聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう

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聖女を追放した国の物語

第40話 聖女を追放した国の物語 A

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 今日は偽聖女の公開処刑日で、近隣の町や村からも見物人が集まってきている。
 
 …………。
 しかし、偽聖女の処刑か……。
 俺の周りにも、当然だとか、せいせいするとかいう奴もいるが――

 俺はあまり、乗り気ではなかった。

 というのも昨年、俺に子供が出来た。
 生まれてきたのは、可愛い女の子だった。
 
 もしこの子が、処刑されるようなことになれば――
 そんなことを考えると、どうしても皆と一緒に浮かれる気分にはなれなかった。



 憂鬱な気分を抱えながら、街中を巡回していた俺に応援要請が来た。

 不審者が出たらしい。



 これだけ、大勢の人間が集まっているのだ。
 その中に不審といえる人物は一定数、どうしても出てくる。
 
 そのために、俺達のような下っ端の兵隊も掻き集められて、兵士総出で警備にあたっている。




 召集がかかったってことは、喧嘩でも始まったか――?
 
 俺が仕方なしに現場へと急行すると、そこには立派な馬に乗った若造が、これまた立派な、全身黒ずくめの鎧を着こんで、大通りの真ん中にいた。

 そいつの周りにはもうすでに数人の警備兵がいて、その周囲を取り囲んでいる。

 しかし、同僚たちは――
 取り囲んだはいいが、どうしたものか手をこまねいていた。
 
 高そうな馬と鎧を持っているのだから、恐らくは貴族の坊ちゃんだろう。
 下手にかかわりたくないのは、みんな一緒である。
 



 しかし、不審者であることは確かだ。

 どうしたものかと悩んでいると、不意に耳元で囁かれるような『声』が聞こえた。



 その声は、聖女様が悪い奴だとか、訳の分からんことを言ってきた。

 なんだ、これ? 

 俺が不思議がっていると、周りの奴らは声の発信源に向かって罵声を上げ始めた。

 俺は不審者に気を取られて気付かなかったが、どうやらあの声は偽聖女のものらしかった。しかし、あんな所からよく声が届くなと、俺がまた不思議に思っていると、俺たちが取り囲んでいる、黒い鎧のボンボンが突然名乗りを上げた。


「私はこの国の王子!! アレス・リーズラグド!! 邪竜王ガルトルシアを討伐せし者だ!! この黒き鎧は討伐した邪竜王の、その鱗から作ったものだ!!!」


 王子アレス――
 あの『死にたがりのアレス』か……。

 モンスターの討伐や戦争で、率先して先陣を切る。
 変わり者の王族として、有名な奴だ。

 それに……


 そうだ!!

 王子アレスと言えば――
 聖女様との婚約を破棄して国外追放しやがった、諸悪の根源じゃないか――


 
 なんでこんなところに?
 そもそも、本物なのか……?

 王子様がたった一人で、こんな所を出歩くわけがないが……
 まあ、あの変わり者なら、あり得るか――

 それに、この黒い鎧――


 王子アレスが、邪竜王という竜種の最上位のモンスターを討伐したという噂は、少し前に聞いたことがある。
 立派な鎧だと思っていたが、邪竜王の鱗から作ったのであれば頷ける。
 
 となると、こいつは……
 この国の、本物の王子様か――





 周りを囲んでいた兵士たちが、俺を含めて思わず一歩後ろに下がった。

「そ、それで、その……王子アレス様が、どうしてここに、お一人で?」

 この中で一番階級の高い兵士が、代表して質問する。
 ひょっとして、お忍びで偽聖女の処刑を見に来たのだろうか?

 ――忍べてないけど。


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