11 / 123
第1章 幼子は、もふもふな幼子たちと子守役に出会う
1-11
しおりを挟む師匠の声が聞こえた瞬間、しずくは大きな木の幹に向かって跳び込んでいた。
(え∼っ、どうして?)
焦るしずくは、目をぎゅっと閉じて身を固くした。
『ゆきとかすみの力と体借り受ける、間に合え!』
混乱している頭を他所に、しずくの体は暖かいものにくるまれてふわりと停まって、すとんと降りた。
閉じていた目を開けると、しずくはゆきとかすみを抱えて、木の根元に座り込んでいた。
今更ながら怖くなって震えてきたしずくは、ゆきとかすみをそのままそこで強く抱きしめた。
フワフワな毛玉が胸元にすりすりして、しなやかで長い尾羽が頬を撫でてくれる。
ゆきとかすみに触れているところから、ぽかぽか暖かくなってきて、しずくの震えもだんだん収まってきたようだ。
(ああ!師匠たちが助けてくれたんだ...、
私は、みんなに守られたんだ…)
やっと安心できて、そしたら涙がこぼれた。
「ゆち、かしゅみ、ちちょー、…ぐしゅん
たしゅけちぇくえて、…ぐしゅぐしゅ…
あいあとごじゃましちゃ…ぐしゅん」
しばらくの間しずくは鼻をぐしゅぐしゅしながら、ゆきのすりすりとかすみのなでなでを受けていた。
それらが落ち着いたころ合いを見て、師匠が声をかけてくれた。
『もう落ち着いたかしら?...
大丈夫そうね。では、反省会よ!
どうしてああなったか解ってるかしら?』
思わずしずくの体がびくついた。
「こめんあちゃい、わかいまてん…」
『いいか、よく聞け。
体中に行き渡る力を意識して、手や足など決めた所に多めに流す、ここは皆うまく出来ている。
その先、多めの力を一所に留めた後だ。
ゆきとかすみは、前脚や尾羽を動かす勢いで、留めた力を目的に向かって押し出していた。
押し出した後の力も動かしていたが、それはいい。
次に教えるつもりの事だったからな。
自分だけで、よく考えた。』
先ずはゆきとかすみを褒める言葉から始まった。
『だが、しずくが考えた方法は違ったな。
力を留めたまま、更に力を加えて、自分自身を動かそうとした。
そこまで自分で考えたのは良かったぞ。
なのに自分で自分の体を扱いきれず、動かす方向も力加減もが定まっていなかった。
とても危険な状態だった。
救助が間に合って無事でよかった…』
そしてしずくが失敗した理由を諭していった。
『あの使い方は、もっと力の扱いが上達してから~
それに伴って体が成長して強くなって~
それから初めて訓練するのよ~
知らなかったのだから仕方がないのだけどね~
ただ、知らないままでは危険な力だと、覚えていてほしいのよ~』
そして、力の使い方によっては自分や周りも危険になると強く伝えてきた。
『私達が教えた力でけがをしてほしくないわ~
一人で力を使うときは練習した事だけにしてね~
何かを試すなら、必ず私たちに相談してからにしてね、約束よ?』
ようやくしずくは、自分がどれほど危ないマネをしたのか心配させたのかを理解した。
(私は、自分一人で無理やり難しいことをしようとして失敗したんだ、叱られて当たり前だ。
なのにそれより何よりも心配してくれてる…)
しずくは、謝罪や感謝で心がグルグルしていた。
それでも師匠たちの気持ちがうれしくて、ここと思う方向を向くと
「ちんぱいかけちぇ、ごみんなしゃい…
たしゅけちぇくえて、ありあとごじゃましゅ。
やくしょくしましゅ、そーだんしましゅ…
ゆちとかしゅみも、よよちくおねまいちましゅ…」
これだけはきちんと口にして、ぺこりと頭を下げた。
尤も、ゆきもかすみも自分の腕に抱えこんだたままだったが。
師匠たちにそれを指摘されて、慌ててゆきとかすみを足元に降ろし、改めてよろしくお願いするしずくだった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる