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この世界に存在しなもの

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俺と父が対決すると聞きつけ、家にいる人はほとんど中庭に集まった。その中には心配そうにコチラを見つめる母の姿もあった。

「これだけの見物人がいるんだ、これで負けた時の言い訳はできないな」

「最初から負けることなど考えておりません、勝つことだけを考えております」

どうやら、俺の態度が気に入らなかったらしく、父は怒鳴った。

「ならば完膚なきまで叩きのめし、2度と歯向かえないようにしてやろう」

父は使い魔を召喚した。

「『サモン』アイスゴーレム!」

氷塊の巨人が召喚された。

流石はこの国のトップ3の家の主人だ。

「コン頼んだ」

その光景は、ただの狐と巨人。どちらが強いかなど一目瞭然だ。

「やれ!アイスゴーレム!」

父の掛け声と共にゴーレムが襲いかかって来た。

「ひでぇ、こんなの一方的じゃないか」

見に来ていた人が口々に同情をする。

「所詮その程度、これでよく勝てるなどと言えたな!」

激しい攻撃を避ける事しかできないコン

「コン!やっぱりダメなのか....」

ゴーレムがコンの動きを捉え、潰されそうになったのを見て俺は走り出し、コンの前に立っていた。

「死ぬつもりか!馬鹿者!」

これはまずいかも

「あ、死んだ....」

ゴーレムの拳が当たる瞬間目を瞑ったその時、魔力とは違う何かを感じた。

「死んで....ない!?」

目を開けるとゴーレムの腕が溶けていた。

「何が起こった!」

ここにいる全員が状況を理解できていなかった。

「コン....なのか?」

コンはゴーレムと同じくらいに大きくなり、尻尾が9本になっていた。

「一体何が起こった?何だその使い魔わ!」

父と見に来ていた人たちは困惑していた。だが、コンの姿を見てすぐに分かった、九尾の狐だ。

そしてコンはアイスゴーレムを青い炎で溶かし消滅させた。

「中位の使い魔だぞ!?それを一瞬で!?ならば!」

今度は一つ目の巨人、サイクロプスを召喚した。

「それはいくら何でもやり過ぎでわ!」

周りから疑問の声が上がって来た。

「黙れ!勝たなければ、俺が魔力無しに負けるわけには行かんのだ!」

「今のコンの状態で連戦は無理だ、一か八かやってみるか」

アイスゴーレムとの戦闘で傷ついたコンを下げ再び召喚を試みた。

「無駄だ!魔力無しのお前が召喚など!」

「やってみないと分からないだろ!『サモン』!」

相手のサイクロプスは鬼みたいなもの、だったら鬼を召喚すればいい。

強く念じると今度は赤鬼が召喚された

「また、俺の知らない魔物だと!だが今回は上位の召喚獣だそう簡単にはっ!?」

鬼はサイクロプスを一撃で倒し帰っていった。

「嘘だろ、上位の使い魔を一撃で?本当にカイラ様は魔力無しなんだよな?」

驚きの声が周りから聞こえてくる。

「俺が負けた、しかも一撃で?魔力無しの息子に?」

困惑している父に近づいた。

「父様、約束は守ってもらいますからね」

「分かっている....一つだけ聞かせてくれ」

「何でしょう?」

「お前は何者なんだ?」

「僕は、カイラ・ティア。あなたの息子、ティア家の三男ですよ」

「そ、そうか」

何故か化け物でも見ているような目をしていた気がする。

「父様、もう家に入りましょう」

「そうだ、お前達も持ち場に戻り自分の仕事をしなさい!」

派手に暴れたせいで中庭はめちゃくちゃだ。

庭師が泣いてもおかしくない荒れようだ。可哀想に

父の部屋に戻った。

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