捕獲されました。

ねがえり太郎

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捕獲されまして。<大谷視点>

49.泊めました。

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朝です。


眩しさで目が覚めた。いつもと違う位置に寝ていたからか、カーテンの隙間から入る光が私の瞼を直撃していたのだ。



ふふふ……ふふふふ……



忍び笑いをする私。隣にはスヤスヤ眠っているイケメン。



ふふふ……ふふふふ……



何にも。なーんにもありませんでした……。



心の中でわちゃわちゃ騒ぎまくり言い訳を募らせ、亀田課長の前で挙動不審になりまくった昨晩。課長は先に眠ったりなんかしていなかった。ケージの中のうータンと何かお話していましたね、私がお風呂から出た時は。それから「電気……消しますね」なんて私がちょっと強張った声で言って。布団に潜り込んでドキドキ高鳴る胸に『しずまれ~しずまれ~』なんて言いながら、微動だにせず固まっていた。で、ですね。全くお隣から音沙汰がないわけですよ……で、とうとう痺れを切らせた私はソロリと亀田課長の方を窺った。暗闇に慣れた目で見ると、こちらに背を向けているんですよ。あれ?って思ってね。意を決してムクリと起き上がり、近づいて覗き込むと……寝てたんですよ。スーヤスヤと……。

え、寝てんの?
それなら、さっき私がお風呂から出て来る前に寝てれば……ねえ?良かったのにねえ。
気を持たせるだけ持たせやがって……っ!いやいやいや、違う。きっと課長は気を使って、先に寝るのはダメだって思って待っててくれたんですよ。ちゃんと「おやすみ」って挨拶しないとね、泊めて貰ったからには。

アハハハ……。

本当になーんにもありませんでした。案の定ですよ、そうですよね。据え膳だからって、あの真面目な亀田課長がうっかり手を出す筈、ある訳ないじゃないですか。部下だしねぇ、派遣だしねぇ?!つーか、あれだ。単に好みじゃないってだけかも。

そうだよねー。何か小耳に挟んだ限りでは、課長の元の彼女って美人さんばっかりだったって言ってたような……私みたいなねぇ、地味な女に食指なんか動かないよねぇ?!

「ハーァ……」

布団の上に体を起こし溜息を吐く。つい音量が大きくなってしまったかもしれない。隣に寝ていた亀田課長の体がモゾモゾと動き出した。それから目をゴシゴシと擦って……パチパチと瞬きをする。それからクルリと私の方に顔を向けてボンヤリした顔で呟いた。

「おはよう」
「お、おはようございます……」

うっ……かわいい。

ああ、駄目だ。すっかり私、自分で掘った落とし穴に嵌りこんでしまったらしい―――それも、ずっぽりと。すっごく課長の寝起き姿が可愛く見えてしまう。ボサボサに絡まった短い髪も、うっすらと生えた無精髭も。油断しまくっている姿に胸がキュンキュンしてしまう……っ!

だ、だめだ……っ!もう耐えられないっ!

「か、課長!」
「ん……?」

課長が布団から体を起こして、改めてこちらを向いた。まだボンヤリとした様子でゆっくりと瞬きを繰り返し、頭を掻いている。それからうーんと伸びをして、くわあっと欠伸をした。

うっ……破壊力あり過ぎだよっ……!!
亀田課長、こんな無防備でよく無事に生き残ってこれたなっ……!

今までの彼女達は何て勿体無い事を。何でこんな可愛い人と別れたんだろう?……って、恋愛フィルター掛かりまくりなのかな?私トチ狂ってる?今何か熱病みたいなモノに脳が侵されているだけ???

じゃあ、ひょっとして少し冷静になったら―――この熱は冷めてしまうのかな?

嫌だ……!一瞬の熱でも良いから、この情熱を通り過ぎるままに逃したく無い。
昨日何も無かったって事で、もう失恋確定なのは分かっている。
もしかして今までのように仲の良い『うさトモ』でいられないかもしれないって事も……。

でも、これは私にとって、本当に本気の初めての恋なんだ。

一過性でも良い。この瞬間、胸に込み上げている熱いモノを、今口に出さなければ―――きっと私は一生後悔するだろう。

「課長!」
「……うん」

私は掛け布団をガバッと押し退け、その場に正座し課長に向き直った。
課長も眠たげながらも、私に付き合って掛け布団をけてこちらに胡坐で向き直る。

『好きです!付き合って下さい……!』

そう言おうとしていたのに。



「抱いて下さい……!」



ああっ!口が滑ったぁ―――!!!


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次話、『捕獲されまして』最終話です。(本日11時更新予定)
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