聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~

猫野 にくきゅう

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聖女暗殺事件

第58話 破滅へと至る道筋 1 B

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「……ローゼリア、君がこの国に帰ってきていたことは、諜報機関が把握していたんだ。そして、君の素行調査の結果も聞いている。君がこの王城に来るまでの、一か月の様子は、ここにいる全員がつぶさに知っているんだ……」


 これは言うまいと伏せていた情報だが、僕は言ってしまった。
 ――それだけ彼女に対して、怒っていたんだ。

「女狐だとか雌豚だとかいう言葉は、君にこそ――お似合いなんじゃないかな? 言い返せるかい? ローゼリア――」

 僕がそう言って、彼女の間違いを指摘すると――






 ローゼリアはプルプルと震え出した。
 頭に血をのぼらせて、顔が真っ赤になっていく。

 ん?
 あれは――
 羞恥ではなく……怒りか?

 彼女の顔は、みるみる鬼の形相になって……。


 ――こ、怖いッ!!
 彼女を連行しようとしていた兵士たちも、一瞬動きを止める。

 何をしている!
 早く連れ出してくれよ!!


 怒髪天を突く雰囲気を漂わせたローゼリアが、ぼそッと呟くように――
 そして徐々に、声を大きくして僕を罵る。

「……誰のおかげで、第一王子になれたと思っている。――糞餓鬼がッ! 調子に乗ってッ!! 許さないッ、絶対に許さないッ!!! 絶対にだッッッ!!!!」



 彼女の叫びは途中で衛兵に止められて、拘束されて連行されていった。
 ……ものすごく、怖かった。

 何なんだ、あいつは――
 そっちから、挑発して来たんじゃないか……


 それにしても――
 『誰のおかげで』、か……。


 ひょっとして、兄二人を殺害したのは……
 ――いや、止そう。

 ただでさえ、厄介ごとがたて続けに起こり、政情も不安定なんだ。
 これ以上面倒ごとを、作るわけにもいかない。

 証拠も残っていないだろう。
 元聖女を処刑するとなれば、政治的にどんな副作用が発生するか予測できない。

 


 ローゼリアの聖女の力のおかげで、この国は確かに豊かになった。
 だがその富を、西の三つの隣国が付け狙うようになった。
 
 ローゼリアが聖女十字軍を組織して、リーズラグドに攻め入ったせいで、この国の軍事組織に綻びが生じてしまった。
 
 その隙を逃さなかった三国に、連携して攻め入られて大敗してしまう。


 早期に停戦に持ち込むために、交渉で大幅に譲歩したが、そのことで国民の怒りに火が付いた。
 その国民の不満に乗じた、青年将校によるクーデターが勃発。


 クーデターは鎮圧できたが、その裏で糸を引いていた前王妃の派閥には手が出せないでいる。

 クーデターを起こした青年将校たちは、国民の支持を得ていて処刑することが出来ない。――その為、軍部と前王妃の派閥が、デカい顔をするようになってきた。



 

 王の保有する軍事力は、聖女十字軍の引き抜きと、三国同盟との戦争で疲弊しきっている。現王妃の実家の戦力も、大規模な魔物災害の損害から回復していない。


 軍の上層部は、前王妃派の派閥の者に牛耳られている。

 反乱を起こした軍人を処罰できなければ、政治の上位に軍事組織が君臨することになる。もうすでに、軍の幹部の顔色を窺わなければ、国王は政治が出来ない状態だ。

 

 さらに、ローゼリアが聖女十字軍で暴れ回ったせいで、リーズラグドとの関係は最悪レベルまで悪化している。

 リーズラグドは損害を補償しろと言ってきているが、この国にはとても払う余裕はない。軍部も反対している以上は、要求を突っぱねるしかない。

 『元々ローゼリアは、貴国が送り込んできたのではないか』、といって要求をかわしているが、向こうが軍事力で報復に来れば、この国は持たないだろう。

 西の三国、前王妃、リーズラグド。
 ローゼリアを処刑すればそれを口実に、どこがどう動くのか予測が付かない。


 この国は現状、八方塞がりの状態なのだ。

 すべてはローゼリアを……
 僕が聖女を、この国に招き入れてしまったばかりに――
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