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*** 35 資源抽出の魔法ってすげぇな…… ***
しおりを挟むそれから俺は、2つ目の巨大砂山の前に移動して、さっき作ったマクロを組み合わせて新たなマクロを作ってみた。
「魔法マクロ定義 マクロ名【金(Au)抽出】
『魔法マクロ【金抽出初動】を実行せよ。魔法マクロ【インゴット形成(低)】を実行せよ』
以上、魔法マクロ定義終了」
おお、やっぱマクロ組み合わせると作業が早いな。
な、なんかこれも地球の表計算ソフトのマクロそっくりだな。
みるみるうちに金のインゴットの山が出来上がったわ……
でもさすがにこれちょっと疲れるな。
魔法マクロに必要なマナは砂に含まれているからまだいいんだけど、『マナ操作力』はかなりの量が必要みたいだ。
加護のネックレスに加えて『銀聖勲章』までつけたけど、この作業1回でこれほど消耗するのか……
まあ考えてみれば砂粒の中にある微細な金を、ごく少量ずつ抜き出してインゴットにしてるんだから当然かもしらん。
俺はアダムに精霊たちを600人ほど呼び出してもらった。
そうしてまずは光の精霊たちに『治癒(中級)』をかけてもらったんだ。
10人ほどの光の精霊たちの治癒を浴びると、俺の『マナ操作力』もかなり回復したようだ。
「それじゃあ光の精霊以外の精霊たちも、治癒の魔法を覚えてもらおうかな。
みんなで実際に俺にかけてみて、練習しながら覚えて行ってくれ」
「「「「「「「「 はぁ~い♪」」」」」」」」
その後俺は、最初の砂の山に戻り、インゴットの置き場所を指定しながらさまざまな物質用のマクロを作っていったんだ。
もちろんそのたびに精霊たちに治癒をかけてもらいながら。
どうやら光の精霊たちなら10人の治癒で足りるけど、他の精霊たちはまだ治癒に慣れていないせいで、30人ほどが必要だった。
まあみんなで魔法を使いまくって一緒に成長して行こうか。
それからも、俺は時間をかけて、さまざまな資源を『抽出』して行ったんだ。
「魔法マクロ定義 マクロ名【白金(Pt)抽出】」
「魔法マクロ定義 マクロ名【銀(Ag)抽出】」
「魔法マクロ定義 マクロ名【銅(Cu)抽出】」
「魔法マクロ定義 マクロ名【鉄(Fe)抽出】」
「魔法マクロ定義 マクロ名【アルミニウム(Al)抽出】」
ああ、鉄やアルミニウムは量が多いからな。
これらはインゴットの山を高くしておいたよ。
それにものすごい量の『マナ操作力』が必要だったんで5回ぐらいに分けて『抽出』したけど。
そうそう。
鉄の粉って普通はそのままだとけっこう危ないんだ。
酸化熱ですげえ高温になっちゃうから。
でも知ってた? 純度100%の鉄って酸素と反応しないんだよ。
つまりサビないんだ。色も綺麗な銀色だし。
さて、それじゃあついでにガラス原料用の資源抽出マクロも作っておくか……
「魔法マクロ定義 マクロ名【石英(SiO2)抽出】」
「魔法マクロ定義 マクロ名【無水炭酸ナトリウム(Na2CO3)抽出】
「魔法マクロ定義 マクロ名【炭酸カルシウム(CaCO3)抽出】
ふう、次は肥料原料資源だな。
「魔法マクロ定義 マクロ名【尿素(CO(NH2)2)抽出】」
「魔法マクロ定義 マクロ名【リン酸(H3PO3)抽出】」
「魔法マクロ定義 マクロ名【塩化カリウム(KCl)抽出】」
「魔法マクロ定義 マクロ名【酸化カルシウム(CaO)抽出】」
「魔法マクロ定義 マクロ名【炭酸マグネシウム(MgCO3)抽出】」
カリウムとマグネシウムは純粋元素だと結構ヤバい性質を持ってるからな。
純粋カリウムは水と混ざると爆発的に反応しちゃうし、マグネシウムも万が一火でもついたら大変だし。だからなるべく安定的な塩化物や炭酸塩の形で取り出したんだ。
後は念のため毒性物質を抜いておくか。
水銀やら砒素やらカドミウムやら放射性物質やらだ。
これらはすぐにアダムに厳重な隔離保管をお願いしたんだ。
そうして俺は、資源の山を前に感動していたんだわ。
それにしてもマジすげえよこれ。
銅が20万トンもあるぞ……
鉄なんか1億8000万トンもあるし、アルミニウムに至っては2億4000万トンもあるわ。
さすがは地殻中の存在率第3位の元素なだけのことはあるな。
ま、まあ、元が約30億トンもの砂だけどさ。
それに……
こんだけいろいろな物質を抜き出したら、残された砂がめちゃめちゃ綺麗な白砂になったんだ。
もともと綺麗な白砂だったけど、それがさらに……
ついでに今度は砂をよく『練成』して混ぜて石にしてみたんだけど、そしたらなんだか不思議な石になっちゃったんだ。
ああ、もちろんやっぱり白く輝くすっげぇ綺麗な石になったんだけど。
でもなんとなく粘性を感じる石なんだ。
それで試しに太さ5センチ、長さ1メートルほどの棒を作ってみたんだよ。
そしたらこの棒、表面は固いくせに折れにくいんだ。
つまり撓むんだ。
こ、これってさ。建材として最適じゃない?
折れにくくて外力を受けても撓んで受け流すって……
鉄並みの硬度で軟鉄以上の応力性を持っててしかも変質しないなんて……
な、なんかこの世界特有の成分でも入ってんのかな?
俺は試しに高熱の火球を出して、石に当ててみたんだ。
鉄だって溶けそうな温度なのに、石の表面がほんの少し溶けただけで後はなんともなかったんだよ。
ほんとに不思議な石だわ。
あ、そ、そうか……
まだマナが大量に含まれてるのか……
だからこんな変わった性質の石になったんだろうな。
あれ? ま、待てよ……
ということはだ。
これって『鉱物抽出:固体マナ』って出来るのかな?
そうしたら、固体のマナが手に入るのかな?
よ、よし…… やってみるか。
『鉱物抽出:固体マナ』!
うおおおおおお!
出た! 出たわ! それもすっげえたくさんのまっ白い粉!
これ5000万トンはあるぞ……
しかもまだまだ出続けてる……
あれ?
残った砂が少し濁った色になって来た……
そうか、あの白い色ってマナの色だったんか。
そ、それじゃあこの濁った色の残りの砂はどうなったのかな?
『練成:石化』!
あー、なんかダメな石になっちゃった……
なんか砕けやすい石だなあ。
ま、まあ俺の今の握力は50トンだから砕けても仕方ないんだけど……
でも、これじゃあ怖くって建材としては使えんわ。
あんまりマナを抜き出しちゃいけないんだな。
それじゃあ、マナ抜き取りは砂1立方キロあたり30万トンぐらいに抑えておくか。
それでもけっこうな量だし。
へへ、これで『マナ電池』の開発も進みそうだわ。
俺はマナ鉱石を30万トン分だけ抽出するマクロを作り、それ以外のマナを残った砂と再びよく混ぜて『練成』して、元の白く輝く砂に戻しておいた。
これでいつでも建材として使えるだろう。
非常時にはまたマナだけ抽出して使えそうだし。
「アダム、このマナ鉱石を使って『マナ電池』が作れないか研究してみてくれよ」
(かしこまりましたサトルさま)
さて、それじゃあまたマクロ合成をしてみるかな。
俺は2つ目の砂山の前に行って、また合成魔法マクロを作ったんだ。
「魔法マクロ定義 マクロ名【有用鉱物抽出】
『魔法マクロ【金(Au)抽出】実行!』
『魔法マクロ【白金(Pt)抽出】実行!』
『魔法マクロ【銀(Ag)抽出】実行!』
『魔法マクロ【銅(Cu)抽出】実行!』
『魔法マクロ【鉄(Fe)抽出】実行!』
『魔法マクロ【アルミニウム(Al)抽出】実行!』
『魔法マクロ【マナ抽出】実行!』
以上魔法マクロ定義終了」
へへ、出来た出来た。
これで「マクロ発動【有用鉱物抽出】」って唱えるだけで、自動的に各種純粋鉱物の山が出来上がっていくわけだ。
このマクロってほんと便利だよなあ。
でもまだ周囲では600人の精霊たちが俺に治癒をかけ続けてくれてるけど。
続いて俺は、【ガラス資源抽出】の魔法マクロを作り、【肥料原料抽出】と【危険物質抽出】の魔法マクロも作った。
そうして俺は、3つ目の砂の山のところに行って、出来上がった合成マクロを試してみたんだ。
「魔法マクロ定義、【資源抽出】
『魔法マクロ【有用鉱物抽出】を実行せよ、魔法マクロ【ガラス資源抽出】を実行せよ、魔法マクロ【肥料原料抽出】を実行せよ、【危険物質抽出】を実行せよ』
以上、魔法マクロ定義終了」
おおーっ!
す、すげぇ……
なんかさまざまな色の資源の山が、あっという間に出来上がっちゃったよ。
まあその代償として、俺ももう気絶寸前だったけどさ。
精霊たちも治癒の使い過ぎでちょっと疲れた顔してたんだ。
こき使ってごめんねって謝ってお礼も言ったんだけど、精霊たちは疲れながらも嬉しそうにしてたよ。
俺にお礼を言われた上に、自分たちの仕事の成果が目の前でキラキラ光っているのが嬉しかったらしい。
もちろん今晩はケーキ食べ放題だぞって言ったらもっと喜んでたわ。
それにしてもほんっとよかったよな。
『神界土木部』に砂の処分とか頼まなくて。
もし処分頼んでて今のこと知ったら、俺アタマ掻き毟ってゲーハーになっちゃうところだったわ。
「なあ、アダム。お前って俺の作ったマクロ、使えるのか?」
(申し訳ございません、サトルさま。
やはりその行為は『生産』に該当するため、戦闘行為や物品製造、練成と同様、わたくしども管理システムでは対応不能なのでございます。
どうかお許しくださいませ……)
「ま、まあそりゃそうだよな。
そんなことが出来るなら、システィも俺みたいな『使徒』は必要無かったんだろうから。それじゃあ、あの土の精霊たちって俺の作ったマクロ、使えるかな?」
(現段階では難しいでしょう。
マナの量はともかく、マナ操作力がまだ足りないでしょうから。
ですが、物質名を唱えて抽出を繰り返すうちにマナ操作力レベルが上がって使いこなせるようになると思われます)
「そうか…… 最初は物質名を唱えるふつーの『抽出』からか……
やつら物質名、覚えられるかな……」
(もしよろしければ、わたくしが唱えた後に唱和させるのはいかがでしょうか)
「それしか無さそうだな。それじゃあよろしく頼む」
(かしこまりました)
それから俺は残った白い砂を少し拠点近くに転移してもらい、その場で『練成』して試しに壁と塔を作ってみたんだ。
ああ、壁は厚さ10センチで高さ2メートル幅10メートルほどな。
塔は直径2メートルの筒状で、石の厚さは20センチ、高さは10メートルだ。
もちろん壁も塔も基礎はしっかり石で固めてある。
そこに塔を見つけたみんなが集まって来たんだ。
その中にはベギラルムもいた。
「なあ、ベギラルム。この壁を軽く殴ってみてくれないか?
耐久力を調べてみたいんだ」
「かしこまりましたサトル殿」
ベギラルムが軽く壁を殴った。
ぽん。
みよん。
なんかヘンな音がしたけど壁はなんともない。
「も、もう一度殴ってくれ。今度は少しだけ強く」
がん。
ぴよん。
「も、もう少し強く……」
どがん。
ぷよよ~ん。
なんか少し壁が揺れてるけど、やっぱりなんともない。
「も、もう少し強く……」
どががん。
がび~ん♪
やっぱり壁は無事だ。
壁の反応がだんだんおちょくってるような音になって来てるけど……
あ、ベギラルムの額にちょっと青筋が出てる。
「強く……」
どがが~ん!
がびびびびび~ん♪
「もっと強く!」
どごぉ~ん!
がびびびびびび~~~ん、びんびん♪
「さらに強く!」
ずごぉぉぉぉ~ん!
どがびん♪ がびびん♪ ずごごびん♪
「もっとだ!」
どどどどごぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ~ん!!!
ほぉあちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~っ♪
「最大の力で!」
あ、ベギラルムが光り始めた……
あれ身体強化だな……
あ、アタマに青筋が10本ぐらい立ってる。
今にも破裂しそう……
「ぬぅぅぅおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~っ!!!」
ずがどごどっこぉ~~~~~~ん!!!
いやぁ~ん♪
最後にひときわヘンな音を立てて、ようやく壁に小さな穴が開いた。
あ、ベギラルムが肩で息をしながら嬉しそうな顔になってる。
あ、小さくガッツポーズした。
「なあ、ベギラルム。
もしお前がこの石材で作られた城を攻略するとして、お前ならどうする?」
「はぁはぁ。見逃してやります……」
「は?」
「このようなヘンタイ的な石で出来た城は見逃してやって、次の城を攻略します!」
「…………」
「もしもどうしても攻略しろとお命じならば、上空から超大火球を落として城を包み、中の連中を蒸し焼きにしてやります。
物理衝撃波なら壁を破壊できるやもしれませぬが、万が一にもあのヘンタイ的な声がそこら中に響き渡るかもしれませぬ!
それでは某の神経が耐えられぬかもしれません!」
「そ、そうか……
それじゃあこの塔も試しに攻撃してもらおうかと思ってたんだが、ヤメとくか……」
「いえ…… ご命令とあらば……」
その夜は、一晩中ベギラルムの怒声と衝撃音とヘンタイ的な音が響き渡っていたそうだ。
翌朝、小さな小さな穴が開いた塔の脇に、満足そうな顔をした大悪魔が気絶して倒れていたそうである。
その小さな小さな穴は、通りがかりの土の精霊っ子が手を当て、「えいっ!」とひと言で元通りに修復し、ハナ歌を歌いながら去っていったそうだ……
その後、また盛大に青筋を立てたベギラルムに指示された悪魔っ子たちが20人ほど、先を尖らせた丸太を担いで塔に突撃して行ったんだが……
塔の弾性に弾かれて、「きゃ~~~っ!」っと悲鳴を上げながら跳ね飛んで行ったらしい。
まったく恐るべき石材である。
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