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聖女を追放した国の物語
第1話 破滅する運命
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俺は異世界に転生した転生者だ。
前世はブラック企業に勤めていた社畜で、過労で死んだ。
そんなこともあって異世界に転生するなら、のんびりスローライフ系がいいと思っていたのだが――
気付いたら森の中にいた、とかいう展開にはならなかった。
俺の転生は、チート能力で森を切り開いてのんびり暮らす物語ではない。
しかし、落胆することもない――
なんと、転生した俺の身分は王子様だった。
権力者だ。
のんびりゆっくり、自分勝手に生きていけるのではないか?
この時は、そう思っていた。
俺が転生したのは、中世ヨーロッパをモチーフにした世界らしい。
前世の記憶を思い出したのは、物心ついて暫くしてからだった。
それから十歳になる現在まで、身の回りの世話は綺麗なメイドがしてくれるし、食うに困ることもない。礼儀作法や社交なども、小さな頃から身についているので、習得に困ることもなかった。
俺は転生する前に、女神に会っている。
メルド何とかいう女神によると、ここは彼女が適当に作った異世界らしい。
本命の異世界は別にあり、その前の練習ということだ。
ようは試作の異世界に、俺は連れて来られたらしい。
試作じゃなくて本命の異世界に転生させてほしいと頼んでみたが、俺はこっちの『あるキャラクター』と相性が良いのでこっちにしたそうだ。
なんでもこの世界は、小説作品を再現して作られているらしい。
どんな作品を基にしたかは聞き逃した。
そして、今のところ見当も付かない。
まあ、分からないことを気にしても仕方がないし、どうでもいいか。
実際にこの世界で暮らしている俺としては、生活に困らなければ問題はない。
一応、転生特典も貰っているが、使う必要も予定もない。
衣食住にも満足している。
俺は自室で、お茶を飲みながらチェスのようなボードゲームを嗜んでいる。
相手は俺のお気に入りのメイドで名前はリリム、男爵家の三女で俺と同い年の可愛い小動物系の女の子だ。
「リリム、あと三手で詰むぞ……」
「あぅぅ、か、堪忍してください。アレス様」
「ダメだ。容赦しない。勝負の世界は厳しいのだ」
「そんな、あ、あの――メイド長に怒られてしまいます」
この勝負にはリリムの唇が賭けられている。
俺が宣言して一方的に賭けたのだが、気の弱いリリムは拒否できなかった。
まあ、相手はメイドなのだから、賭けなどせずに無理やり命令して、キスするように言っても良いのだが――
俺がリリムを贔屓し過ぎているということで、メイド長のゼニアスからリリムへのセクハラ禁止令が出されているのだ。
正確には俺の母親である王妃からの命令だ。
多少触るくらいなら大目に見て貰えるが、これ以上行為がエスカレートするようなら、リリムは俺の担当から配置換えをすると言われている。
性欲が強いこと自体はいい事なのだが、管理する必要アリと判断されたらしい。
ゼニアスは全メイドに、俺からセクハラ行為をされた場合は速やかに報告するよう厳命している。
管理体制が敷かれてしまった。
そんなこともあり、俺のリリムへのアプローチは減ったのだが、まだ諦めたわけではなかった。
ようはバレない様にやれば良いのだ。
まずリリムに、俺からエッチなことはされていないと、嘘を報告をするように言ってみた、しかし真面目な性格のリリムは、ありのままを報告してしまう。
俺がリリムにエッチなことをすると、洩れなくゼニアスにバレる。
その行為がエスカレートしていけば、リリムは異動させられてしまうだろう。
そこで俺は一計を案じ、賭けという形を取ってみた。
キスをさせろ、そしてそのことをメイド長に報告するな。
真面目な性格のリリムだから、賭けの内容を忠実に守るだろう。
さあ、後一手でリリムは詰む。
というところで――
コン、コン、コン、コンッとノックの音が響いた。
「失礼いたします。アレス様――」
「どうした? ゼニアス、こんな時間に珍しいな」
「申し訳ございません。少し……ん? リリム、様子が変ですね」
ゼニアスはジロリとリリムを見つめる。
賭けの内容が、ゼニアスにバレてしまった。
リリムとのキスはお預けである。
「前にも申し上げましたが、リリムをあまり贔屓し過ぎると、異動になるかもしれません――王子のお手付きともなれば政治的な……」
「その辺は、ゼニアスが黙っていてくれればいいだろ?」
「そうはまいりません。アレス様のご寵愛は、きちんと把握し管理しておかなければ――」
俺は廊下を歩きながら、ゼニアスの説教を受けている。
向かう先は応接室。
なんでも国務大臣とやらが、俺を訪ねてきたらしい。
「じゃあさ、誰だったら良いの? ゼニアスは?」
俺はそう尋ねながら、腕を伸ばしてゼニアスの尻をさわる。
「あの、その辺りは……王妃様がご判断なされますので――」
ゼニアスは頬を染めながら、今すぐには答えられないと言いよどむ。
試しにケツをさわってみたが、中々反応が可愛いじゃないか――
「で、俺に何の用なの? その、なんとかいう大臣」
「ダルフォルネ様は国政のトップ――実力者ですよ。不正を行ったことのない誠実な方で、国王陛下の信任厚い方です。顔と名前は覚えておいて下さい」
ふむ、そんな奴がわざわざ俺に話があるとは、いったい何の話があるのだろうか。
俺が応接室に入ると、直立不動で立っている隙のなさそうな中年男がいた。
俺が席に座って相手にも促すと、ダルフォルネも着席して、話が始まる。
「――で、何用だ?」
「実は――、王子様のお耳に入れておきたい、重大事があります」
俺が黙って頷くと、ダルフォルネは続けて話し出した。
「我が領内に、豊穣の地母神ガイア様から、祝福と加護を授けられた――次世代の『聖女』が現れたのです」
「ほう――」
『聖女』、か――メリド何とかいう女神がこの世界を創るうえで、パクリ……もとい、参考にした作品があったはずだ。
聖女という物語の主役クラスが出てくれば、その作品の見当がつくかもしれない。
まあ、俺が読んだこともない作品の可能性もあるが――
「私は聖女に、この国に神の加護を授けるように要請いたしました。それから一年後の各地の農作物の収穫は大幅に改善したのです」
「うむ」
一年後の状況を見て判断したのは、聖女を名乗る人物が嘘をついている可能性もあるからだという。
「この方は本物だと判断し、国の規定通りに領主である私の娘として養女に迎え、国王陛下にご報告いたしました。しかし――その時にはすでに別の者が『聖女』として報告されており、教会より正式に称号が授けられておりました」
「ほう……」
生真面目な性格のダルフォルネが、各地の近年の農作物の収穫量と比較し、時間をかけているうちに、別の者が『聖女』を用意して報告したらしい。
聖女が偽物だろうと、この国に地母神の加護がかかっていることに変わりは無い。
「恐らく今年の豊作を見て、聖女をでっち上げたのでしょう」
「それで、なぜその話を俺に?」
「その偽聖女ローゼリアが、あなた様の婚約者に内定したのです」
「あぁ……、そうか――」
俺は思い出した。
偽聖女ローゼリア、その名前を聞いた時に、思い出すことが出来た。
そうだ――
この世界は、偽聖女と断罪されたヒロインが、国から追放されるところから始まる小説で――
俺は聖女を追放し、転落人生を歩むことになる『嫌われ役の王子』アレスだ。
なんてことだ。
俺とこの国には、この先――破滅が待ち構えている。
前世はブラック企業に勤めていた社畜で、過労で死んだ。
そんなこともあって異世界に転生するなら、のんびりスローライフ系がいいと思っていたのだが――
気付いたら森の中にいた、とかいう展開にはならなかった。
俺の転生は、チート能力で森を切り開いてのんびり暮らす物語ではない。
しかし、落胆することもない――
なんと、転生した俺の身分は王子様だった。
権力者だ。
のんびりゆっくり、自分勝手に生きていけるのではないか?
この時は、そう思っていた。
俺が転生したのは、中世ヨーロッパをモチーフにした世界らしい。
前世の記憶を思い出したのは、物心ついて暫くしてからだった。
それから十歳になる現在まで、身の回りの世話は綺麗なメイドがしてくれるし、食うに困ることもない。礼儀作法や社交なども、小さな頃から身についているので、習得に困ることもなかった。
俺は転生する前に、女神に会っている。
メルド何とかいう女神によると、ここは彼女が適当に作った異世界らしい。
本命の異世界は別にあり、その前の練習ということだ。
ようは試作の異世界に、俺は連れて来られたらしい。
試作じゃなくて本命の異世界に転生させてほしいと頼んでみたが、俺はこっちの『あるキャラクター』と相性が良いのでこっちにしたそうだ。
なんでもこの世界は、小説作品を再現して作られているらしい。
どんな作品を基にしたかは聞き逃した。
そして、今のところ見当も付かない。
まあ、分からないことを気にしても仕方がないし、どうでもいいか。
実際にこの世界で暮らしている俺としては、生活に困らなければ問題はない。
一応、転生特典も貰っているが、使う必要も予定もない。
衣食住にも満足している。
俺は自室で、お茶を飲みながらチェスのようなボードゲームを嗜んでいる。
相手は俺のお気に入りのメイドで名前はリリム、男爵家の三女で俺と同い年の可愛い小動物系の女の子だ。
「リリム、あと三手で詰むぞ……」
「あぅぅ、か、堪忍してください。アレス様」
「ダメだ。容赦しない。勝負の世界は厳しいのだ」
「そんな、あ、あの――メイド長に怒られてしまいます」
この勝負にはリリムの唇が賭けられている。
俺が宣言して一方的に賭けたのだが、気の弱いリリムは拒否できなかった。
まあ、相手はメイドなのだから、賭けなどせずに無理やり命令して、キスするように言っても良いのだが――
俺がリリムを贔屓し過ぎているということで、メイド長のゼニアスからリリムへのセクハラ禁止令が出されているのだ。
正確には俺の母親である王妃からの命令だ。
多少触るくらいなら大目に見て貰えるが、これ以上行為がエスカレートするようなら、リリムは俺の担当から配置換えをすると言われている。
性欲が強いこと自体はいい事なのだが、管理する必要アリと判断されたらしい。
ゼニアスは全メイドに、俺からセクハラ行為をされた場合は速やかに報告するよう厳命している。
管理体制が敷かれてしまった。
そんなこともあり、俺のリリムへのアプローチは減ったのだが、まだ諦めたわけではなかった。
ようはバレない様にやれば良いのだ。
まずリリムに、俺からエッチなことはされていないと、嘘を報告をするように言ってみた、しかし真面目な性格のリリムは、ありのままを報告してしまう。
俺がリリムにエッチなことをすると、洩れなくゼニアスにバレる。
その行為がエスカレートしていけば、リリムは異動させられてしまうだろう。
そこで俺は一計を案じ、賭けという形を取ってみた。
キスをさせろ、そしてそのことをメイド長に報告するな。
真面目な性格のリリムだから、賭けの内容を忠実に守るだろう。
さあ、後一手でリリムは詰む。
というところで――
コン、コン、コン、コンッとノックの音が響いた。
「失礼いたします。アレス様――」
「どうした? ゼニアス、こんな時間に珍しいな」
「申し訳ございません。少し……ん? リリム、様子が変ですね」
ゼニアスはジロリとリリムを見つめる。
賭けの内容が、ゼニアスにバレてしまった。
リリムとのキスはお預けである。
「前にも申し上げましたが、リリムをあまり贔屓し過ぎると、異動になるかもしれません――王子のお手付きともなれば政治的な……」
「その辺は、ゼニアスが黙っていてくれればいいだろ?」
「そうはまいりません。アレス様のご寵愛は、きちんと把握し管理しておかなければ――」
俺は廊下を歩きながら、ゼニアスの説教を受けている。
向かう先は応接室。
なんでも国務大臣とやらが、俺を訪ねてきたらしい。
「じゃあさ、誰だったら良いの? ゼニアスは?」
俺はそう尋ねながら、腕を伸ばしてゼニアスの尻をさわる。
「あの、その辺りは……王妃様がご判断なされますので――」
ゼニアスは頬を染めながら、今すぐには答えられないと言いよどむ。
試しにケツをさわってみたが、中々反応が可愛いじゃないか――
「で、俺に何の用なの? その、なんとかいう大臣」
「ダルフォルネ様は国政のトップ――実力者ですよ。不正を行ったことのない誠実な方で、国王陛下の信任厚い方です。顔と名前は覚えておいて下さい」
ふむ、そんな奴がわざわざ俺に話があるとは、いったい何の話があるのだろうか。
俺が応接室に入ると、直立不動で立っている隙のなさそうな中年男がいた。
俺が席に座って相手にも促すと、ダルフォルネも着席して、話が始まる。
「――で、何用だ?」
「実は――、王子様のお耳に入れておきたい、重大事があります」
俺が黙って頷くと、ダルフォルネは続けて話し出した。
「我が領内に、豊穣の地母神ガイア様から、祝福と加護を授けられた――次世代の『聖女』が現れたのです」
「ほう――」
『聖女』、か――メリド何とかいう女神がこの世界を創るうえで、パクリ……もとい、参考にした作品があったはずだ。
聖女という物語の主役クラスが出てくれば、その作品の見当がつくかもしれない。
まあ、俺が読んだこともない作品の可能性もあるが――
「私は聖女に、この国に神の加護を授けるように要請いたしました。それから一年後の各地の農作物の収穫は大幅に改善したのです」
「うむ」
一年後の状況を見て判断したのは、聖女を名乗る人物が嘘をついている可能性もあるからだという。
「この方は本物だと判断し、国の規定通りに領主である私の娘として養女に迎え、国王陛下にご報告いたしました。しかし――その時にはすでに別の者が『聖女』として報告されており、教会より正式に称号が授けられておりました」
「ほう……」
生真面目な性格のダルフォルネが、各地の近年の農作物の収穫量と比較し、時間をかけているうちに、別の者が『聖女』を用意して報告したらしい。
聖女が偽物だろうと、この国に地母神の加護がかかっていることに変わりは無い。
「恐らく今年の豊作を見て、聖女をでっち上げたのでしょう」
「それで、なぜその話を俺に?」
「その偽聖女ローゼリアが、あなた様の婚約者に内定したのです」
「あぁ……、そうか――」
俺は思い出した。
偽聖女ローゼリア、その名前を聞いた時に、思い出すことが出来た。
そうだ――
この世界は、偽聖女と断罪されたヒロインが、国から追放されるところから始まる小説で――
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