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結婚するまでのお話 <大谷視点>
13.呪いです。
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『呪い』だとハッキリ自覚した所為だろうか、その忍び笑いの中に如何にも楽しくてしょうがないと言う感情を読み取ってしまうのは。
私は慌てて荷物を手にしロッカーを閉め、視線を向けないまま「お先に失礼します」と呟きそそくさと逃げ出そうとした。
昨日の夜、彼女の攻撃に怯まず『何を言われても平気です』って姿勢を見せるぞ!と意気込んだばかりだと言うのに。
でもそんな態度が一朝一夕に取れる人間なら、もうやっている。何について言われるか……もう粗方予想は付いていて既にその事で動揺している私には、彼女に指摘された途端平気な態度を取れる自信なんて全くなかった。
だから『三十六計逃げるに如かず』私はさっさとその場を立ち去る事を選択した。つーか結局『ただ逃げたい!』って本能に従っただけとも言う。
「昨日はデート?」
「は?」
吃驚した。川北さんが私の進行方向にスルリと立ちはだかったのだ。
「あの、私帰らないと……」
昨晩は吉竹さんと二人飲みだった。だけどいきなりそんな質問をする川北さんが不気味で、まともに答えを返したくないと思ってしまった。瞳を興味深げにギラギラさせ、口元だけに笑みを浮かべる彼女が本当に魔女に見えて来る。
一刻も早く立ち去りたい。
「……じゃ、無いわよね。貴女の婚約者さん、別の女の人と出掛けていたものね」
「え?」
思わず声が出てしまった。
マズイ、と思ったがもう遅い。川北さんは悲し気に眉を落として大袈裟に溜息を吐いた。
「桂沢部長もヒドいわよね。婚約者のいる男性を食事に誘うなんて……もしかして他人のモノになると決まった途端、惜しくなったのかしら?でも亀田課長も幾ら上役だからって、元カノの誘いにホイホイ乗るなんておかしいわよね。結婚する前に遊びたくなったのかしら?それとも本当に焼け木杭には火が……って事なのかしらね?」
「……」
喜々として続ける川北さんの表情を見ていたくなくて、私は俯いた。それをどう受け取ったのか、彼女は更に勢いづいてこう続ける。
「誘う女も女だけど、男も男よね?それとも意外と亀田課長の方から……だったりするのかしら?」
私は目を閉じて息を吐き出した。
それからゆっくりと顔を上げる。
「……だとしても、川北さんには関係ないことですよね」
怒りで声が震えた。
彼女が口にしている事が真実か真実じゃないかは問題では無いのだ。これは私の心をへし折る為の『呪い』で、ただの嫌がらせ、イジメなんだ。彼女の欲求不満を解消するための。
物凄く腹が立ってしょうがない。
「は……?」
いつも大人しくオドオドしている私が、ハッキリと彼女に反発したのは初めての事だった。だから川北さんは最初、私が何を言っているのか分からなかったのかもしれない。
私は真正面から彼女の顔をジッと見返す。
彼女の表情からは気持ちの悪い笑いが抜け落ち、口を僅かに開けたまま、呆気に取られたようにこちらを見ている。
私は腹から声を出して、一言一言しっかり伝わるように伝えた。
「丈さんが誰と飲みに行こうが、誰と付き合おうが―――それに腹を立てられるのも、文句を言えるのも私だけです。心配してくれるのは有難いですが、プライベートは私達二人の問題なので、放って置いて下さい!」
それからポカンとしている彼女の脇を鞄を胸にギュッと抱えクルリと潜り抜け、ロッカー室を脱出した……!
「なっなによ……!」
微かに後ろの方で甲高い怒りを含んだ声が響いていたけど、私は振り向かずにエレベーターを目指して大股で歩き続けたのだった。
私は慌てて荷物を手にしロッカーを閉め、視線を向けないまま「お先に失礼します」と呟きそそくさと逃げ出そうとした。
昨日の夜、彼女の攻撃に怯まず『何を言われても平気です』って姿勢を見せるぞ!と意気込んだばかりだと言うのに。
でもそんな態度が一朝一夕に取れる人間なら、もうやっている。何について言われるか……もう粗方予想は付いていて既にその事で動揺している私には、彼女に指摘された途端平気な態度を取れる自信なんて全くなかった。
だから『三十六計逃げるに如かず』私はさっさとその場を立ち去る事を選択した。つーか結局『ただ逃げたい!』って本能に従っただけとも言う。
「昨日はデート?」
「は?」
吃驚した。川北さんが私の進行方向にスルリと立ちはだかったのだ。
「あの、私帰らないと……」
昨晩は吉竹さんと二人飲みだった。だけどいきなりそんな質問をする川北さんが不気味で、まともに答えを返したくないと思ってしまった。瞳を興味深げにギラギラさせ、口元だけに笑みを浮かべる彼女が本当に魔女に見えて来る。
一刻も早く立ち去りたい。
「……じゃ、無いわよね。貴女の婚約者さん、別の女の人と出掛けていたものね」
「え?」
思わず声が出てしまった。
マズイ、と思ったがもう遅い。川北さんは悲し気に眉を落として大袈裟に溜息を吐いた。
「桂沢部長もヒドいわよね。婚約者のいる男性を食事に誘うなんて……もしかして他人のモノになると決まった途端、惜しくなったのかしら?でも亀田課長も幾ら上役だからって、元カノの誘いにホイホイ乗るなんておかしいわよね。結婚する前に遊びたくなったのかしら?それとも本当に焼け木杭には火が……って事なのかしらね?」
「……」
喜々として続ける川北さんの表情を見ていたくなくて、私は俯いた。それをどう受け取ったのか、彼女は更に勢いづいてこう続ける。
「誘う女も女だけど、男も男よね?それとも意外と亀田課長の方から……だったりするのかしら?」
私は目を閉じて息を吐き出した。
それからゆっくりと顔を上げる。
「……だとしても、川北さんには関係ないことですよね」
怒りで声が震えた。
彼女が口にしている事が真実か真実じゃないかは問題では無いのだ。これは私の心をへし折る為の『呪い』で、ただの嫌がらせ、イジメなんだ。彼女の欲求不満を解消するための。
物凄く腹が立ってしょうがない。
「は……?」
いつも大人しくオドオドしている私が、ハッキリと彼女に反発したのは初めての事だった。だから川北さんは最初、私が何を言っているのか分からなかったのかもしれない。
私は真正面から彼女の顔をジッと見返す。
彼女の表情からは気持ちの悪い笑いが抜け落ち、口を僅かに開けたまま、呆気に取られたようにこちらを見ている。
私は腹から声を出して、一言一言しっかり伝わるように伝えた。
「丈さんが誰と飲みに行こうが、誰と付き合おうが―――それに腹を立てられるのも、文句を言えるのも私だけです。心配してくれるのは有難いですが、プライベートは私達二人の問題なので、放って置いて下さい!」
それからポカンとしている彼女の脇を鞄を胸にギュッと抱えクルリと潜り抜け、ロッカー室を脱出した……!
「なっなによ……!」
微かに後ろの方で甲高い怒りを含んだ声が響いていたけど、私は振り向かずにエレベーターを目指して大股で歩き続けたのだった。
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