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冒険者編
第51話 ★外伝 その他の転生者 ムネノリン・オマールン 1
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──その男は、前世の記憶を取り戻した。
前世の記憶を取り戻した時、男は山賊として生活していた。
女神歴1010年。
男の年齢は、まだ子供と言っても差し支えない年頃であったが、見た目は三十を優に超えていた。
実年齢と肉体年齢との間に、大きな開きがあった。
肉体年齢がどのくらいかは、正確に知りようが無い。
男の名前は、ムネノリン・オマールン。
ラムダドーラ王国のオマールン家に生まれた、れっきとした貴族である。
ムネノリンは、成長が異様に速かった。
転生特典として、『成長速度三倍』のスキルが付与されていたからだ。
しかし、それを不気味に思ったオマールン家の面々は、世間体も考慮してムネノリンを放逐することにした。
オマールン家と繋がりのある山賊団に、押し付けるように引き取らせた。
──ただ、彼らにも罪悪感があったのか、ムネノリンの従者として魔法使いを一人付けてやった。
魔法使いは、この世界でゲームチェンジャーとなる、貴重な戦力だ。
低レベルな魔法使いでも、一人いればその集団の戦力は飛躍的に向上する。
これで山賊団の中でも、無下にはされないだろう。
──と、オマールン家の人々は考えた。
山賊団でのムネノリンの待遇は、悪くはなかった。
幹部にはなれなかったが、組織に縛られずに活動できる自由を与えられていた。
魔法使いの従者がいることもあるが、ムネノリンに付与された才能、『特別扱い』が効力を発揮しているからだ。
山賊団内で放任されていたようなものだが、自分の好きに動けることにムネノリンは満足していた。
ムネノリンはこの世界で、『獲物』を狩ることに夢中になった。
獲物というのは旅人や行商人、冒険者といった者達のことだ。
強そうな獲物の相手は、無理にせずにやり過ごし、弱そうな奴に狙いを付ける。
ムネノリンは獲物を見つけると、魔法使いの従者に魔法で先制攻撃させる。
大抵の獲物はそれだけで戦意と戦力をなくし、戦闘不能になる。
──その後は、やりたい放題だ。
武器を手に取り、最後の悪足搔きをする獲物を、いたぶりながら殺した。
必死に命乞いをする弱者を、ゆっくり切り刻んで殺すことを、彼は心の底から楽しんでいた。
特に女は、念入りに凌辱してから殺した。
ムネノリンは、山賊人生をエンジョイしていた。
しかし──
彼が暴れ回った結果、騎士団の巡回頻度が上がる。
ムネノリンが手当たり次第に旅人を襲っていたので、騎士団でも問題が表面化し、対策に乗り出したのだ。
それまで彼を放任していた山賊のお頭からも、自重するように叱られた。
──やりたい放題のムネノリンも、お頭の言い付けは守った。
旅人を襲うのは一週間に一度から、一か月に一度に減らした。
ムネノリンは、強者に逆らうことはしない。
ムネノリンは一度だけ、騎士団とすれ違ったが、まったく勝てる気がしなかった。
その時は、道の端で大人しく顔を伏せて、旅人の振りをしてやり過ごした。
(騎士団に勝てれば問題はねーが、どうやっても勝てそうにない。クソッ)
そんな日々を過ごすうちに、ムネノリンにも部下が増えた。
冒険者崩れや、家出してきた子供や、自力で生きていけない孤児達だ。
その部下の中に、何人か転生者がいた。
彼らは同じ転生者と言うことで、すぐに意気投合した。
ムネノリンが特に気に入ったのは、シンッヤという名前のサル顔の貧相なチビだ。
仲間内では、子ザルというニックネームで親しまれていた。
お調子者で笑いのセンスがあり、人を持ち上げるのが得意な男だった。
初めのうちはムネノリンも、子ザルのことを気に入っていた。
しかし──
なぜか、だんだんと気に食わなくなっていった。
ある時──
山道を急ぎ早に歩く、貧相な旅人を見かけた。
冴えない顔の中年男だった。
普通の山賊であれば、そんな金にならない奴は相手にしない。
しかし、ムネノリンは違う。
金は二の次で、獲物をいたぶって殺すことが目的だった。
ムネノリンは部下と共に、男を囲み生け捕りにする。
男は金を払うから見逃してくれ、と命乞いをしている。
ムネノリンはそれを、当然のように無視した。
(さて、コイツをどう料理してやろうか──)
ムネノリンは思案する。
──ある考えが、浮かんだ。
「シンッヤ──お前、コイツの首を斬れ……」
ムネノリンは自身の愛刀を、シンッヤに渡して命じた。
ムネノリンが、シンッヤに感じている苛立ち──
それがどこから来るものなのか、ようやく解った。
この調子のいい子ザルは、お道化て人を笑わせ仲間に溶け込んでいるが、自分の手を汚したことは一度もないのだ。
ムネノリンからシミターを受け取ったシンッヤは、震える手で──
必死で命乞いをする、旅人の首に刃を立てる。
その姿勢のまま、十分が経過した。
しかし、シンッヤは男の首を切れない。
業を煮やしたムネノリンは、シンッヤからシミターを取り上げて、旅人の首を切り落とした。
その日からシンッヤは、仲間内で苛められるようになった。
前世の記憶を取り戻した時、男は山賊として生活していた。
女神歴1010年。
男の年齢は、まだ子供と言っても差し支えない年頃であったが、見た目は三十を優に超えていた。
実年齢と肉体年齢との間に、大きな開きがあった。
肉体年齢がどのくらいかは、正確に知りようが無い。
男の名前は、ムネノリン・オマールン。
ラムダドーラ王国のオマールン家に生まれた、れっきとした貴族である。
ムネノリンは、成長が異様に速かった。
転生特典として、『成長速度三倍』のスキルが付与されていたからだ。
しかし、それを不気味に思ったオマールン家の面々は、世間体も考慮してムネノリンを放逐することにした。
オマールン家と繋がりのある山賊団に、押し付けるように引き取らせた。
──ただ、彼らにも罪悪感があったのか、ムネノリンの従者として魔法使いを一人付けてやった。
魔法使いは、この世界でゲームチェンジャーとなる、貴重な戦力だ。
低レベルな魔法使いでも、一人いればその集団の戦力は飛躍的に向上する。
これで山賊団の中でも、無下にはされないだろう。
──と、オマールン家の人々は考えた。
山賊団でのムネノリンの待遇は、悪くはなかった。
幹部にはなれなかったが、組織に縛られずに活動できる自由を与えられていた。
魔法使いの従者がいることもあるが、ムネノリンに付与された才能、『特別扱い』が効力を発揮しているからだ。
山賊団内で放任されていたようなものだが、自分の好きに動けることにムネノリンは満足していた。
ムネノリンはこの世界で、『獲物』を狩ることに夢中になった。
獲物というのは旅人や行商人、冒険者といった者達のことだ。
強そうな獲物の相手は、無理にせずにやり過ごし、弱そうな奴に狙いを付ける。
ムネノリンは獲物を見つけると、魔法使いの従者に魔法で先制攻撃させる。
大抵の獲物はそれだけで戦意と戦力をなくし、戦闘不能になる。
──その後は、やりたい放題だ。
武器を手に取り、最後の悪足搔きをする獲物を、いたぶりながら殺した。
必死に命乞いをする弱者を、ゆっくり切り刻んで殺すことを、彼は心の底から楽しんでいた。
特に女は、念入りに凌辱してから殺した。
ムネノリンは、山賊人生をエンジョイしていた。
しかし──
彼が暴れ回った結果、騎士団の巡回頻度が上がる。
ムネノリンが手当たり次第に旅人を襲っていたので、騎士団でも問題が表面化し、対策に乗り出したのだ。
それまで彼を放任していた山賊のお頭からも、自重するように叱られた。
──やりたい放題のムネノリンも、お頭の言い付けは守った。
旅人を襲うのは一週間に一度から、一か月に一度に減らした。
ムネノリンは、強者に逆らうことはしない。
ムネノリンは一度だけ、騎士団とすれ違ったが、まったく勝てる気がしなかった。
その時は、道の端で大人しく顔を伏せて、旅人の振りをしてやり過ごした。
(騎士団に勝てれば問題はねーが、どうやっても勝てそうにない。クソッ)
そんな日々を過ごすうちに、ムネノリンにも部下が増えた。
冒険者崩れや、家出してきた子供や、自力で生きていけない孤児達だ。
その部下の中に、何人か転生者がいた。
彼らは同じ転生者と言うことで、すぐに意気投合した。
ムネノリンが特に気に入ったのは、シンッヤという名前のサル顔の貧相なチビだ。
仲間内では、子ザルというニックネームで親しまれていた。
お調子者で笑いのセンスがあり、人を持ち上げるのが得意な男だった。
初めのうちはムネノリンも、子ザルのことを気に入っていた。
しかし──
なぜか、だんだんと気に食わなくなっていった。
ある時──
山道を急ぎ早に歩く、貧相な旅人を見かけた。
冴えない顔の中年男だった。
普通の山賊であれば、そんな金にならない奴は相手にしない。
しかし、ムネノリンは違う。
金は二の次で、獲物をいたぶって殺すことが目的だった。
ムネノリンは部下と共に、男を囲み生け捕りにする。
男は金を払うから見逃してくれ、と命乞いをしている。
ムネノリンはそれを、当然のように無視した。
(さて、コイツをどう料理してやろうか──)
ムネノリンは思案する。
──ある考えが、浮かんだ。
「シンッヤ──お前、コイツの首を斬れ……」
ムネノリンは自身の愛刀を、シンッヤに渡して命じた。
ムネノリンが、シンッヤに感じている苛立ち──
それがどこから来るものなのか、ようやく解った。
この調子のいい子ザルは、お道化て人を笑わせ仲間に溶け込んでいるが、自分の手を汚したことは一度もないのだ。
ムネノリンからシミターを受け取ったシンッヤは、震える手で──
必死で命乞いをする、旅人の首に刃を立てる。
その姿勢のまま、十分が経過した。
しかし、シンッヤは男の首を切れない。
業を煮やしたムネノリンは、シンッヤからシミターを取り上げて、旅人の首を切り落とした。
その日からシンッヤは、仲間内で苛められるようになった。
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