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捕まった後のお話
37.故障しました。 <大谷>
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印刷した書類を取りに行ったら、エラーが出ていた。
なになに?『センターに連絡してください』?コピーも印刷もできる複合機の上面に連絡先が書いてある。ここに電話すれば良いのかな。
吉竹さんに確認すると「うん、電話して~」とのこと。電話をするとコールセンターなのか事務所なのか女性が出て「直ぐに伺います」と返事をしてくれた。念のためコピー機に『エラー中使用禁止。センターに連絡済み。しばらくお待ちください』とサインペンで書いてセロテープで貼り付ける。それから課をぐるりと回って「壁側のコピー機故障中です」と周知してセンターから担当者が来るまで、PC仕事に取り掛かった。
程なくして受付の所に少し大きめの鞄を携えたスーツ姿の若い男性が現れた。
あ、あの人かな?私は席を立ってその男性に近付いた。
「レコーさんですか?」
声を掛けると男性が振り向く。
「はい、レコーの水野と申しま……」
「……水野くん?」
「大谷さん……」
お互い突っ立ったまま押し黙ってしまう。
何と目の前にいるのは―――大学の同期の水野君だった。
同期と言うか……つい数ヵ月前までは『元カレ』って心の中で勝手に呼んでいた実際は単なる『男友達』だ。
戸惑ったような表情、きっと私もそう言う顔をしているのだろう。仲違いした訳じゃない、彼が誘ってくれて何度か遊びに行って、それを私が勝手に勘違いしていたってだけの関係。それで本命が他にいるって分かって自分の勘違いが恥ずかしくなってこちらから距離を取った。暫く避け続けていたらあちらから来ていた連絡も途切れて―――顔を合わせるのはそれ以来だった。二年ちょっとですかね、連絡が途切れてから。以前スーツ姿を見た時はまだ着られているって感じだったような気がする。それが今ではシックリ似合っている。改めて目にするとモテそうだな~……髪も短めながらもふわっと散らして柔和で優し気な容姿は以前のままだ。
なんて冷静に彼を観察できるようになった自分を意外に思う。結構引き摺っていたもんな、男性との一対一のお付き合い(恋人じゃなくても!)の経験って去年まではそれぐらいしか無かったからなぁ。
そこまで考えてハッと我に返る。時間にしてはたった数秒かもしれない、だけど今はそれどころじゃなかったんだ。
「あの、エラーが出ちゃって……お願いします」
「あっはい」
お互い夢から醒めたような感じで、瞬きを交わした。それから壁際の機種まで案内する。
「じゃ、失礼します」
鞄を置いて水野君は早速複合機に取り掛かった。私は後ろに立ってモニターを操作する彼の手元も見ている。どれくらい掛かるんだろう……時間が掛かるなら席でPC作業させて貰って良いのかな?
「……久しぶりだね」
作業をしながら、こちらを見ずに水野君が呟くように言った。
「あ、うん。えーと……元気だった?」
「……うん、まあ」
うーん、これ以上何を話せば。
「あの、直りそう?時間掛かるかな?」
「そうだね、十分くらい。終わったら声を掛けるから、仕事してて良いよ」
振り向いてニコリと笑う。少し垂れ目がちな優しい笑顔に既視感を覚える。
「あ、うん。有難う」
あの頃もこんな風に自然に気を使ってくれたな。それを私は自分に特別に優しいのだと勘違いしてしまった。実際冷静になってみると分かる。彼はいつもこうなんだ。誰にでも気安くて、いつでも優しい。そう言う人だったんだ。
席に戻ると吉竹さんが声を掛けて来た。
「どうしたの?もしかして知合いだった?」
どうやら初めての作業を任せた私を気にしてくれていたようだ。私は素直に頷いた。
「うん、大学の同期。吃驚した」
「え?同じ学部?」
「ううん、えっと……理工学部だったと思う」
ちなみにウチの大学の偏差値は吉竹さんの外国語学部と法学部が一番高く、水野君の理工学部は真ん中くらいだった。私の学部は……うん、特に話しても面白くないからここでは述べません。私の学部だけ極端に門戸が広い……とだけ述べるにとどめておきましょうか。
「へー情報系かな?」
「確かそうだったと思う。そう言えば昔コピー機の会社に勤めているって言っていたような……」
会社名まで覚えていなかった。一度くらい耳にしたのかもしれないけど……うーん、私って記憶力ないな。それとも忘れたかったのかな……アハハ。
「もしかして久しぶり?」
「うん、二年ちょっと……顔合わせてない」
「ふーん。ちょっとカッコ良くない?」
「そうだねぇ」
「どしたの?微妙な顔して。もしかして……『元カレ』とか?」
思わず吹きそうになった。す……鋭い!つーか惜しい!
「違うよ!」
「え、でもその反応……もしかして好きだったとか……」
「ないないない!『友達』!ただの友達だから」
「……ふーん……」
そう言って吉竹さんは目を細める。これ、疑われている感じ?違うのに~~。でも半分はある意味当たってる。だけど私が一方的に勘違いしていたって言うだけなんだよなー。で、結局事実としては私が言った通りそのままなんだよね。
その後暫くして、メンテナンスが終了した。
確認して書類に認め印を押す。水野君が色々な機材を鞄にしまっている間、私は簡単に課を回って「メンテナンス終わりましたー」と周知して回る。戻って来ると吉竹さんが水野君と話していた。最後に挨拶しようと近付くと吉竹さんがクルリと振り向きニンマリと笑って言った。
「大谷さん今日の夕方、空いてるって言ってたよね?」
「あ、うん」
吉竹さんから「お茶して行こう、空いてる?」って聞かれて頷いていた。
「ここで会ったのも何かの縁!同窓会しよっ」
こうして何故か三人でその日、飲みに行く事になってしまったのだった。
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※2017.3.30誤字修正(利夢様に感謝)
なになに?『センターに連絡してください』?コピーも印刷もできる複合機の上面に連絡先が書いてある。ここに電話すれば良いのかな。
吉竹さんに確認すると「うん、電話して~」とのこと。電話をするとコールセンターなのか事務所なのか女性が出て「直ぐに伺います」と返事をしてくれた。念のためコピー機に『エラー中使用禁止。センターに連絡済み。しばらくお待ちください』とサインペンで書いてセロテープで貼り付ける。それから課をぐるりと回って「壁側のコピー機故障中です」と周知してセンターから担当者が来るまで、PC仕事に取り掛かった。
程なくして受付の所に少し大きめの鞄を携えたスーツ姿の若い男性が現れた。
あ、あの人かな?私は席を立ってその男性に近付いた。
「レコーさんですか?」
声を掛けると男性が振り向く。
「はい、レコーの水野と申しま……」
「……水野くん?」
「大谷さん……」
お互い突っ立ったまま押し黙ってしまう。
何と目の前にいるのは―――大学の同期の水野君だった。
同期と言うか……つい数ヵ月前までは『元カレ』って心の中で勝手に呼んでいた実際は単なる『男友達』だ。
戸惑ったような表情、きっと私もそう言う顔をしているのだろう。仲違いした訳じゃない、彼が誘ってくれて何度か遊びに行って、それを私が勝手に勘違いしていたってだけの関係。それで本命が他にいるって分かって自分の勘違いが恥ずかしくなってこちらから距離を取った。暫く避け続けていたらあちらから来ていた連絡も途切れて―――顔を合わせるのはそれ以来だった。二年ちょっとですかね、連絡が途切れてから。以前スーツ姿を見た時はまだ着られているって感じだったような気がする。それが今ではシックリ似合っている。改めて目にするとモテそうだな~……髪も短めながらもふわっと散らして柔和で優し気な容姿は以前のままだ。
なんて冷静に彼を観察できるようになった自分を意外に思う。結構引き摺っていたもんな、男性との一対一のお付き合い(恋人じゃなくても!)の経験って去年まではそれぐらいしか無かったからなぁ。
そこまで考えてハッと我に返る。時間にしてはたった数秒かもしれない、だけど今はそれどころじゃなかったんだ。
「あの、エラーが出ちゃって……お願いします」
「あっはい」
お互い夢から醒めたような感じで、瞬きを交わした。それから壁際の機種まで案内する。
「じゃ、失礼します」
鞄を置いて水野君は早速複合機に取り掛かった。私は後ろに立ってモニターを操作する彼の手元も見ている。どれくらい掛かるんだろう……時間が掛かるなら席でPC作業させて貰って良いのかな?
「……久しぶりだね」
作業をしながら、こちらを見ずに水野君が呟くように言った。
「あ、うん。えーと……元気だった?」
「……うん、まあ」
うーん、これ以上何を話せば。
「あの、直りそう?時間掛かるかな?」
「そうだね、十分くらい。終わったら声を掛けるから、仕事してて良いよ」
振り向いてニコリと笑う。少し垂れ目がちな優しい笑顔に既視感を覚える。
「あ、うん。有難う」
あの頃もこんな風に自然に気を使ってくれたな。それを私は自分に特別に優しいのだと勘違いしてしまった。実際冷静になってみると分かる。彼はいつもこうなんだ。誰にでも気安くて、いつでも優しい。そう言う人だったんだ。
席に戻ると吉竹さんが声を掛けて来た。
「どうしたの?もしかして知合いだった?」
どうやら初めての作業を任せた私を気にしてくれていたようだ。私は素直に頷いた。
「うん、大学の同期。吃驚した」
「え?同じ学部?」
「ううん、えっと……理工学部だったと思う」
ちなみにウチの大学の偏差値は吉竹さんの外国語学部と法学部が一番高く、水野君の理工学部は真ん中くらいだった。私の学部は……うん、特に話しても面白くないからここでは述べません。私の学部だけ極端に門戸が広い……とだけ述べるにとどめておきましょうか。
「へー情報系かな?」
「確かそうだったと思う。そう言えば昔コピー機の会社に勤めているって言っていたような……」
会社名まで覚えていなかった。一度くらい耳にしたのかもしれないけど……うーん、私って記憶力ないな。それとも忘れたかったのかな……アハハ。
「もしかして久しぶり?」
「うん、二年ちょっと……顔合わせてない」
「ふーん。ちょっとカッコ良くない?」
「そうだねぇ」
「どしたの?微妙な顔して。もしかして……『元カレ』とか?」
思わず吹きそうになった。す……鋭い!つーか惜しい!
「違うよ!」
「え、でもその反応……もしかして好きだったとか……」
「ないないない!『友達』!ただの友達だから」
「……ふーん……」
そう言って吉竹さんは目を細める。これ、疑われている感じ?違うのに~~。でも半分はある意味当たってる。だけど私が一方的に勘違いしていたって言うだけなんだよなー。で、結局事実としては私が言った通りそのままなんだよね。
その後暫くして、メンテナンスが終了した。
確認して書類に認め印を押す。水野君が色々な機材を鞄にしまっている間、私は簡単に課を回って「メンテナンス終わりましたー」と周知して回る。戻って来ると吉竹さんが水野君と話していた。最後に挨拶しようと近付くと吉竹さんがクルリと振り向きニンマリと笑って言った。
「大谷さん今日の夕方、空いてるって言ってたよね?」
「あ、うん」
吉竹さんから「お茶して行こう、空いてる?」って聞かれて頷いていた。
「ここで会ったのも何かの縁!同窓会しよっ」
こうして何故か三人でその日、飲みに行く事になってしまったのだった。
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※2017.3.30誤字修正(利夢様に感謝)
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