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捕まった後のお話
11.気になります。 <亀田>
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飲み物を手にして課に戻ると―――大谷が席にいないのに気が付いた。
トイレか?と思ったがなかなか戻って来ない。気になるがスマホで呼び出すのも変だしな……頼みたい仕事があったのだが。
俺は立ち上がり、PCに向き合いつつ何故か一人でニヤニヤしている阿部に声を掛けた。
「阿部?」
「え?あ……はい!」
変なサイトでも見ているのかと思ったら、画面に映し出されているのはごく普通の報告書だった。
「大谷、知らないか?頼みたい仕事があるんだが」
「ああ」
何が面白いのかフフフと笑って阿部は答えた。
「小会議室で資料作って貰ってます」
「一人でか?」
「いえ、辻の手伝いをお願いしました」
「そうか」
それなら仕方が無い。それが終わってから頼むとするか。
俺は納得して席に戻ろうと一歩踏み出そうとして―――クルリともう一度阿部の方に向き直った。
「阿部」
「はい?」
「その……二人だけなのか?」
「え?」
「いや、その。作業量が多いなら、他の派遣の子にも手伝わせたら良いんじゃないか?手早く終わらせた方が効率が良くないか?」
「ああ……」
阿部は顎に手を掛け、視線を天井に向けて考える素振りを見せた。しかし直ぐにクルリと俺に顔を向け、ニコリと笑った。
「大丈夫っす!二人くらいで進めるのがちょうど良い作業なので。多いとかえって手戻りが発生すると思います」
「そ、そうか……」
俺は頷いて、今度こそ大人しく席に戻った。
作業効率なんてどうでも良い。
一見怪しく見えるが、無表情の辻はあれでいて仕事にも人に対しても真面目過ぎるくらい真面目な奴だと言う事を、俺は十分に承知している。なのに―――どうにもモヤモヤと落ち着かない気分になってしまう。会議室で二人切りで作業しているのを、何とか阻止したいと言う欲求が……自然に湧き上がって来る。
あーあ、全く。
自分が今まで『自分だと思っていた人間』は一体どこに行ってしまったのだろう?大谷が信用できないワケでも、辻が信用できないワケでもない。二人はたまたま、阿部に指示されて一緒に作業をしているだけで後ろ暗い事など何もないのに。それなのに無性に気になってしまうなんて―――仕事に私情を挟めるなんて、この課を統括する課長としてどうなんだ?本当に三好の元上司、企画課の比留間課長の事を言えなくなってしまうな……。
―――三好か。
俺は先ほど自販機前で声を掛けて来た三好の事を考えた。思いつめた様子で「お時間いただけないでしょうか」と言った三好の真っすぐな瞳。少し前にそこにあった軽蔑や混乱は―――すっかり鳴りを潜めていた。……ような気がする。落ち着いた様子の彼女を見て、何となく彼女の中で何かしら整理が付いたのではないか?と言う気がしたのだ。
あまり望ましくないが―――場合によっては大谷と付き合っている事を三好に伝えなければならないかもしれない。まあ、俺の見立てが間違いで、全然三好は納得なんかしていなくて、結局大谷との付き合いを告白した途端、盛大に引かれる可能性が無い訳ではないがな。
仕事人としての三好は信頼しているが、一人の女性として、素の三好を意識した事が無いので―――その辺りどういう反応が返って来るか想像がつかない。
第一あの、男勝りの三好が……俺に直接疑問をぶつけず立場の弱い派遣の大谷を先ず問い詰めたと言う事にそもそも、いまだに違和感を拭いきれないのだ。
俺は三好を率直な人間だと思っていて、疑問があれば相手が例え上司だとしてもズバズバ忌憚なく意見を口にするようなイメージを持っていた。大谷は三好の行動に納得が言っているような口調だったが、それはやはり女同士だから思考方法を理解できる、と言う事なのだろうか?俺にはサッパリ分からない部分だが―――女性ならではと言う、共通に認識できる部分があるのかもしれない。
とにかく話を聞いてみて、だな。
俺は溜息を吐いて、閉ざされた小会議室の扉を見た。
うん、次から作業をする時はなるべく扉を開け放つよう周知しよう。
理由は―――そうだな。何か困った事が起こったら……では無く、トラブルが起きた時手の空いている者が気付いて手助けできるように、だな。いわばリスク管理、そして効率重視。決して私的な理由―――大谷が若い男と二人切りになるのが面白く無い、なんて上司としてあるまじき、情けない理由からじゃないぞ……!
トイレか?と思ったがなかなか戻って来ない。気になるがスマホで呼び出すのも変だしな……頼みたい仕事があったのだが。
俺は立ち上がり、PCに向き合いつつ何故か一人でニヤニヤしている阿部に声を掛けた。
「阿部?」
「え?あ……はい!」
変なサイトでも見ているのかと思ったら、画面に映し出されているのはごく普通の報告書だった。
「大谷、知らないか?頼みたい仕事があるんだが」
「ああ」
何が面白いのかフフフと笑って阿部は答えた。
「小会議室で資料作って貰ってます」
「一人でか?」
「いえ、辻の手伝いをお願いしました」
「そうか」
それなら仕方が無い。それが終わってから頼むとするか。
俺は納得して席に戻ろうと一歩踏み出そうとして―――クルリともう一度阿部の方に向き直った。
「阿部」
「はい?」
「その……二人だけなのか?」
「え?」
「いや、その。作業量が多いなら、他の派遣の子にも手伝わせたら良いんじゃないか?手早く終わらせた方が効率が良くないか?」
「ああ……」
阿部は顎に手を掛け、視線を天井に向けて考える素振りを見せた。しかし直ぐにクルリと俺に顔を向け、ニコリと笑った。
「大丈夫っす!二人くらいで進めるのがちょうど良い作業なので。多いとかえって手戻りが発生すると思います」
「そ、そうか……」
俺は頷いて、今度こそ大人しく席に戻った。
作業効率なんてどうでも良い。
一見怪しく見えるが、無表情の辻はあれでいて仕事にも人に対しても真面目過ぎるくらい真面目な奴だと言う事を、俺は十分に承知している。なのに―――どうにもモヤモヤと落ち着かない気分になってしまう。会議室で二人切りで作業しているのを、何とか阻止したいと言う欲求が……自然に湧き上がって来る。
あーあ、全く。
自分が今まで『自分だと思っていた人間』は一体どこに行ってしまったのだろう?大谷が信用できないワケでも、辻が信用できないワケでもない。二人はたまたま、阿部に指示されて一緒に作業をしているだけで後ろ暗い事など何もないのに。それなのに無性に気になってしまうなんて―――仕事に私情を挟めるなんて、この課を統括する課長としてどうなんだ?本当に三好の元上司、企画課の比留間課長の事を言えなくなってしまうな……。
―――三好か。
俺は先ほど自販機前で声を掛けて来た三好の事を考えた。思いつめた様子で「お時間いただけないでしょうか」と言った三好の真っすぐな瞳。少し前にそこにあった軽蔑や混乱は―――すっかり鳴りを潜めていた。……ような気がする。落ち着いた様子の彼女を見て、何となく彼女の中で何かしら整理が付いたのではないか?と言う気がしたのだ。
あまり望ましくないが―――場合によっては大谷と付き合っている事を三好に伝えなければならないかもしれない。まあ、俺の見立てが間違いで、全然三好は納得なんかしていなくて、結局大谷との付き合いを告白した途端、盛大に引かれる可能性が無い訳ではないがな。
仕事人としての三好は信頼しているが、一人の女性として、素の三好を意識した事が無いので―――その辺りどういう反応が返って来るか想像がつかない。
第一あの、男勝りの三好が……俺に直接疑問をぶつけず立場の弱い派遣の大谷を先ず問い詰めたと言う事にそもそも、いまだに違和感を拭いきれないのだ。
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とにかく話を聞いてみて、だな。
俺は溜息を吐いて、閉ざされた小会議室の扉を見た。
うん、次から作業をする時はなるべく扉を開け放つよう周知しよう。
理由は―――そうだな。何か困った事が起こったら……では無く、トラブルが起きた時手の空いている者が気付いて手助けできるように、だな。いわばリスク管理、そして効率重視。決して私的な理由―――大谷が若い男と二人切りになるのが面白く無い、なんて上司としてあるまじき、情けない理由からじゃないぞ……!
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