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続・うさぎ小話
うさぎと侍女
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亀田視点のうさぎ小話です。
幾つかウサギ小話を追加する予定です。
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婚約中の彼女、卯月の家に遊びに来たある日の夜。
夕飯の後、後片付けをする卯月が台所に立っている間、俺はケージから放たれたうータンと戯れていた。と言ってもただひたすらにうータンの求めるまま、そのウットリするような手触りの白い毛並みを撫で続けると言う単純作業を繰り返すだけなのだが。
パコンっと冷蔵庫が開く音がして―――それまでデロンと長く寝そべっていたうータンが、突如ピョコンと体を起こす。
「うータン、どうした?」
うータンは俺の言葉など意に介さず手の下から這い出して、ピョコンピョコンと台所の方へと近づいて行く。
冷蔵庫に余った食材をしまった後、エプロンを付けた卯月は洗い物を始めていた。その足元にピタリと陣取り、両後足で立ち上がり鼻をヒクヒクさせて飼い主である卯月を見つめるうータンの瞳が―――期待にワクワクと輝いている。
卯月はうータンの気配に気が付いていたが、暫くの間素知らぬ振りで洗い物を続けていた。しかし次第にその期待の眼差しに耐えられなくなってしまい―――キュッと水道を止めて、小さな白い毛糸玉に向き直った。
「洗い物中だよ。食べ物じゃないからね、うータン」
しかしうータンはひたすら期待の眼差しを向け続け、後足で立ったままヒクヒクと鼻を動かすと言うオネダリポーズを崩そうとしない。
俺は二人の様子を見守った。うータンは抱っこは嫌いだが、抱き上げて下がらせることも出来たかもしれない。
だけどどうしてもそれは出来なかった……うータンのオネダリポーズが極めて可愛過ぎるからだ。
暫くの間ジッと見つめ合い、対峙する一人と一匹。
根負けしたのは―――やはり人間の方だった。
卯月は小さく溜息を吐くと、再び冷蔵庫を開け紙パックのパイナップルジュースを取り出した。それからうータン用の小さな皿にジュースを入れて、彼女の前に差し出す。
するとうータンは齧り付くような勢いで小皿に飛びついた。
「……豪快だな」
「ね、ゴクゴクって感じで飲み干すよね」
あっという間にパイナップルジュースを飲み干したうータンは、両前足で食後の顔洗いを始める。
「姫、満足されましたか?」
しゃがんでうータンに話しかける卯月を見て笑ってしまった。
「侍女か使用人みたいだな?」
すると眉根を寄せて、彼女は笑う俺を軽く睨む。
「……じゃあ、丈さんは使用人その二だね。それとも執事?」
「は?何だそれは……」
「似合いそう!銀縁眼鏡がソレっぽい!」
顰めていた眉を緩めて、ケラケラ笑い出す卯月。俺は非難するように厳しい表情を作り睨み返してみたが―――更に喜ばれるだけだった。
職場の俺は時折凶悪な顔をしている時があるそうで。採用したばかりの頃、こちらは普通に話しているつもりでも派遣社員の卯月は少し怯えたような硬い表情を見せていた。
卯月との距離が徐々に近づくにつれ―――彼女の自然な笑顔を目にするようになって、如何に自分が職場で威圧感を持って彼女に接していたのかと言う事に、改めて気付かされる。
しかし今ではどんなに凄んでも、彼女に全く意に介されなくなってしまった。
ったく、敵わないな。一回りも年下の彼女に軽くあしらわれてしまうなんて。
けれどもそんな軽い扱いを、何だか嬉しく感じてしまう俺は。……かなり幸せボケしてると言えるのだろう。こんな話をしたら、また篠岡にボロクソに言われるだろうな、なんて想像しつつ……俺はついニヤけてしまう口元を抑えられないのだった。
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お読みいただき有難うございました。
幾つかウサギ小話を追加する予定です。
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婚約中の彼女、卯月の家に遊びに来たある日の夜。
夕飯の後、後片付けをする卯月が台所に立っている間、俺はケージから放たれたうータンと戯れていた。と言ってもただひたすらにうータンの求めるまま、そのウットリするような手触りの白い毛並みを撫で続けると言う単純作業を繰り返すだけなのだが。
パコンっと冷蔵庫が開く音がして―――それまでデロンと長く寝そべっていたうータンが、突如ピョコンと体を起こす。
「うータン、どうした?」
うータンは俺の言葉など意に介さず手の下から這い出して、ピョコンピョコンと台所の方へと近づいて行く。
冷蔵庫に余った食材をしまった後、エプロンを付けた卯月は洗い物を始めていた。その足元にピタリと陣取り、両後足で立ち上がり鼻をヒクヒクさせて飼い主である卯月を見つめるうータンの瞳が―――期待にワクワクと輝いている。
卯月はうータンの気配に気が付いていたが、暫くの間素知らぬ振りで洗い物を続けていた。しかし次第にその期待の眼差しに耐えられなくなってしまい―――キュッと水道を止めて、小さな白い毛糸玉に向き直った。
「洗い物中だよ。食べ物じゃないからね、うータン」
しかしうータンはひたすら期待の眼差しを向け続け、後足で立ったままヒクヒクと鼻を動かすと言うオネダリポーズを崩そうとしない。
俺は二人の様子を見守った。うータンは抱っこは嫌いだが、抱き上げて下がらせることも出来たかもしれない。
だけどどうしてもそれは出来なかった……うータンのオネダリポーズが極めて可愛過ぎるからだ。
暫くの間ジッと見つめ合い、対峙する一人と一匹。
根負けしたのは―――やはり人間の方だった。
卯月は小さく溜息を吐くと、再び冷蔵庫を開け紙パックのパイナップルジュースを取り出した。それからうータン用の小さな皿にジュースを入れて、彼女の前に差し出す。
するとうータンは齧り付くような勢いで小皿に飛びついた。
「……豪快だな」
「ね、ゴクゴクって感じで飲み干すよね」
あっという間にパイナップルジュースを飲み干したうータンは、両前足で食後の顔洗いを始める。
「姫、満足されましたか?」
しゃがんでうータンに話しかける卯月を見て笑ってしまった。
「侍女か使用人みたいだな?」
すると眉根を寄せて、彼女は笑う俺を軽く睨む。
「……じゃあ、丈さんは使用人その二だね。それとも執事?」
「は?何だそれは……」
「似合いそう!銀縁眼鏡がソレっぽい!」
顰めていた眉を緩めて、ケラケラ笑い出す卯月。俺は非難するように厳しい表情を作り睨み返してみたが―――更に喜ばれるだけだった。
職場の俺は時折凶悪な顔をしている時があるそうで。採用したばかりの頃、こちらは普通に話しているつもりでも派遣社員の卯月は少し怯えたような硬い表情を見せていた。
卯月との距離が徐々に近づくにつれ―――彼女の自然な笑顔を目にするようになって、如何に自分が職場で威圧感を持って彼女に接していたのかと言う事に、改めて気付かされる。
しかし今ではどんなに凄んでも、彼女に全く意に介されなくなってしまった。
ったく、敵わないな。一回りも年下の彼女に軽くあしらわれてしまうなんて。
けれどもそんな軽い扱いを、何だか嬉しく感じてしまう俺は。……かなり幸せボケしてると言えるのだろう。こんな話をしたら、また篠岡にボロクソに言われるだろうな、なんて想像しつつ……俺はついニヤけてしまう口元を抑えられないのだった。
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お読みいただき有難うございました。
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