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私を慰めてくれる
「……泣きたい時は、大きな声で泣けばいい」
頭上から優しい声が降ってきました。顔を上げると、キース様が立っていました。彼は私の隣に座ると杖を一振りしました。
「【遮断】この空間の音は外には漏れないし、外の音も聞こえない。姿も見えにくくしてある」
キース様の得意魔法です。いつもは防御に使う魔法を彼は私のためだけの隠れ家を作るために使ってくれました。
「……キース」
「ひどい奴らだ」
キース様は、不機嫌そうに言いました。
「ドレスの形は同じだが、あっちは生地がペラペラだ。あんな安っぽい布で、君のデザインを真似するなんて君への侮辱にもほどがある」
私の言いたかったことを全部言ってくれました。形だけ真似ても、そこにある品格までは真似できていないことを彼は気づいてくれていたのです。
「……悔しいです。あの子たち、卑怯ですわ」
「ああ。屋敷に侵入して情報を盗むなんて、犯罪者のやることだ。マリーが今、裏で証拠を集めている」
キース様はポケットからハンカチを取り出し、私に渡してくれました。綺麗にアイロンがかけられた清潔なハンカチです。
「ロゼリア。君がどれだけあのドレスを楽しみにしていたか、俺は知っている。だから、今は無理して笑わなくていい」
その言葉を聞いた瞬間、私の我慢のダムが決壊しました。
「うわぁぁぁーんっ!」
私はハンカチに顔をうずめて、子供のように泣きじゃくりました。胃が痛いのも、頭に来たのも、全部涙と一緒に吐き出しました。
キース様は私が泣き止むまで、何も言わずに隣にいてくれました。ただ私の背中をさする手が、とても温かかったのを覚えています。
十分ほど泣いて私は顔を上げました。目は腫れているかもしれませんが心は随分と軽くなりました。
「……ありがとうございます、キース。ハンカチ、汚してしまいましたわ」
「構わない。君の涙なら、勲章みたいなものだ」
キース様はサラリと恥ずかしいことを言います。私は少し顔が熱くなりました。
「でも、ドレスはどうしましょう……」
「それなんだが」
キース様が、少しいたずらっぽい顔をしました。
「マリーと俺で、少し考えがある。君には、ミナのドレスが『ゴミ』に見えるくらいの、最高の一着を用意するつもりだ」
「え?」
「君の【記録】魔法を使って、型紙を再現できるだろう? それをマリーの伝で、王室御用達の職人に特急で作らせる。素材も、俺の家の倉庫にある『竜のうろこから作った糸』を使おう」
竜のうろこの糸!? それは国宝級の素材です。シルクなんて目じゃありません。光の当たり方で色が変わる伝説の布ができるはずです。
「そ、そんな貴重なものを……」
「君が恥をかくくらいなら、安いものだ。それに……」
キース様は、私の目をじっと見て言いました。
「俺は、世界で一番綺麗な君をエスコートしたいんだ。当日は、俺がパートナーを務めてもいいだろうか?」
「えっ……でも、アルベルト様が……」
「あいつはミナとお揃いのドレスで浮かれているんだろう? 放っておけばいい。君は、君を一番大切にする男の手を取ればいいんだ」
その言葉は、どんなプロポーズよりも私の胸に響きました。アルベルト様への未練が、音を立てて崩れていくのがわかります。
そして代わりに、目の前の無愛想で優しい騎士様への信頼が大きく膨らんでいきました。
「……はい。喜んで、お願いしますわ」
私がうなずくとキース様は本当に嬉しそうに、フッと微笑みました。その笑顔を見て私は思いました。
ああ、ミナにデザインを盗まれてよかったのかもしれないと。だって、そのおかげで、こんなに素敵な約束ができたのですから。
キース様が結界を解くと、また日常の音が戻ってきました。でも、もう怖くありません。私には、最強の味方がついているのですから。
(見ていなさい! アルベルト様、ミナ、リリィ、ガストン。私の新しいドレスは、あなたたちの想像を絶するものになりますわよ!)
頭上から優しい声が降ってきました。顔を上げると、キース様が立っていました。彼は私の隣に座ると杖を一振りしました。
「【遮断】この空間の音は外には漏れないし、外の音も聞こえない。姿も見えにくくしてある」
キース様の得意魔法です。いつもは防御に使う魔法を彼は私のためだけの隠れ家を作るために使ってくれました。
「……キース」
「ひどい奴らだ」
キース様は、不機嫌そうに言いました。
「ドレスの形は同じだが、あっちは生地がペラペラだ。あんな安っぽい布で、君のデザインを真似するなんて君への侮辱にもほどがある」
私の言いたかったことを全部言ってくれました。形だけ真似ても、そこにある品格までは真似できていないことを彼は気づいてくれていたのです。
「……悔しいです。あの子たち、卑怯ですわ」
「ああ。屋敷に侵入して情報を盗むなんて、犯罪者のやることだ。マリーが今、裏で証拠を集めている」
キース様はポケットからハンカチを取り出し、私に渡してくれました。綺麗にアイロンがかけられた清潔なハンカチです。
「ロゼリア。君がどれだけあのドレスを楽しみにしていたか、俺は知っている。だから、今は無理して笑わなくていい」
その言葉を聞いた瞬間、私の我慢のダムが決壊しました。
「うわぁぁぁーんっ!」
私はハンカチに顔をうずめて、子供のように泣きじゃくりました。胃が痛いのも、頭に来たのも、全部涙と一緒に吐き出しました。
キース様は私が泣き止むまで、何も言わずに隣にいてくれました。ただ私の背中をさする手が、とても温かかったのを覚えています。
十分ほど泣いて私は顔を上げました。目は腫れているかもしれませんが心は随分と軽くなりました。
「……ありがとうございます、キース。ハンカチ、汚してしまいましたわ」
「構わない。君の涙なら、勲章みたいなものだ」
キース様はサラリと恥ずかしいことを言います。私は少し顔が熱くなりました。
「でも、ドレスはどうしましょう……」
「それなんだが」
キース様が、少しいたずらっぽい顔をしました。
「マリーと俺で、少し考えがある。君には、ミナのドレスが『ゴミ』に見えるくらいの、最高の一着を用意するつもりだ」
「え?」
「君の【記録】魔法を使って、型紙を再現できるだろう? それをマリーの伝で、王室御用達の職人に特急で作らせる。素材も、俺の家の倉庫にある『竜のうろこから作った糸』を使おう」
竜のうろこの糸!? それは国宝級の素材です。シルクなんて目じゃありません。光の当たり方で色が変わる伝説の布ができるはずです。
「そ、そんな貴重なものを……」
「君が恥をかくくらいなら、安いものだ。それに……」
キース様は、私の目をじっと見て言いました。
「俺は、世界で一番綺麗な君をエスコートしたいんだ。当日は、俺がパートナーを務めてもいいだろうか?」
「えっ……でも、アルベルト様が……」
「あいつはミナとお揃いのドレスで浮かれているんだろう? 放っておけばいい。君は、君を一番大切にする男の手を取ればいいんだ」
その言葉は、どんなプロポーズよりも私の胸に響きました。アルベルト様への未練が、音を立てて崩れていくのがわかります。
そして代わりに、目の前の無愛想で優しい騎士様への信頼が大きく膨らんでいきました。
「……はい。喜んで、お願いしますわ」
私がうなずくとキース様は本当に嬉しそうに、フッと微笑みました。その笑顔を見て私は思いました。
ああ、ミナにデザインを盗まれてよかったのかもしれないと。だって、そのおかげで、こんなに素敵な約束ができたのですから。
キース様が結界を解くと、また日常の音が戻ってきました。でも、もう怖くありません。私には、最強の味方がついているのですから。
(見ていなさい! アルベルト様、ミナ、リリィ、ガストン。私の新しいドレスは、あなたたちの想像を絶するものになりますわよ!)
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