籠の中の令嬢

ワゾースキー

文字の大きさ
7 / 35
第一章

謎の手紙

しおりを挟む
 その日の夜、初めて見る多くの男の子に、自分が怖くなって逃げ出してしまった事。お兄様に助けてもらったこと。その後、見知らぬ男の子が話し相手になってくれて、楽しい時間を過ごした事などを父たちに話す。
 父たちは、その男の子の名前に身に覚えがあるのか、青ざめ、黙考するが、姿を見ていない為、断定する事ができないのか何も言わない。
 そんな空気を断ち切るようにお父様が口を開く。

「とりあえず、その男の子には感謝をしなければならないね。ただ、招待客の中には彼はいないんだ。少し父様たちも調べてみるから、ミアも1人の時にまた会うことがあればすぐに近くの執事に声をかけて我々の誰かを呼ぶように伝えるんだよ?」

「レオナルド、その子をあの方だと思っているのか?それは…」

「カイル…分かっている。何故我が家にいたのか、護衛もつけずに出歩けたのか。疑問ばかり浮かぶが、私はその名前をあの方しか知らない。用心に越した事はない。」

「そうだな…はぁ…」

 額に手を当て、ため息を吐く父たちを見つめ、自分が何かやらかしたのかと不安になる。

 そんな様子を見たエマは、ミカエラを優しく撫で、微笑んでくれる。

「ほら、貴方たちがそんな顔をしていたら、ミアが不安がるわ。ミア、大丈夫よ。」

 ハッとした父たちが「大丈夫だよ」と慌てて否定してくれる。

 んー。彼は誰なんだろう…

 ミカエラは少し不安に思いつつ、夜も深まってきたため、寝室へ下がる。
 その正体は、次の日に驚く形で聞かされることになった。



「お嬢様、おはようございます。朝食のご用意が出来ております。」

 メイドの声で、薄ら目を開け、身体を起こす。
 身支度を整え、部屋を出ると、カイルと廊下で会う。

「おはようございます。カイル父様。」

「おはよう、ミア。今から朝食かい?私もまだだから、一緒に行こうか。」

 カイル父様と一緒に廊下を歩きながら、たわいも無い会話をしていると、リチャードが少し慌てて駆け寄ってくる。

「旦那様、お手紙が届いております。」

 カイルは、その手紙の送り主であろう特殊な封蝋を見て、少し目を見開き、額に手を当てため息を吐く。

「ミア、すまない。お父様は、ちょっと他の父様と話がある。リチャード、ミアを食堂まで連れて行ってくれないか?」

 リチャードが、「かしこまりました」と、お辞儀をすると、「さぁ、お嬢様。参りましょう。」と、声をかけられる。
 カイルは足早にその場から立ち去り、ミカエラは少し不安に思いつつ、兄たちがいるであろう食堂へ向かった。

 食堂に着くと、既に兄2人とお母様は食事を始めていた。

「遅かったね!何かあったの?先に食べてるよ~。」

 エレンがもぐもぐ口を動かしながら話しかけてくる。
 その姿にふふっと笑いながら、ハムスターみたい…と心の中で思いつつ、用意されている朝食の前の席へ座る。

「カイル父様と一緒に来るつもりだったんだけど、さっき、リチャードがカイル父様に手紙を渡してたの。なんか慌てた様子で…カイル父様もすぐどちらかへ行かれてしまったの。」

 その言葉を聞いて、エマは動かしていたカトラリーをピタッと止めて、近くにいた執事に何かを伝える。
すると、スッとその執事は下がり、お母様もお皿に料理がまだ残っているにも関わらず、席を立つ。

 ミカエラは目を見開き、お母様を見つめるが、笑顔を向けるだけで何も答えてくれない。

「ミア、後でお母様の部屋に来てくれる?」

 笑顔で言われているはずなのに、何故かゾクっと寒気がした。嫌な予感しかしない。

 ミカエラはそそくさと食事を済ますと、兄たちの心配そうな顔を横目に、足取り重くお母様の部屋へ向かうのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

身代りの花嫁は25歳年上の海軍士官に溺愛される

絵麻
恋愛
 桐島花は父が病没後、継母義妹に虐げられて、使用人同然の生活を送っていた。  父の財産も尽きかけた頃、義妹に縁談が舞い込むが継母は花を嫁がせた。  理由は多額の結納金を手に入れるため。  相手は二十五歳も歳上の、海軍の大佐だという。  放り出すように、嫁がされた花を待っていたものは。  地味で冴えないと卑下された日々、花の真の力が時東邸で活かされる。  

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...