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聖女を追放した国の物語
第28話 聖女十字軍 B
しおりを挟む――攻城戦が始まって十日目。
「もう、うんざりだ……」
そう思っていたのは俺だけではないようで、そんな呟きが部隊のあちこちから聞こえるようになった。
三日前くらいまでは――
そんなことを言おうものなら、『聖女様批判か?』といって詰め寄ってくる『呟き警察』が取り締まっていたのだが……正義感に溢れた彼らも、取り締まる元気が無いのか、それともすでに死んだのか……。
出て来なくなった。
「はぁ……」
思えば、この国に来たばかりの頃はよかった。
聖女様から直々に、略奪許可が下りていたからだ。
好きに食料を奪い、好きに女を犯し、抵抗する奴や反抗的な奴は見せしめに殺しててもお咎めなし、むしろ褒められる。
この国の腰抜け共は、聖女十字軍が道を通れば、逃げ出すか地面に這いつくばって許しと慈悲を請うしかできない。
聖女様を追放するという、大罪を犯した愚か者共だ。
罰を与えてやらなければならない。
俺たちが正義だ。
罪人を罰するのは、楽しかった。
この砦付近の村も、食料を略奪してから家に火をつけて燃やしてやった。
俺たちは、無敵だった。
正義の軍隊だ。
十字架を背負った愚民どもを罰する、聖女十字軍。
それが、なんだ?
どうして……こうなった?
なんで俺たちは、地獄で悪魔と戦っているんだ?
あの悪魔から、黒い炎が放たれた。
その炎は消えることなく、燃え続けた。
燃えている奴が、死ぬまでずっと。
仲間を助けようとした奴にも炎が燃え移って、そいつも死んだ。
燃えている奴は、見殺しにするしかない。
そんな時に――
聖女の癒しが発動した。
死にかけの奴らが、もう一度死に直さなければいけなくなった。
「もう、殺してくれ!!」
腕に覚えのある奴が、首を切り落として楽にしてやった。
この戦いを始めてから、十三日が経過した。
もう、限界だった。
何度も傷を負い、死にかけて、でも傷が治って死ねない。
悪魔が現れて、暴れ回るのを身を屈めてやり過ごす――
もう死にたいのか、死にたくないのか――
自分でも、分からない。
食料も、昨日底をついた。
もともと略奪前提で補給は考えておらず、計画的に食料を消費してこなかった。
腹が減った。
これからまた攻城戦か――
前へと進む、足が重い。
「……あれ?」
そもそも俺たちは、なんで戦っているんだっけ?
この戦いの、目的はなんだ?
聞かされていない。
ただ聖女様が、やれと言って――
「あいつは聖女なんかじゃない!!! 悪魔だッ!! 悪魔が結託して、俺たちを地獄に連れてきて、弄んでいるんだ!!!!!」
部隊の中の誰かが、突然大声で叫んだ。
俺たちは、戦場へと向かう足を止める。
――そうかもしれない、と思った。
俺たちは生まれ故郷を離れ異国の地に来て、何をしているんだ?
なぜこんな、無益な戦いに興じている?
死ぬことも許されずに、悪魔に蹂躙され怯え続けている。
――何故だ?
やっとわかった。
「あの女は、悪魔だったのか――」
騙されていたことに、ようやく気付いた俺たちは――
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