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リーズラグドの叡智
第71話 無敵 B
しおりを挟む木を蹴って飛び上がった俺達を喰らおうと、背後にメデゥーサの顔が迫る。
俺は身体を捻って、剣を振るいメデゥーサの鼻を切り裂いた。
メデゥーサは顔を押さえて、蹲る。
一連の攻防が終わってから、ソフィを抱えたままアクロバティックに、高速移動したことに気付き、大丈夫かと様子を伺うと――
「アレス様! 先ほどのを、もう一度できますか?」
――と、おねだりされた。
どうやら彼女は、ジェットコースターが好きなタイプらしい。
俺は乗っていた木の枝から、飛び降りた。
木の幹を蹴り斜めに飛び移りながら、落下の衝撃を緩和する。
ソフィは無邪気に喜んでいた。
メデゥーサから逃げながら、大蛇は全て倒した。
ソフィが跳ね返した呪いで、石になっている者も多い。
――雑魚モンスターでは、俺達を倒せない。
俺はソフィを片腕で抱きかかえたまま、まっすぐにメデゥーサの元へと歩いて行く。間合いの一歩外で立ち止まり、巨大な魔物に向かって、剣を突き付ける。
「さて、お前はどうかな? かかって来いよ。試してやる」
俺はメデゥーサを挑発した。
――これじゃあ、どっちが魔物か判らんな。
だが、間違いなく、向こうが挑戦者だ。
「図に乗るなよ! 人間風情がッ!!」
――こいつ、喋れるのか!
ちょっと驚いた。
メデゥーサは怒りに任せて、自身の下半身――
蛇の尾を、横薙ぎに振るう。
巨大な蛇の尾は、途中にある木や岩を簡単に破壊して、薙ぎ払い、吹き飛ばしながら俺達に迫る。
片手で斬るには、少し太いか――
俺はその攻撃を跳んで避けて、通過する蛇を足場にして、さらに高く飛び上がる。
メデゥーサの髪。
無数の蛇が石化し、または黒い炎で燃えている。
石化はソフィの能力が、呪いを弾き返した結果で――
炎の方は、俺の邪竜王の呪いが、敵の呪いに打ち勝った結果だ。
「おのれっ、死神が――ここまで人間に、肩入れするとは……」
上空を舞う俺達を、握り潰そうとメデゥーサが手を伸ばしてくる。
その手の指を、俺は剣で切断して逃れ――
そのまま回転と加速をくり返して、メデゥーサを剣で切り刻み、腕伝いに敵の顔へと迫る。
肩に乗ったところで、停止して――
俺はメデゥーサの首を、剣で斬り落とした。
メデゥーサの髪は全て、燃えるか石になっていた。
黒い炎は、メデゥーサの顔を焼き尽くして消えて――
首なしの巨体が、森の中にポツンと佇んでいる。
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メデゥーサを討伐した相手と、揉め事を起こしたくはないだろう。
その後しばらく、ルーズベリルに滞在――
何故かリィクララとソフィから、魔物をおびき寄せた主犯だと思われていた公爵。
その誤解を解いてから、俺たちは次の訪問先へと移動する。
約束だった北の大貴族ケンドリッジに訪問して、数日過ごす。
あいさつ回りと、孤児院への慰問を行う。
その後、王都に帰還した、俺たちは――
ソフィ待望の『美味しいお店巡り』を敢行する。
二人で行く時もあれば、リィクララやローレイン、ティリアと合流するときもあった。他の側室のメンバーとも、交流を深めながら王都で過ごす。
比較的穏やかな毎日の中で、俺とソフィが突如出現した大量のハエに襲われるという、アクシデントが発生した。
俺は邪竜王の炎で、ハエを焼き払い――
ソフィは冥界神の加護で跳ね返して、二人とも無事だった。
何だったんだ、あれは?
――と思いロザリアに見解を伺うと、ハエの悪魔ベルゼブブの能力ではないか、との答えが返ってきた。
そういえば、悪魔召喚の魔導書の件が手付かずだった。
悪魔はすでに、召喚されているのか……。
ハエの悪魔の襲撃から数日後、その知らせが届いた。
――なんでも、俺がローゼリアに命じて、チャルズコートの聖女を殺害したらしい。
ローゼリア……
あいつ、そんなことしたのか。
前々から、何かやらかすんじゃないかと、思ってはいたが……
とうとう、やったか――
ローレインの予測で、チャルズコートが何か仕掛けてくることは想定していた。
敵の仕掛けに、対応しやすいように王都に滞在していたが……
こう来たか――
この場合、事実関係はどうでもいい。
本当にローゼリアが聖女を殺したのかとか、俺がローゼリアに聖女殺害を命じたのかとか、そんなことはもう、大した問題ではない。
チャルズコートが国として、そう公表した以上は、リーズラグドが俺の首を刎ねて差し出すくらいしても、収まりはつかない。
こちらと事を構える気が無ければ――
例え、それが本当だったとしても、そんな発表はしない。
死因は病死か、老衰と公表するだろう。
チャルズコートのその発表は、リーズラグドに対する宣戦布告。
――戦いはもう、避けられない。
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