幼子達と子守役のモフモフたちと

神無月

文字の大きさ
112 / 123
第4章 もふもふな幼子たちと子守役は森にお出掛けする

4-31

しおりを挟む


 二尾の長森と草原の長が照れくささに悶えていると、それに気づいた毛玉たちから暖かな視線が注がれた。そしてまたその視線に気付いた長が照れまくり、お家の樹丸岩の樹で囲まれた広場は、にぎやかな空気から、暖かい空気に変わっていった。
しばらくすると、流石に疲れたのか、毛玉と羽玉のちびたち二尾の長の森の幼子たちがウトウトとし始めた。これに目ざとく気付いた長は、居づらくなった広場から逃げ出すことにした。
 『…ちび共がおねむの様や、ワイがお家に運んでそのまま寝かせるから、後粗末は皆に任せたで~
 白い御山の幼子らゆき・かすみ・しずくも、一緒に休もうや。』
二尾の長はちび達を担ぐと、幼子たちを連れて自分たちのお家の樹に戻っていった。
 お家の樹の、ちび達の寝床用に置かれた切り株にちび達を寝かせると、二尾の長はそこから離れた壁際に座り込んだ。
 『幼子らも休むか?それともそこまで眠くも無い云うなら、こっちに座って、ワイとお話しでもしようや。』
幼子たちが二尾の長の側に近寄っていくと、長の尻尾が幼子たちを包んで、そのまま顔の近くに引き寄せて座らせた。
 「わふっ『ふたつしっぽが、ふかふかだ!』」
 「しーでしゅよ、せっかくねてるこが、おきゆでしゅ。ちいさいこえで、おはなしでしゅね~」
 『…そーやな、小声で頼むわ。沢山の経験を積んだ今のちび共は、十分な睡眠が必要やからなぁ。そんで起きたら次に必要なんが、光る水なんや。せやから、ちび共が起きたら、あの、光る水が湧く切り株・たけ・云う樹の森へ行く予定や。』
 「ぴぃ~『かすみたち、ここにきたとき、あのきりかぶの、そばにいた。まえのときは、いきもかえりも、おなじばしょからだった。こんかいも、きっとおなじ。』」
 「わふっ『ゆきたちは、きりかぶにいったら、おうちにかえる?』」
長とかすみは、恐らくそうなるだろうと、肯いた。
 『幼子らにも、そろそろ十分な睡眠とお水が必要なはずや。せやけど、此処には白い御山の力も届かんやろうしな、帰れるんなら、大人しゅう帰った方が良いで~
そんで、その前に聞きたいんやが、幼子らはワイの尻尾を二つや云うてるけど、驚いてはおらんよな。もしかして、どこぞで同じような尻尾を、見たことあるんか?』
二尾の長の声が、急に真剣になった。それを聞いて幼子たちゆき・かすみ・しずくも顔を見合わせると、一生懸命に考えながら答えた。
 「わふっ『ゆきたちのおやまの、もりのおさたちに、おしっぽいっぱいもってる、おさがいる。』」
 「ぴぃ~『そのおさの、もりでは、やっぱり、・たけ・のきが、はえてる。かすみたちは、きゅうびのおさ、とよんでる。』」
 「おさのおしっぽは、いつもは、かくしてゆ、そうでしゅ~おしっぽかくしたら、おさたちは、よくにたすがた、でしゅ。』」
 「わふっ『だから、ゆきたちは、ふたつしっぽを、にびのおさ、とよんで、くべつしてる。』」
二尾の長はそれを聞くと、深いため息を吐いた。
 『…ふぅ~、そうか~やっぱり白い御山の森に、帰ったんや~その幼子らが、九尾の長と呼ぶんは、ワイが幼子やったころに、面倒見てもろうた方々の一人や。
あの草の実から、美味いモンを作ったンも、その九尾の長や。ワイはそれを教えてもろうて、お陰で美味いモンも作れるようになったし、水の扱いも覚えたんや。
そうか~、お元気なんやな~教えてくれて、ありがとーな~』
二尾の長は嬉しそうに尻尾をパタパタと振って、慌ててその動きを止めた。それから毛玉と羽玉のちびたち二尾の長の森の幼子たちがぐっすりと眠っているのを見てから、ほっとして話を続けた。
 『幼子らが、美味いもんを作りたかったら、少なくとも草の実と、熱い水が必要や。それらは、帰ってからのんびりと探してみたら良い。けど、ワイは此処に、こんなモンを用意してみたんや。』
長が取り出したのは、三本の・たけ・の筒だった。二尾の長は、細くて短いその筒を、しずくに持たせた。
 『幼子らでも持てる大きさやと、こんなもんやから、少ないけど、こんなかには、それぞれ別の草の実が入れてあるんや。美味いモンを作るんに、必要な実や。これを上手いこと持って帰れたら、九尾の長に渡してみたら良い。もしかしたら、増やしてもらえるかもしれん。
そもそも、それを持って白い御山に帰れるかどうか、判らんし、お試しやけどな。』
そう言って、二尾の長は笑った。
 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

モブは転生ヒロインを許さない

成行任世
恋愛
死亡ルートを辿った攻略対象者の妹(モブ)が転生ヒロインを断罪します。 .

この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜

具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです 転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!? 肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!? その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。 そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。 前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、 「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。 「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」 己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、 結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──! 「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」 でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……! アホの子が無自覚に世界を救う、 価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...