捕獲されました。

ねがえり太郎

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捕まった後のお話 

30.痛いですか? <大谷>

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「……あの」

仕事を元気にやって何が悪いのかな?ブツブツ文句言いながらヤル気なくやっているより良いと思うんだけど……。キラキラ女子といつまでたっても馴染めない私は、彼女達と根本的に感じ方が違うって事なのか。違うタイプでも毎日顔を合わせて一緒に仕事をやって行かなきゃならないんだから……お互い相手を不快にしないように付き合って行ければ良いのにって思っていたのに。

「あの」

何故彼女達は私に不満を持つのだろう?持つだけなら良いけど……あれは聞こえるように言ったんだよね?つまりは私に文句を言って不愉快な気分にさせようとした訳で……分からない、何故わざわざ喧嘩を売るような真似をするのか。そんな事してギスギスしたらお互い、職場にいるだけで疲れてしまうだろうに。

「あの!大谷さん……!」

大きな声で呼ばれて、振り返る。

「え?あっ……はい!」

辻さんが難しい顔をして、眉を顰めている。

ヤバい。考え事していて、何度か呼ばれたのに気付かなかったって言うパターンか。辻さんから声を掛けて来るなんて―――そしてあんなに大きな声を出す辻さんを見たのは初めての事だった。

「すいません……!私、考え事していて……」

なんちゅー失態!『仕事を一所懸命していて何が悪い』って、たった今憤っていた所なのに。それに夢中になってしまって、肝心の仕事が疎かになってしまったら本末転倒だ……!
慌てて頭を下げると、辻さんは驚いたように目を見開いてからソッポを向き、ボソリと呟くように言った。

「あの……大谷さん、顔色が悪いです。体調が悪いなら無理しないで休んでください。ここは俺一人でも大丈夫なんで……」

気を使わせてしまった……!辻さんはただ、私を心配してくれただけなのだ。私は自分が情けなくて恥ずかしくて―――思わず頭に血が昇って、頬が熱くなるのを感じていた。

「あっ……すいません!本当に大丈夫なんです、体調も……ホラ、元気モリモリです!」

と、慌て過ぎて思わずボディビルダーのように腕を振り上げ、ポーズを取った。

「……」

すると辻さんは一瞬目を丸くして―――それからクルリと背を背けてしまった。

あれ?……ちょっと演技過剰だった?かえって見ていられないほど痛々しく映ったとか……。

「……分かりました。じゃあそれ、半分やります。俺の分、終わったので」

辻さんは何故か背を向けたまま―――手だけ後ろに伸ばして、ズズズと私の担当範囲の段ボールを引き寄せた。

え、それほど……?

目に改めて映すのが躊躇われるほど、激しくイタかったのかしら……。

ずーん……やっぱ私って。
空気読めない人間……なのだろうか?
キラキラ女子だけじゃなく、辻さんにも遠巻きにされるとは。






それから二人、黙々と作業を続ける事となり、お陰でアッと言う間に作業は終わった。うん、良かった良かった。良かった……な、はぁあ~……。

今日は出来るだけキラキラ女子の傍に寄りたくなかったのに、作業がアッと言う間に終わった所為……いや、お陰で、まためでたく彼女達の傍に戻る事が出来た。
すると何故か彼女等の一人がクスリと笑いながら話しかけて来た。

「辻さんってオタクっぽいわよねぇ、一緒にお仕事、ウザく無かった?」

私の頭の中は『???』である。
何故さっきまで私の悪口を言っていたその口で、私に辻さんの悪口を言うのか。いや、悪口の誘導か?そんな事をして何の得があるのか、理解に苦しむ。

「……いえ、辻さん優しいですよ?」

よせば良いのに、つい彼女の言葉を否定する形で辻さんを庇ってしまった。

コソコソ当て擦りを言われたのが、思った以上に私の中で応えていたらしい。いつもならもっと上手く切り抜けられたのに。相手の気を悪くしない、それでいて辻さんを落とさないような言葉も……普段なら選べたのに。

小さな反発心が、私の口を滑らせてしまった。



「ふーん……」



キラキラ女子が目を細めて私を見た。
怖い、怖すぎるよー!

「ああいうのが、好みなんだぁあ、大谷さんって」
「いや、別にそう言う訳じゃ……」

しどろもどろに返答する。『好みじゃない!』なんて言ったら辻さんに悪いし、『好みだ!』って嘘も言えない。席が離れているから、キラキラ女子の嫌味なんてたけしさんには届かないだろうけど、彼氏の前でそんな話題に乗りたくないよ。いや、と言うかここ仕事場だし、丈さんよりずっと近い位置に辻さんの背中があるしっ……!辻さんにも悪い。辻さん、寡黙だけど人を気遣える良い人なのに……。

「ねえ、聞いてよ!大谷さんさぁ……」

クルリと背を向けたキラキラ女子その一は、その二に向かって私の言葉を好きに切り分けてコラージュして、違う作品にして伝えてしまう。



ああ~~違うっ、違うのにぃ……!



でもきっと、彼女は『違う』ってコトは分かっていて敢えて誤報をばら撒いているのだ。
私はガクリと肩を落として席を立った。



うータンを撫でくり回したい。
でなければ、今すぐココアが飲みたい……っ!



「喉乾いちゃった、飲み物買ってきます!」



聞いてないかもしれないけど、そう彼女達に宣言して小銭を手にし。
自販機前の休憩所へと私は一目散に逃げ出したのだった。

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