聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう

文字の大きさ
72 / 126
聖女暗殺事件

第57話 悪魔へと至る道程 1

しおりを挟む
 私は『DV男』こと、シュドナイに連れられて――
 ピレンゾルの王都に辿り着いた。

 そして今は、場末の安宿に滞在している。



 聖女である私を、こんなところに泊めるなんて――
 『甲斐性の無い男』だとは思うが、口には出さない。

 ――殴られるからだ。

 このシュドナイという男は、神に選ばれし神聖な聖女の私に対して、有ろう事か殴るけるの暴行を加えて虐げたのだ。
 
 本来なら、すぐにでも極刑に処すべきである。
 だが、今の私は聖女の力を失い、頼る者もいない。

 悔しいけれど、我慢するしか――
 耐え忍ぶしかなかった。

 最初の頃はそう思っていた。


 しかし――
 私はこの状況を、すでに打破している。

 私は心の底からこの愚かな男を、罵倒して罵ってやりたい。

 しかしそれでは駄目なのだ。
 私はシュドナイを罵る代わりに、徹底的に下手に出て、これでもかというくらい煽ててやっている。


 足元に跪き、ベットの中で寄り添い――
 『お慕いしています』と、態度と言葉で表明する。


「シュドナイ様~~~」
 私は顔を上気させ、偽りの尊敬の眼差しを、このクズに向ける。


 そうすれば――
 この傍若無人なDV男を、嘘のように手玉に取ることが出来だ。

 私はそのやり方を、コイツと二人きりの一か月の間で、完全に把握した。


 ――そう、あの恐ろしい死神との死闘から、一か月が経過している。

 失われてしまった聖女の力は、いまだに取り戻せていない。

 ……早く。
 一刻も早くピレールに、会わなければ――






 私がDV男の暴力に屈服し、支配下に置かれて迎えた初めての夜。

 この浅ましい男は、泊まった宿屋で――
 早速、私の身体を求めてきた。

 
 こんな奴に抱かれるなど、嫌で仕方が無かったが――
 私に拒否権は無い。

 嫌々ながら、コイツに蹂躙されるしかなかった。

 


 翌朝――

 私は暗い気持ちで、目を覚ます。
 一体いつまで、この男の暴力に怯えなければいけないのだろう。

 憂鬱だ。


 だが、その日の朝から、このDV男に少し変化が見られた。

 私への態度が、少し柔らかいものになっていた。

 …………。

 どうやら、この男は――
 一度肌を合わせた私に、情が湧いたらしい。




 …………。

 チョロ!!

 なーんだ。
 男って、こんなにチョロいんだ。

 偉そうなことを言っていても、一度抱いただけで女が自分の物になったと勘違いするなんて……。

 ――ププッ!


 そうと解れば――
 私はこの男のことを、逆に支配してやることにした。

 この私の美貌をもってすれば、容易なことだわ。






 最初は抵抗があったが――
 私は『男に屈服して、従順に従う健気な女』を演じた。

 男が良い気分になるような――
 男が言われて、嬉しがる言葉を並べ立てる。

 とにかく褒めまくって、『あなたのことを尊敬してます』アピールをする。

 
 すると、あら不思議!!
 あの偉そうなDV男が、私のことを気遣うようになるなんて――

 簡単に手のひらの上で、転がせちゃうわ。


 それが実感できるようになると、屈服する演技の抵抗感もなくなり、それどころか、楽しく感じるようになった。


 身体を合わせてから一か月で、シュドナイは私に夢中になっている。
 



 シュドナイは篭絡済みだ。

 適当に言いくるめて王宮へと帰還しようとしたのだが、この安宿に宿泊して身を潜めざるを得なくなった。

 ピレンゾルで、軍事クーデターが発生していたからだ。

 犯行グループは、前王妃の派閥の貴族。
 若手の青年将校たちだった。



 ピレンゾルの領土は北東に細長く突き出ていて、その先に、阿呆王子の国のダルフォルネ領がある。
 北西は『西の大国』と呼ばれるチャルズコートに面していて、西に三つ、引っ付くように小国がある。

 それ以外は、魔物が支配する地域で、人は住んでいない。


 私が聖女十字軍を率いて、死神討伐に向かっている間に、ピレンゾルの西の三国が同盟を組み、ピレンゾルに戦争を仕掛けて、領土をかすめ取っていた。



 ピレンゾルは、戦争に負けた――
 そして停戦交渉で、多額の和解金を三国に支給することで、合意したそうだ。

 ピレンゾル国民は怒り狂った。

 その国民の怒りを代表するように、青年将校が軍事クーデターを引き起こす。


 クーデターは失敗に終わり首謀者は全員捕まったが、情勢が安定するまでは、私達も下手に動けない。

 政治情勢を見ながら、身を潜めている最中だ。

 



 私の安全が第一だが、いつまでも潜んではいられない。
 早く、ピレールに会いたい――

 そうしなければ、私の聖女の力は回復しない。



 『聖(笑)』で力を使い果たした、聖女ローゼリアは――
 ピレールの真実の愛で、力を取り戻す。

 私もピレールの愛で、力の回復が望めるはずだ。


 私の虜になったシュドナイには――
 すでに聖女の力が失われたことを、打ち明けてある。

 そして、ピレールの愛によって、再び力を取り戻せるという事も――


 だから時期を見計らって、王宮へと帰る手筈を整えているところだ。




「――ローゼリア、来い」

「はい! シュドナイ様」


 私はシュドナイの呼びつけに応じて、すぐに足元に跪き上目使いで見上げる。
 目をウルウルさせ、『シュドナイ様に、ご奉仕できて幸せですっ!!』と心にもないことを言う。

 DV男は、満更でもなさそうに、顔をにやけさせる。

 ププっ!
 チョロイったらないわ――


 シュドナイは、下半身に何も着けていない。
 私は命じられるままに、シュドナイにご奉仕する。

「ローゼリア、手筈が整った。明日王城へ入る」

 私は奉仕を続ける。

「知り合いに連絡が取れたので、何とか王まで話を通して貰えた。お前に奉仕をさせてやるのも、暫くは控えねばならん。その分、今日は存分に可愛がってやる」

「ありがとうございますッ。シュドナイ様~~」

 私はお尻を振り振りさせて、喜びを表現する。


 まったく、シュドナイったら――
 当分の間、私を味わえなくなるから名残惜しいのね。


 がっつきすぎなのよ、お猿さん。

 すっかり、私に夢中なんだから。

 男って、こんなにチョロかったのね。
 ――もっと早く、この手を使っていればよかったわ。

 私はシュドナイとの、激しく情熱的な夜を楽しんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生社畜、転生先でも社畜ジョブ「書記」でブラック労働し、20年。前人未到のジョブレベルカンストからの大覚醒成り上がり!

nineyu
ファンタジー
 男は絶望していた。  使い潰され、いびられ、社畜生活に疲れ、気がつけば死に場所を求めて樹海を歩いていた。  しかし、樹海の先は異世界で、転生の影響か体も若返っていた!  リスタートと思い、自由に暮らしたいと思うも、手に入れていたスキルは前世の影響らしく、気がつけば変わらない社畜生活に、、  そんな不幸な男の転機はそこから20年。  累計四十年の社畜ジョブが、遂に覚醒する!!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜

みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。 …しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた! 「元気に育ってねぇクロウ」 (…クロウ…ってまさか!?) そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム 「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが 「クロウ•チューリア」だ ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う 運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる "バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う 「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と! その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ 剣ぺろと言う「バグ技」は "剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ この物語は 剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語 (自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!) しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない

処理中です...