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プロポーズの後のお話 <大谷視点>
23.受け答えします。
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阿部さんに手招きされて座らされたのは、丈さんと鞍馬課長の間の席。鞍馬課長がしつこく無い程度に私達の今後の事とか馴れ初めとかを尋ねてくれて―――ポツリポツリと応えていたら、いつの間にか私の向かいに陣取っていた吉竹さんが合の手のように突っ込んだ質問を重ね始めた。暫くするとかなり答えるのが恥ずかしいような質問を口にし始めたので、私は逆質問でしのぐことを思いついた。
「吉竹さんこそどうなの?なかつか―――」
「あ~っと、ゴメン!ちょっと連絡しなきゃならないのを忘れてたわ~……」
すると吉竹さんはワザとらしく目線を逸らして逃げてしまった。ズルい!
私達の気の置けない遣り取りを見守っていた丈さんと鞍馬課長がクスクス笑って。それから吉竹さんが抜けて空いたその席に阿部さんが座って。グラスを持った樋口さん(上のお子さんが中学生になってちょっと飲み会に参加できる余裕が出来たらしい)もやって来た。
「そう言えば休日に二人で一緒にいる所を見掛けた事があるよ」
って淡々と打ち明けてくれたので、丈さん共々驚いた。なんとお子さんと八王子に出掛けた時に遭遇していたらしいのだけど「ああ、付き合っているんだな」って了解しただけで、声も掛けずにスルーしてくれたらしい。丈さんは樋口さんには特に私達の付き合いを伝えていなかったそうなんだけど、大人な樋口さんは他人のプライベートとして放って置いてくれたようだ。厳密に言うとあの時は付き合ってはいなかったんだけどね……。
それから目黒さんが席の後ろを通る時に「おめでとー」と声を掛けてくれて、通り過ぎた。そのまま歩いて行って三好さんの隣の、私が抜けた穴に腰を下ろして彼女の肩を叩く。
目黒さんが通り過ぎた後、人影からすっと現れた辻さんがひっそり背後から近づいて来て「おめでとう……ございます……」と小さな声で言ってくれた。湯川さんも「へー知らなかったなぁ、ふーんいいねえ~」なんて呟きながら周りをウロウロして、暫く所在無げにした後何処かへ行ってしまった。
かつての派遣仲間(?)、キラキラ女子達から「何で黙ってたのぉ~!」「知らなかったぁ」なんて親し気に肩を叩かれて「ハハハ……」と笑って誤魔化したり。
最近やっと普通に口をきけるくらい馴染み始めた総務課の人達も声を掛けてくれた。―――ただ、川北さんはムッと押し黙ったままこちらに近付いて来ようとはしなかった。偶にチラチラとこちらを窺っている気配はしたけれど。
そんな風に怒涛のように声を掛けられる波が一通り引いて―――空白が訪れた時、隣に寄り添っていた丈さんがポツリと呟いた。
「悪かった」
彼が謝ったポイントが思い当たらない私は、キョトンと首を傾げた。
「卯月は内緒にしていたのに、総務課の連中にこんな風にバラす事になってしまって」
「ああ……いいえ」
やっと了解した。そう、以前私は『もう少し総務課ではこの関係を内緒にしていたい』と言う趣旨の発言を自分の居心地を確保するために丈さんに伝えていたのだ。バツが悪いのか眉根を顰めてやや凶悪な表情を晒している彼を見上げ、私はしっかりと首を振った。
「私も川北さんに交際宣言をしようとしていた所だったので―――ちょうど良かったです」
ニッコリ微笑むと、ホッと安堵したように詰めていた息を吐いた丈さんの眉間が少し緩んだ。
「返って気が楽になりました。もっと早く言っていれば良かったなって、今は思います」
「この間絡んで来たって言うヤツだろ?大丈夫なのか」
「はい、えっと……多分。それにせっかく父が許してくれてこれから結婚なんですから、黙って逃げてばかりもいられませんしね!それに総務課には吉竹さんもいるから大丈夫ですよ!」
ムンと拳を握って胸の前で小さくガッツポーズを作ってみせる。
ちょっとは頼もしく思ってくれるかな?美しさや色気じゃ、川北さんや三好さんに遙かに先を行かれているけれど―――せめて強くありたい。堂々と胸を張って丈さんと一緒にいられるように。
すると私の気合に丈さんは軽く目を瞠って―――それからプッと噴き出した。
「吉竹がいるのが良いのかどうか、分からんがな」
「え?」
「さっきの質問攻めも……まるで身ぐるみ剥がれているような気分になった」
「―――確かに!せめて皆の前で聞かないで欲しいですよね」
「いや、そもそも面白がっているアイツに聞かれたくない」
「……」
「卯月」
「はい?」
「……何処まで話した?」
耳を擽る―――私好みの低音。
ゾクゾクと背筋が何かを伝ったが、何となく正直に答えるのはマズい気がして口籠った。
「ええと……ちょっとだけ?」
「―――ふーん……」
ギクリ。微妙に不穏な空気を感じて身を縮めた。丈さんは私の耳に口を寄せ―――こう呟いた。
「今はいい。後でじっくり確認させて貰うな……?」
「―――っ!」
そう言ってスッと身を引いて、色々回って席に戻って来た阿部さんに声を掛けられた丈さんはそちらに注意を向けて、話し出した。テーブルの下で手を握られて思わず沸騰した。最後の台詞―――色気がダダ漏れで……耐えられない……!!
思わず下を向いて恥ずかしさに身悶えた。
わーん!不意打ちはヒドイ……!
きっと私は全身まっかっかになってしまっているだろう。皆がいる前でこんな風に丈さんが振る舞うなんて思っていなかったから―――尚更。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次話、最終話となります。
「吉竹さんこそどうなの?なかつか―――」
「あ~っと、ゴメン!ちょっと連絡しなきゃならないのを忘れてたわ~……」
すると吉竹さんはワザとらしく目線を逸らして逃げてしまった。ズルい!
私達の気の置けない遣り取りを見守っていた丈さんと鞍馬課長がクスクス笑って。それから吉竹さんが抜けて空いたその席に阿部さんが座って。グラスを持った樋口さん(上のお子さんが中学生になってちょっと飲み会に参加できる余裕が出来たらしい)もやって来た。
「そう言えば休日に二人で一緒にいる所を見掛けた事があるよ」
って淡々と打ち明けてくれたので、丈さん共々驚いた。なんとお子さんと八王子に出掛けた時に遭遇していたらしいのだけど「ああ、付き合っているんだな」って了解しただけで、声も掛けずにスルーしてくれたらしい。丈さんは樋口さんには特に私達の付き合いを伝えていなかったそうなんだけど、大人な樋口さんは他人のプライベートとして放って置いてくれたようだ。厳密に言うとあの時は付き合ってはいなかったんだけどね……。
それから目黒さんが席の後ろを通る時に「おめでとー」と声を掛けてくれて、通り過ぎた。そのまま歩いて行って三好さんの隣の、私が抜けた穴に腰を下ろして彼女の肩を叩く。
目黒さんが通り過ぎた後、人影からすっと現れた辻さんがひっそり背後から近づいて来て「おめでとう……ございます……」と小さな声で言ってくれた。湯川さんも「へー知らなかったなぁ、ふーんいいねえ~」なんて呟きながら周りをウロウロして、暫く所在無げにした後何処かへ行ってしまった。
かつての派遣仲間(?)、キラキラ女子達から「何で黙ってたのぉ~!」「知らなかったぁ」なんて親し気に肩を叩かれて「ハハハ……」と笑って誤魔化したり。
最近やっと普通に口をきけるくらい馴染み始めた総務課の人達も声を掛けてくれた。―――ただ、川北さんはムッと押し黙ったままこちらに近付いて来ようとはしなかった。偶にチラチラとこちらを窺っている気配はしたけれど。
そんな風に怒涛のように声を掛けられる波が一通り引いて―――空白が訪れた時、隣に寄り添っていた丈さんがポツリと呟いた。
「悪かった」
彼が謝ったポイントが思い当たらない私は、キョトンと首を傾げた。
「卯月は内緒にしていたのに、総務課の連中にこんな風にバラす事になってしまって」
「ああ……いいえ」
やっと了解した。そう、以前私は『もう少し総務課ではこの関係を内緒にしていたい』と言う趣旨の発言を自分の居心地を確保するために丈さんに伝えていたのだ。バツが悪いのか眉根を顰めてやや凶悪な表情を晒している彼を見上げ、私はしっかりと首を振った。
「私も川北さんに交際宣言をしようとしていた所だったので―――ちょうど良かったです」
ニッコリ微笑むと、ホッと安堵したように詰めていた息を吐いた丈さんの眉間が少し緩んだ。
「返って気が楽になりました。もっと早く言っていれば良かったなって、今は思います」
「この間絡んで来たって言うヤツだろ?大丈夫なのか」
「はい、えっと……多分。それにせっかく父が許してくれてこれから結婚なんですから、黙って逃げてばかりもいられませんしね!それに総務課には吉竹さんもいるから大丈夫ですよ!」
ムンと拳を握って胸の前で小さくガッツポーズを作ってみせる。
ちょっとは頼もしく思ってくれるかな?美しさや色気じゃ、川北さんや三好さんに遙かに先を行かれているけれど―――せめて強くありたい。堂々と胸を張って丈さんと一緒にいられるように。
すると私の気合に丈さんは軽く目を瞠って―――それからプッと噴き出した。
「吉竹がいるのが良いのかどうか、分からんがな」
「え?」
「さっきの質問攻めも……まるで身ぐるみ剥がれているような気分になった」
「―――確かに!せめて皆の前で聞かないで欲しいですよね」
「いや、そもそも面白がっているアイツに聞かれたくない」
「……」
「卯月」
「はい?」
「……何処まで話した?」
耳を擽る―――私好みの低音。
ゾクゾクと背筋が何かを伝ったが、何となく正直に答えるのはマズい気がして口籠った。
「ええと……ちょっとだけ?」
「―――ふーん……」
ギクリ。微妙に不穏な空気を感じて身を縮めた。丈さんは私の耳に口を寄せ―――こう呟いた。
「今はいい。後でじっくり確認させて貰うな……?」
「―――っ!」
そう言ってスッと身を引いて、色々回って席に戻って来た阿部さんに声を掛けられた丈さんはそちらに注意を向けて、話し出した。テーブルの下で手を握られて思わず沸騰した。最後の台詞―――色気がダダ漏れで……耐えられない……!!
思わず下を向いて恥ずかしさに身悶えた。
わーん!不意打ちはヒドイ……!
きっと私は全身まっかっかになってしまっているだろう。皆がいる前でこんな風に丈さんが振る舞うなんて思っていなかったから―――尚更。
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次話、最終話となります。
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