神の創造し魔法世界

アネモイ

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新たな国の形

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 グールスの企みからこの地を救い、リアの提案で神の力を領民に示すことで、領民からこの地を治める王と認められたアネモイ。

 領民の前でこの地の王となる宣言を終え、拍手とともに見送られると、傍で見ていたフィルスからも笑顔が添えられた拍手が送られた。

 「まぁ、若干の嘘も交じっていたけど、そこは許容範囲かな。なんにせよ、リアのおかげで国を造る第一段階はクリアできたわけだし、ひとまずは安心だね。さすが、リア!」
 「い、いえ、私なんて。アネモイ様の演説が領民の心を動かした成果です」

 だがアネモイは、あることに納得できていない様子だった。だがそれは、リアとフィルスとの事前の打ち合わせにて、渋々ながらも納得したことである。

 「先に言っといたでしょ?国を治めるのに神という概念を持ち込みたくないっていうアネモイの気持ちは分からないではないけど、それは今じゃない。それはゆくゆく考えていこうって」

 本来なら、神が国を治めるという構図はできれば避けたかったアネモイであったが、今の世界の理が、力で示すやり方しか知らない以上、今はそれに従う外方法がないのが現実。
 アネモイは改めて、自身が創造した世界の腐敗加減に、落ち込まずにはいられなかった。

 「わかっている。落ち込むのはもうこれが最後だ。ここを始まりとし、世界の理を何が何でも書き換えてやる。力など示さずとも、信頼を得られる世界。そして、神という存在が必要としない世界に」
 「うん!」

 決意を固めるアネモイたちを目の前に、リアの中にもある決意が芽生える。

 「あの!」
 「どうしたの?リア?」
 「私も、お手伝いさせてください!あなた様の掲げる、世界の理を書き換えるという目的を叶えるために!」

 リアは、興奮しながらアネモイに懇願した。アネモイの中で答えはすでに決まっていたものの、どうしても確認しておくべきことがあった。

 「それはこちらとしても願ってもいないことだが、本当にいいのか?そなたをこの地に縛る鎖はもう消えた。かつていた国にも、そなたがやるべきことや、やり残したことがあるのではないか?」
 「やり残したことがないと言えば嘘にはなりますが、ですがそれはもう2年も前の話。私が居なくなった空間は、もうすでに埋められていると思います。それにやるべきことは、この地で新たに見つけることができました。私もここで再出発をしたいのです」
 「そうか・・・」

 すると、アネモイはそれ以上の深堀は野暮だと、リアの願いをかなえてやることにした。

 「ならばこの地にて励むがいい。そのうえで、私の掲げる理想のため、そなたの手を貸してもらう。そなたが天から授かった神術。その力をこの地で、誠の姿で生かしていってほしい。頼りにしているぞ」
 「はい!この生涯をかけて、全力で取り組ませてもらいます。どうぞ、よろしくお願いいたします!」

 リアが新たなこの地の住民となることが決まり、友達であるフィルスは大いに喜んだ。

 「やったー!これからよろしくね、リア!」
 「うん!よろしく!」

 それと同時にリアの家族も、離れていた2年間の溝を埋めるべく、この地の領民となることが決まった。

 こうしてアネモイが王を務める国が、この世界に新たに立ちあがった。

 それから数日後、アネモイたちは忙しい日々を送っていた。だがその忙しさは、充実したものとは程遠いもの。その原因は、グールスの残した置き土産にある。

 「ったくあの老害め。最初にこの地に訪れた時は、経済が潤っていると感心したが、それすらもまさか表の姿に過ぎなかったとは。最後まで厄介ごとを残してくれる」
 
 かつてグールスが治めていたこの地では、様々な商人が行きかい、経済は潤沢に潤っていると思われていた。しかし、いざ蓋を開けてみると、グールスの植民地の運営は杜撰なものでしかない。

 まず、領民や商人が納める税金や、国を出入りする際に軍医支払う通行税など、国の運営のために様々な方法で集められた国の金だが、それらはすべてグールスの実験の費用として消費されていたことが分かる。
 また、彼の出費癖の悪さとも相まって、国が保有していたはずの金はほとんど残っていなかった。

 これでどうやって国が回っていたのかと、誰もが首を傾げたが、それはグールスが持つ神術を悪用していたことが発覚。
 グールスは扇動の神術を領民や商人に使用し、本来なら売り上げや所得に応じて税の金額が変わるところを、適当な金額で皆同じ額で徴税していた。普通ならその収集方法に納得する者などいないはずだが、彼の神術の前ではだれもが疑問を持つことなく、徴税に応じるという。

 「この地に潤っていた商人たちも、約半分は、奴が王宮を制圧したスプリブルク王国の商人を適当に神術の虜とし、この地で半ば強引に商売をさせていたようだな。すべては己の願いを叶えるためだけに」

 この事実を知ったアネモイは、この地に財政部署を設立。領民から選抜した選りすぐりの人材を職員として雇い、国を運営するための資金を確保することを第一目標に財政を造り上げた。

 そしてアネモイが次に動いたのは国の資金を確保するための、生産職の向上だ。
 もともとこの地で盛んだった畑や田で収穫される米や穀物、野菜などの食料品に加え、新たな民芸品をこの地で生成。他国で売ることで資金を確保することにした。

 民芸品の生産については、アネモイが他の世界から得た知識をもとに応用。他国では見かけない服や装飾品の技術を、神であるアネモイが領民に伝授し、様々な部類の生産職“ギルド”を造り上げた。

 「アネモイ、ただいま!今日もたくさん売ってきたよ!」

 フィルスは国の職員としてアネモイを傍で支えている。フィルスは事務作業の他に、その持ち前の明るさと交渉のうまさから、各生産職ギルドに国の職員として商品を買い取り、ギルドとは別のルートで商品を販売、その売上金を国の財産として納めていた。
 
 その主な別ルートというのは、かつてグールスが国の王宮を支配していたスプリブルク王国だ。アネモイが国を立ち上げて間もなく、スプリブルク王国から同盟を結んでほしいとの要請が来た。

 時は遡ること数日前。スプリブルク王国の国王自らが、アネモイを訪ねてこの地を訪れた。

 「あなた様が、この世界の創造神であらせられるお方ですね?いやはや、お会いできて光栄でございます」

 スプリブルク王国の国王がなぜアネモイの正体を知っているのかというと、アネモイが王になるとかつての教会跡地で高らかに宣言した際、グールスの神術にかかり、この地の警備を任されていたスプリブルク王国の軍人もその場にいたからだった。

 「そういえば、彼らもグールスの扇動に掛かり、あの地を守りつつ旅の者から通行税と称して税を巻き上げていたな。奴の神術が解けた瞬間、あの地にいた者はすべて私の演説を聞いていた。彼らがあの場にいても不思議ではないか」

 そしてその軍は、すぐさまこのことを国に報告。国王はこれをまたとない好機と感じ、こうして直接交渉に来たのだ。

 「単刀直入に申し上げます。我が国をあなた様の傘下に入れていただけないでしょうか?」
 「王である私が言うのもなんだが、今の我が国はそなたの国と比べると明らかに小さく、国として機能すらしていない。国を中堅にまで育てたそなたが、人口150人にも満たない我が国の傘下に入ることは、あまりいい話ではないのではないか?」
 「何を申されますか!あなた様は、この世界においてこれ以上のない力を持つお方。そのお方の後ろ盾さえあれば、我が国は生涯安泰でございます。そのためならば、多少は苦い泥水でも、進んで飲み干せてみましょうぞ!」

 だがこの状況はアネモイの理想となる世界においては、望ましい流れではない。頭を悩ませたアネモイは、ある提案を国王に投げかける。

 「では、同盟という形ではどうだ?」
 「同盟でございますか?それはこちらとしましては、願ってもいない案ではありますが・・・」
 「私はいずれ世界を平行にしたいと考えている。国ごとに方針や目標は変わっても、同じ目線、そして同じ流れに沿って共に歩む世界を目指している。それには同盟という形は私にとっても理に適っているのだ」
 「なるほど」

 そしてアネモイは更なる提案を投げかける。

 「まず同盟の手始めとして、それぞれの国に足りない部分を補い合おうではないか。こちらからの要求は、財政における技術の提供。それとこの地での商売の許可だ」
 「財政でございますか?」
 「恥ずかしながら、我が国はまだ立ち上げたばかり。神である私も、その分野については少々疎い。この地をこれだけ発展させたそなたの国であるなら、その専門分野が得意な領民も数多くいるだろう。その技術者を何人か我が国に提供してもらいたい」

 そしてアネモイは今度は自分が提供する手札を提示する。

 「こちらからは、いずれ我が国の伝統の民芸品となる商品の一部の技術提供だ。私が他の世界の神から得た知識をもとに生み出した民芸品の技術。今はこの世界どこを探してもないものばかりだ。ついでといってはなんだが、我が国で生み出された生産物を、そなたの国で販売する許可も頂きたい」

 そしてアネモイが提供するものがもう1つ。これがアネモイの切り札だ。

 「そしてそなたの国が、他国からの襲撃があった際、私自身が戦場に立ち、そなたの国を守る楯となることを約束しよう。これはそなたが一番に望んでいることのはず。どうだ?」
 「おっしゃる通り。我々が一番に望むものはまさにそれでございます。ご提案の件、すべて承知いたしました。この国で商売が許される商売許可証もすぐに発行いたしましょう。そして、職員の手配も直ちに。これから何卒、よろしくお願いいたします」
 「ああ。こちらこそだ」

 こうしてアネモイは、スプリブルク王国との同盟国となった。その商売許可証は、フィルスの手に渡り、こうしてギルドから民芸品を買い取っては、スプリブルク王国で商売を行っている。

 「皮肉だが、こうして他国との繋がりが早く実現できたのは、グールスの企てによって生じた恩恵ともいえる。まさかグールスの企みがこんな形で役に立つとはな」
 「本当に。世の中、なにが歯車として?み合うか、わからないね」

 こうして国が組織した財政部署に、スプリブルク王国から派遣された職員が加わることで、財政問題が大きくいい方向に改善されていった。
 ちなみに、これらの職員にこの地で暮らすことは、アネモイもさすがに悪いと思ったのか、スプリブルク王国との行き来を神の力で行っている。

 「私もただいま戻りました。フィルスは相変わらず仕事がお早いですね」
 「お帰り、リア!」

 リアもアネモイの右腕として働く一方、生まれつき得た神術を領民のために生かすべく、この地に診療所を設立。この地唯一の医者として、この地の暮らしを支えている。

 「すまんな。疲れているのに、こっちの仕事まで付き合わせて」
 「いえ。好きでやっていることですから」

 「今日も軍人の方の怪我が絶えず、大変でした」
 「またお父さん怪我したの?」
 「ええ。でも、いい表情でしたよ」

 グールスの支配がなくなったことで、かつてこの地を警備していたスプリブルク王国の軍人はいなくなった。スプリブルク王国からは、同盟国としてこれからも軍を派遣したいと申し出があったが、アネモイはそれを断る。

 そしてスプリブルク王国の監修のもと、アネモイは自国に警備部署を立ち上げ、警備システムを造り上げた。そしてその警備部署に配属する人材として、アネモイが目を付けたのが、かつてアネモイが所属していた独立国家の者たちだ。

 アネモイは国を立ちあげて間もなく、約束通りフィルスの父が長を務めていた独立国家の地を訪れ、彼らを自国に招待。晴れて彼らも、アネモイが立ち上げた国の領民となった。

 彼らもリアと同様、アネモイの傍で力になりたいと打診され、未熟ながら戦闘訓練を繰り返していた男たちを警備部署に配属。フィルスの父親が部長となって、日々アネモイの指導の下戦闘訓練に明け暮れている。

 「そういえば、お父さん言ってたよ。早く正式な部長候補を探してほしいって」

 フィルスの父親は、かつての独立国家での襲撃で、己の無力さを嫌というほど味わったのか、人の上に立つという意欲はほぼなくなり、部長を指名された際も彼は断り続けた。
 やむおえず、今は仮の部長として、その地位に収まってくれている。

 「とはいえ、この国は現在、人材どころか圧倒的な人口不足。国として機能していないというのが現状だ。土地を広げていくためにも、人口の確保が今は最優先。各部署の正式な部長を見つけるのは、まだ当分先だな」

 現在国としての形状は確立しつつあるものの、人口は約150名程度。かつてこの地を植民地として暮らしていた者と、フィルスの父親が長を務めていた独立国家の者たちが合流した結果だ。他国から見れば、やや規模が大きい独立国家とみられても仕方がない。

 「いずれは人間の力だけでこの世界を成り立たせていくうえで、これ以上神の力を頼って住民が増える構図は私としては望ましくない。すまんな皆。かなり遠い道のりになるとは思うが、ここは地道な人員確保に協力してもらいたい」
 「何言ってるのさ。私としてはこういう国が、私にとっての理想。今は楽しくて仕方がないの。だから、どんな形でも付き合うよ!」
 「私もです。こうして天から授かった力を、人のために使える場を与えられていただけて感謝しかありません。それに苦労の先にこそ、大きな達成感があるというもの。私の力、どうぞ存分にお役立てください」

 こうしてアネモイの、地道で先の長い国づくりが始まった。

 「まぁ、私たちの寿命が尽きかける前に、国を完成してくれたらなお嬉しいんだけどね」
 「フィルス・・・」

 前途多難となる原因が身内にもいたということを再確認し、この先の国づくりがいろんな意味で不安になるアネモイであった。
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