5 / 15
第五話:氷の仮面が砕けるとき
しおりを挟む
「触れるな!何をしている、離せ!」
俺は必死に声を張り上げ、体を引き離そうとするが、ライオネルとアシュレイの存在感が圧倒的すぎて、まるで壁に押し付けられるような圧迫感に襲われる。
「おや、ご立腹ですか。しかし、これほどまでに無防備なお姿だからには、警戒されるのも当然でしょう」
アシュレイの声は甘いが、どこか冷酷な計算を感じさせる。俺の心拍が早まり、息が詰まる。彼らの視線は、もはやただの懇願ではなく、俺を支配し、心理を掌握しようとするものであった。
「お許しください、セレスティン様。ですが身体にいらぬ熱を溜め込んだままでは毒となりましょう。貴方様はこの帝国において、唯一、誰にも肌を許されぬ清廉潔白な君主であらせられるのだから」
ライオネルが、まるで幼子を宥めるように低く甘い声で告げる。
それは俺への忠誠の証であるはずなのに――その声音の奥に隠された嫉妬と執着の濃さを悟った瞬間、背筋にひやりとした感覚が走った。
(どうしてだ……どうして、そんな目で俺を見る?)
この世界では、騎士同士や貴族同士の親しい関係は珍しくない。
だが俺は、転生者として、原作の知識を持つ者として、それらを慎重に避けてきた。
原作のセレスティンは悲劇の君主――いつ命を落としてもおかしくない。
誰かと絆を結び、互いに依存する未来など、最初から捨てていた。
それなのに。
彼らの視線は、俺が避けたはずの関係に、より深い意味を見出してしまっている。
(これは……全部、俺が引き起こしたことなのか?)
娼婦を呼ぶこともせず、誰の手も受け入れず、“清廉の君主”として孤高を貫いた。
その判断は俺なりの防衛だった。余計な感情を誰にも抱かせないための壁だった。
――けれど、それは逆効果だった。
「セレスティン様のその孤高さが、私どもの心をどれほど焦がしてきたか……」
ライオネルはそう囁きながら俺の腕を取る。
その手は、鋼のように強靭でありながら、俺の細い腕を傷つけまいと、僅かながらの配慮を含んでいるのが分かった。
しかし、それは俺をより深く絶望させるだけだった。俺を傷つけないよう、無駄な抵抗をさせないよう、完璧に計算された力加減。
「この熱は、私どもの手で解放して差し上げましょう。それが、貴方様の健康、そして、この帝国の平和にも繋がるのですから」
アシュレイの指先が、俺の胸元の紐へと伸びる。
その触れ方は驚くほど静かで、冷たい指先が布の上を滑る感触だけが、やけに鮮明だった。わずかに緩んだ紐が、彼の細く長い指によってたゆりと引かれる。
その仕草に――俺は、本能が警鐘を鳴らすような恐怖を覚えた。
「やめろ! 止めるんだ! 貴様ら……誰に許しを乞うているか分かっているのか!」
声が震えた。
君主としての権威を込めるつもりだったのに、喉の奥に刺さる焦燥が混じってしまう。
(落ち着け……震えるな。怯えを悟られるな……!)
自分に必死に言い聞かせても、胸の奥で跳ねる心臓はどうにもならない。
だが、俺の必死の叫びとは裏腹に、二人の瞳は――どこか満足げに、さらに熱を帯びて濁っていく。
アシュレイの目は「やはり」と言わんばかりに細められ、
ライオネルの目には、抑え込まれていた獣性がわずかに滲んだ。
俺の怒声など、最初から彼らの中には存在していないのだ。
まるで、俺の感情の発露を“愛情の変形”だと誤認するように、都合よく解釈されていく。
(嘘だろ……。どんな言葉も、届かないのか……?)
胸の奥がじわりと冷えた。
君主としての威厳が、手の中の砂のように崩れ落ちていく。
アシュレイは淡々と、しかしどこか愉悦を含んだ声で囁く。
「──ご自覚くださいませ、セレスティン様。
怯えを滲ませたその発言こそ……今まさに貴方様が口にされたそれこそ、我々にとっては何よりの褒美なのですよ」
ぞくり、と背筋に冷気が走る。
「氷の仮面越しの、遠い御言葉より──
こうして、貴方様の“本当の声”が聞ける瞬間のほうが、ずっと価値がある。
どうか、もっと……本当の貴方様をお見せくださいませ」
その勝手な断言に、呼吸が一瞬止まった。
やめろ――と声を出そうとした。
だが喉が塞がれたように、言葉が出てこない。
ライオネルが一歩踏み出し、影が俺に落ちる。
「……陛下は、恐れを知らぬ君主であらせられる。
それでも今、我らの前では……このように震えていらっしゃる」
震えてなどいない、そう否定したかった。
だがその瞬間、ライオネルの手が俺の手首を包みこみ――
その優しさに偽装された強い拘束が、俺の逃げ道をさらに狭める。
「……尊いことです。どれほど、我らが待ち望んだ瞬間か」
彼の息が触れる距離で囁かれ、背筋が凍てつく。
もう、何を言っても止まらない。
理解した瞬間、胸の奥で小さな絶望が弾けた。
(どうして……どうして、俺はこんなにも弱い……)
ローブの紐が、音もなくほどけた。
薄い布の隙間から覗く自分の姿に、思わず息が詰まる。
視線の先で、ライオネルとアシュレイが微かに笑んでいる――その目には、恐ろしいほどの執着と欲望が宿っていた。
ライオネルの瞳が、一瞬、強く揺れた。俺の肌が、彼の視線によって嬲られているような感覚に陥る。
「ああ……セレスティン様。何と、無垢な」
ライオネルは、俺のむき出しになった鎖骨から胸元へと視線を這わせ、その声はほとんど囁きに近かった。
彼の指先が、俺の胸元に触れるか触れないかのところで逡巡し、そして、まるで聖遺物に触れるかのように、震える指でなぞる。
「抵抗をおやめください、我々に従ってくだされば、無理に傷つけることはありません」
ライオネルの低い声が耳元で響く。敬意に満ちているようでありながら、その実、獰猛な欲求を隠し持っていた。
アシュレイは、黙って俺の表情を読み取るように見つめる。
恐怖、怒り、屈辱……そして抑えきれぬ心の動揺。
すべてを把握するかのように、彼の目は鋭く光った。
「なるほど……陛下は、抗うよりも抗えぬまま委ねられる方が、心を乱されるようですね」
アシュレイは、満足げに口角を上げた。
その声は静かでありながら、狂気めいた愉悦に満ちている。
俺が必死に抵抗し、羞恥に身を震わせる姿が、彼には至高の獲物に見えているのだろう。
帝国の偉大な君主が、彼らの手によって辱められ、快楽に堕ちていく様を、彼は今、この瞬間、目の当たりにしている。その事実に、彼の心は静かな興奮に打ち震えているのが、俺には痛いほど分かった。
「貴様ら……ッ! そのような目で見るな! 下衆が!」
絞り出すように放った罵声は、しかし彼らの欲望を煽る火種にしかならなかった。
「そのお言葉こそ、私どもには何よりの褒賞でございます。セレスティン様──あなた様の全てを汚す権利を、私どもに与えてくださるとは」
アシュレイの指先が、容赦なく俺の衣を剥ぎ取る。軽い衣擦れの音とともに、重ねてきた威厳もまた床へと落とされたようだった。
あまりの羞恥に、俺は顔を両手で覆い隠そうとするが、ライオネルの腕がそれを許さない。
羞恥に耐えきれず顔を覆おうとした手は、ライオネルに拘束される。頭上で両手を掴まれ、身動きすら取れないまま、俺は獣の檻に押し込められたかのように寝台へ押し倒された。
その腕の力は苛烈でありながら、どこか痛みを避ける気遣いすら含んでいて──その矛盾が、俺の胸に深い傷を刻む。
原作で、主人公を支え、愛を深める存在であった二人がこんな凶行に走っているなんて……。
「お願いだ……ライオネル、アシュレイ……やめてくれ」
俺は、もう君主としての威厳を保つことなどできず、懇願するように、弱々しく彼らの名前を呼んだ。
その瞬間、ライオネルの青い瞳に、狂気の光が宿った。
アシュレイの、常に冷静だった紫の瞳にも、一瞬にして理性を失ったかのような激しい熱が灯る。
彼らの体が、微かに震える。
初めて、彼らの前に見せた弱気の影。
懇願の色を滲ませて彼らの名を、呼んだ──ただそれだけで、彼らの理性の最後の箍を、完全に吹き飛ばしたのだ。
「セレスティン様……っ!」
ライオネルの、荒々しい呼気が俺の首筋にかかる。
彼の唇が、俺の首元に吸い付いた。熱い舌が肌を這い、その行為に、俺の全身が慄く。前世を含めて、誰にも触れさせたことのないこの身体が、彼によって貪られている。羞恥と、何かが壊れていくような感覚が、俺の心を支配した。
アシュレイの指が足元に触れた瞬間、反射的に体が震えた。
その指が、俺の細い足首を撫で上げ、太腿へと移動していく。俺の足が、恐怖でびくりと跳ね上がった。
「セレスティン様の、この御身……ああ、どれほど待ち望んだことか」
アシュレイの囁くような声が、俺の耳元にまで届くような錯覚を覚える。彼の指が、俺の両足を開かせるように、ゆっくりと力を込めていく。
「やめ……っ! この、馬鹿力め……!」
俺は必死に抵抗する。足を開かせまいと力を入れるが、アシュレイの腕力は見た目以上に強く、俺の抵抗などまるで意味をなさなかった。俺の秘所が、薄闇の中、二人の眼差しに晒される。
ライオネルは俺の唇を塞ぐように、その唇を重ねてきた。
荒々しく、しかしどこか甘い口付け。舌が、俺の口腔を貪るように掻き回す。その強引さに、俺は息が詰まる。唾液を絡め取られ、ねっとりとした音が寝室に響き渡る。
アシュレイの指が、俺の足の付け根へと近づく。
そこは、俺自身ですらまともに触れたことのない場所。その指が、俺の入り口を弄び始める。ぞくりと、全身に悪寒が走る。屈辱に、体中の血が沸騰するような感覚に襲われた。だが、同時に、奇妙な熱が、俺の体の奥底で燻り始めるのを感じた。
「はっ……はぁ……っ!」
俺は喘いだ。唇を離したライオネルが、俺の胸元に顔を埋め、吸い付くように愛撫している。白い肌に、紅い斑点がじわじわと広がっていく。
アシュレイの指は、俺の狭い入り口を押し広げるように、一つ、また一つと侵入してくる。異物感が、俺の体を内部からかき乱した。抵抗しようとするが、ライオネルに組み敷かれている俺には、体を動かす自由すら与えられていない。
「やめ……やめろぉ……っ!」
俺は必死に声を振り絞るが、その声はもう、震えと情欲が混じり合い、か細くしか聞こえなかった。瞳には、羞恥と恐怖の涙が浮かび、視界が滲む。白いシーツに乱れ広がる艶やかな黒髪は、汗で張り付いていた。
「セレスティン様。大丈夫です。私どもが、全てを解き放って差し上げます」
アシュレイの声は、優しかった。しかし、その優しさは、俺を深淵へと引きずり込む悪魔の囁きに他ならない。彼の指は、俺の奥を深く何度も往復し、俺の体が、意志とは裏腹に快感に震え始めた。
「んっ……ぁ……っ!」
情けない声が、俺の喉から漏れる。この屈辱と快感が混在する感覚は、前世を含めても初めてのものだった。君主としてのプライドが、音を立てて崩れていく。
彼らのこの行為は、俺への歪んだ愛情表現なのだ。俺が本当に彼らを切り捨てられるなら、冷徹な君主として彼らを処刑するはずだと、彼らはそう信じている。このどこまでも歪んだ信頼関係が、俺をこの逃げられない状況へと縛りつけていた。
誰にも触れさせなかった高貴なセレスティンの身体が、二人の男によって貪られている。俺の、純潔が、この夜、彼らの手によって奪われようとしている。
絶望が、俺の全身を覆い尽くした。
(どうして……どうして、こんなことに……っ!)
涙で潤んだ瞳は、天井を見上げるしかなかった。
その夜。俺は彼らに嬲られるままに、意識を失うまで堕とされた。
全身を這い回る舌の熱、指が貪る官能、そして奥底を抉るような激しい衝動。
全てが初めての体験であり、意識が遠のくたびに、彼らの低い声が耳元で甘く囁いていた。
俺は必死に声を張り上げ、体を引き離そうとするが、ライオネルとアシュレイの存在感が圧倒的すぎて、まるで壁に押し付けられるような圧迫感に襲われる。
「おや、ご立腹ですか。しかし、これほどまでに無防備なお姿だからには、警戒されるのも当然でしょう」
アシュレイの声は甘いが、どこか冷酷な計算を感じさせる。俺の心拍が早まり、息が詰まる。彼らの視線は、もはやただの懇願ではなく、俺を支配し、心理を掌握しようとするものであった。
「お許しください、セレスティン様。ですが身体にいらぬ熱を溜め込んだままでは毒となりましょう。貴方様はこの帝国において、唯一、誰にも肌を許されぬ清廉潔白な君主であらせられるのだから」
ライオネルが、まるで幼子を宥めるように低く甘い声で告げる。
それは俺への忠誠の証であるはずなのに――その声音の奥に隠された嫉妬と執着の濃さを悟った瞬間、背筋にひやりとした感覚が走った。
(どうしてだ……どうして、そんな目で俺を見る?)
この世界では、騎士同士や貴族同士の親しい関係は珍しくない。
だが俺は、転生者として、原作の知識を持つ者として、それらを慎重に避けてきた。
原作のセレスティンは悲劇の君主――いつ命を落としてもおかしくない。
誰かと絆を結び、互いに依存する未来など、最初から捨てていた。
それなのに。
彼らの視線は、俺が避けたはずの関係に、より深い意味を見出してしまっている。
(これは……全部、俺が引き起こしたことなのか?)
娼婦を呼ぶこともせず、誰の手も受け入れず、“清廉の君主”として孤高を貫いた。
その判断は俺なりの防衛だった。余計な感情を誰にも抱かせないための壁だった。
――けれど、それは逆効果だった。
「セレスティン様のその孤高さが、私どもの心をどれほど焦がしてきたか……」
ライオネルはそう囁きながら俺の腕を取る。
その手は、鋼のように強靭でありながら、俺の細い腕を傷つけまいと、僅かながらの配慮を含んでいるのが分かった。
しかし、それは俺をより深く絶望させるだけだった。俺を傷つけないよう、無駄な抵抗をさせないよう、完璧に計算された力加減。
「この熱は、私どもの手で解放して差し上げましょう。それが、貴方様の健康、そして、この帝国の平和にも繋がるのですから」
アシュレイの指先が、俺の胸元の紐へと伸びる。
その触れ方は驚くほど静かで、冷たい指先が布の上を滑る感触だけが、やけに鮮明だった。わずかに緩んだ紐が、彼の細く長い指によってたゆりと引かれる。
その仕草に――俺は、本能が警鐘を鳴らすような恐怖を覚えた。
「やめろ! 止めるんだ! 貴様ら……誰に許しを乞うているか分かっているのか!」
声が震えた。
君主としての権威を込めるつもりだったのに、喉の奥に刺さる焦燥が混じってしまう。
(落ち着け……震えるな。怯えを悟られるな……!)
自分に必死に言い聞かせても、胸の奥で跳ねる心臓はどうにもならない。
だが、俺の必死の叫びとは裏腹に、二人の瞳は――どこか満足げに、さらに熱を帯びて濁っていく。
アシュレイの目は「やはり」と言わんばかりに細められ、
ライオネルの目には、抑え込まれていた獣性がわずかに滲んだ。
俺の怒声など、最初から彼らの中には存在していないのだ。
まるで、俺の感情の発露を“愛情の変形”だと誤認するように、都合よく解釈されていく。
(嘘だろ……。どんな言葉も、届かないのか……?)
胸の奥がじわりと冷えた。
君主としての威厳が、手の中の砂のように崩れ落ちていく。
アシュレイは淡々と、しかしどこか愉悦を含んだ声で囁く。
「──ご自覚くださいませ、セレスティン様。
怯えを滲ませたその発言こそ……今まさに貴方様が口にされたそれこそ、我々にとっては何よりの褒美なのですよ」
ぞくり、と背筋に冷気が走る。
「氷の仮面越しの、遠い御言葉より──
こうして、貴方様の“本当の声”が聞ける瞬間のほうが、ずっと価値がある。
どうか、もっと……本当の貴方様をお見せくださいませ」
その勝手な断言に、呼吸が一瞬止まった。
やめろ――と声を出そうとした。
だが喉が塞がれたように、言葉が出てこない。
ライオネルが一歩踏み出し、影が俺に落ちる。
「……陛下は、恐れを知らぬ君主であらせられる。
それでも今、我らの前では……このように震えていらっしゃる」
震えてなどいない、そう否定したかった。
だがその瞬間、ライオネルの手が俺の手首を包みこみ――
その優しさに偽装された強い拘束が、俺の逃げ道をさらに狭める。
「……尊いことです。どれほど、我らが待ち望んだ瞬間か」
彼の息が触れる距離で囁かれ、背筋が凍てつく。
もう、何を言っても止まらない。
理解した瞬間、胸の奥で小さな絶望が弾けた。
(どうして……どうして、俺はこんなにも弱い……)
ローブの紐が、音もなくほどけた。
薄い布の隙間から覗く自分の姿に、思わず息が詰まる。
視線の先で、ライオネルとアシュレイが微かに笑んでいる――その目には、恐ろしいほどの執着と欲望が宿っていた。
ライオネルの瞳が、一瞬、強く揺れた。俺の肌が、彼の視線によって嬲られているような感覚に陥る。
「ああ……セレスティン様。何と、無垢な」
ライオネルは、俺のむき出しになった鎖骨から胸元へと視線を這わせ、その声はほとんど囁きに近かった。
彼の指先が、俺の胸元に触れるか触れないかのところで逡巡し、そして、まるで聖遺物に触れるかのように、震える指でなぞる。
「抵抗をおやめください、我々に従ってくだされば、無理に傷つけることはありません」
ライオネルの低い声が耳元で響く。敬意に満ちているようでありながら、その実、獰猛な欲求を隠し持っていた。
アシュレイは、黙って俺の表情を読み取るように見つめる。
恐怖、怒り、屈辱……そして抑えきれぬ心の動揺。
すべてを把握するかのように、彼の目は鋭く光った。
「なるほど……陛下は、抗うよりも抗えぬまま委ねられる方が、心を乱されるようですね」
アシュレイは、満足げに口角を上げた。
その声は静かでありながら、狂気めいた愉悦に満ちている。
俺が必死に抵抗し、羞恥に身を震わせる姿が、彼には至高の獲物に見えているのだろう。
帝国の偉大な君主が、彼らの手によって辱められ、快楽に堕ちていく様を、彼は今、この瞬間、目の当たりにしている。その事実に、彼の心は静かな興奮に打ち震えているのが、俺には痛いほど分かった。
「貴様ら……ッ! そのような目で見るな! 下衆が!」
絞り出すように放った罵声は、しかし彼らの欲望を煽る火種にしかならなかった。
「そのお言葉こそ、私どもには何よりの褒賞でございます。セレスティン様──あなた様の全てを汚す権利を、私どもに与えてくださるとは」
アシュレイの指先が、容赦なく俺の衣を剥ぎ取る。軽い衣擦れの音とともに、重ねてきた威厳もまた床へと落とされたようだった。
あまりの羞恥に、俺は顔を両手で覆い隠そうとするが、ライオネルの腕がそれを許さない。
羞恥に耐えきれず顔を覆おうとした手は、ライオネルに拘束される。頭上で両手を掴まれ、身動きすら取れないまま、俺は獣の檻に押し込められたかのように寝台へ押し倒された。
その腕の力は苛烈でありながら、どこか痛みを避ける気遣いすら含んでいて──その矛盾が、俺の胸に深い傷を刻む。
原作で、主人公を支え、愛を深める存在であった二人がこんな凶行に走っているなんて……。
「お願いだ……ライオネル、アシュレイ……やめてくれ」
俺は、もう君主としての威厳を保つことなどできず、懇願するように、弱々しく彼らの名前を呼んだ。
その瞬間、ライオネルの青い瞳に、狂気の光が宿った。
アシュレイの、常に冷静だった紫の瞳にも、一瞬にして理性を失ったかのような激しい熱が灯る。
彼らの体が、微かに震える。
初めて、彼らの前に見せた弱気の影。
懇願の色を滲ませて彼らの名を、呼んだ──ただそれだけで、彼らの理性の最後の箍を、完全に吹き飛ばしたのだ。
「セレスティン様……っ!」
ライオネルの、荒々しい呼気が俺の首筋にかかる。
彼の唇が、俺の首元に吸い付いた。熱い舌が肌を這い、その行為に、俺の全身が慄く。前世を含めて、誰にも触れさせたことのないこの身体が、彼によって貪られている。羞恥と、何かが壊れていくような感覚が、俺の心を支配した。
アシュレイの指が足元に触れた瞬間、反射的に体が震えた。
その指が、俺の細い足首を撫で上げ、太腿へと移動していく。俺の足が、恐怖でびくりと跳ね上がった。
「セレスティン様の、この御身……ああ、どれほど待ち望んだことか」
アシュレイの囁くような声が、俺の耳元にまで届くような錯覚を覚える。彼の指が、俺の両足を開かせるように、ゆっくりと力を込めていく。
「やめ……っ! この、馬鹿力め……!」
俺は必死に抵抗する。足を開かせまいと力を入れるが、アシュレイの腕力は見た目以上に強く、俺の抵抗などまるで意味をなさなかった。俺の秘所が、薄闇の中、二人の眼差しに晒される。
ライオネルは俺の唇を塞ぐように、その唇を重ねてきた。
荒々しく、しかしどこか甘い口付け。舌が、俺の口腔を貪るように掻き回す。その強引さに、俺は息が詰まる。唾液を絡め取られ、ねっとりとした音が寝室に響き渡る。
アシュレイの指が、俺の足の付け根へと近づく。
そこは、俺自身ですらまともに触れたことのない場所。その指が、俺の入り口を弄び始める。ぞくりと、全身に悪寒が走る。屈辱に、体中の血が沸騰するような感覚に襲われた。だが、同時に、奇妙な熱が、俺の体の奥底で燻り始めるのを感じた。
「はっ……はぁ……っ!」
俺は喘いだ。唇を離したライオネルが、俺の胸元に顔を埋め、吸い付くように愛撫している。白い肌に、紅い斑点がじわじわと広がっていく。
アシュレイの指は、俺の狭い入り口を押し広げるように、一つ、また一つと侵入してくる。異物感が、俺の体を内部からかき乱した。抵抗しようとするが、ライオネルに組み敷かれている俺には、体を動かす自由すら与えられていない。
「やめ……やめろぉ……っ!」
俺は必死に声を振り絞るが、その声はもう、震えと情欲が混じり合い、か細くしか聞こえなかった。瞳には、羞恥と恐怖の涙が浮かび、視界が滲む。白いシーツに乱れ広がる艶やかな黒髪は、汗で張り付いていた。
「セレスティン様。大丈夫です。私どもが、全てを解き放って差し上げます」
アシュレイの声は、優しかった。しかし、その優しさは、俺を深淵へと引きずり込む悪魔の囁きに他ならない。彼の指は、俺の奥を深く何度も往復し、俺の体が、意志とは裏腹に快感に震え始めた。
「んっ……ぁ……っ!」
情けない声が、俺の喉から漏れる。この屈辱と快感が混在する感覚は、前世を含めても初めてのものだった。君主としてのプライドが、音を立てて崩れていく。
彼らのこの行為は、俺への歪んだ愛情表現なのだ。俺が本当に彼らを切り捨てられるなら、冷徹な君主として彼らを処刑するはずだと、彼らはそう信じている。このどこまでも歪んだ信頼関係が、俺をこの逃げられない状況へと縛りつけていた。
誰にも触れさせなかった高貴なセレスティンの身体が、二人の男によって貪られている。俺の、純潔が、この夜、彼らの手によって奪われようとしている。
絶望が、俺の全身を覆い尽くした。
(どうして……どうして、こんなことに……っ!)
涙で潤んだ瞳は、天井を見上げるしかなかった。
その夜。俺は彼らに嬲られるままに、意識を失うまで堕とされた。
全身を這い回る舌の熱、指が貪る官能、そして奥底を抉るような激しい衝動。
全てが初めての体験であり、意識が遠のくたびに、彼らの低い声が耳元で甘く囁いていた。
23
あなたにおすすめの小説
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
異世界転移してΩになった俺(アラフォーリーマン)、庇護欲高めα騎士に身も心も溶かされる
ヨドミ
BL
もし生まれ変わったら、俺は思う存分甘やかされたい――。
アラフォーリーマン(社畜)である福沢裕介は、通勤途中、事故により異世界へ転移してしまう。
異世界ローリア王国皇太子の花嫁として召喚されたが、転移して早々、【災厄のΩ】と告げられ殺されそうになる。
【災厄のΩ】、それは複数のαを番にすることができるΩのことだった――。
αがハーレムを築くのが常識とされる異世界では、【災厄のΩ】は忌むべき存在。
負の烙印を押された裕介は、間一髪、銀髪のα騎士ジェイドに助けられ、彼の庇護のもと、騎士団施設で居候することに。
「αがΩを守るのは当然だ」とジェイドは裕介の世話を焼くようになって――。
庇護欲高め騎士(α)と甘やかされたいけどプライドが邪魔をして素直になれない中年リーマン(Ω)のすれ違いラブファンタジー。
※Rシーンには♡マークをつけます。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。
あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。
だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。
よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。
弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。
そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。
どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。
俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。
そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。
◎1話完結型になります
性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!
モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。
その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。
魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。
その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?!
ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。
幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。
叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。
幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。
大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。
幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。
他サイト様にも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる