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捕まった後のお話
39.更に、気になります。 <亀田>
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不備があったら、すいません(>_<)
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大谷と親し気に話しているのは見慣れない男だった。
柔らかそうな少し茶色い頭髪をお洒落に散らした、今時のシュッとした若者。スーツ姿もスッキリしていて少々茶髪寄りとは言え清潔感がある。つまり―――格好良い若い男性。そう、大谷のような年頃の女性と寄り添っても違和感の無い男だ。横顔だけしか判別できないが柔和な甘い顔立ちは俺と正反対で、相手の警戒心を緩ませるような印象を受ける。篠岡じゃないから断言はできないが、見覚えが無いと言う事はおそらく本社の社員じゃない。取引のある会社か支店の人間か……。
何というか……これは副作用みたいなものなのだろうか。大谷を信用していない訳では無い。結局自分に自信が無い故の嫉妬心だと言う事も十分理解しているのに、過敏な俺のアンテナは脊髄反射のように警戒信号を発してしまうらしい。自分がこんなに独占欲が強い人間だなんて、四十間近になって初めて知ってしまった。
俺は諦めて本能に従う事に決めた。辻の時も大谷に直接事情を聞いた後、気持ちを落ち着ける事が出来た。つまり気になる事があるなら放って置かずに尋ねれば良いのだ。疑問が氷解すればすぐに平静に戻る事が出来るだろう。
……と、思いメールで連絡を取ったのだが……
返事が来ない。
ジリジリと待つこと三時間強。十時手前になってやっとスマホが震えた。
『スイマセン!!知合いと飲んでいて着信に気付きませんでした……!<(_ _)>帰宅途中なので家に着いたら連絡します』
『知合いと飲んで』……?脳裏にスーツ姿の柔和な男が浮かんだ。まさか二人で?
そう言えば、と思い出す。三好と目黒が揉めた時、阿部が『契約社員の女性と二人でランチに行った事を彼女に責められたから』と言って三好に事情を聞くのを断った事があったな。あの時は彼女がいるのに他の女とランチに行くなんて、若い奴の感覚は分からんと思ったものだが……まあ、仕事絡みや単なる友人とならあり得るか。我が身を振り返るとそう言うシチュエーションも無いとは言えない。うーん、十年一昔と言うし……大谷の世代の感覚がイマイチ想像できないから、どう受け取って良いのか分からないな。
勿論面白くはない。面白くはないが……ただでさえ大谷に執着している自分を鬱陶しいと自覚しているのに、二ヵ月かそこらの付き合いで独占欲全開で持論を振りかざすのは如何なものか。
などとグダグダと逡巡している内にスマホが着信を告げた。今度は電話だ。どうやら家に着いたらしい。
『丈さん、ごめんなさい!』
「ああ、こっちこそ焦らせて悪かったな。うータンは大丈夫か?」
大谷が相当恐縮している事が声の調子で分かる。それだけ俺を優先してくれているのだと感じられて、八割がた安堵してしまい俺の気持ちは落ち着いた。
『あ、はい。チャチャっとお世話は済ませました!』
「そうか……結構飲んだのか?」
と言っても気になるものは気になる。当初の目的は果たさねばなるまい。すると大谷は少し照れくさそうに返事をした。
『えーと、はい。ちょっと暫く会って無かった友達と偶然再会してついつい盛り上がっちゃいました』
「……そうか」
盛り上ったのか……そうか。うん、旧友に会ったら普通そうだろうな。
地味に胸がざわつくが、俺は平常心を心掛けて自分にそう言い聞かせる。
『コピー機のメンテに来たのが同期の子で、吉竹さんの発案で急遽プチ同窓会になって……企画課の中務さんって知ってます?その人も同じ大学出身だったんです』
「……」
『あ、知らないですよね。他の課の社員の名前まで……』
恐縮したような声音にハッと意識が覚醒する。
「いや、体格の良い奴だろう?確かラグビー部だったって聞いた事がある」
『わっスゴイ。流石詳しいですね!』
「全員知っている訳じゃない、中務は目立つからな。体格もそうだが、仕事が出来る奴だと一目置かれているらしい」
本人と話した事があるが、礼儀正しくて感じの良い奴だった。良い意味で研究職っぽくないと言うか。仕事が出来ると言う評判は勿論、自称『情報通』の篠岡からの情報だ。
『あ~……そんな感じしました!その中務さんがですね~なんと!吉竹さんの!彼氏だったんですよ!もー吃驚です。それがまた仲良くてですねぇ、ラブラブって感じじゃないんですけれど気の置けない関係って感じで見ていて楽しいって言うか。吉竹さんって一見大人っぽい出来る女性なんですれけれど、意外とミーハーな所があってやり過ぎちゃう所があるんですよね、ソコがまたツボなんですけれども……そんな吉竹さんを中務さんがこう……大きな視点で見守っているって言うか……何かその関係を見ているだけで微笑ましくなっちゃって……』
大谷は上機嫌でベラベラと話し出した。
そう言えばあまり酒は強くないと言っていたな……と言う事はかなり酔っぱらっているのだろうか。大谷の話を聞きながら、俺の心には安堵が広がっていた。そうか『同窓会』ね、四人か……良かった良かった。俺の知らない男と二人切りで飲みにいったワケじゃなかったんだな、そうだよな、うん。大谷も楽しそうだし、良かった良かった。
『あっスイマセン!私しゃべり過ぎですよね……!もうこんな時間!』
「いや、いいんだ。楽しそうで良かった」
『丈さん、優しい……!キラキラ女子達なんかきっとこんなに丈さんが優しいなんて想像していないだろうなぁ……あー自慢したいっ!でもあの人達に丈さんの良いトコ知られたら、取られそうで嫌だなぁ~……』
おい、大谷……かなりと言うか、えらく酔っているな。明け透けな惚気と言うか褒め言葉に思わず頬が熱くなってしまう。浮かれた様子の大谷がポロリと口にした細やかな嫉妬が、かなり可愛らし過ぎて困る。電話越しの距離がもどかしいと感じるくらいに。
『あれ?また語っちゃった!ごめんなさい、もうキリがないから終わりますね!!じゃあ、おやすみなさ~い!』
「おやすみ。寝る前に水、飲んどけよ」
『は~~い!』
クスクス笑いながら返事をする大谷が……また可愛い過ぎる。
俺は温かい気持ちでスマホを置いた。
ああ、良かった、やはり杞憂だった。男と二人切りじゃ無かったと言うし、大谷も楽しそうだし……良かった、良かった……ん?
何か大事な事を忘れているような……
……あっ!肝心の同期の男―――アイツと大谷がどういう関係だったのか突っ込んで聞くのを忘れた!
しかしまぁ……単なる『知合い』いや、『友達』?『同期の子』って言っていたな。暫く会っていなかったと言うし……うん、それほど気にする必要無かったな。発案も総務課の吉竹らしいし。うん。追及する必要……無いよな、それほど頻繁に飲みに行く訳じゃないし。コピー機のメンテに来たと言う事は、何も無ければトナー交換くらいしか会う機会はないだろうし。まあ、いいか……。
そうして俺はその大谷の同期の友達、茶髪寄りの柔和な若い男の事は取りあえず心の隅に追いやる事にしたのだった。
不備があったら、すいません(>_<)
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大谷と親し気に話しているのは見慣れない男だった。
柔らかそうな少し茶色い頭髪をお洒落に散らした、今時のシュッとした若者。スーツ姿もスッキリしていて少々茶髪寄りとは言え清潔感がある。つまり―――格好良い若い男性。そう、大谷のような年頃の女性と寄り添っても違和感の無い男だ。横顔だけしか判別できないが柔和な甘い顔立ちは俺と正反対で、相手の警戒心を緩ませるような印象を受ける。篠岡じゃないから断言はできないが、見覚えが無いと言う事はおそらく本社の社員じゃない。取引のある会社か支店の人間か……。
何というか……これは副作用みたいなものなのだろうか。大谷を信用していない訳では無い。結局自分に自信が無い故の嫉妬心だと言う事も十分理解しているのに、過敏な俺のアンテナは脊髄反射のように警戒信号を発してしまうらしい。自分がこんなに独占欲が強い人間だなんて、四十間近になって初めて知ってしまった。
俺は諦めて本能に従う事に決めた。辻の時も大谷に直接事情を聞いた後、気持ちを落ち着ける事が出来た。つまり気になる事があるなら放って置かずに尋ねれば良いのだ。疑問が氷解すればすぐに平静に戻る事が出来るだろう。
……と、思いメールで連絡を取ったのだが……
返事が来ない。
ジリジリと待つこと三時間強。十時手前になってやっとスマホが震えた。
『スイマセン!!知合いと飲んでいて着信に気付きませんでした……!<(_ _)>帰宅途中なので家に着いたら連絡します』
『知合いと飲んで』……?脳裏にスーツ姿の柔和な男が浮かんだ。まさか二人で?
そう言えば、と思い出す。三好と目黒が揉めた時、阿部が『契約社員の女性と二人でランチに行った事を彼女に責められたから』と言って三好に事情を聞くのを断った事があったな。あの時は彼女がいるのに他の女とランチに行くなんて、若い奴の感覚は分からんと思ったものだが……まあ、仕事絡みや単なる友人とならあり得るか。我が身を振り返るとそう言うシチュエーションも無いとは言えない。うーん、十年一昔と言うし……大谷の世代の感覚がイマイチ想像できないから、どう受け取って良いのか分からないな。
勿論面白くはない。面白くはないが……ただでさえ大谷に執着している自分を鬱陶しいと自覚しているのに、二ヵ月かそこらの付き合いで独占欲全開で持論を振りかざすのは如何なものか。
などとグダグダと逡巡している内にスマホが着信を告げた。今度は電話だ。どうやら家に着いたらしい。
『丈さん、ごめんなさい!』
「ああ、こっちこそ焦らせて悪かったな。うータンは大丈夫か?」
大谷が相当恐縮している事が声の調子で分かる。それだけ俺を優先してくれているのだと感じられて、八割がた安堵してしまい俺の気持ちは落ち着いた。
『あ、はい。チャチャっとお世話は済ませました!』
「そうか……結構飲んだのか?」
と言っても気になるものは気になる。当初の目的は果たさねばなるまい。すると大谷は少し照れくさそうに返事をした。
『えーと、はい。ちょっと暫く会って無かった友達と偶然再会してついつい盛り上がっちゃいました』
「……そうか」
盛り上ったのか……そうか。うん、旧友に会ったら普通そうだろうな。
地味に胸がざわつくが、俺は平常心を心掛けて自分にそう言い聞かせる。
『コピー機のメンテに来たのが同期の子で、吉竹さんの発案で急遽プチ同窓会になって……企画課の中務さんって知ってます?その人も同じ大学出身だったんです』
「……」
『あ、知らないですよね。他の課の社員の名前まで……』
恐縮したような声音にハッと意識が覚醒する。
「いや、体格の良い奴だろう?確かラグビー部だったって聞いた事がある」
『わっスゴイ。流石詳しいですね!』
「全員知っている訳じゃない、中務は目立つからな。体格もそうだが、仕事が出来る奴だと一目置かれているらしい」
本人と話した事があるが、礼儀正しくて感じの良い奴だった。良い意味で研究職っぽくないと言うか。仕事が出来ると言う評判は勿論、自称『情報通』の篠岡からの情報だ。
『あ~……そんな感じしました!その中務さんがですね~なんと!吉竹さんの!彼氏だったんですよ!もー吃驚です。それがまた仲良くてですねぇ、ラブラブって感じじゃないんですけれど気の置けない関係って感じで見ていて楽しいって言うか。吉竹さんって一見大人っぽい出来る女性なんですれけれど、意外とミーハーな所があってやり過ぎちゃう所があるんですよね、ソコがまたツボなんですけれども……そんな吉竹さんを中務さんがこう……大きな視点で見守っているって言うか……何かその関係を見ているだけで微笑ましくなっちゃって……』
大谷は上機嫌でベラベラと話し出した。
そう言えばあまり酒は強くないと言っていたな……と言う事はかなり酔っぱらっているのだろうか。大谷の話を聞きながら、俺の心には安堵が広がっていた。そうか『同窓会』ね、四人か……良かった良かった。俺の知らない男と二人切りで飲みにいったワケじゃなかったんだな、そうだよな、うん。大谷も楽しそうだし、良かった良かった。
『あっスイマセン!私しゃべり過ぎですよね……!もうこんな時間!』
「いや、いいんだ。楽しそうで良かった」
『丈さん、優しい……!キラキラ女子達なんかきっとこんなに丈さんが優しいなんて想像していないだろうなぁ……あー自慢したいっ!でもあの人達に丈さんの良いトコ知られたら、取られそうで嫌だなぁ~……』
おい、大谷……かなりと言うか、えらく酔っているな。明け透けな惚気と言うか褒め言葉に思わず頬が熱くなってしまう。浮かれた様子の大谷がポロリと口にした細やかな嫉妬が、かなり可愛らし過ぎて困る。電話越しの距離がもどかしいと感じるくらいに。
『あれ?また語っちゃった!ごめんなさい、もうキリがないから終わりますね!!じゃあ、おやすみなさ~い!』
「おやすみ。寝る前に水、飲んどけよ」
『は~~い!』
クスクス笑いながら返事をする大谷が……また可愛い過ぎる。
俺は温かい気持ちでスマホを置いた。
ああ、良かった、やはり杞憂だった。男と二人切りじゃ無かったと言うし、大谷も楽しそうだし……良かった、良かった……ん?
何か大事な事を忘れているような……
……あっ!肝心の同期の男―――アイツと大谷がどういう関係だったのか突っ込んで聞くのを忘れた!
しかしまぁ……単なる『知合い』いや、『友達』?『同期の子』って言っていたな。暫く会っていなかったと言うし……うん、それほど気にする必要無かったな。発案も総務課の吉竹らしいし。うん。追及する必要……無いよな、それほど頻繁に飲みに行く訳じゃないし。コピー機のメンテに来たと言う事は、何も無ければトナー交換くらいしか会う機会はないだろうし。まあ、いいか……。
そうして俺はその大谷の同期の友達、茶髪寄りの柔和な若い男の事は取りあえず心の隅に追いやる事にしたのだった。
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