捕獲されました。

ねがえり太郎

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捕獲されまして。<大谷視点>

48.泊めます。

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「―――えええっ!」

思わず頓狂な声を上げてしまう。

「……もしかして……冗談だったか?」

すると亀田課長が恐る恐る、と言った様子で尋ねて来た。

「いえ!冗談じゃあ、ありません!どーぞ、泊まってって下さいっっ!あ、じゃあえっと……お風呂!今、お風呂入って下さい!」
「え……そこまでして貰っては」

亀田課長が不安気ふあんげに呟いた反論を、私は打ち消した。

「いーんです!その間にお布団敷いたりしますし、私も入りますし。あ、ユニットバスなんでシャワーになっちゃいますけど……」
「……」

うータンを撫でつつ、亀田課長は少し押し黙り―――それから、キチンと頷いた。

「分かった。じゃあ、お言葉に甘えさせて貰う」
「じゃあ、お風呂の準備しますんで、課長はうータンと戯れていてください」
「悪いな……有難う、大谷」

はにかむ課長が何故か可愛く見えてしまって、バクンと心臓が跳ねた。

うわぁ、大変な事になってしまった……!!

心臓がバクバクして、鼓膜に響く。私はヨロヨロと浴室へ向かった。こーんな狭い部屋だけど、ちゃんとバスタブ付きのお風呂があるのだ。ユニットバスだからトイレと一緒なんだけど。バタンと閉めた浴室の扉にちょっとだけ背を預け、ふかぁく息を吐く。そうして一旦落ち着きを取り戻し周りを見回せば、見せたく無いモノばかりが目に飛び込んできた。そうだ、こうしちゃいられない!急ごう!慌ててそれらをより分けた後スポンジを鷲掴み、私はバスタブを洗い始めたのだった。






見せたく無いモノを巧妙に隠しバスタブを念入りにピカピカにした後、バスタオルとタオル、スウェットをを手渡して亀田課長をユニットバスに押し込んだ。下着は無いので我慢して貰うとして……。それから、うータンをケージに戻してアレコレ片づけをし、卓袱台の脚を折って邪魔にならないようキッチン側に寄せた。押入れから自分用の布団とお客様用の布団を出して敷いて……と。

狭い部屋いっぱいに敷き詰めた二人分……いや、片方セミダブルだから二人半分のお布団に枕が二つ……。

私はそれらを目の前に仁王立ちして、ゴクリと唾を飲み込んだ。

私……もしかして、いやもしかしなくても、トンでも無い事を言い出してしまったのじゃないだろうか。そんな実感がジワジワと湧いて来た。それまではまるで実体の無いイメージみたいなモノしかなかった。けど今目の前に広がっている現実に……尻込みしそうになっている。

部屋が狭すぎて、ピッタリと布団をくっ付けるしか敷く方法が無い。いくら下心があったとしても―――いや、下心見え見えだろう。これ、ダブルベットと同じじゃん。

言葉で意識した途端、カカカ……と、体中が熱くなってしまう。幾ら言い訳したって……いや、バレバレだろうと思うけど……ただ『泊める』と言うにはあまりにも近い。

広ーい家だったら、あり得ただろう。
例えば自分はソファに寝て、ベッドを譲るとか。そうすれば『ただ泊める』って状況もまあ……あり得るかもしれない。でも、この近さは―――どんな言い訳を重ねたって、私の意図通りの意味しか浮かばない訳で……。



ああ!

やっちまった……!

いや、つーか、まだヤッてない……!



この後はええと……あっ自分の着替え出して置いて……亀田課長お風呂から出て来たら、歯磨き……あっ、さっき一緒に歯ブラシも渡しておけば良かった!じゃあ、出て来る直前に渡すか……歯ブラシは……ある、予備のヤツ。えっとえっと、あ、飲み物は……何も無いから水、ピッチャーに冷やしとくか。課長に出て貰ったら交代するでしょ?「先に寝ててください」って言ったら……寝ちゃうかな、寝ちゃったりして。

あり得る。

亀田課長なら。じゃあ、普通にそのまま翌朝になって「泊めてくれて有難う」ってニッコリ笑って別れる事も……あり得るか。あり得る、な。むしろそっちの可能性の方が……いや、この二人用のお布団見て先に寝ちゃうとか……あり得るか?!

な、なんか……怖くなって来ちゃったな。
いや処女に未練なんか無いよ?なんかこのままじゃ、一生おひとり様のような予感がするし。でもあれだよな。こんな付き合ってもいないのに泊まってけなんて言う女、亀田課長はどう思っているんだろう?

私の当初の目論見通り、課長が私とその~ゴニョゴニョ、そう言う事に今日なったとして。あれ?これってただの『ヤッただけ』って事になっちゃうんだろうか?セフレ?いや、そこまで行かなくても一回ヤるだけって、そんなに珍しく無かったりして……そう言えばキラキラ女子達はそう言う事言ってたな。『一回ヤッたくらいで彼氏面されてさー』って飲み会で隣に座った時内緒話が聞こえて来て、吃驚した事がある。

でも意外と、そう言う考えの方が世間では普通だったりして。

じゃあ、私が終わった翌朝『私達付き合うんですよね!』って聞いたら『は?』って聞き返されたりして……『課長を幸せにする!』って息巻いてしまったけど……経験豊富(?)な課長に『何言ってんだ?』って顔されたりして。

「……」

そんな事をグルグル考えていたら、何だかちょっと具合が悪くなってしまった。



うん。やめよう、考えるの。
もういいや、私、亀田課長の事好きだし。
ここまでお膳立てしておいて、逃げるのも何だし。

結局付き合えなくたって、私この先彼氏できそうな気がしないし。好きな相手に処女を貰ってもらうってのもアリかもしれない。もうアラサーだし。もし万が一この先、亀田課長以外の彼氏が出来たり、見合いとかで結婚相手が見つかったとして……この年で処女じゃなきゃって言う人、たぶんいないよね。



よし!!!
もう、覚悟決まった……!どっからでも、どーんと来~い!!!


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