イケメンなら間に合ってます(改稿版)〜 平民令嬢は公爵様に溺愛される 〜

コロ星人

文字の大きさ
8 / 17
外堀が埋まっていく

謁見

しおりを挟む
 エマとアーサーは王城からの迎えの車に乗ると、昨夜の婚約発表からヨーク家の正門前で待機するマスコミを振り切って、ほどなくして無事に着いた

 アーサーが恭しくエマをエスコートする

 正装した二人が歩くと、まるで王子様と王女様のように見える
 すれ違う者達が皆振り返って見ていた

 二人は暫く控えの間で待たされた後、国王の待つ謁見の間に案内された

 「アーサー・ド・ヨーク公爵閣下、お着きでございます」

 二人は静かに中に入り、国王の前に進んで膝をつき畏まった。エマはカテーシーで控える

 
 「久しぶりじゃな、アーサー。あれ以来か?」

 「我が君におかれましては本日もご機嫌麗しゅう。このアーサー、陛下のご尊顔を拝し事、恐悦至極にございます」

 「うむ。して、アーサー、そちらの淑女はどなたかな?」

 「これに控えますは、我が妻となる予定の者にございます」

 「おお!其方がソフィアの孫か!早う、早う、顔を見せておくれ」

 エマが顔を上げると、その場にいた全ての者が息をのんだ

 「お久しぶりでございます、国王陛下。アトランティス共和国大統領、ラファエル・ベイリーが娘、エマにございます」

 エマは再度優雅にカテーシーをして挨拶をした

 「おお、おお、これは噂以上の美しさじゃ。アーサー、ほんによかったのう。これで儂も安心じゃ」

 「昨日は実家の方へお祝いの品を頂きまして、ありがとうございました。父からも陛下へお礼をと言付かって参りました」

 「ちと早いかと思うたんじゃが、喜んでもらえてなによりじゃ」

 「ところで陛下。昨日のうちにマスコミに我らの婚約の情報が流れたと聞きましたが、あれは陛下からお伝えになられたのですか?」

 「うむ、少しでも早くエマ嬢の憂いを晴らしたくてのう。善は急げというではないか」

ーー まさかの王様発かよ。いたらん気をまわさんで欲しいわぁ!これで完全に詰んだよ。わははーー

 思わずアーサーと顔を見合わせてしまった

 そこへ国王の孫の王子が現れる。歳の頃は20代後半から30代前半に見えるが、顔はアーサーの方が間違いなくイケメンだ

 「お爺様、今日は素敵な女性が来ていると聞いてきたのですが、彼女ですか?」

 そしてエマの顔を食い入るように見つめていた王子の顔が赤く染まった

 「お爺様、彼女を私の側室に即召し上げたいのですが、ダメですか?」

 「すまんのう、チャールズ。彼女はアーサーの婚約者じゃ」

 「婚約だけなら解消すればいいだけのことではありませぬか。手続きは私の方でやりますから問題はありません」

 「チャールズ、早まるな!この婚約は既にマスコミにて発表されておる。今更撤回などできん」

 「そんなもの、お爺様が訂正すれば良いではないですか」

 「それがのう。マスコミに情報を流したのは儂なんじゃ。それをまた、儂が訂正するなど自分の無能を宣言するようなもの。よって、お断りじゃ。それにチャールズには、既に素晴らしい正妻がおるではないか!」

 「だから、側室にと言っているのです。おい、そこな娘!婚約と結婚は許す。しかし即離婚して我が側室にあがれ。この私がもらってやる」

 「恐れながら、我が妻になるものへの侮辱はいくら王子と言えど、ゆるせません。我がヨーク家を侮辱していると捉えてもよろしいか」

 アーサーも一歩も引く気は無いようだ

 「公爵ごときが生意気な!我が成敗してくれる!そこへなおれ!」

 「僭越ながら申し上げます。チャールズ様、私はまだ、貴方様の口から、ご自分の名前を伺っておりません。また、貴方様から私の名前を聞かれてもおりません。このような無作法な方に側室と言えど嫁ぐなど、真っ平御免でございます」

 「な、な、な、生意気な!女のくせに」

 「因みに、我が家もここの王室とは少なからず縁がある者。側室の話を強引に進めるのなら、フランツ王国とアトランティス共和国を敵に回すと覚えておいて下さいませ」

 エマも目一杯怒っている

 「これ!!やめんか!このことがソフィアにバレたら、儂は殺される!チャールズ、お前もだぞ!」

 「何をそんなに慌てておいでなのです?お爺様は国王なのですから、何も怖がる必要はないじゃないですか」

 「お前はソフィアを知らんからそんな呑気なことを言うておられるんじゃ。ソフィアが怒ったが最後、手がつけられなくなるんじゃから。思い出しただけで、背筋が凍るわい」

 「お爺様が恐れるソフィアとは誰ですか?」

 「馬鹿者!ソフィアはフランツの前代の王妃で、儂の妹じゃ。いくら王子といえど、ソフィアに対し不敬であるぞ!」

 「ふん!ここにいない者の事をなんて言おうと構わぬこと。お爺様はどこまで臆病なのか。もう、いっそのこと隠居なされたら如何ですか?」

 すると、そこに凛とした女性の声が響く

 「国王に隠居せよと申すか!このうつけ者が!影に隠れて聞いておればぬけぬけと、ここにいない者の事を何て言おうと構わぬとな?おまけに、我が孫の結婚にケチをつけるとは許さんぞよ。ふん!サプライズで孫のお祝いに駆けつけてみれば、この有様か。ほんにリンドールも落ちたものよのう。其方、名はなんと申すか。」

 そう言いながら、その美しい女性はゆっくりと近づいて来る
 年の頃は50代だろうが、それでも往時の美しかった頃の片鱗を伺うことができるほど、若々しく美しかった

 「お前こそ誰だ!私のことを尊称なしで呼ぶとは!無礼であろう!」

 チャールズは今にも掴みかからんばかりの勢いである
 対する女性の方は、随分と余裕のある不遜な言い回しをしてはチャールズを煽っている

 「私の名前が聞きたいか?それを聞いたが最後、其方は終わりぞ。それでも良ければ教えてやらんこともないが…。我が名はソフィア。第26代リンドール国王レオンの第一王女。そしてフランツ王国の前の王妃だ。その私に向かって若造ごときが"お前"呼ばわりするとは何事か。そこへなおれ!」

 ソフィアが手に持っていた扇子でチャールズの頭を思いっきり叩いた

 バシーン!

 扇子が折れたかもしれない

 チャールズは言葉も出ないようだった

 「くそ!くそぉ!」

 今にもチャールズの歯ぎしりが聞こえてきそうだ。拳に力を入れて堪えているらしく、怒りでわなわな震えているのがわかる

 そのチャールズの周りを扇で口元を隠したソフィアが、弧を描いてゆっくりと歩いている
 同時にゆったりと話しているのが、余計にその怖さを引き立てている

 「クスクス…。何か言いたいことがあれば言えばよいではないか。黙っていたのではわからんぞよ。さっきまで、あれ程熱弁しておったのは誰じゃ。のう、チャールズ」

 迂闊に話せないからか、アーサーも黙って見ている

 「ほんにいつのまにリンドールの男は無口になってしもうたのか。情けないことよ。さて、言われっぱなしでよいのかえ?リンドール国王よ。此奴から臆病者呼ばわりされても、知らぬふりか?つまらんのう。それでは私が暫く此奴をフランツにつれて帰るゆえ、承諾してたもれ、国王よ」

 「えっ?ソフィア、其奴をどうするのじゃ?」

 「もちろん、この私が直々に此奴の性根を叩きなおすに決まっておろう?おーほほほほ」
 
ーー わぁ~~、お祖母様、まるで魔王降臨だよ~!お祖母様が怒ったところ、初めて見たよ~。怖いよぉ~。もう絶対にお祖母様を怒らせちゃダメだぁ。結婚も、はい!もう決まり!逆らいませんから、大人しくフランツに帰って? ーー

 隣で見ていたアーサーも顔が引きつっている

 「陛下、此奴にご裁定をしてくださいましな」

 ソフィアが国王に向き直り、優雅に微笑んだ。国王はそれを見て慌てて我にかえったようだった

 「そ、そうだな。チャ、チャールズはソフィアがフランツに帰るまで、自室で謹慎。外出は許さん。連れて行け。ソフィア、これでよいか?」

 「まぁ、国王ともあろうお方が、そのようにアタフタなさって見苦しいこと。しっかりなさいませ」

 満足したのか、ソフィアの嵐のような登場劇に立ち尽くすエマを見るなり、破顔する

 「エマちゃん!会いたかったわ!結婚おめでとう!」

 というなり、ソフィアはエマに突撃し抱きついた。エマはその突撃をなんとか持ちこたえる

 「お、お祖母様、お元気そうでなによりです。この度はお祝いを頂きましてありがとうございました」
 
 「もう!全然フランツに来てくれないじゃない!留学だってリンドールじゃなくフランツにすればよかったのに!そしたら離宮から通えるのに!」

 ソフィアがエマの留学時の不満をつらつらと並べ始める。そして側に控えてそれを見ているアーサーに気づくと、優雅に微笑んだ

 「あなたがヨーク卿ね。ヨーク家の男は嫁一筋だと聞いているが誠か?」

 「はい。家訓により決められておりますので。私もそれに従うのみでございます」

 「其方の気持ちはどうなのじゃ」

 「はい。私はエマ嬢を愛しております。この命をかけても良いほどに」

 「信じてよいのじゃな?私の可愛い孫を頼んだぞ」

 「はい。お任せください。この命のある限り彼女を愛します」

ーー わぉ!歯が浮くかと思うほど激甘な言葉をはいてくれちゃったよ。まぁ、嫌じゃないけど…ーー

 アーサーが宣言したこの時から、二人の結婚へ向けての狂騒曲が始まった
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

断罪された私ですが、気づけば辺境の村で「パン屋の奥さん」扱いされていて、旦那様(公爵)が店番してます

さら
恋愛
王都の社交界で冤罪を着せられ、断罪とともに婚約破棄・追放を言い渡された元公爵令嬢リディア。行き場を失い、辺境の村で倒れた彼女を救ったのは、素性を隠してパン屋を営む寡黙な男・カイだった。 パン作りを手伝ううちに、村人たちは自然とリディアを「パン屋の奥さん」と呼び始める。戸惑いながらも、村人の笑顔や子どもたちの無邪気な声に触れ、リディアの心は少しずつほどけていく。だが、かつての知り合いが王都から現れ、彼女を嘲ることで再び過去の影が迫る。 そのときカイは、ためらうことなく「彼女は俺の妻だ」と庇い立てる。さらに村を襲う盗賊を二人で退けたことで、リディアは初めて「ここにいる意味」を実感する。断罪された悪女ではなく、パンを焼き、笑顔を届ける“私”として。 そして、カイの真実の想いが告げられる。辺境を守り続けた公爵である彼が選んだのは、過去を失った令嬢ではなく、今を生きるリディアその人。村人に祝福され、二人は本当の「パン屋の夫婦」となり、温かな香りに包まれた新しい日々を歩み始めるのだった。

行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される

めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」  ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!  テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。 『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。  新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。  アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。

王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~

石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。 食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。 そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。 しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。 何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。 扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる

春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。 夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。 形のない愛は信じない。 でも、出来立ての肉は信じてしまう。 肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。 これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。

脅迫して意中の相手と一夜を共にしたところ、逆にとっ捕まった挙げ句に逃げられなくなりました。

石河 翠
恋愛
失恋した女騎士のミリセントは、不眠症に陥っていた。 ある日彼女は、お気に入りの毛布によく似た大型犬を見かけ、偶然隠れ家的酒場を発見する。お目当てのわんこには出会えないものの、話の合う店長との時間は、彼女の心を少しずつ癒していく。 そんなある日、ミリセントは酒場からの帰り道、元カレから復縁を求められる。きっぱりと断るものの、引き下がらない元カレ。大好きな店長さんを巻き込むわけにはいかないと、ミリセントは覚悟を決める。実は店長さんにはとある秘密があって……。 真っ直ぐでちょっと思い込みの激しいヒロインと、わんこ系と見せかけて実は用意周到で腹黒なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:4274932)をお借りしております。

処理中です...