イケメンなら間に合ってます(改稿版)〜 平民令嬢は公爵様に溺愛される 〜

コロ星人

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プロローグ

留学生

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 ここはリンドール王国の王都の外れにある閑静な住宅街の一角、所謂山の手である。特にここはその一番奥地にある、青い芝生の中に花や木々に囲まれた四阿があって小さな池もある可愛らしい雰囲気ただよう大きな庭が自慢の、それに不釣合いなほど小さな一軒家が正面奥に見える
 

 ここはエマの母親であるシャーロットの大学時代の友人であるアメリアの自宅で、そこで彼女は旦那様と二人の娘と一緒に住んでいる
 アメリアは一人娘であったため、婿養子をとって家を継いではいるが、彼女自身は貴族ではない
 裕福な商人の娘だ
 なので、貴族など堅苦しいのが大嫌いなエマも、のびのびと安心して暮らすことができる、この国では唯一の場所かもしれなかった

 そんな御年20歳になるエマは、つい三週間前に母国からここにやってきた留学生である
 彼女が貴族に極度な嫌悪感を持っているため、母親のシャーロットが一計を案じ、大学時代の友人のアメリアに頼み込んで、何とか無事に留学中の居場所を確保できたのだった
 祖母であるソフィアからは、自分の実家の世話になるよう強く勧められたのだが、それはきっぱりスッキリお断りさせていただいた
 冗談じゃない!せっかく貴族社会から逃げてきたのに、何で自分からわざわざそこに飛び込んで行かないといけないのか、理解に苦しむ

ーー お祖母様の実家って、ここのお城じゃないの!やなこった!ぜ~ったいにお断りだわ!ふん!ここの王様に写真だけでもって言われたから、瓶底眼鏡にマスクをかけて写した写真を送ってやったわよ。ザマアミロ!私はここで庶民生活を満喫するんだ!お貴族様なんておととい来いだわ!ーー

 そんなこんなで、夢にまで見たエマの学生生活が始まったのである
 




 「エマちゃ~ん!起きてる~⁉︎早くしないと遅刻するわよ~!」

 下のリビングから、この家のオーナーのアメリアさんの声が聞こえてくる

 「はぁい!今行きま~す!わぁ~、やっば!もうこんな時間!初っ端から遅刻ってなんなの?もう最悪!」

 エマは、苛立ちのあまりガミガミ独り言を言いながらドタバタと物凄い音を立てて、身支度を始めた

ーー あぁ~、もう!昨日パーティなんかに行くんじゃなかったわ!もっと早く帰るつもりが、周りを取り囲むお貴族様方に強引に引き止められて帰れなくなっちゃって……これだからお貴族様は嫌いなのよ!それにお兄様もお兄様だわ。いつのまにか居なくなってるなんて信じられない!気がついたら私がいなかったって?間抜けにも程があるわ!もう、明日の試合には応援に行ってあげないんだから!ーー

 エマは鏡の前に座り、身支度を整えながら昨夜の事を思い出し、思わず眉をしかめた

 「さてと、髪の毛も後ろで一つに纏めてダサゴムでとめたし、瓶底眼鏡もかけたし、マスクもしたし、服も田舎っぽいダサダサなヤツに着替えたし、靴は履き潰したスニーカーで駄目押ししたし。うん、これで完璧!ふふ~ん。どうだ!これで、どこからどう見ても田舎から出てきたダサ娘の出来上がりだわ!さぁ、自由を謳歌するぞ~!エマ!ファイトよ!」

 エマは鏡の前で何度も自分の姿を再確認しながら、自然に口角が上がるのを止められなかった
 そしてチェックのシャツの上からメッセンジャーバッグを斜めにかけると、自分の部屋を勢いよく飛び出して行った
 エマは二階から転がるように駆け下り、マスクで見えないが笑顔で、さながらダンスでも踊っているような軽やかな足取りで玄関先までやってきて、ドアノブに手をかけて振り向いた。

 「アメリアおば様、行ってきま~す!」

 「あっ!ちょっとエマちゃん!朝ごはんは?」

 「おば様、ごめんなさ~い!食べてたら遅刻しちゃう!どこかで何か買って食べるから大丈夫!じゃあ行ってきま~す!」

 エマは勢いよくドアを開けて後ろ手に閉め、その姿を消した

 「あっ!エマちゃん!…………はぁ~……もう学生時代のシャーロットにそっくりだわ……私の手におえるかしら……心配になってきちゃったわ……これは早々にシャーロットに相談しなきゃぁね……」

 アメリアはエマに向かって差し出していた手を下ろしながら、溜め息をついたのだった
 

 
 「よし!この先の地下鉄の駅までダッシュだぁ!」

 色々面倒くさいことになってきているとも知らず、当の本人のエマはいたってマイペースに石畳の道を駆け抜けて行った






 そのころ、ヨーク公爵邸では、アーサーが執事のセバスチャンにお小言をたれていた

 「え?何でこの子の写真ってどれもこれもみんな瓶底眼鏡にマスクしてるのさ。もっとちゃんとしたのがあるんじゃないの?これじゃ、写真がないのも同じじゃない。こんなの調査したうちに入らないよ。我がヨーク家の誇る諜報部がこんな体たらくとは呆れるね。もっとしっかり仕事をしてくれなくちゃ、この先何かあった時にどうするのさ」

 「申し訳ございません、アーサー様。しかしながら諜報部からの情報では、どうも意図的に情報操作がされている気配がするそうです。もしやベイリー家の目くらましにあっている可能性もあるかと」

 「どこにも穴がないって事なの?」

 「そのようでございます。ただ、ベイリー家の領土であったアトランティス領が、本国だったシュタイフ王国の共和政以降の混乱に乗じて独立した理由だけはわかりました」

 「へえ。それで?」

 「はい。以前のアトランティス公爵領では、税金を払えば学費と医療費は無料だったらしいですな。しかし共和政で本国に取り込まれてしまえば、本国内の他の貧乏な地方に引きずられて、今のアトランティス領内での優遇措置は望めないと判断した領民が領主に本国から独立することを強く希望したのだとか。そして領民が領主に直訴するに至ったため、それを受けた領主が独立に踏み切ったらしいです。それで領民の希望により独立を果たしてからも、領主がそのまま大統領になったというのが今のアトランティス共和国です」

 「ふ~~ん…。それで公爵家としてのベイリー家はなくなったわけだけど、家としての力はどうなの?」

 「はい。ベイリー家はアーサー様もよくご存知のように財閥を持っています。それにはまだ綻びなどなく未だに健在です。また、それぞれの家族がそれぞれの道でトップで活躍しています。ですから、ベイリー家の力は以前よりも増していることは間違いないかと思われます」

 「ふ~~ん。じゃぁ、形ばかりの平民って事だね。この子はただ、身分の名称が平民に変わっただけで、今も変わらず俺と殆ど対等な力を持つ家の子なんだ。国王様からも後押しされちゃったしね。俺も今後のことを真剣に考えてみようかなと思ってるよ」

 そしてアーサーが動きだす
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