2 / 2
【幕間】多分、捨て駒、或いは死兵
しおりを挟む
とある騎士の日記
○○月××日
今日から遠征騎士に選ばれた記念すべき日。
つい嬉しくなって日記を買ったからマメに書いていこうと思う。
一兵卒から初めて念願の騎士階級、ここまで長かった。まあ思い返せば上の指示に従って、右往左往していたのが懐かしい。前は部隊長として部下も付いていたけど、遠征騎士の中では一番下っ端。またただの兵士に戻る。
それべも精鋭部隊の隊員と平の部隊長じゃ出世したのは間違いないだろう。
○○月××日
今日は部隊の顔合わせもかねて飲み会があった。
話をしているうちに隊の半分以上が平民上がりの人たちで、すごく驚いた。俺達は実力で精鋭部隊に選ばれたんだと、改めて自覚できた。
隊長クラスの人は流石に貴族だったけど、俺たちの中に混じって酒を飲んでいた。話してみれば貴族らしくない奴らで「平民も貴族も関係ない勝つために俺たちは集められたんだ」と言っていた。
んで、騎士長は樽を開けて飲んでいた。
いや、あれでいいのか、真っ先に潰れたぞあの人。
○○月××日
頭が痛い、完全に二日酔いだった。今日は王に挨拶に行くってのにコンディションが最悪だ。
ほかの騎士もなから同じで特に騎士長はヤバかった。酒の匂いが取れて無いし、副長に支えられて辛うじて立ってる感じだった。
それでも無事粗相なく終わらすことができた。
あと、騎士団全員に指輪が渡された。
任務中は肌身離さず持っていること、戦勝祈願のお守りだそうだ。
○○月××日
遠征開始一日目
まだまだ前線までは遠い。
貰った指輪はサイズが合う指が薬指しかなかった、結婚指輪みたいでなんかヤダ。でも一日付けていると違和感が無くなった、むしろ付けている方が調子がいい。
○○月××日
遠征二日目
今日のブリーフィングで作戦を伝えられた。
前線を迂回して敵の本陣に強襲をかけるそうだ。でも騎士長は暗い顔をしていた。
まあ普通の部隊なら自殺行為だけど、良い装備と良い兵士を集めたこの騎士団なら余裕、それに全員調子が上がってきて剣の切れもいい。みんな絶好調なんだ絶対勝てる。
○○月××日
遠征三日目
勝った。それもかなりあっさりと。
面白いように敵が切れて倒れていく、一騎当千とはまさしくこのこと、遠征騎士はやっぱり精鋭ぞろいだ。
野営地でみんな盛り上がった、飲んで食べて楽しかった。
明日からは味方の先陣を切って正面に大きな突破口を作る。しばらく日記を書いてる時間が無くなると思うけど味方の為だ。我慢我慢。
あと忘れないためのメモ、かゆみ止め。
○○月××日
遠征六日目
おかしい、何かがおかしい。
俺は鋼鉄の盾を貫通させられるほどの剛腕だったか?
俺の体は怪我の治りがこんなに早かったか?
明らかに人間の出せる力を超えてる。
これじゃあまるで亜人どもみたいじゃないか。
○○月××日
遠征九日目
俺たちは填められた。
少し前から体が毛に覆われた、鼻は伸びて犬のような顔になった、爪は獣のように変わった。
全部この指輪のせいだ、この指輪をはめてから体がおかしくなった。
上のやつら俺たちを生かして返す気は無い、初めから俺たちは捨て駒だった。味方は俺たちを置いて下がって、敵陣の中に取り残された。
団長も他の皆んなも獣みたいな姿で、これじゃあ国に戻っても殺されちまう。なんたって亜人共とおんなじ姿だ、それに正気を保ってるヤツは少なくて、敵の死体をそのまま食い始めるヤツが出てきた。
そして俺も、死体が、味方の死体すら、見ると飢餓感に襲われる。
それでも、いや、俺達は兵士だ、腐っても騎士だ。攻めて死ぬ時は前のめりに死のう、散々戦友を殺していった、あの聖女だけは殺さないと気が済まない。
ダメだった。
団長から狩られた、首を刎ねられて死んだ。
何が聖女だ、なんだアレ。
俺じゃ勝てない、俺達じゃ及ばない。
あの死神は歌ってた、腕を切られて、腹を穿かれて、顔を潰されても、それでも歌ってた。
俺達はたしかに人間を辞めて、人外の領域に踏み込んでた。これは間違いなかった。
ああ、命が吸われる。
○○月××日
今日から遠征騎士に選ばれた記念すべき日。
つい嬉しくなって日記を買ったからマメに書いていこうと思う。
一兵卒から初めて念願の騎士階級、ここまで長かった。まあ思い返せば上の指示に従って、右往左往していたのが懐かしい。前は部隊長として部下も付いていたけど、遠征騎士の中では一番下っ端。またただの兵士に戻る。
それべも精鋭部隊の隊員と平の部隊長じゃ出世したのは間違いないだろう。
○○月××日
今日は部隊の顔合わせもかねて飲み会があった。
話をしているうちに隊の半分以上が平民上がりの人たちで、すごく驚いた。俺達は実力で精鋭部隊に選ばれたんだと、改めて自覚できた。
隊長クラスの人は流石に貴族だったけど、俺たちの中に混じって酒を飲んでいた。話してみれば貴族らしくない奴らで「平民も貴族も関係ない勝つために俺たちは集められたんだ」と言っていた。
んで、騎士長は樽を開けて飲んでいた。
いや、あれでいいのか、真っ先に潰れたぞあの人。
○○月××日
頭が痛い、完全に二日酔いだった。今日は王に挨拶に行くってのにコンディションが最悪だ。
ほかの騎士もなから同じで特に騎士長はヤバかった。酒の匂いが取れて無いし、副長に支えられて辛うじて立ってる感じだった。
それでも無事粗相なく終わらすことができた。
あと、騎士団全員に指輪が渡された。
任務中は肌身離さず持っていること、戦勝祈願のお守りだそうだ。
○○月××日
遠征開始一日目
まだまだ前線までは遠い。
貰った指輪はサイズが合う指が薬指しかなかった、結婚指輪みたいでなんかヤダ。でも一日付けていると違和感が無くなった、むしろ付けている方が調子がいい。
○○月××日
遠征二日目
今日のブリーフィングで作戦を伝えられた。
前線を迂回して敵の本陣に強襲をかけるそうだ。でも騎士長は暗い顔をしていた。
まあ普通の部隊なら自殺行為だけど、良い装備と良い兵士を集めたこの騎士団なら余裕、それに全員調子が上がってきて剣の切れもいい。みんな絶好調なんだ絶対勝てる。
○○月××日
遠征三日目
勝った。それもかなりあっさりと。
面白いように敵が切れて倒れていく、一騎当千とはまさしくこのこと、遠征騎士はやっぱり精鋭ぞろいだ。
野営地でみんな盛り上がった、飲んで食べて楽しかった。
明日からは味方の先陣を切って正面に大きな突破口を作る。しばらく日記を書いてる時間が無くなると思うけど味方の為だ。我慢我慢。
あと忘れないためのメモ、かゆみ止め。
○○月××日
遠征六日目
おかしい、何かがおかしい。
俺は鋼鉄の盾を貫通させられるほどの剛腕だったか?
俺の体は怪我の治りがこんなに早かったか?
明らかに人間の出せる力を超えてる。
これじゃあまるで亜人どもみたいじゃないか。
○○月××日
遠征九日目
俺たちは填められた。
少し前から体が毛に覆われた、鼻は伸びて犬のような顔になった、爪は獣のように変わった。
全部この指輪のせいだ、この指輪をはめてから体がおかしくなった。
上のやつら俺たちを生かして返す気は無い、初めから俺たちは捨て駒だった。味方は俺たちを置いて下がって、敵陣の中に取り残された。
団長も他の皆んなも獣みたいな姿で、これじゃあ国に戻っても殺されちまう。なんたって亜人共とおんなじ姿だ、それに正気を保ってるヤツは少なくて、敵の死体をそのまま食い始めるヤツが出てきた。
そして俺も、死体が、味方の死体すら、見ると飢餓感に襲われる。
それでも、いや、俺達は兵士だ、腐っても騎士だ。攻めて死ぬ時は前のめりに死のう、散々戦友を殺していった、あの聖女だけは殺さないと気が済まない。
ダメだった。
団長から狩られた、首を刎ねられて死んだ。
何が聖女だ、なんだアレ。
俺じゃ勝てない、俺達じゃ及ばない。
あの死神は歌ってた、腕を切られて、腹を穿かれて、顔を潰されても、それでも歌ってた。
俺達はたしかに人間を辞めて、人外の領域に踏み込んでた。これは間違いなかった。
ああ、命が吸われる。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
「俺が勇者一行に?嫌です」
東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。
物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。
は?無理
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる