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絶好の機会
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「はーい、皆さーん!朝ごはんですよ!」
今日も聞くに新しい、ヴィランの元気な声が聖獣寮内に響き渡る。
「さあ、セレナさん。今日もご飯は重たくしておきましたよ。これを食べて、今日もトレーニング頑張りましょうね!」
「う、うん。ありがとう・・・ございます?」
ヴィランは今までにない眩しい笑顔を振り撒きながら、寮内全員の配膳を手早くこなしてゆく。
「本当に急にどうしたんだろうね。何か聞いていないのかい、アイリク?」
「俺もよくわからないんだよな。あの後、学部長と何かあったようだけど、聞いても恥ずかしいってはぐらかされるし」
「なにはともあれ、変わったきっかけになったのは間違いなくあれだろうね」
ある日を境に、突然人が変わったように明るさを手に入れたヴィラン。そのある日というのが、数日前に行われたセレナとカーリットの模擬戦だった。
「まぁでも、無理をしている様子もないし、本人が楽しそうならいいんじゃないかな。ねぇ、ミリア?」
「それはそうなんだけど・・・」
薄目でヴィランを見つめるミリア。そこには、サラの食べ物で汚れた口を丁寧にふき取るヴィランの姿があった。
「ほら、こぼさないように食べてくださいね」
「ん。ありがとう」
「私には、ただネジが外れて、暴走しているだけのようにも見えるけど・・・」
ヴィランが変わってもなお、ただいつもと変わらない寮での朝食。この当たり前の光景にセレナは少しホッと胸をなでおろす。
「(でも本当によかった。いつも通りに受け入れてくれて)」
あの模擬戦が終わってすぐ、セレナは聖獣学部の皆からたくさん謝られた。知らなかったこととはいえ、一時でもセレナに疑いの目を向けてしまったことに対してだ。
セレナはそのことに対して、特に責めるようなことは何も言わなかった。ここで八つ当たりのようにして気分を晴らすことに利点はなく、それよりもその後に深まるであろう皆との溝を少しでも減らしたいと考えたからであった。
結果、ミリアの後ろ盾もあって、仲間との溝は深まるどころか、新たな信頼を得ることができ、いつもと変わらない日常を送れている。
「(そういえば、あの模擬戦の後、みんなでお詫びを兼ねたお祝いパーティーを開いてくれたけどヴィランは途中参加だったんだよね。何かあったとすればその時かな?)」
時は遡り、模擬戦が終わって、寮でパーティーの準備に取り掛かっている頃。
「いいのですか?こんなところにいて。今頃寮では、パーティーの準備をしているのではないですか?」
「・・・」
ヴィランは思いつめたような表情で、母親であるヒリス学部長のいる研究室を訪れていた。
「それにしても、彼女は期待通り・・・いや、期待以上の実力者でしたね。この短期間で聖獣奏者としての戦い方をあそこまで身に付けただけでなく、2対1という不利の状況でも打ち勝つ強さを備えていたとは」
「はい。本当に、私なんかより・・・」
何かに落ち込むヴィランの様子に、ヒリスはふっと笑みをこぼす。
「後悔しているのですか?」
「え?」
ヴィランは的のど真ん中を射た母親であるヒリスの言葉に、思わず顔を上げる。
「昔から変わらないですね。責任感が人一倍強く、常に強い自分を前面に出し続ける。言い換えれば、弱い自分を面には出そうとせず、出ようとするならば、それを隠すようにか逃げるように、私の元を訪れますね」
「・・・やはりお見通しなのですね」
「私が何年、あなたの母親を務めていると思っているのですか?」
ヒリスは、書類に走らせていたペンを置き、ヴィランの向かいにあるソファーに座る。
「あの戦いの中で、セレナさんに疑いの目を向けてしまったのですか?」
「はい。セレナさんが審判を攻撃してしまった時、その理由を“反則”と決めつけてしまいました。勝つためなら手段を選ばない殿方と、同じような視線を送ってしまった」
ヴィランは両手に握りこぶしを作り、それを力強く握りしめる。
「でもセレナさんは違いました。むしろ相手を卑怯や反則と責めず、相手の土俵に乗り込み、自身の力のみで勝利を手にした。私はそんなセレナさんがとても眩しく、反対に自分が惨めに思えてしょうがないのです」
「そうですね。自分が持っていないものを他の人が持っているのを見ると、それは自然と輝いて見えるものです」
ヒリスにすべてを打ち明け、自分とセレナには大きな格差があると思い込むヴィラン。だがヒリスは、そんなヴィランの考えを一瞬で打ち消してしまう。
「ですが私には、あなたと彼女は似た者同士のように見えますがね」
「私とセレナさんが?」
ヴィランにはヒリスの言っている言葉の意味がよく分からなかった。
「あなたと彼女は、とにかく他人を疑い過ぎです。彼女の場合は、その後の学園長のフォローがあって何とか輝かしい勝利で収めることができました。しかし、周囲を信頼できず、結果のみで解決に導こうと先走った彼女の愚行でもあります。あなたが模擬戦の取り決めを独断で行ったようにね」
「あっ・・・」
「とはいえ、こればかりは彼女が育ってきた環境の影響でもありますので、彼女ばかりが悪いとも言えませんが」
ヒリスはヴィランに真剣な眼差しを向けた。
「こういう後悔を二度としたくないのなら、いい加減に信頼を怖がるのを止めなさい。すべての人間に平等な目を向ける必要はありませんが、少なくとも同じ釜の飯を食う仲間に対しては私と同じ目を向けてみなさい。人を信頼するということは、同時に他人から信頼を得るということにも繋がるのです」
「・・・できるでしょうか?」
「やらなきゃできません。というか、今後悔ができているのなら、あなたが彼女に向ける目の色が変わった証拠でしょ?その後悔を無碍にしないこと。でないと、あなたがこれから目指そうとする目標になんてたどり着けませんよ」
ヴィランは顔を上げた。そして目の前にいる母親の真剣な眼差しに、心を打たれる。
「どうしたらいいでしょうか?」
「まずは自分らしい自分でいなさい」
「今の私だって・・・」
ヒリスはそれを完全に否定するように首を左右に振った。
「今のあなたは、私が魔導士団長だった頃のただの真似事に過ぎません。そこで信頼できるものなど、過去の私でしかないのは当たり前です」
「つっ・・・」
「あなたは、元魔導士団長の娘でも聖獣奏者学部長の娘でもありません。聖獣奏者学部のヴィランでしかないのです。他人からどう思われようと、どう言われようと、自分であり続ける自我を強く持ちなさい。そのためには、まずは自分を知ることから。誰を信頼するのか、誰から信頼を得たいのか、それは自分で決めなさい」
「・・・はい!」
ヴィランの目の色が変わる。
「そして、これから落ち込んだ時は素直にその人たちに頼りなさい。間違えたら謝れる強さを身に付けなさい。そして、今ある財産を存分に使いなさい。母親としては寂しいですが、頼りを目的にここの扉をたたくことは二度と許しません」
それからヴィランは聖獣寮で行われていたパーティーに合流し、今に至るまで新たな自分をセレナたちに見せつけていた。
「(なんだか、思ったより恥ずかしいですね。素直な私がこんなだったなんて。今までどれだけ母の真似事をしていたかが、よくわかります)」
突然理由も解らず明るい性格になったヴィランに対し、セレナが恐る恐る尋ねる。
「ねぇ、何かいいことでもあったの?」
「はい!ようやく、友達ができました!」
「???」
あまりにも真意が読み取れない回答に、セレナたちの心は晴れずじまい。しかし、何か憑き物が落ちた様子のヴィランを見て、“まあいいか”とどうでもよくなるセレナたちでもあった。
それから朝食を終えたセレナたちは、学園へと向かった。
「そういえば今日だったよな?例のお呼ばれ」
「そうです。いよいよですね」
数日前、聖獣寮に1通の便りが届いた。その差出人に聖獣寮の誰もが驚いた。
「まさか、学園長から直々の便りだとはね」
「うん。びっくり」
内容は、今日の日付で学園長室に来るようにというシンプルなものだった。話す内容などについては特に書かれていなかったが、模擬戦でのセレナへの対応から誰もが期待感を携えていた。
そしていよいよ、数日ぶりに学園長とのご対面の時。セレナたちは意を固め、学園長室の扉を開く。
「よく来てくれた。設立前段階の学部であるから、儂の顔を知らぬものも多いじゃろう。改めて、グーラン王立魔導学園における最高責任者、グルセリアじゃ。よろしくな」
「お、お久しぶりです。聖獣奏者学部、委員長を務めていますヴィランと在籍生徒です。本日はよろしくお願いします」
「はっはっは。そう固くならんでよろしい。今回は、君たちとの親睦の意と合わせて、ある依頼をお願いするつもりなんじゃ。気を楽にせい」
「は、はい・・・」
学園長は数日前にあった威厳ある顔ではなく、まるで親戚のお年寄りが孫と接するような柔らかい笑顔でヴィランたちを出迎えた。
それから場所は応接室へと変わり、グルセリア学園長は話を始める。
「さて、まずはセレナ君。この前の模擬戦じゃが、君はあれが初めての対人戦と聞いておったが、初めてとは思えない立派な戦いぶりじゃったぞ」
「あ、その節はありがとうございました」
「よいよい。おかげで学園が抱える問題の1つを解決できたんじゃ。とはいえ、君のやり方もあれはあれで間違いではないが、これからはもう少し周りを頼ることも覚えねばならんぞ」
「はい。それに関しては友達からも言われました」
グルセリア学園長はウンウンと首を縦に振る。
それからグルセリア学園長からカーリットとバイル講師について聞いた。その後の調べでバイル講師はカーリットの遠い親戚であることが判明。カーリットが将来、戦闘職においていい職に就けるよう出来心でやってしまったという。
それからバイル講師は、学園を懲戒免職。教師資格もはく奪され、母国へ返されたとのことだ。カーリットは、バイル講師に誘われた立場ということで情状酌量の余地があるとし、退学こそは免れた。しかし、これまでの模擬戦の戦績は白紙にされ、学部も選抜組から通常組へと降格になったそうだ。
「今はひっそりと周りの視線に耐えながら頑張っておるようじゃぞ。一応フォローはしておるが、こればっかりは自分で乗り越えるしかないからのう」
「自業自得だね。まさか今度は自分が、周りの冷たい目を浴びるとは思っていなかっただろうからね」
「うん・・・」
ミチルの言う通り、自業自得とはいえ、さすがに僅かな同情の念が沸き上がるセレナたち。そんな重い空気を払拭させようと、グルセリア学園長が口を開く。
「まあ、あの模擬戦についての話はこれぐらいでよかろう。お主らが気を重くする必要もあるまい。そろそろ本題へと入ろうか」
グルセリア学園長はある依頼書を聖獣奏者学部に差し出した。
「依頼書?魔獣討伐?」
「左様。今回君たちを呼んだのは、ある依頼を引き受けてもらえないかという交渉をするためじゃ」
依頼内容に目を通すと、“ゴーレム型魔獣?の討伐並びに遺跡の調査依頼”とあった。
「色々聞きたいことはありますが、まずはどうして私たちにこの話を?」
「もちろん君たちの実力を見越しての依頼ではあるが、それとはまた別に君たちにある実績をつけてもらいたいからじゃ」
「実績ですか?」
「聖獣奏者学部の正式な学部設立に向けてな」
「!?」
そのきっかけは些細なことだった。
グルセリア学園長がセレナとカーリットの模擬戦を視察していた際、本来の目的はカーリットの模擬戦での不正を暴くためであったが、同時に聖獣奏者の可能性を見出す大きなきっかけともなっていた。
「獣亜人とも呼ばれ、長い歴史の中で世界から拒絶され続けてきたお主たち聖獣奏者であったが、先の模擬戦の中で儂にはこの国を担う新たな戦力の原石のように感じられた」
グルセリア学園長は、誇らしい表情でセレナたちを見ていた。
「正直に言うと儂もな、これまでお主たちを見る目は他の者と例外ではなかった。ヒリス学部長のあれだけ熱心な申し出がなければ、すぐにその申し出を却下していたじゃろう」
グルセリア学園長は続けた。
「じゃが、セレナ君のあの模擬戦での戦いぶりを見た時、噂のみで聖獣奏者の可能性を否定してきた己を恥じた。魔導士と同じ属性という力に加え、聖獣ならではの野生の力である獣能。さらにそれが意志を持って術者を守るという光景に、儂は心を奪われたのじゃ」
グルセリア学園長はいつの間にか我を忘れて興奮している様子だった。その様子に自分たちの存在が認められ始めていると実感するセレナたち。
「あの後すぐ、儂は国に模擬戦の映像をもって駆け寄り、このことを報告した。国のお偉い方も驚いておったよ。聖獣奏者の新たな可能性、そして個性に。他の国から目を付けられる前に、ぜひとも聖獣奏者を我が国に確保したいとも言っておった」
その報告にセレナたちは盛り上がりを見せる。
「やったな!スゲえよ、セレナ」
「ええ、さすがです!ようやく聖獣奏者の存在が認められる時が来たのですね!」
「あ、ありがとう・・・」
照れを隠せずにいるセレナ。だがそれを面白くないと、不満そうな面を思い浮かべる人物もいる。
「まあ諸君、落ち着け。とはいえ、あの模擬戦の映像だけで、聖獣奏者の魅力がすべてだと世間に伝えるのは時期早々じゃ。それではセレナ君だけが特別な存在だと捉えかねん。同業者であるのに、手荷物のような扱いでは、面白くないと思う者も当然居るじゃろう」
グルセリア学園長はちらりと横目でミチルを見る。ミチルは思わず視線を逸らした後、グルセリア学園長は再び視線を全員に戻した。
「そこでじゃ。個性は別として、あの戦い方が、聖獣奏者にとって当たり前であると示さねばならん。それを実現するため、お主ら聖獣奏者全員の実力を示してもらうべく、1つの依頼書を用意した。お主たちには、この依頼書を達成した実績とそれぞれの活躍を報告書にまとめ提出してほしい。それが国に認められれば、聖獣奏者学部は正式なものとして設立されるじゃろう」
「なるほど、わかりました。でしたら、私は依頼を受けるのに異論ありませんが、皆さんはどうですか?」
一同は驚いた。ヴィランが初めて結論を前に、周囲の意見に耳を傾けたのだ。
いい方向に聖獣奏者学部全体が変わりつつある現実を実感しつつ、全員が首を縦に振った。
「では全員異論はなしということで、まずは依頼内容をお聞かせただけないでしょうか」
「うむ。依頼内容はじゃな、文字通りではあるんじゃがゴーレム型魔獣の討伐依頼と遺跡の調査依頼の混合依頼じゃ」
「見たところ、普通の依頼と変わらないようだけど。このゴーレム討伐の横に書かれている“?”が僕は気になるのですが?」
「それはじゃな・・・」
グルセリア学園長の表情がやや重くなる。その変化に一同は、この依頼には何かしらの訳ありがあると直感した。
話を聞いてみると、この依頼は、これまでギルドに所属する多くの騎士や魔導士が挑戦してきたが、すべて失敗に終わっているという。
「もともとは遺跡調査だけの依頼じゃったが、その遺跡はゴーレムの住処となっており、調査に来た魔導士たちをことごとく撃退してきたのじゃ。そのゴーレムが訳ありでのう」
「訳あり?」
対峙した魔導士たちの話によると、ゴーレムたちは何度倒されても、体を粉々に砕こうとも、まるでアンデットのように何事もなく復活してくるというのだ。
「結果、魔導士たちはただただ魔力と体力を消費させられ、対抗策も思いつかぬまま撤退を余儀なくされたそうじゃ。幸いにも死者は出ておらんが、あれが国にでも近づいてくる前に、討伐を完了しておきたいという依頼じゃ」
「それじゃあ、ゴーレムの横にある“?”は・・・」
「姿は確かにゴーレム型の魔獣ではあるが、これまで確認されてきたゴーレムとは明らかに異質ということじゃ。むしろ魔獣であるかも怪しい意味も含まれておる」
「そんなプロの戦闘職の方々でも達成できなかった依頼を私たちが?」
先ほどまでの盛り上がりが嘘のように静かになる一同。ただもちろん例外も存在する。
「強敵・・・私、行きたい!」
「まぁ、好戦的なお前ならそうだろうな」
目を輝かせるサラであったが、他のメンバーはプロでもなしえなかった依頼に不安を感じ始める。
「むろんこれは強制ではない。じゃが、期待もなしに、このような依頼を学生である君たちに持ってくるはずもないことだけは理解してくれ」
悩む聖獣奏者のメンバー。誰かが嫌といえば、その場が終わりそうな空気の中、このまま学部設立の機会をみすみす逃してしまう躊躇が入り混じってしまう。そんなとき、セレナが意を決した。
「私、行きます」
その決意に驚く一同。
「おいおい、本気かよ!?」
「もちろん、この中で1人でも行かないのなら辞退するけど、私はみんなの居場所を造れるこのチャンスを逃したくない」
そんなセレナに背中を押されてか、1人、また1人と声とともに立ち上がる。
「お、お姉ちゃんが行くなら、私も行く!」
「そうですね。セレナさんが作ってくれたこのチャンス、セレナさんが行くというのなら、私たちが行かないわけにはいかないでしょう」
「私は元からそのつもり」
次々と意を固めるメンバー。そんな中、アイリクだけはまだ不安が勝ってしまい、意を固めることができずにいる。そんな中、この依頼に対し別の思惑を抱こうとしている人物がいた。
「学園長。1つだけお願いがあります」
「なんだね?ミチル君」
「恐らく僕は、この依頼に挑むうえで、ある意味で目立った活躍はできないと思います。それでも依頼を達成した暁には、メンバーそれぞれに功績を与えてくださると約束してくださいませんか?」
グルセリア学園長は強く頷く。
「もちろんじゃ。君の魔法がどのような性質を持っておるかは、あいにく把握はできておらんが、チームで挑むのであればそのチーム全員に平等な報酬を与えるというのが、大人の世界でも当たり前のことじゃ。もちろん評価も含めてな」
「ならば僕も行きます。いい加減、この立ち位置もうんざりしていたところだ」
するとミチルは、未だ悩んでいるアイリクを見下ろす。
「君はどうする?セレナが言うには、全員参加が絶対条件みたいだが?」
「俺は・・・」
「い、いや・・・そんなつもりで言ったわけじゃ」
慌てて否定しようとするセレナだったが、ミチルは聞く耳を持たず、持論を唱え始める。
「僕にとってこれは最初で最後のチャンスだと思っている。行くのも危険、行かぬなら死と同意なら、僕は迷わず行く。悪いけど、君を置いてでもね。もう後悔はしたくはないから」
「・・・れも行く」
「ん?」
「俺も行くって言ったんだよ!このまま待って苦しむぐらいなら、俺も行って苦しんでやるさ。前衛は任せろ!」
こうして全員の参戦が決定した。学園長は満足した様子でうんうんと頷いている。
「ありがとう。一応学園からも応援として、行動記録を踏まえた護衛を何人かつけておこう。彼らは君たちに隠れて行動させるが、いざ危なくなったら撤退させるよう指示しておく。では、武運を祈る!」
メンバーは全員で肩を組み円陣を組んだ。目的に多少のバラつきはあるものの、初めてメンバーの心が合わさった瞬間でもあった。
「皆さん、私たちの力を示す絶好の機会です。全力で成し遂げましょう!」
「「「おう!!!」」」
今日も聞くに新しい、ヴィランの元気な声が聖獣寮内に響き渡る。
「さあ、セレナさん。今日もご飯は重たくしておきましたよ。これを食べて、今日もトレーニング頑張りましょうね!」
「う、うん。ありがとう・・・ございます?」
ヴィランは今までにない眩しい笑顔を振り撒きながら、寮内全員の配膳を手早くこなしてゆく。
「本当に急にどうしたんだろうね。何か聞いていないのかい、アイリク?」
「俺もよくわからないんだよな。あの後、学部長と何かあったようだけど、聞いても恥ずかしいってはぐらかされるし」
「なにはともあれ、変わったきっかけになったのは間違いなくあれだろうね」
ある日を境に、突然人が変わったように明るさを手に入れたヴィラン。そのある日というのが、数日前に行われたセレナとカーリットの模擬戦だった。
「まぁでも、無理をしている様子もないし、本人が楽しそうならいいんじゃないかな。ねぇ、ミリア?」
「それはそうなんだけど・・・」
薄目でヴィランを見つめるミリア。そこには、サラの食べ物で汚れた口を丁寧にふき取るヴィランの姿があった。
「ほら、こぼさないように食べてくださいね」
「ん。ありがとう」
「私には、ただネジが外れて、暴走しているだけのようにも見えるけど・・・」
ヴィランが変わってもなお、ただいつもと変わらない寮での朝食。この当たり前の光景にセレナは少しホッと胸をなでおろす。
「(でも本当によかった。いつも通りに受け入れてくれて)」
あの模擬戦が終わってすぐ、セレナは聖獣学部の皆からたくさん謝られた。知らなかったこととはいえ、一時でもセレナに疑いの目を向けてしまったことに対してだ。
セレナはそのことに対して、特に責めるようなことは何も言わなかった。ここで八つ当たりのようにして気分を晴らすことに利点はなく、それよりもその後に深まるであろう皆との溝を少しでも減らしたいと考えたからであった。
結果、ミリアの後ろ盾もあって、仲間との溝は深まるどころか、新たな信頼を得ることができ、いつもと変わらない日常を送れている。
「(そういえば、あの模擬戦の後、みんなでお詫びを兼ねたお祝いパーティーを開いてくれたけどヴィランは途中参加だったんだよね。何かあったとすればその時かな?)」
時は遡り、模擬戦が終わって、寮でパーティーの準備に取り掛かっている頃。
「いいのですか?こんなところにいて。今頃寮では、パーティーの準備をしているのではないですか?」
「・・・」
ヴィランは思いつめたような表情で、母親であるヒリス学部長のいる研究室を訪れていた。
「それにしても、彼女は期待通り・・・いや、期待以上の実力者でしたね。この短期間で聖獣奏者としての戦い方をあそこまで身に付けただけでなく、2対1という不利の状況でも打ち勝つ強さを備えていたとは」
「はい。本当に、私なんかより・・・」
何かに落ち込むヴィランの様子に、ヒリスはふっと笑みをこぼす。
「後悔しているのですか?」
「え?」
ヴィランは的のど真ん中を射た母親であるヒリスの言葉に、思わず顔を上げる。
「昔から変わらないですね。責任感が人一倍強く、常に強い自分を前面に出し続ける。言い換えれば、弱い自分を面には出そうとせず、出ようとするならば、それを隠すようにか逃げるように、私の元を訪れますね」
「・・・やはりお見通しなのですね」
「私が何年、あなたの母親を務めていると思っているのですか?」
ヒリスは、書類に走らせていたペンを置き、ヴィランの向かいにあるソファーに座る。
「あの戦いの中で、セレナさんに疑いの目を向けてしまったのですか?」
「はい。セレナさんが審判を攻撃してしまった時、その理由を“反則”と決めつけてしまいました。勝つためなら手段を選ばない殿方と、同じような視線を送ってしまった」
ヴィランは両手に握りこぶしを作り、それを力強く握りしめる。
「でもセレナさんは違いました。むしろ相手を卑怯や反則と責めず、相手の土俵に乗り込み、自身の力のみで勝利を手にした。私はそんなセレナさんがとても眩しく、反対に自分が惨めに思えてしょうがないのです」
「そうですね。自分が持っていないものを他の人が持っているのを見ると、それは自然と輝いて見えるものです」
ヒリスにすべてを打ち明け、自分とセレナには大きな格差があると思い込むヴィラン。だがヒリスは、そんなヴィランの考えを一瞬で打ち消してしまう。
「ですが私には、あなたと彼女は似た者同士のように見えますがね」
「私とセレナさんが?」
ヴィランにはヒリスの言っている言葉の意味がよく分からなかった。
「あなたと彼女は、とにかく他人を疑い過ぎです。彼女の場合は、その後の学園長のフォローがあって何とか輝かしい勝利で収めることができました。しかし、周囲を信頼できず、結果のみで解決に導こうと先走った彼女の愚行でもあります。あなたが模擬戦の取り決めを独断で行ったようにね」
「あっ・・・」
「とはいえ、こればかりは彼女が育ってきた環境の影響でもありますので、彼女ばかりが悪いとも言えませんが」
ヒリスはヴィランに真剣な眼差しを向けた。
「こういう後悔を二度としたくないのなら、いい加減に信頼を怖がるのを止めなさい。すべての人間に平等な目を向ける必要はありませんが、少なくとも同じ釜の飯を食う仲間に対しては私と同じ目を向けてみなさい。人を信頼するということは、同時に他人から信頼を得るということにも繋がるのです」
「・・・できるでしょうか?」
「やらなきゃできません。というか、今後悔ができているのなら、あなたが彼女に向ける目の色が変わった証拠でしょ?その後悔を無碍にしないこと。でないと、あなたがこれから目指そうとする目標になんてたどり着けませんよ」
ヴィランは顔を上げた。そして目の前にいる母親の真剣な眼差しに、心を打たれる。
「どうしたらいいでしょうか?」
「まずは自分らしい自分でいなさい」
「今の私だって・・・」
ヒリスはそれを完全に否定するように首を左右に振った。
「今のあなたは、私が魔導士団長だった頃のただの真似事に過ぎません。そこで信頼できるものなど、過去の私でしかないのは当たり前です」
「つっ・・・」
「あなたは、元魔導士団長の娘でも聖獣奏者学部長の娘でもありません。聖獣奏者学部のヴィランでしかないのです。他人からどう思われようと、どう言われようと、自分であり続ける自我を強く持ちなさい。そのためには、まずは自分を知ることから。誰を信頼するのか、誰から信頼を得たいのか、それは自分で決めなさい」
「・・・はい!」
ヴィランの目の色が変わる。
「そして、これから落ち込んだ時は素直にその人たちに頼りなさい。間違えたら謝れる強さを身に付けなさい。そして、今ある財産を存分に使いなさい。母親としては寂しいですが、頼りを目的にここの扉をたたくことは二度と許しません」
それからヴィランは聖獣寮で行われていたパーティーに合流し、今に至るまで新たな自分をセレナたちに見せつけていた。
「(なんだか、思ったより恥ずかしいですね。素直な私がこんなだったなんて。今までどれだけ母の真似事をしていたかが、よくわかります)」
突然理由も解らず明るい性格になったヴィランに対し、セレナが恐る恐る尋ねる。
「ねぇ、何かいいことでもあったの?」
「はい!ようやく、友達ができました!」
「???」
あまりにも真意が読み取れない回答に、セレナたちの心は晴れずじまい。しかし、何か憑き物が落ちた様子のヴィランを見て、“まあいいか”とどうでもよくなるセレナたちでもあった。
それから朝食を終えたセレナたちは、学園へと向かった。
「そういえば今日だったよな?例のお呼ばれ」
「そうです。いよいよですね」
数日前、聖獣寮に1通の便りが届いた。その差出人に聖獣寮の誰もが驚いた。
「まさか、学園長から直々の便りだとはね」
「うん。びっくり」
内容は、今日の日付で学園長室に来るようにというシンプルなものだった。話す内容などについては特に書かれていなかったが、模擬戦でのセレナへの対応から誰もが期待感を携えていた。
そしていよいよ、数日ぶりに学園長とのご対面の時。セレナたちは意を固め、学園長室の扉を開く。
「よく来てくれた。設立前段階の学部であるから、儂の顔を知らぬものも多いじゃろう。改めて、グーラン王立魔導学園における最高責任者、グルセリアじゃ。よろしくな」
「お、お久しぶりです。聖獣奏者学部、委員長を務めていますヴィランと在籍生徒です。本日はよろしくお願いします」
「はっはっは。そう固くならんでよろしい。今回は、君たちとの親睦の意と合わせて、ある依頼をお願いするつもりなんじゃ。気を楽にせい」
「は、はい・・・」
学園長は数日前にあった威厳ある顔ではなく、まるで親戚のお年寄りが孫と接するような柔らかい笑顔でヴィランたちを出迎えた。
それから場所は応接室へと変わり、グルセリア学園長は話を始める。
「さて、まずはセレナ君。この前の模擬戦じゃが、君はあれが初めての対人戦と聞いておったが、初めてとは思えない立派な戦いぶりじゃったぞ」
「あ、その節はありがとうございました」
「よいよい。おかげで学園が抱える問題の1つを解決できたんじゃ。とはいえ、君のやり方もあれはあれで間違いではないが、これからはもう少し周りを頼ることも覚えねばならんぞ」
「はい。それに関しては友達からも言われました」
グルセリア学園長はウンウンと首を縦に振る。
それからグルセリア学園長からカーリットとバイル講師について聞いた。その後の調べでバイル講師はカーリットの遠い親戚であることが判明。カーリットが将来、戦闘職においていい職に就けるよう出来心でやってしまったという。
それからバイル講師は、学園を懲戒免職。教師資格もはく奪され、母国へ返されたとのことだ。カーリットは、バイル講師に誘われた立場ということで情状酌量の余地があるとし、退学こそは免れた。しかし、これまでの模擬戦の戦績は白紙にされ、学部も選抜組から通常組へと降格になったそうだ。
「今はひっそりと周りの視線に耐えながら頑張っておるようじゃぞ。一応フォローはしておるが、こればっかりは自分で乗り越えるしかないからのう」
「自業自得だね。まさか今度は自分が、周りの冷たい目を浴びるとは思っていなかっただろうからね」
「うん・・・」
ミチルの言う通り、自業自得とはいえ、さすがに僅かな同情の念が沸き上がるセレナたち。そんな重い空気を払拭させようと、グルセリア学園長が口を開く。
「まあ、あの模擬戦についての話はこれぐらいでよかろう。お主らが気を重くする必要もあるまい。そろそろ本題へと入ろうか」
グルセリア学園長はある依頼書を聖獣奏者学部に差し出した。
「依頼書?魔獣討伐?」
「左様。今回君たちを呼んだのは、ある依頼を引き受けてもらえないかという交渉をするためじゃ」
依頼内容に目を通すと、“ゴーレム型魔獣?の討伐並びに遺跡の調査依頼”とあった。
「色々聞きたいことはありますが、まずはどうして私たちにこの話を?」
「もちろん君たちの実力を見越しての依頼ではあるが、それとはまた別に君たちにある実績をつけてもらいたいからじゃ」
「実績ですか?」
「聖獣奏者学部の正式な学部設立に向けてな」
「!?」
そのきっかけは些細なことだった。
グルセリア学園長がセレナとカーリットの模擬戦を視察していた際、本来の目的はカーリットの模擬戦での不正を暴くためであったが、同時に聖獣奏者の可能性を見出す大きなきっかけともなっていた。
「獣亜人とも呼ばれ、長い歴史の中で世界から拒絶され続けてきたお主たち聖獣奏者であったが、先の模擬戦の中で儂にはこの国を担う新たな戦力の原石のように感じられた」
グルセリア学園長は、誇らしい表情でセレナたちを見ていた。
「正直に言うと儂もな、これまでお主たちを見る目は他の者と例外ではなかった。ヒリス学部長のあれだけ熱心な申し出がなければ、すぐにその申し出を却下していたじゃろう」
グルセリア学園長は続けた。
「じゃが、セレナ君のあの模擬戦での戦いぶりを見た時、噂のみで聖獣奏者の可能性を否定してきた己を恥じた。魔導士と同じ属性という力に加え、聖獣ならではの野生の力である獣能。さらにそれが意志を持って術者を守るという光景に、儂は心を奪われたのじゃ」
グルセリア学園長はいつの間にか我を忘れて興奮している様子だった。その様子に自分たちの存在が認められ始めていると実感するセレナたち。
「あの後すぐ、儂は国に模擬戦の映像をもって駆け寄り、このことを報告した。国のお偉い方も驚いておったよ。聖獣奏者の新たな可能性、そして個性に。他の国から目を付けられる前に、ぜひとも聖獣奏者を我が国に確保したいとも言っておった」
その報告にセレナたちは盛り上がりを見せる。
「やったな!スゲえよ、セレナ」
「ええ、さすがです!ようやく聖獣奏者の存在が認められる時が来たのですね!」
「あ、ありがとう・・・」
照れを隠せずにいるセレナ。だがそれを面白くないと、不満そうな面を思い浮かべる人物もいる。
「まあ諸君、落ち着け。とはいえ、あの模擬戦の映像だけで、聖獣奏者の魅力がすべてだと世間に伝えるのは時期早々じゃ。それではセレナ君だけが特別な存在だと捉えかねん。同業者であるのに、手荷物のような扱いでは、面白くないと思う者も当然居るじゃろう」
グルセリア学園長はちらりと横目でミチルを見る。ミチルは思わず視線を逸らした後、グルセリア学園長は再び視線を全員に戻した。
「そこでじゃ。個性は別として、あの戦い方が、聖獣奏者にとって当たり前であると示さねばならん。それを実現するため、お主ら聖獣奏者全員の実力を示してもらうべく、1つの依頼書を用意した。お主たちには、この依頼書を達成した実績とそれぞれの活躍を報告書にまとめ提出してほしい。それが国に認められれば、聖獣奏者学部は正式なものとして設立されるじゃろう」
「なるほど、わかりました。でしたら、私は依頼を受けるのに異論ありませんが、皆さんはどうですか?」
一同は驚いた。ヴィランが初めて結論を前に、周囲の意見に耳を傾けたのだ。
いい方向に聖獣奏者学部全体が変わりつつある現実を実感しつつ、全員が首を縦に振った。
「では全員異論はなしということで、まずは依頼内容をお聞かせただけないでしょうか」
「うむ。依頼内容はじゃな、文字通りではあるんじゃがゴーレム型魔獣の討伐依頼と遺跡の調査依頼の混合依頼じゃ」
「見たところ、普通の依頼と変わらないようだけど。このゴーレム討伐の横に書かれている“?”が僕は気になるのですが?」
「それはじゃな・・・」
グルセリア学園長の表情がやや重くなる。その変化に一同は、この依頼には何かしらの訳ありがあると直感した。
話を聞いてみると、この依頼は、これまでギルドに所属する多くの騎士や魔導士が挑戦してきたが、すべて失敗に終わっているという。
「もともとは遺跡調査だけの依頼じゃったが、その遺跡はゴーレムの住処となっており、調査に来た魔導士たちをことごとく撃退してきたのじゃ。そのゴーレムが訳ありでのう」
「訳あり?」
対峙した魔導士たちの話によると、ゴーレムたちは何度倒されても、体を粉々に砕こうとも、まるでアンデットのように何事もなく復活してくるというのだ。
「結果、魔導士たちはただただ魔力と体力を消費させられ、対抗策も思いつかぬまま撤退を余儀なくされたそうじゃ。幸いにも死者は出ておらんが、あれが国にでも近づいてくる前に、討伐を完了しておきたいという依頼じゃ」
「それじゃあ、ゴーレムの横にある“?”は・・・」
「姿は確かにゴーレム型の魔獣ではあるが、これまで確認されてきたゴーレムとは明らかに異質ということじゃ。むしろ魔獣であるかも怪しい意味も含まれておる」
「そんなプロの戦闘職の方々でも達成できなかった依頼を私たちが?」
先ほどまでの盛り上がりが嘘のように静かになる一同。ただもちろん例外も存在する。
「強敵・・・私、行きたい!」
「まぁ、好戦的なお前ならそうだろうな」
目を輝かせるサラであったが、他のメンバーはプロでもなしえなかった依頼に不安を感じ始める。
「むろんこれは強制ではない。じゃが、期待もなしに、このような依頼を学生である君たちに持ってくるはずもないことだけは理解してくれ」
悩む聖獣奏者のメンバー。誰かが嫌といえば、その場が終わりそうな空気の中、このまま学部設立の機会をみすみす逃してしまう躊躇が入り混じってしまう。そんなとき、セレナが意を決した。
「私、行きます」
その決意に驚く一同。
「おいおい、本気かよ!?」
「もちろん、この中で1人でも行かないのなら辞退するけど、私はみんなの居場所を造れるこのチャンスを逃したくない」
そんなセレナに背中を押されてか、1人、また1人と声とともに立ち上がる。
「お、お姉ちゃんが行くなら、私も行く!」
「そうですね。セレナさんが作ってくれたこのチャンス、セレナさんが行くというのなら、私たちが行かないわけにはいかないでしょう」
「私は元からそのつもり」
次々と意を固めるメンバー。そんな中、アイリクだけはまだ不安が勝ってしまい、意を固めることができずにいる。そんな中、この依頼に対し別の思惑を抱こうとしている人物がいた。
「学園長。1つだけお願いがあります」
「なんだね?ミチル君」
「恐らく僕は、この依頼に挑むうえで、ある意味で目立った活躍はできないと思います。それでも依頼を達成した暁には、メンバーそれぞれに功績を与えてくださると約束してくださいませんか?」
グルセリア学園長は強く頷く。
「もちろんじゃ。君の魔法がどのような性質を持っておるかは、あいにく把握はできておらんが、チームで挑むのであればそのチーム全員に平等な報酬を与えるというのが、大人の世界でも当たり前のことじゃ。もちろん評価も含めてな」
「ならば僕も行きます。いい加減、この立ち位置もうんざりしていたところだ」
するとミチルは、未だ悩んでいるアイリクを見下ろす。
「君はどうする?セレナが言うには、全員参加が絶対条件みたいだが?」
「俺は・・・」
「い、いや・・・そんなつもりで言ったわけじゃ」
慌てて否定しようとするセレナだったが、ミチルは聞く耳を持たず、持論を唱え始める。
「僕にとってこれは最初で最後のチャンスだと思っている。行くのも危険、行かぬなら死と同意なら、僕は迷わず行く。悪いけど、君を置いてでもね。もう後悔はしたくはないから」
「・・・れも行く」
「ん?」
「俺も行くって言ったんだよ!このまま待って苦しむぐらいなら、俺も行って苦しんでやるさ。前衛は任せろ!」
こうして全員の参戦が決定した。学園長は満足した様子でうんうんと頷いている。
「ありがとう。一応学園からも応援として、行動記録を踏まえた護衛を何人かつけておこう。彼らは君たちに隠れて行動させるが、いざ危なくなったら撤退させるよう指示しておく。では、武運を祈る!」
メンバーは全員で肩を組み円陣を組んだ。目的に多少のバラつきはあるものの、初めてメンバーの心が合わさった瞬間でもあった。
「皆さん、私たちの力を示す絶好の機会です。全力で成し遂げましょう!」
「「「おう!!!」」」
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