悪役令息に転生したから断罪ルート回避しようとした結果、王太子殿下を溺愛してる

琥月ルル

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17.誤解

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俺たち双子の誕生日パーティーが終わり、いよいよ本格的に夏が近付いてきた。
学園では今月末に期末試験期間が予定されているので、大半の生徒たちは勉強に励んでいる。
この時期に遊んでいられるのは、よっぽど地頭が良くて優秀な生徒か、後先を考えず楽な方に流れようとするお馬鹿さんのどちらかだ。

俺はエドワードの側近候補だしいつも成績上位に食い込んでるけど、やっぱりちゃんと勉強しないと良い成績は取れない。
ちなみにエドワードは『セカ愛』のインテリ担当こと、マーカスと首席争いをするくらい賢いよ。
前世でゲームをやり込んでた姉から話を聞いたときは「さすが完全無欠の王子様~」とか思ってたけど、今世は近くで彼の努力を見てるから素直に尊敬してる。
王太子としての公務も増えてきて忙しいのに勉強も絶対に手を抜かないし、本当にえらいよね。

エドワードは文系科目が得意で、俺は理系科目が得意というのもあって、俺たちは試験期間が近くなると、予定が合う日は授業後に図書館で一緒に勉強してから帰っていた。
基本無言で問題集とか解いてるんだけど、わからないところがあったらお互いに質問し合ってるんだ。エドワードが隣にいてくれるとやる気も出るし、とても有意義な時間の過ごし方だと思う。

そういうわけで、俺たちは今日も一緒に勉強をするべく図書館に向かっていた。
でも、エドワードが今日読もうと思ってた参考書を教室に置いてきちゃったらしい。先に行ってていいよって言われたから、今は図書館の前で彼を待ってる。
なんかデートの待ち合わせみたいでドキドキしてきた。そういうの、ちょっと憧れる。こんなこと言ったら童貞丸出しって笑われちゃうかな。
いちおう俺も公爵令息だから閨教育みたいなやつは受けたんだけど、実践は丁重にお断りした。だから、まぁ、なんていうか……今世は思いっきり童貞なんだよね。大目に見てほしい。

「あっ!ごきげんよう、ウィリアム様っ♡お隣にエドワード様がいないなんて珍しいっ!今日はおひとりでどうされたんですかぁ?」

ちょっとウキウキしながらエドワードを待っていたら、聞きたくもない猫撫で声が聞こえてきて鳥肌が立った。
またこの娘か、と思いながら引き攣った笑顔を浮かべる。
誕生日パーティーが終わってからというもの、セシリアはハーレムエンドを狙いつつ本命を俺に定めたらしい。
とにかく周囲の目のあるところでまとわりついてくるから『あのふたり、実は恋仲なのでは?』とかいう根も葉もない噂が学園でも広まり始めてるんだよね。厄介すぎる。

「こんにちは、セシリア嬢。エドワードを待ってるんだ」

人の目があるからあんまり冷たくするのも気が引けて、結局こういう中途半端な態度を取ることになる。

「じゃあ、エドワード様が来るまで私とお話しましょうよっ!ウィリアム様は、城下町に出かけたことはありますか?私は田舎から王都の教会に連れてこられたこともあって、まだ城下町に遊びに出かけたことがないんです……」

俺は相槌を打つどころかほとんど聞き流してるんだけど、セシリアはめげずに話し続ける。

「あのっ、良かったら今週末、私と一緒に城下町デートをしてくれませんかっ」
「いや、お断りするよ」
「えっ!?どうしてですかっ……!?」
「期末試験が近いから、勉強に集中したいんだ。悪いけど、君と遊びに行ってる暇はないかな」
「でもでもっ、たった一日だけですよっ?ずっと勉強ばかりしてたら息が詰まるし、気分転換にお出かけするのも良いと思いませんか?」

たしかに気分転換に休息は必要だと思うけど、セシリアと一緒に休日を過ごしたところで気分転換にはならない。だって俺たち、そもそもふたりで出かけるほど親しくないよね?

「うーん……俺は遠慮しておこうかな」
「そんな冷たいことをおっしゃらないで、ウィリアム様っ」

丁重に断ろうとしているのに、セシリアは何度もしつこく食い下がってきた。
いつの間にか勝手に腕を組まれ、ふにっとした柔らかな胸を押し当てられていてうんざりする。
ゲームスチルで見たことあるから知ってたけど、十八禁乙女ゲームのヒロインなだけあって巨乳だよな。
頭の中がえっちな妄想とかでいっぱいになってるような男子生徒なら、こんなふうにひっつかれて大喜びするんだろう。
でも、俺はエドワード以外にそういった欲を一切感じないし、セシリアからのボディータッチにも嫌悪感を抱いてる。当事者の俺が嫌がってるんだからこんなのセクハラだよね。

「とにかく、俺は試験勉強に集中したいから今回は遠慮させてもらうよ」

これで話は終わりだと言わんばかりに、ひらりと手を振って微苦笑を浮かべる。
セシリアもさすがにこれ以上は何を言っても無駄だと思ったのか、きゅっ…と唇を引き結んで悔しそうな顔をした。

「おかしい……おかしいわ……好感度が足りないのかしら」
「ん?」
「いいえ、なんでもありませんっ」

今、好感度ってワードが聞こえた気がする。
そんなの気にしてるってことは、やっぱり彼女も『セカ愛』の知識を持つ転生者なのかな。

「ウィリアム様のおっしゃりたいことはよくわかりました。でも、試験が終わったら、私と一緒にどこかお出かけしてくれなきゃだめですよ?」

計算され尽くした上目遣いを披露し、ぽすんっ、と迷いなく腕の中に入ってきたセシリアを、俺はとっさに抱きとめてしまった。
最悪だ。ここは図書館の前で人通りも少なくないのに。
これ以上、俺たちが恋仲だとかいう根も葉もない噂が広まったら困る。俺はだらだら冷や汗をかきながら、慌てて彼女を自分から引き剥がすべく、肩に手を置いた。

「エドワード様っ!」

セシリアが華やいだ声をあげる。それにつられて視線を上げると、向こうからエドワードがやって来るのが見えた。

「あ……」

俺がセシリアを抱き締めるような格好で固まっているのを目にして、エドワードは切れ長の美しい瞳を大きく見開いた。
戸惑ったように吐息を零し、少し泣きそうな顔をする。アイスブルーの瞳が水面みたいにゆらゆら揺れて、長い睫毛がその上に影を作った。
エドワードは俺たちから視線を逸らすと、何かを耐えるようにぐっと眉を寄せ、足早に踵を返す。

「っ、エドワード!」

俺はべったりもたれかかってくるセシリアを容赦なく引き剥がし、一声かけるのも忘れて一目散にエドワードの後を追った。
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