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第4章 もふもふな幼子たちと子守役は森にお出掛けする
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しおりを挟む美味しいものが配り終わるまで、毛玉と羽玉のちびたちの全身は、目の前のお皿にくぎ付けだった。ちび達のお皿には、真っ先に配られたので、トロトロしていい匂いのする、草の実から作った汁から、目を離せなかったのだ。ただその尻尾と翼がパタパタと揺れていて、ちび達の待ちわびる気持ちが出ていた。
その為か、いざ美味しいものが全員のお皿に行き渡って、
『ほな、もう一回、いただきますやな~』
二尾の長が話し終わったとき、ちび達の顔は既にお皿に突っ込む勢いで近寄っていた。
そして皆が食べ始めるより早く、お皿に顔を突っ込んで食べだしたちび達はというと、
「くう~ん『おいしい、いいにおいは、おいしい!』」
あちらでは尻尾をパタパタ振る勢いが速くなり、
「ちちっ『おいしいの、とろとろで、たべやすい!』」
こちらではお皿を突きながら、短い尾羽と頭を、交互にピコピコと上げ下げしていた。
そんな森の幼子たちの様子を、森の毛玉たちは食べてる間もずっとニコニコ嬉しそうに見ていた。
一方で、白い御山の幼子たちの方は、もう少し大人しかった。
ゆきのふさふさな尻尾は、パサリパサリとゆっくり振られていたし、かすみの長い尾羽はゆらりゆらりと上下していた。ただし、頭をお皿に突っ込んでいるのには違いなかった。
そんな幼子たちの中で、しずくだけはお皿を手に持って傾けて、トロトロな美味しいものを、少しづつ舐めていた。
「おいちいでしゅ~くさのみと、おみじゅで、どーちて、とろとろ、しましゅかね~
とろとろだから、こんなに、あまくて、おいしい、でしゅかね~」
夢中でお皿を舐め突くちび達を、微笑ましく見やっていた二尾の長は、しずくに目を向けた。
『随分と丁寧な味見やなぁ。甘い云うんが、この美味しい味の事やな?
この甘い味は、草の実と水にこの御山の力を加えて、初めて出来るんや。そんで、トロトロになるほど、甘い味が強くなるんや。そやから、このトロトロは、もっと御山の力を加えたら、ドロドロになって、終いにはねばねばで、ごっつい甘い味になるんやで。やり過ぎたら、苦あなるけどな。
ドロドロまでになると、事前に作っといて後で食べることも出来るんやけど、今は残る心配もないからな。』
お皿を空にした毛玉たちが、次々とお代わりをしていくので、大きな樽型の切り株に一杯だった、美味しい甘いトロトロなものも、残り僅かになっていた。
『毛玉らも、ようやく上手いこといったんや、食べきってしまえばいいんや。苦労が報われたお祝いやしな。
ところで、このトロトロを甘い味や云うなら、この前山で採って来た美味しい木の実はどない云うんや?ワイはこのトロトロとは違う味やと思うんやがな?』
しずくもお皿のトロトロを舐め終わると、長の問いかけに、しばらく考えて答えた。
「このとろとろは、あまいあじでしゅ。おいしいきのみも、あまいあじでちたけど、すっぱいあじもありまちた。あのきのみの、おいしいあじは、あまずっぱいあじでしゅ~
たぶん、あのおいしいみをつけるきは・うめ・でしゅ。だから、あのおいしいきのみは、うめのみ、でしゅね。」
『なるほどな、そんで梅の実は、甘いと酸っぱいの味が混じっとるんか。そんなら、良ーく熟れた実ほど甘い味が強うなるんやな。甘酸っぱい云うんか、おもろいな~』
幼子たちとちび達は、この話を聞いていた。
「わふっ『このおいしいにおいは、あまいにおい!このまえの、おいしいきのみのにおいは、あまずっぱいにおい!』」
特に、ゆきはこう言いながら、美味しい匂いを何度も嗅いで、覚え込んでいた。隣で毛玉のちびが、頻りに匂いを嗅いで、マネをしているので、張り切って教えてもいた。
かすみも、皿に残ったトロトロをいろんな角度で見直していた。
「ぴぃ~『このとろとろが、おいしいあじの、もと。ここに、くさのみと、みずと、ひのちからが、まじってる、はず。どれが、ひのちから?』」
こちらは、火の力を見極めようと、かなり真剣に睨みつけていた。
二尾の長は、広場でのこれ等の騒ぎの間、終始ご機嫌だった。
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皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。
作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨
あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。
やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。
この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。
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