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過去と現在
104.目障りで仕方がない
しおりを挟むとにかく面白く無い。
重臣議会で誘導し、うまい具合に
王妃の誕生日に間に合わないようなタイミングで国から追い出してやった。
────結果。
使節団がエルフの里入りを果たす前に追いついて、勅命の露草の種を持ち帰る事に成功。
その上、薬草園よりも早く自分の庭で芽吹かせた。
しかも、ちゃっかり王妃への贈り物を城に居る部下たちに指図して用意してしまっていた。……自分の、時を費やし構築してきた情報網を掻い潜って。
自らの評判を落とさない程度の策略を巡らせて。
シュアクーンが失敗するのを待っていたウジーネは内心ほぞを噛んで悔しがっていた。
「……将来の王。第一王子であるリシャーデン殿下は扱い易い。
表向き、表面上は正しきことなのだと認識さえさせてさえおけば、どうとでも操縦できる」
口広のグラスの中の琥珀色の飲み物を揺らしながらじっくりと考え事をする。それがウジーネ・ソナンタリアの静かなルーティーン。
「殿下は正義感が強すぎて、その主義主張にさえ沿っていれば何もおっしゃってはこないだろう…………」
「失礼致します。ご報告にあがりました」
従者に密やかに伴われて現れたのはウジーネが最近よく使っている駒。
酒を飲み下し、目を閉じて静かに報告に耳を傾けるウジーネ。
「………………結果、ルバルテルはその後に持たれる予定の会談の場からは排除された模様だと報告が入っております」
「そうか。シュアクーンもなかなかやりおる」
報告を聞き終わり、自ら手酌で減ったグラスに酒を足す。
「では、私はこれで失礼をば」
「うむ、ご苦労」
ちなみに。
ルバルテルが外されたのは王様側の配慮であってシュアクーンは何もしていない。
いや、ルバルテルがいるのは不快!!と、ルバルテルを少しだけほんの少しだけ、嫌な顔して見ていたのは事実ではある。
「今度こそ私は判断を誤らない……」
数年前。あの頃まだ第三王子だったシュアクーンの勢力排除に失敗し、可愛がっていた甥っ子を城から去らせる失態を犯してしまった。
「……あの子には。私の政争に巻き込んでしまい、悪いことをした」
あれから会っていない甥っ子の事を少しだけ哀れに思う。
しかし。私には私の都合があるのだ。
ウジーネはグラスを見つめて静かに息を漏らす。
情報を得てすぐにルバルテルに吹き込んだ。────兎のことを。
王様の機嫌取りにちょうど良さそうなネタを奴はいつも探している。
王妃が機嫌が良いと王が助かる。
なので王妃が喜びそうなネタも常に探しているのだ。
「奴は王様第一主義だからな」
どうやってあの地の動物を生きながらえさせているのかは知らん。が、取り上げられてしまえば良いのだ、そんなもの。
「そも、シュアクーンが間に合わなくとも初めっから問題など無かったのだ」
グビリ、と喉に流し込んだ酒がいつもよりも不味く感じるのは気のせいか。
どうせ王の事だから影を使って使節団に書状を渡せる算段はつけておったのだろうしな。
王からの勅命を失敗すれば良かったのに、本当に使節団に追いついて、露草の種も芽吹かせてしまいおった。
……旅の足枷にと、画策した高位貴族家の息子二人を同行させるのに成功した時は最高に気分が良かったのに。
「なにせ、かたや単純脳筋頭の上、親が溺愛しとる。もう片方はヒョロヒョロで体力も無く口ばっかりが達者ときたものだ」
残念なことに一人は早々に帰ってきてしまったが。
もう一人はなんとか連れていったようだが、旅慣れない者と王子を抱えてでは、かなり大変な旅路になったことは想像に難く無い。
ウジーネはそこは自分の思惑通りに事が運んだと、痛快な気分に浸ってふふふと静かに笑う。
────しかしな。
あの野暮ったいフェルトがまさか王妃への贈り物に化けるとは、な。
「これについては完敗だったな」
顔をひと撫でし、ゆっくり頷いて感心するウジーネ。
「しかし、しかしな。結局大層可愛がっていたという兎は取り上げられてしもうたからな、ああ、愉快愉快」
くつくつと音を立てずに笑うその揺れた手元で琥珀色の液体がグラスの縁まで揺れてせり上がる。
そんなウジーネの側にはソンカーがじっと控えていた。
いつも人に報告させて情報を集めているいるウジーネも、時にはわざと廊下で誰かとかち合うように画策したりもする。
今回は兎を取り上げられてしょんぼりしているのを直に見たくてこうして仕組んでみた訳だ。
「おおや。これはこれは!シュアクーン様ではないですか!」
わーー。面倒なのとバッタリ会っちゃった。しまったなーーと僅かに顔を歪めるシュアクーン王子。
……そこはまだまだお子様ですな。
足元のアヒルがシュアクーン王子を見上げて仕切りにグワワワグワッグと鳴いていて非常に喧しい。
これが件のアヒルですか。飼い主に似て凡愚そうな顔をしてますね。その辺に糞などしていなければ良いのですが…………。
兎に角豚の羽。
ウジーネ・ソナンタリアは自分の思う通りには動かないシュアクーンを靴の中に入った小石の如く大変疎ましく思っている。
▫️▫️□▫️□▫️
「うわー、なんか縁起悪っ。朝からバッタリあんなところで会っちゃうなんて」
廊下でバッタリ!ウジーネに遭遇し、散々誉め殺されて引き攣る笑顔で固まったまま帰ってきたシュアクーン。
国を長期間空けるからと、孤児院や清貧院へ訪問する仕事は取り上げられてしまっているし、あの毒蛇咥えたアヒル(セレ)突撃事件の日に、先行調査員についての諸々の話し合いは終わってしまったし、楽しみにしている宝物庫に入れてもらえるにはまだ日がある。
しかも苦手なウジーネとバッタリ出会った幸先の悪いそんなある日の午前のうちに。
珍しくタドットがシュアクーンの部屋までやって来た。
お茶を流し込み、出された菓子を貪り食って。
おかわりのお茶がカップに満たされたのを見てからタドットは話を切り出した。…お前、今シェイラがここにいたら一発頭に喰らってたぞ?
あ、アミネットがお菓子の補充に部屋から出てった。
代わりにトレネークが僕の背後にそっと立つ。
「シュアクーン様。実はですな、私のところに懲罰管理部から連絡が来てましてな」
え?どこ?それ。
懲罰管理部なんて初めて聞いた。
え?僕なんかした?
なんか罰せられちゃったりしちゃったりすんの?僕???
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