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運命の日

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「この辺りでいいだろ。」
ガンマは高所に陣を構えた。
「ローレンよここなら良いか?」
「敵側の退路も一本、なおかつこちらは見晴らしが良い、希望通りにございます。」
実際ここに陣を構えるのは私の案だが、相手側に怪しまれないためにガンマが考えたことにしている。
「すでにカーン王国は陣を構え終わっているな...皆のものこの戦の指揮は俺が取る。」
周りが口々に
「皇帝陛下自ら指揮を!?ローレン様は何をお考えなのだ?」
などと聞こえてきたが聞こえないフリをした。

しばらくして偵察に出ていた兵士が慌てて戻ってきた。
「報告!カーン王国進軍を開始しました!更に敵軍の中に、ライネス、マギア、アイリンの兵士を確認いたしました。」
予想通り洗脳した兵士を投入してきた。
「こちらも行動を起こす。後衛部隊と騎士団長の部隊は合図があるまで待機、前線部隊は3部隊に分かれよ、各部隊にマギア王国の魔導士を2人ずつ配備する。」
「王国、帝国の魔導士よ魔術探知を使い敵軍の情報を伝えよ!」
皇帝の号令で魔導士達が一斉に探知し始めた。
すると次々に報告が上がってくる。
「敵前線部隊全てに何らかの魔術反応あり、後方は全く反応ありません!」
全員同じ様な報告だ、だとしたら前線部隊が洗脳を受けてる軍と見て間違いない。
「前線部隊は殺さず全て無力化し捕縛せよ、決して殺しはするな!後方部隊に関しては交戦を許可する。」 
皇帝の後に続けて私が補足する。
「捕縛した兵士は全て解除の魔法をかけた後に本陣へ。」
これで洗脳されてる人々は何とかなるだろう。

「この戦に3カ国の命運が掛かってることを忘れるな!」
「進軍せよ!!」
皇帝の一言で一斉に軍が動き出した。       

移動中私は前線部隊に忠告をした。
「おそらく、相手は我々を洗脳し手駒にする魂胆のはずだ、少数とはいえ敵魔導士に注意しろ。何があってもマギア王国の魔導士は守り抜け、でないと洗脳されて壊滅するぞ。」
私は念を押した。

しばらく歩いとると報告が入った。
「この先に敵軍あり、後数分で接触する模様。」
「全軍戦闘体制をとれ!出来るだけ相手を傷つけるなよ!陛下も言っておられたが殺すのはもってのほかだからな!」
敵を確認した。
「全軍突撃!」
私の合図を機に戦いの火蓋が落とされた。
我が軍は負傷者を出しながらも敵の前線を確実に崩していった。
まだか、まだ奴らは動かないのか?
そう思い始めた時だった。
「報告します。敵前線壊滅、それと同時に後方部隊が移動を開始、ここに到着まで残り5分ほどだと思われます。」
ようやく動いたか、敵後方が動くとなると...
立て続けに報告が来た。
「我が軍後方に伏兵あり!真っ直ぐこちらに向かってきております!」
「それを待っていた!!魔導士部隊、至急本陣へ合図を出せ!」
命令を受けた魔導士が空に巨大な爆発を起こした。
「合図か...後方部隊は直ちに伏兵の対処に当たれ、騎士団長の部隊はマギア王国の魔導士と共に団長、副団長の二手に分かれ待機場所まで移動を開始せよ。」
後方部隊は猛スピードで伏兵に近づき奇襲を仕掛けた。
「混乱していてもそれなりに応戦してくるか...だが時間さえ稼げればそれで良い。」
伏兵と交戦開始してすぐ、左右から王国、共和国が現れたと情報が入ってきた。
「よし、解除魔法を発動せよ!」
二手に分かれ待機していた部隊は、ほぼ同じタイミングで解除魔法を発動した。
それにより洗脳されてた2国は正気を取り戻し、作戦通りカーン王国軍を取り囲むように陣を構えた。

マギアナとアイザックはガンマと合流し戦況を聞いていた。

「まず、洗脳されていた私たちを解放していただき感謝します。」

「それで、今の状況はどうなってる?」

「カーンに洗脳されていた我々の軍は全て解除し、ここ本陣にて治療を受けている。」

「死者は出ましたか?」

「出てはいないが、無力化するにあたり軽い怪我人は出たと報告を受けている。」

「流石に無傷で無力化は無理だよな。それはしょうがない。」

「しかし我々の軍はあそこに配置で本当に良かったのでしょうか?敵本陣に近いですが戦地からは遠いのではありませんか?」
「マギアナ王女よ、わしらの仕事は撤退してきたエーデルの捕縛だったはずだぞ?」

「それはそうなのですが...」

「お心遣い感謝いたしますマギアナ王女、しかしながら、この戦の元凶はライネス帝国元皇帝エーデルが仕掛けてきた戦ゆえ、身内の所業は我々帝国で解決する必要があるのです。」

「ですが、我々にも借りはあります。助けられっぱなしと言うのわなんとも...」

「ですから、敵陣を囲むように陣を敷いてもらったのですよ。」
ガンマの説明に納得していないマギアナだったが帝国のいざこざなので仕方がなく納得した。

しばらくして、少しずつ戦が終わりに近づきつつあった。

敵の動きに衰えが見え始めた、伏兵も到着する気配がないし、一気に攻めるならここしかないか。
「お待たせ~間に合った?」
マチルダ率いる騎士団が合流した。
「ここに騎士団がいるってことは伏兵は片付けたのか?」
「もちろん、じゃなきゃここにはいないわよ。」
これなら行ける。
「全軍、このまま一気敵本陣へ流れ込む!進めー!!」
マチルダに後ろを任せながら敵本陣へ駆け始めた。
「騎士団は前線部隊の援護に回ります。誰1人追い付かせないように!」

邪魔が入らなかったおかげで私達は敵本陣へ到着した。
「お久しぶりですエーデル様...貴方を拘束させていただきます。」
「まさかお前が前線に出ていたとはな、通りで姿が見えなかったわけだ。」
笑いながらエーデルは話した。
「しかし何故俺の洗脳が通じない?貴様も俺と同じように禁術の研究でもしたのか?だとしたら俺と同じで帝国を追放されるはずだよな?」
笑みは消え怒りに満ちた表情で私に問いただす。
「俺はお前の告発のせいで帝国を追放された。王の立場も無くなり、ただの平民として生きていけと言われた気持ちがお前にわかるか?」

分からないし、分かりたくもない。
「だから俺は、俺を追放した帝国とお前に復讐するために入れ替わりの魔法を完成させ、それを改良、洗脳の魔法も完成させた!それを使いカーン王国国王にまでなったと言うのに何故通じない?一体何をした!!」
「やはり動機は帝国と私への復讐だったか、カーン王国前国王を殺害し洗脳を使って国を乗っ取ってまで復讐がしたかったのか!!」
あまりにもくだらない理由だったので腹を立てた私は、口調が荒くなっていた。
「大体お前が禁術の研究などしなければ追放されることも無かった。自分が犯した過ちを肯定して、追放した我々に復讐心を抱くなど馬鹿馬鹿しいにも程があるぞ!」
「うるさいうるさいうるさい!!!!何もかもお前が悪いんだ、お前さえいなければ私は今頃4国を束ねる皇帝になっていたんだぞ!」
「もういい、喋るな耳障りだ。こいつを今すぐ連行しろ!」
兵士が連行しようとしたがエーデルはカーンの兵士を盾に逃走を図った。
「ここで逃したらめんどくさくなるぞ!魔導士よ待機している2国の軍に連絡を入れてくれ!」
連絡はすぐに伝わり2国はすぐさま退路を封鎖しエーデルを捕縛した。
「帝国だけでなく、何故お前らまで洗脳が解けてる!一体何がどうなってるんだ!」
「その事は帝国に戻ってから他のものが教える。連れて行け!」 
エーデルは何かしらをずっと叫びながら連れて行かれた。
「この戦私達の勝利だ!今すぐ陛下へ連絡を入れろ!」
すぐに伝令を走らせた。
大敗し処刑され、2年前に戻ってきたあの日からようやく勝利へと歴史を変えるとこまで来たのだ。
不安要素はまだるが、今はこの勝利の喜びを感じていたかった。
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