俺が正義だ! ジャスティオン!

junhon

文字の大きさ
1 / 1

銀河刑事ジャスティオン参上!

しおりを挟む
「フゥ~~~」

 その男は白いけむりを吐き出すと、手にしたタバコをポイと放り投げる。
 
 赤々としたほのおが着いたままの吸い殻が路上に落ちた。幸い石畳いしだたみの歩道で周りに延焼する危険は無い。しかし――
 
「待て」

 おれはそのまま歩き去ろうとする男のかたをつかんだ。
 
「ああ? なんじゃい、ワレ?」

 振り返った男は顔をゆがませる。パンチパーマの見るからにカタギではない風貌ふうぼう――普通ふつうなら声をかけるのすら遠慮えんりよしたいところだろう。
 
 だが、俺は毅然きぜんと言い放つ。
 
「この通りでの路上喫煙きつえんは禁止されている。さらに吸い殻のポイ捨てなどもってのほかだ。拾え」

「テメェ、この俺に意見するとは何様だぁ? ああん?」

 男は顔を近づけ、俺をねめつけた。
 
「俺か? 俺の名は――」

 そこで俺は片手を高く天にかかげる。
 
甲着こうちやく!」

 俺のさけびに応え、軌道きどう衛星上の母艦ぼかんからバトルスーツが粒子りゆうしとなって転送される。それが俺の身体をおおい終わるまでわずか1ナノ秒。
 
 白銀に青のラインが入ったかがやくバトルスーツ姿となった俺は、高らかに名乗りを上げた。
 
「銀河刑事けいじジャスティオン!」
 
 もちろん、ポーズを決めるのも忘れない。
 
「……あ、あ、あ?」

 男は驚愕きようがくに目を見開き、あごが落ちんばかりに大きく口を開けていた。道行く人々も何が起こったのか分からず呆気あつけにとられている様だ。
 
 しかし、俺は集まる視線など意にかいさず、男の首に手を回すと片手でその身体を持ち上げた。
 
「もう一度言う。吸い殻を拾え」

「……ぐ、が、がああ。ひ、ひろ、う、から」

 男はのどめ上げられる苦痛にもがきながらも、なんとか言葉を絞り出す。
 
「よし」

 俺が手をはなすと男の身体はドサリと地面へ落ちた。尻餅しりもちをついた男は恐怖きようふに顔をゆがめて俺を見上げていたが、俺が一にらみするといずりながら自分の捨てた吸い殻の元まで移動し、それを拾う。
 
「こ、これでいいんだろう?」

 最初の威圧いあつ的な態度などすっかり消え失せ、男はびるような笑いをかべて俺を振り返った。
 
「ああ。だが路上喫煙した罪は消えない」

 俺はそう応え、男へと歩み寄りながら、うでるって手の中にけんつかを転送させた。
 
「レーザーソード」

 ――ブン。

 束の先に青白い光のやいばが形成される。
 
「ひっ! な、なにを……?」

 おびえて見上げる男に向かい、俺はその刃をりかぶった。

「罪にはばつを――ジャスティオン・スラッシュ!」

「がっ!!」

 刃に切り裂かれた男は短く悲鳴を上げ、その場に崩れ落ちた。遠巻きに見守っていた見物人たちのざわめきが大きくなる。
 
 しかし、俺や男の元に近付こうとするものはいない。何人もの人間がスマホをかざしながら俺達の姿を撮影さつえいしていた。聞こえてくる言葉から、テレビ番組の撮影と思っている者もいるようだ。
 
 俺は変身を解除すると、人の輪を割ってその場を後にした。念のために言っておくが、ブレードをスタンモードにしているので殺してはいない。だが斬られる際の激痛に加え、丸一日は身体を動かせなくなるだろう。
 
 ――俺は銀河警察に所属する刑事、コードネーム「ジャスティオン」だ。
 
 だが、銀河警察本部は宇宙マフィア「ゴ・クドー」に襲撃しゆうげきされ、上官や仲間達は皆殺みなごろしになった。今や俺の故郷の星団はゴ・クドーの支配下に置かれている。生き残った仲間は散り散りとなり、俺もこうして辺境の惑星わくせいに身をひそめている。
 
 だからこそ、俺の悪をにくむ思いは強い。
 
「――むっ」

 俺がそうして過去の思いにとらわれながら、車道をわたるために横断歩道の前に立っていた時だ。一人の若者が俺のとなりを通り過ぎていった。
 
 信号は赤、だが車の往来はない。だからその若者はわたって良いと考えたのだろう。
 
 しかし、ルールを破ること――それはすなわち悪だ。
 
「甲着!」

 俺はバトルスーツ姿に変身すると、その若者の後を追った。
 
「待て!」

「――ん?」

 レーザーソードを構える俺の姿に、振り返った若者は一瞬いつしゆんほうけ顔から驚愕へと表情を変化させる。
 
「赤信号は止まれ――それを守らない者は悪! ジャスティオン・スラッシュ!」

「ぎゃああああ!!」

 大きな悲鳴を上げた後、若者は意識を失ってその場に崩れ落ちた。
 
 ウ~~ウ~~!
 
 その襟首えりくびつかんで引きずりながら、横断歩道を引き返していたところにパトカーのサイレンの音が聞こえてくる。
 
「そこの銀色の! 何をしている!」

 目の前で止まったパトカーから二人の警察官が飛び出し、俺に向かって大声を上げる。

 所属はちがえど同じく正義を守る者、俺はかれらに敬意をはらいつつ事情を説明した。しかし――
 
「ヘンテコな銀のスーツ姿の男に暴行を受けたという事件の連絡れんらくが入っている。ちょっと署の方で事情を聞かせてもらおう」

 なんと!? 正義を執行しつこうした俺をつかまえようというのか? 俺たち銀河刑事には逮捕たいほ権の他に刑罰けいばつの執行権限もあたえられているというのに!
 
 正義の執行を妨害ぼうがいする者――それはすなわち悪だ。
 
「ジャスティオン・スラッシュ!」

 俺は一刀のもとに片方の警察官をり捨てた。
 
「な!? 貴様!」

 もう片方の刑事がじゆういた。俺は構わずそちらへと向き直る。
 
「くっ!」

 一歩近付いた俺に向かって警官は銃を発砲はつぽうした。だか空間での生存すら可能にするこのバトルスーツには傷一つ付けられない。
 
「ジャスティオン・スラッシュ!」

 赤信号無視の男を加えた気絶した三人を歩道へと運ぶと、俺は再び街のパトロールへともどる。
 
 運転しながら電話に応答する者――それは悪だ!
 
 行列に割り込みする者――それは悪だ!
 
 歩きながらスマホを操作する者――それは悪だ!
 
 俺は街にはびこる悪を次々と断罪していった。いつしか俺の姿を見ただけで人々は悲鳴を上げて逃げ惑い、街は阿鼻叫喚あびきようかんの様相をていしていた。
 
「あ、あ、あ……」

 逃げおくれた男の子が尻餅をつき、俺に恐怖の視線を向けていた。俺はその子を助け起こしてやろうと近付いていく。
 
「や、やだ! 来るな! 来るな!」

 男の子はなみだを流しながら嫌々いやいやと首をる。だがこしでもかしたのか自分では立ち上がれない様だ。

「あ~、ああ~~~!」
 
 と、泣き出す男の子のまたの間に染みが広がっていく。どうやらトイレまで我慢がまん出来ずに失禁してしまったらしい。
 
 しかし、過失とは言えトイレ以外での排泄はいせつは悪である。
 
 俺はゆっくりとレーザーソードをりかぶる。
 
「ジャスティオン・スラッシュ!」

 俺は正義を執行する喜びに笑みを浮かべながら、その刃をり下ろすのだった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

処理中です...