捕獲されました。

ねがえり太郎

文字の大きさ
139 / 375
うさぎ小話

うさぎの性(さが)

しおりを挟む

GWお疲れさまでした。日常生活、頑張りましょう~!(←カラ元気です)

箸休め的なうさぎ小話です。近頃うさぎ成分が薄めだったので投入。
三人称・うータン視点でお届けします。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ケージの出入口が世話係の手により解放されたので、うータンはヒクヒクと鼻を利かせ気配を窺ってからゆっくりと前足を外へと降ろした。

トテットテッ……と部屋の中を跳ねつつ、良い位置を吟味する。

うータンが最近気に入っているのは、壁際のフカフカしたラグの上ーーーそこは日中の間陽当たりが良く、コンパクトに丸まっていると思わずウトウトしてしまう、昼寝には打ってつけのベストスポットだ。そこまで跳ねて辿り着き、フンフン辺りを検証してみる。しかし夕方の西日からは外れており、イマイチ座り込む気になれない。



―――他にもっと良い場所はないか?―――



後足で立ち上がりフンフンと鼻を利かせ、耳をピン!と立てて音を拾う。

すると大きな壁のような生き物が座っているのを発見した。台所で作業をしている世話係と何やら楽し気に話をしながら、卓袱台の前に座って飲み物を飲んでいる。

嗅ぎ覚えのある匂い、聞き覚えのある鳴き声のこの大きな生き物は―――そう、暫く前から現れるようになった、うータンの『世話係その2』だ。

うータンはジッと世話係その2を検分した。
そしてある一点に惹き付けられる。―――その魅惑的な穴倉……うさぎであれば誰もがそのフィット感を確かめずにはいられない、そのちょうど良い大きさの窪みへと。
抗えない吸引力に引き寄せられるようにうータンはそこへ近づき……勢いよくズボッと頭を突っ込んだ。

「わっ……うータン!」

何処か弾んだ低い声が、上から響いて来る。

こうするといつも、世話係達は何故か嬉しそうな声を上げるのだ。うータンにとってはどうでも良い事だ。うさぎは自分のしたい事が一番。周りの生き物がどう思うか何を考えてるのかなんて―――彼女、うータンにとっては些末な事に他ならない。



―――ああ……この、えも言われぬ満足感。―――



頭蓋にぴったりと嵌るサイズの世話係の手も気持ちが良い。しかしこの、大きな体躯の世話係その2の、うータンの肩甲骨辺りまで覆う大きさの掌も―――近頃彼女はかなり気に入っている。それに鼻づらを撫でるマッサージの技量も、なかなかツボを突いたもので宜しい。的確にうータンの気持ちの良い所を撫で擦ってくれる所はまずまず評価している。



―――うん、悪くない。世話係その2、苦しゅうない、そのまま続けるが良いぞ―――



うータンは、うっとりと目を閉じた。



「出来ましたよー……っと、あ、うータン嵌ってますね!」
「ああ、アッチに居たかと思っていたのに―――いきなり掌に突っ込んでくるから少し驚いた」
「とか言って嬉しそうですよね~、たけしさん、声が弾んでますよ!」
「まあな……気ままな癖に懐っこいのが、またイイんだよなぁ」



グイグイっ!



世話係その2は世話係との話に夢中になって、鼻づらを撫でるのを怠ってしまっていた。
うータンは要求する。



―――止まってるぞ!私はまだ満足していない、弛まず励め……!―――



「あっスマン、うータン!」

慌てて鼻づらを撫でる作業を再開する世話係その2。すると世話係がクスリと笑って揶揄った。

「フフッ……泣く子も黙る営業課の『コワモテ冷徹銀縁眼鏡』も、うータンには形無しですねぇ」
「……何とでも言え……」
「可愛いです」
卯月うづきお前……後で覚えてろよ」
「え?何ですか?」
「……何でもない」

会話に不穏な空気を感じないでも無かったが……うータンにとってはこれも些末な事だった。鼻づらを撫でる世話係その2の指をうっとりと堪能し、うータンは心行くまでその日、それを楽しんだのだった。



揶揄った借りを存分に返され、世話係その2に可愛がられた世話係のお話は……また今度!






【続く?】

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



とか言って『また今度』のお話は特に予定しておりません。面目ない……!
また何か浮かんだら追加したいです。が、まだ何も浮かんでいないので番外編の後になるかもしれません。

お読みいただき、誠にありがとうございました!
しおりを挟む
感想 92

あなたにおすすめの小説

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

先輩に退部を命じられた僕を励ましてくれたアイドル級美少女の後輩マネージャーを成り行きで家に上げたら、なぜかその後も入り浸るようになった件

桜 偉村
恋愛
 みんなと同じようにプレーできなくてもいいんじゃないですか? 先輩には、先輩だけの武器があるんですから——。  後輩マネージャーのその言葉が、彼の人生を変えた。  全国常連の高校サッカー部の三軍に所属していた如月 巧(きさらぎ たくみ)は、自分の能力に限界を感じていた。  練習試合でも敗因となってしまった巧は、三軍キャプテンの武岡(たけおか)に退部を命じられて絶望する。  武岡にとって、巧はチームのお荷物であると同時に、アイドル級美少女マネージャーの白雪 香奈(しらゆき かな)と親しくしている目障りな存在だった。  そのため、自信をなくしている巧を追い込んで退部させ、香奈と距離を置かせようとしたのだ。  そうすれば、香奈は自分のモノになると錯覚していたから。  武岡の思惑通り、巧はサッカー部を辞めようとしていた。そこに現れたのが、香奈だった。  香奈に励まされてサッカーを続ける決意をした巧は、彼女のアドバイスのおかげもあり、だんだんとその才能を開花させていく。  一方、巧が成り行きで香奈を家に招いたのをきっかけに、二人の距離も縮み始める。  しかし、退部するどころか活躍し出した巧にフラストレーションを溜めていた武岡が、それを静観するはずもなく——。 「これは警告だよ」 「勘違いしないんでしょ?」 「僕がサッカーを続けられたのは、君のおかげだから」 「仲が良いだけの先輩に、あんなことまですると思ってたんですか?」  先輩×後輩のじれったくも甘い関係が好きな方、スカッとする展開が好きな方は、ぜひこの物語をお楽しみください! ※基本は一途ですが、メインヒロイン以外との絡みも多少あります。 ※本作品は小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

王弟が愛した娘 —音に響く運命—

Aster22
恋愛
弟を探す旅の途中、身分を隠して村で薬師として生きていたセラは、 ハープの音に宿る才を、名も知らぬ貴族の青年――王弟レオに見初められる。 互いの立場を知らぬまま距離を縮めていく二人。 だが、ある事件をきっかけに、セラは彼の屋敷で侍女として働くことになり、 知らず知らずのうちに国を巻き込む陰謀へと引き寄せられていく。 人の生まれは変えられない。 それでも、何を望み、何を選ぶのかは、自分で決められる。 セラが守ろうとするものは、弟か、才か、それとも―― キャラ設定・世界観などはこちら       ↓ https://kakuyomu.jp/my/news/822139840619212578

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

処理中です...