捕獲されました。

ねがえり太郎

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結婚するまでのお話 <大谷視点>

21.余裕でしょうか。(★)

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すいません、最終話の前にお話を追加します。
20話の続きを少し。なお追加に伴い、20話も僅かですが一部変更しました。

※なろう版には掲載しておりません。
※R表現まで行きませんが大人っぽい表現がありますので苦手な方は回避して、なろう版(http://ncode.syosetu.com/n1367dq/)をお読み下さい。

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触れ合う唇から直に体温が伝わって来る。ゆっくりと押し付けられたそれは、一瞬離されたかと思うと直ぐに角度を変えて戻って来る。離れる時は名残惜し気に吸い付く唇が、短い別離を惜しむように戻って来る時にはやや性急に重ねられる。

経験値の低い私はいつも流されるまま、常に彼の一挙手一投足を受け止めるのが精一杯だったのだけれども―――今は恥ずかしさも置き去りにして、自ら彼を迎え入れようと動いてしまう。戻って来る度に深く長くなる口付けを一つたりとも漏らしたくなくて、彼の首を抱き込むように腕を伸ばして引き寄せる。自然と腕に力が籠って、ソファに押し付けられた私の背が浮き上がる。すると彼の長いがっしりとした片腕が私の背中を、もう一方の大きな掌が後ろ頭を支えて引き寄せた。

グイと体が起き上がりぴったりと隙間なく体が重なると、シャツ越しの硬い胸板から温かな体温が伝わって来る。その熱さがそのまま彼の内面の興奮を伝えているような気がして、胸の奥ににカッと火が灯った。貪るような激しい口付けの合間に、彼の舌は私の口の中まで丹念に余すところなく探り出す。それがこんなに気持ちの良いものだったのだと、これまでは羞恥心が先に立って気が付けなかった。繊細な知覚を掘り起こすようなその動きに、熱に浮かされたように頭の芯が痺れてしまう。

こんなにも求められている。彼の押さえきれない衝動が態度で伝わって来て……胸の空洞が瞬く間に満たされていく。不器用な彼が愛の言葉を口にする機会は少ないけれど―――こんな風に私を必要としている事を、いつも態度に込めて伝えてくれていたのだ。それを分かっていた筈なのに―――臆病な私は自分の気持ちばかり大事にして、簡単に真実を見失ってしまうんだ。

でもそれも仕方が無いのかもしれない。だってそれだけ彼が大事で、失いたくないって思ってしまうんだから。

繰り返される長い口付けが終わり、漸く離れた唇は散々弄ばれた所為か熱を持って腫れているような気がする。目と目を合わせて足りない酸素を補うように大きく息を吐く。彼の瞳が熱に浮かされたように潤んでいる。その瞳の奥に灯っているものが何なのか、今では私は疑いも無く理解している。

腕を引かれて立ち上がると、少し足がふらついた。そんな私を力強く支える彼の手の熱さに、思わず鼓動が早くなる。無言で手を繋いだ彼に促されて歩く。そして寝室の扉に辿り着いた所で彼がハンドルに手を掛けた時―――ハッと理性が戻って来た。立ち止まり、グッと足を踏ん張ると、彼の鋭い瞳が訝し気にこちらを振り返る。



「あのっ……お風呂……シャワーを浴びたいんだけど……」



今日は色々あって泣いたり冷や汗を搔いたり……そう、とにかくそのままお見せできるコンディションでは無いのだ。確かに私も、本能ではこのままなだれ込みたい所ではあるのだけれども―――私の中に存在する恋する乙女の羞恥心が、それを許さなかった。

「……」

僅かに目を見張り、眉を上げる彼をジッと見つめた。うっ……無言で見下ろす彼の威圧感が半端無い。確かに流れから言ったら『ここで一旦お風呂』って言うのは微妙なのかもしれないけれど……でもでも、やっぱり譲れない……っ!

するとフッと私を引っ張る腕の力が緩んだ。ホッとしてお風呂場へ向かおうと思ったその時、何故か彼が私の手を引いてそちらの方向へ歩き出した。



ええと……勝手知ったる家だし、引っ張って貰わなくても大丈夫なんだけど……一時でも離れるのを名残惜しく思ってくれているのかな?



―――なんて大人しく連行されながら彼の気持ちを分析する私だったけれど、その意図を正しく理解していなかっただけなのだと気が付いたのは、暫く経った後。脱衣室に引き込まれ戸惑っていると、問答無用で服を脱がされて浴室に押し込まれてしまった。

その時やっと気が付いたのだ、私の台詞から主語が抜けていた事に。誤解だと説明しようとした時にはもう遅かった。

彼は私を『余裕だ』と評したけれども、とんでも無い。
お風呂場でのアレコレに、やはり彼に追いつくのはまだまだ時間が掛かりそうだと改めて実感させられてしまったのであった。



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お読みいただき、有難うございました!
おそらく今度こそ次話で最終話となる(…)と思います。

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