ。『八王子うさぎツアー』の目的は亀田課長にうさぎ成分をたっぷり補給する事だったから、本来の目的は達成できているのだけれど……何とも中途半端、と言うかね。だって表向きの目的の一つ、私が日頃の御礼をしたい、と彼に告げた部分は綺麗さっぱり無かった事になってしまった。うーん……今度ちゃんと何か別のお礼をしなければなぁ。さっきもペットショップで亀田課長、うさぎグッズ購入していたけど……確実にあれ、うータンの為のものだよね。このままじゃ貰ってばっかりになってしまう。

走り出し、商店街の小さな路地を抜けて大きな道路に乗って落ち着いた所で、運転席の亀田課長の横顔をチラリと見に入れ、私は言った。

「あのですね、課長?さっきのお店で……気に入った仔、いましたか?」
「え?そうだな、しいて言えば……どの仔も皆、可愛かったな」

口元がニンマリと緩んでいる。何かを思い出しているのだろう。何を思い出しているかは、一目瞭然だけれども。

「新しい仔……飼いたくなりませんか?」

気に入った仔がいれば、飼えばいいと思う。そうすれば、家に帰ればその仔が亀田課長を癒してくれる。わざわざ人の家に通う、と言う面倒なプロセスはいらないのだ。最近の亀田課長は後ろ髪を引かれるような目で帰って行く。きっとうータンと別れがたいのだろう。私も人の家に通ってうータンに会っていたなら、きっとそんな気持ちになったと思う。夜眠りにつく時、それから朝起きた時に部屋にうさぎがいるのといないのとで、かなり気分に違いがあると思うんだ。

「……」

亀田課長は答えなかった。
それから暫く無言が続いて、ナビが導いた到着地に辿り着いてしまった。



「着いたぞ」
「あ!はい」



あれ?

私……ひょっとして、何か間違えたのかな?

しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 みんなと同じようにプレーできなくてもいいんじゃないですか? 先輩には、先輩だけの武器があるんですから——。  後輩マネージャーのその言葉が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  そのため、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると錯覚していたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。そこに現れたのが、香奈だった。  香奈に励まされてサッカーを続ける決意をした巧は、彼女のアドバイスのおかげもあり、だんだんとその才能を開花させていく。  一方、巧が成り行きで香奈を家に招いたのをきっかけに、二人の距離も縮み始める。  しかし、退部するどころか活躍し出した巧にフラストレーションを溜めていた武岡が、それを静観するはずもなく——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  先輩×後輩のじれったくも甘い関係が好きな方、スカッとする展開が好きな方は、ぜひこの物語をお楽しみください! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、 ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。 互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。 だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、 知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。 人の生まれは変えられない。 それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。 セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも―― キャラ設定・世界観などはこちら       ↓ https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...