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プロポーズの後のお話 <大谷視点>
24.『捕獲されました!』 【最終話】
しおりを挟む予告なしで申し訳ありませんが、最終話となります。
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それから―――
丈さんがいつもスーツを購入している百貨店で、あちこち店舗を回って指輪を注文した。今回は婚約指輪を一つ。セットで結婚指輪も販売されているのでそちらは今後のスケジュールが決まってから発注する事に決めて、一応丈さんの指のサイズを測るだけに留めた。
それから皆のスケジュールを調整して八王子に向かった。きちんと挨拶しようとした丈さんを遮ったのはパパで―――なし崩しにその場は宴会になってしまった。お土産に持参したメンチカツ、おじいちゃんお手製の漬物におじいちゃんの釣り仲間のお寿司屋さんから届けられたお寿司。丈さんはパパに絡まれてお酒をドンドン注がれている。私はその様子をハラハラ見守りながら、ママに私達の付き合いの経緯を尋ねられるまま上の空で応えていたら―――何故かお腹を抱えて爆笑された。基本笑い上戸なんだよね、ママって。でもそんなに笑われると繊細な娘は少しだけ傷つきます。
それから丈さんのおじいちゃんとおばあちゃん、お父さんとお母さんの眠っている霊園へ報告を兼ねてお墓参りに向かった。大きな結婚式は特に考えられなくて、私の誕生月の三月に身内だけでお食事会と写真撮影をする事に落ち着いた。パパとママは結婚式さえ上げていないから特に反対は無し。
だけど新婚旅行には拘りがあった。おじいちゃんにうータンを預かって貰って広島県の大久野島へ……!丈さんをうさぎまみれにする計画を進行中―――今から楽しみでしょうがない。
私のうさぎ小屋であるワンルームは三月頃契約更新。なのでそれに合わせて入籍を先に住ませて丈さんのマンションへうータンと一緒に引っ越す事になるだろう。うータンが新しいお城に慣れるように、今から週末には時々、うータンと連れ立って丈さんの部屋に泊まりに行こうと思っている。パパは会社からアクセスの良いマンションを探している所。やっと自由に暮らせるとホッとしつつも……二人と一匹暮らしが長くなるにつれパパの不在が寂しいと言う気持ちも育って来て……少々複雑な気分だ。
川北さんは私に対して暫くツンケンした態度を貫いていたけれど、暫くすると興味が移ったらしく元の素っ気ない態度に戻った。どうやら今度は合コンで出会った社外の人と良い感じになっているらしい。もともと条件で男の人を選ぶ人らしくそれほど丈さんに執着心を持っていないようだったので、こちらとしてもあまり罪悪感を感じなくて済んだ。もちろん私に対して友好的な態度を取って来る事は無いのだけれども―――彼女が切り替え上手で良かった。最近は私自身が彼女に好かれなくても、丈さんに絡もうとしなければ何でも良いやって思えるようになった。もともと仕事もそれほど被らないので、現在会社での居心地は心配していたほど悪くは無い。
営業課と総務課の合同飲み会から三カ月ほど経過したある日のお昼休み。
一緒にランチをしていた吉竹さんの、妙にソワソワとした上機嫌が気になった。もしかして中務さんと結婚の話が進んでいるのかも?なんてワクワクして尋ねたら―――全然違った。
「実はね、以前応募した小説賞に合格したの……!」
ルンルンと擬音が見えそうなくらい、嬉しそうにしている吉竹さん。パチパチと手を叩いて私は惜しみない賞賛を与えた。
「え!すごい、おめでとう……!もしかして、以前お休みとって書き上げた作品?」
確か私と丈さんの付き合いを阿部さんが暴露した飲み会の直前、彼女は休みを取って応募作品を仕上げたと言っていた。あの時の頬をこけさせながらも浮かべていた、満足気な微笑みを思い出す。
「そうよ、これもそれもぜーんぶ、大谷さんのお・か・げ!」
フフフと笑う吉竹さんに私は首を傾げた。
「前も思ったけど―――私何にもしていないよ?そりゃ、ちょっと急ぎの仕事は肩代わりしたけれど。それを言うなら私のお陰と言うより、中務さんのお陰じゃない?」
私がそう言うとニンマリと口元に弧を描いた吉竹さんが、スマホを取り出して画面をパパパっと操作してから差し出した。そこには『WEB投稿小説受賞』と銘打たれた作品が。賞金十万円?ネット小説はあまり手を伸ばしていない私のイメージでは、小説賞ってもう少し賞金額が高いイメージだったから(意外と少額なんだなぁ)なんて失礼な事を考えつつ、勧められるままに吉竹さんの投稿したと言う短編小説を読み始めた。
「……」
「……」
読み終わった。
「……これ……」
顔を上げると吉竹さんの珍しい恥じらい顔が。
「えへへ?」
「カワイ子ぶっても駄目!何よ、これ!」
「小説?あ、恋愛小説だよ―――あくまで虚構ってコトで!」
「フィクションじゃないじゃない!これまんま、私と丈さんの事じゃないの……!!」
「そう、ちょこっとアイデアをいただいて……お陰でこの度、商業作家デビューする事になりましたっ!」
グッと親指を立てて満面の笑みで綺麗なウインクを放つ、吉竹さん。
「賞金入ったら御礼に奢るからねっ!」
ガックリと肩を落とした。
幾ら責めても何にもならない。強靭なメンタルの吉竹さんはニコニコ顔で嬉しそうに頷くだけだ。
私は大きく溜息を吐いてから―――キッと彼女を睨みつけた。
「……焼肉がいい。青山の『4629』で」
「えっ……うーん」
ネットでランキング上位のそのお店は、高級店よりは安いが普通のOLがお金を出すとしたら結構お高い。賞金と天秤にかけて、吉竹さんは言葉を濁した。しかし私は彼女を逃しはしない。プライベートを切り売りしたのだ、しかも恥ずかし過ぎる丈さんとの馴れ初めエピソードを……ネットでもって全国いや日本語が読める人を対象とするならば、世界中に公開されてしまったのだ……!
「あ、ネタ提供と言えば丈さんもだよね?中務さんも差し入れしたんだし、四人で食べに行こう!予約は―――私がしておくよ!」
「えっ……それじゃ、賞金なくなっちゃう……」
「うふふ、楽しみだなぁ!アリガトね!吉竹さん……!」
ぐうっと笑顔を引っ込めて、吉竹さんは眉を八の字にした。
「うう……分かったよ……」
しぶしぶ、と言った態で吉竹さんは頷いた。
その時は少し可哀想かな、と思ったけれども―――
受賞した短編小説『捕獲されました!~コワモテ銀縁眼鏡に捕まったうさぎ好きの派遣OL~』は一冊の本にするにはエピソードが少なすぎたらしい。更に付き合うまでの私と丈さんの紆余曲折とか、付き合ってからのトラブルとかハプニングとか……大幅に加筆修正された成果品の小説を手渡された時、改めて私は決意した。
うん、やっぱりお寿司も奢って貰おう。
勿論回らないヤツね。
予想できただろうに、吉竹さんは私の要求を聞いた時ヒクリと頬を強張らせた。書籍化したからと言って、それほど人気作家では無い彼女の本が売れるとは限らず―――実入りが良いワケでは無いらしい。
言い訳されたけど却下―――!容赦なく私は次の予約の段取りをしたのだった。
【プロポーズの後のお話・完】
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かなり行き当たりばったりの部分がありましたが、何とか完結致しました。今回は終わりの予測が付けられなくて最終話予告が出来ませんでした。唐突に終わった感を抱かれた方、驚かせてしまって申し訳ありません。
今回は親子トラブルメインだったので、恋愛成分とうさぎ成分がやや少なかったように思いますが、これで大方『捕獲しました。』短編の結末に至るエピソードは出し切ったと思います。恋愛成分、うさぎ成分及び亀田視点は閑話として後々補足するかもしれませんが、今のところ時期未定の為、取りあえず完結表示とさせていただきます。
思った以上に大勢の方々にお読みいただきとても嬉しかったです。
完結までお読みいただき、誠にありがとうございました!
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