【完結】お忍びで占い師やってたら王子から「婚約破棄したい」と相談されました

文字の大きさ
12 / 18

12.友達

しおりを挟む
 こうして、レイス様から正式なプロポーズを受けたことにより婚約破棄は撤回された。

 公に発表される前だったため、王室とエルマーレ家の間で大騒ぎになりながらも、後処理は済まされた。歓喜した父は、早急に私の辺境伯への養子縁組を白紙に戻した。


 とはいえ、一連の騒動はレイス様の行動によって両家が振り回されたのも確か。


 彼は責任を取るため、自ら父君である陛下に「継承争いを辞退したい」と進言して、陛下はそれを受諾された。これにより、第一王子であるデカント様が次期王に決定した。

 王室からの通達を読んだ父は顔面蒼白で「何を暴走しとんじゃアイツはーー!!」と発狂し、あまりのショックで倒れ、そのまま寝込んでしまった――。

 レイス様は王立学園を卒業した後は『軍事養成訓練校』への入学を希望した。しかも王族の身分を隠して。
 そこは、どれだけ鍛え上げられた男でも血反吐を吐くほど厳しい施設であり、さすがの王も心配したのか「そこまでしなくても」と反対したが、レイス様は「皆に迷惑をかけたケジメをつけなければならない」と言って引かなかった。

 一方で私は、レイス様が訓練校を卒業するまでの間、彼の推薦により宮廷で『宰相補佐の助手』を勤めることになる――。

 王立学園も卒業式まであと僅か。

 レイス様とは毎日一緒に登校し、学食での昼食も共に過ごしてきた。週に一度のお弁当は私が早朝に作って持参している。
 彼とは演劇やオーケストラもよく観に行くようになった。彼が演劇の中でも入手困難な券を持っていたので「よく手に入りましたね」と言うと「泳ぎが得意な元友人から貰った」と、意味の分からない返答をされる――。

 レイス様とは、たくさん語り合った。これまでの空白を埋めるように。
 
 たくさん手を繋いだ。

 いっぱい甘えて、触れ合い……キスをした。

 こんなにも生きた心地がする日々を送れるなんて夢にも思わなかった。だけど、何か心の中にくすぶるものがある……これは、一体なんだろうか――。

 昼休み。石畳が敷かれた中庭にある、噴水を囲むように設置されたベンチ。
 隣に座り、今日もお弁当を「美味い美味い!」と口いっぱいに頬張る彼の横顔が……たまらなく愛おしい。そんな私達の様子を、誰かが木陰から覗いている気配を感じた。

「オリヴィアさん……隠れてないで、こっちにいらっしゃい」

 スッと、半身を木の後ろから覗かせたオリヴィアは、悔しそうに下唇を噛んでいた。

「いやいやいや、な、何ですの? 別に隠れておりませんわ。き……木の気持ちを体験してただけですけど」

「オリヴィアさんもお昼、私達と一緒にどうかしら?」

 そう言って私が微笑むと、彼女は驚愕しながら一歩後ろに退いた。

「な……何を……え……笑った……あのアイシャ様が……私に向かって」

 彼女は気付いていない。私が『占い師』ということに――。

 婚約が再締結された後、私は『占い師』の活動を再開していた。そこへ、まさかオリヴィアが訪れるとは思いもしなかった。

「――そうですか。嫉妬してしまう気持ちを抑えるのは、とても難しいものです」

「……どうしたらいいのでしょうか。もう……自分を嫌いになってしまいそうなんです」

「貴女が嫉妬してしまっているそのお方は、どんな女性なのですか?」

 私はそう尋ねながら、オリヴィアにハーブティーを淹れて差し出した。彼女は「ありがとうございます」と言って、ティーカップの中で揺れる水面を見つめた。

「すごく綺麗で……それでいて凛としてて……成績も良くて……素敵な人です。なのに、私はずっと彼女に対して“嫌がらせ“を続けることばかりに執着する毎日で……」

「なるほど。確かに、嫌がらせをしてしまうのは良くないことです。しかし、私は話を聞いていて貴女が“嫌な人“だとは全く思いません」

「ど……どうしてですか?」

「貴女が思う“嫉妬してしまう“という気持ちは、誰の心にも自然に生まれるものです。現に今、素直で可憐な貴女に対して……私は“羨ましい“と思っていますから」

「……え?」

「貴女には“貴女にしかない良い部分“がたくさんあるはずです。何も、そのお方に勝とうとする必要はございません。貴女の歩幅で生きることが大切だと、私は思いますよ」

 実は、オリヴィアを王立学園に入学する前から知っていた私。王宮の庭園ですれ違ったことがあり、当時彼女の髪型はコテコテの巻き髪だった。
 しかし王立学園に入ってからは『アイシャ』を意識しだしたのか、私と同じロングストレートに変えている。

 彼女にとって、私は憧れの存在になっていた――。

「本当は、そのお方と“友達“になりたいのではありませんか?」

「そんなことは! ……えーと、そうです、はい」

「勇気を振り絞って、ありのままそのお方に話をしてみてはいかがでしょうか。大丈夫……貴女を占った結果は“何をしても吉”とハッキリ出ています――」

 ハーブティーを飲み干して小屋を去る際に見せたオリヴィアの表情は、生き生きとしていた――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

婚約破棄されたので、愛のない契約結婚を選んだはずでした

鍛高譚
恋愛
王太子の婚約者だった伯爵令嬢・カーテンリンゼ。 しかし、王太子エドワルドは突然の婚約破棄を言い渡し、彼女を冷たく突き放す。 ――だが、それは彼女にとってむしろ好都合だった。 「婚約破棄? 結構なことですわ。むしろ自由を満喫できますわね!」 ところが、婚約破棄された途端、カーテンリンゼは別の求婚者たちに目をつけられてしまう。 身分を利用されるだけの結婚などごめんだと思っていた彼女の前に現れたのは、冷徹と噂される若き公爵・レオポルド。 「契約結婚だ。君の自由は保証しよう」 「まあ、それは理想的ですわね」 互いに“愛のない”結婚を選んだ二人だったが、次第に相手の本当の姿を知り、想いが変わっていく――。 一方、王太子エドワルドは、自分が捨てたはずのカーテンリンゼを取り戻そうと動き出し……!?

【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る

水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。 婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。 だが―― 「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」 そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。 しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。 『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』 さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。 かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。 そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。 そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。 そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。 アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。 ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。

【完結】無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます!ー新たなる王室編ー

愚者 (フール)
恋愛
無意識 悪役公爵令嬢は成長途中でございます! 幼女編、こちらの続編となります。 家族の罪により王から臣下に下った代わりに、他国に暮らしていた母の違う兄がに入れ替わり玉座に座る。 新たな王族たちが、この国エテルネルにやって来た。 その後に、もと王族と荒れ地へ行った家族はどうなるのか? 離れて暮らすプリムローズとは、どんな関係になるのかー。 そんな彼女の成長過程を、ゆっくりお楽しみ下さい。 ☆この小説だけでも、十分に理解できる様にしております。 全75話 全容を知りたい方は、先に書かれた小説をお読み下さると有り難いです。 前編は幼女編、全91話になります。

【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」  この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。  けれど、今日も受け入れてもらえることはない。  私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。  本当なら私が幸せにしたかった。  けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。  既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。  アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。  その時のためにも、私と離縁する必要がある。  アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!  推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。 全4話+番外編が1話となっております。 ※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。

「脇役」令嬢は、「悪役令嬢」として、ヒロインざまぁからのハッピーエンドを目指します。

三歩ミチ
恋愛
「君との婚約は、破棄させてもらうよ」  突然の婚約破棄宣言に、憔悴の令嬢 小松原藤乃 は、気付けば学園の図書室にいた。そこで、「悪役令嬢モノ」小説に出会う。  自分が悪役令嬢なら、ヒロインは、特待生で容姿端麗な早苗。婚約者の心を奪った彼女に「ざまぁ」と言ってやりたいなんて、後ろ暗い欲望を、物語を読むことで紛らわしていた。  ところが、実はこの世界は、本当にゲームの世界らしくて……?  ゲームの「脇役」でしかない藤乃が、「悪役令嬢」になって、「ヒロインざまぁ」からのハッピーエンドを目指します。 *「小説家になろう」様にも投稿しています。

【完結】死に戻り8度目の伯爵令嬢は今度こそ破談を成功させたい!

雲井咲穂(くもいさほ)
恋愛
アンテリーゼ・フォン・マトヴァイユ伯爵令嬢は婚約式当日、婚約者の逢引を目撃し、動揺して婚約式の会場である螺旋階段から足を滑らせて後頭部を強打し不慮の死を遂げてしまう。 しかし、目が覚めると確かに死んだはずなのに婚約式の一週間前に時間が戻っている。混乱する中必死で記憶を蘇らせると、自分がこれまでに前回分含めて合計7回も婚約者と不貞相手が原因で死んでは生き返りを繰り返している事実を思い出す。 婚約者との結婚が「死」に直結することを知ったアンテリーゼは、今度は自分から婚約を破棄し自分を裏切った婚約者に社会的制裁を喰らわせ、婚約式というタイムリミットが迫る中、「死」を回避するために奔走する。 ーーーーーーーーー 2024/01/13 ランキング→恋愛95位 ありがとうございました! なろうでも掲載20万PVありがとうございましたっ!

【完結】悪役令嬢の本命は最初からあなたでした

花草青依
恋愛
舞踏会の夜、王太子レオポルドから一方的に婚約破棄を言い渡されたキャロライン。しかし、それは彼女の予想の範疇だった。"本命の彼"のために、キャロラインはレオポルドの恋人であるレオニーの罠すらも利用する。 ■王道の恋愛物(テンプレの中のテンプレ)です。 ■三人称視点にチャレンジしています。 ■画像は生成AI(ChatGPT)

処理中です...