田舎でお見合いしたらギャグだった

コロ星人

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誠side

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 俺の名は相原誠だ。

 自然豊かな湖の辺りにある全校生徒4人の小学校で低学年担当の教師をしている。
 市内の殆どの人が、ここが人より狸や猿の方が多い所だと認識している程超田舎なのは、まぁ、否定できないかな。

 そんな俺が、31歳にもなって、未だ華々しい話題のない事を心配する、ウチの母親から持ちかけられた見合い話に、仕方なくのることになった。(単なるおせっかいだったりするが、田舎では31歳になっても結婚してない男は、何時迄もフラフラしているロクデナシのレッテルを貼られたりするから、この度の見合いを強く断れなかったんだよなぁ)出所は小学校の先生をしているうちの母親と仲良しのおばちゃん先生らしい。

 見合い相手は市役所戸籍課に勤める七海さんというアラサーの女性だ。
 初めは嫌々釣り書きに添えられた写真を見たんだけど、何と俺のストライクゾーンど真ん中!めちゃ可愛い!彼女を俺の嫁に出来たらなぁ…なんて雄の本能のメーターが振り切れそうになった。これは是非とも彼女に会って話さなければ!

 その日まで、兎に角彼女に会えるのが楽しみで仕方なかったんだ。
 待ち合わせ場所で初めて彼女を見た!チラッとだけどな。でも写真よりも実物の方が100倍可愛いってのはわかったぞ!

 よし!俺はついてるぞ!

 って、さっきまで思ってたんだけどな。なんか雲行き怪しいぞ…。




 へ?マジかよ!見合い場所になるはずだったこの辺り唯一の喫茶店が閉店してるって…。

 おい!おばさん!どうすんだよ!

 慌てたおばさんは、仕方なくカウンター席だけのうどん屋に場所変更しやがった。
 この辺りで食べ物屋って、ここしかなかったんだよな…。流石ど田舎だ。

 お見合いというのに、カウンター7席の店に、奥から彼女、彼女の伯母さん、俺の母親の友達のおばさん、俺の順に座ってる。彼女まで遠すぎて、直接話せないじゃないか!

 結局、カウンターに座った直後、俺の連れのおばさんが

「こちら○○小で先生をしてる相原誠さん。で、あちらが市役所戸籍課にお勤めの大西七海さん。今日はちょっとした手違いでこんな事になってごめんなさいね」

 お互いの紹介はコレのみで、あとプロフィール的な話も一切なく、俺と彼女はカウンターに座ったまま、少しお互いの方に向き直り、ペコリと頭を下げただけで終了。
 結局、友達同士だと言うおばさんズが喋り倒し

「まぁ!先生!お久しぶり!この可愛いお嬢さんは姪御さんなの?今日は先生が来るなんて知らなかったから、お顔を見た途端驚いちゃったわよ」
「七海の母親から付き添いを頼まれた時に、先生のお名前が出てきて私も驚いたわよ!」

 などと、主役の2人そっちのけで、脇役2人で盛り上がっている。

 何のことはない、その日はこの店で一番高級な780円の全乗せうどんを、このクソ暑い中汗だくになりながら食べて、お開きになった。

 おい!これってお見合いじゃないのか?
俺、一言も彼女と話してないぞ!何しに来たんだか、もう呆れて抗議をする気にもなれない。

 もしかしたら、彼女はこの話を断ってくるかもしれない…。

 冗談じゃないぞ!
俺は彼女とお付き合いしたいんだ!こんな事で、挫けてたまるかってんだ!

 俺は彼女の車を見送ったあと、直ぐに件のおばさんに、今週末再度彼女に会って話をしたい旨を伝えた。

「まぁ!若いって良いわね」

 だってさ…。

 今日一日無駄にした気分だよ…。

 このおばさんズは、絶対に見合いの仲介役を任せちゃいけない人種だ。
 おい!これ見てる奴!人選は吟味した方がいいぞ。ゆめゆめ忘れるなよ!



 その週末、俺は市役所周辺の賑やかな通りにあるカフェで待ち合わせして、初めて彼女と話した。
 俺の嫁はこの人だって直感でピンときた。

 絶対に俺の嫁にする!決めた!諦めないぞ!

 
 その日は暫くそこのカフェで話をしたのち、予約しておいた創作料理の店へ俺の車で移動し、2人して美味しい料理を堪能した。
 うん。助手席に彼女を乗せたくて、彼女にはあえて公共交通機関で来てもらったんだ。
 勿論、帰りも彼女を自宅まで送り届けたさ。
 
 別れ際に

「僕と一緒にいる未来を真剣に考えていただけませんか?」
と、思わず彼女の目を見つめて口走ってた。

 
 まだ指輪はないけど、プロポーズと受け取ってもらってもいいつもりで言った。



 そして俺たちは、その年の冬休み中に結納を交わし、春休みに結婚式を挙げた。

 勿論、俺は結婚と同時に街中の学校に転勤し、賑やかな市内中心部にある1番大きな駅前に引っ越した。


 彼女には釣り書きの写真を見て一目惚れした事は内緒にしてるんだ。一応、例の喫茶店の閉店の紙を見てる時に一目惚れしたと言うことにしてある。

 なぜって?

 なんとなくさ。
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