多分死んだ方いがいいありきたりな聖女様

如月イチカ

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【幕間】多分、捨て駒、或いは死兵

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 とある騎士の日記


 ○○月××日

 今日から遠征騎士に選ばれた記念すべき日。
 つい嬉しくなって日記を買ったからマメに書いていこうと思う。

 一兵卒から初めて念願の騎士階級、ここまで長かった。まあ思い返せば上の指示に従って、右往左往していたのが懐かしい。前は部隊長として部下も付いていたけど、遠征騎士の中では一番下っ端。またただの兵士に戻る。
 それべも精鋭部隊の隊員と平の部隊長じゃ出世したのは間違いないだろう。


 ○○月××日

 今日は部隊の顔合わせもかねて飲み会があった。
 話をしているうちに隊の半分以上が平民上がりの人たちで、すごく驚いた。俺達は実力で精鋭部隊に選ばれたんだと、改めて自覚できた。
 隊長クラスの人は流石に貴族だったけど、俺たちの中に混じって酒を飲んでいた。話してみれば貴族らしくない奴らで「平民も貴族も関係ない勝つために俺たちは集められたんだ」と言っていた。

 んで、騎士長は樽を開けて飲んでいた。

 いや、あれでいいのか、真っ先に潰れたぞあの人。


 ○○月××日

 頭が痛い、完全に二日酔いだった。今日は王に挨拶に行くってのにコンディションが最悪だ。
 ほかの騎士もなから同じで特に騎士長はヤバかった。酒の匂いが取れて無いし、副長に支えられて辛うじて立ってる感じだった。
 それでも無事粗相なく終わらすことができた。

 あと、騎士団全員に指輪が渡された。
 任務中は肌身離さず持っていること、戦勝祈願のお守りだそうだ。


 ○○月××日

 遠征開始一日目

 まだまだ前線までは遠い。
 貰った指輪はサイズが合う指が薬指しかなかった、結婚指輪みたいでなんかヤダ。でも一日付けていると違和感が無くなった、むしろ付けている方が調子がいい。


 ○○月××日

 遠征二日目

 今日のブリーフィングで作戦を伝えられた。
 前線を迂回して敵の本陣に強襲をかけるそうだ。でも騎士長は暗い顔をしていた。
 まあ普通の部隊なら自殺行為だけど、良い装備と良い兵士を集めたこの騎士団なら余裕、それに全員調子が上がってきて剣の切れもいい。みんな絶好調なんだ絶対勝てる。


 ○○月××日

 遠征三日目

 勝った。それもかなりあっさりと。
 面白いように敵が切れて倒れていく、一騎当千とはまさしくこのこと、遠征騎士はやっぱり精鋭ぞろいだ。
 野営地でみんな盛り上がった、飲んで食べて楽しかった。
 明日からは味方の先陣を切って正面に大きな突破口を作る。しばらく日記を書いてる時間が無くなると思うけど味方の為だ。我慢我慢。

 あと忘れないためのメモ、かゆみ止め。


 ○○月××日

 遠征六日目

 おかしい、何かがおかしい。

 俺は鋼鉄の盾を貫通させられるほどの剛腕だったか?
 俺の体は怪我の治りがこんなに早かったか?

 明らかに人間の出せる力を超えてる。
 これじゃあまるで亜人どもみたいじゃないか。


 ○○月××日

 遠征九日目

 俺たちは填められた。
 少し前から体が毛に覆われた、鼻は伸びて犬のような顔になった、爪は獣のように変わった。
 全部この指輪のせいだ、この指輪をはめてから体がおかしくなった。

 上のやつら俺たちを生かして返す気は無い、初めから俺たちは捨て駒だった。味方は俺たちを置いて下がって、敵陣の中に取り残された。

 団長も他の皆んなも獣みたいな姿で、これじゃあ国に戻っても殺されちまう。なんたって亜人共とおんなじ姿だ、それに正気を保ってるヤツは少なくて、敵の死体をそのまま食い始めるヤツが出てきた。

 そして俺も、死体が、味方の死体すら、見ると飢餓感に襲われる。

 それでも、いや、俺達は兵士だ、腐っても騎士だ。攻めて死ぬ時は前のめりに死のう、散々戦友を殺していった、あの聖女だけは殺さないと気が済まない。









 ダメだった。
 団長から狩られた、首を刎ねられて死んだ。
 何が聖女だ、なんだアレ。
 俺じゃ勝てない、俺達じゃ及ばない。

 あの死神は歌ってた、腕を切られて、腹を穿かれて、顔を潰されても、それでも歌ってた。

 俺達はたしかに人間を辞めて、人外の領域に踏み込んでた。これは間違いなかった。


 ああ、命が吸われる。
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